有情のヒーローアカデミア(ただし本人はヒーローにあらず) 作:激流を制するは静水
年度末ということで、このところ仕事がハードになり寝転がって書いてたら寝落ちして変な文になってるのが当たり前でした。なんだ「ひこにゃんご飯」って。
やっぱり学校系バトル漫画で主人公が生徒な場合、生徒視点じゃなくて先生視点だと難しいですね。
戦闘訓練の翌日、職員室ではやはりというかA組の戦闘訓練――正確にはトキの闘いばかり話題に上がっていた。
「オイオイオイ、ヤベーだろコイツぁ……指先で一突きするだけで動きを封じて、挙げ句意識支配まで出来るって、数多のプロヒーローが是が非でもサイドキックに欲しがるぜ!?」
「ヴィランの無力化、怪我人の治療、尋問その他諸々を一人で可能……おまけに本人の戦闘能力も桁外れ。校長やリカバリーガールが雄英に保護する形で連れてきて正解だったな」
そうでなければ、今もトキは様々な人物に狙われつつ彼方此方を転々としていただろう。多くの人を助けられるなら彼は特に気にしなかったかもしれないが、その場合は彼を守る後ろ盾が何も無い状態であり、疲労や精神的ストレスが酷いことになっていたんじゃないかと容易に想像出来る。
「そういやトキ、今日は姿を見てねーな。珍しく寝坊か?」
「生徒たちが怪我をした時の治療に加えて、俺のクラスの副担任、しかもリカバリーガールに呼ばれりゃそっちにも行かなきゃならない……一般人なのにヒーローの俺たちと比べて負担が重いんだぞ。俺としては寝坊程度であいつの体調やモチベーションが維持出来るならその方が良い。今後を見据えるとそっちのが合理的だ」
「ソモソモ普段ハ我々ヨリ早ク来テイル時ガホトンドダカラナ」
そんな話をしている相澤たち。そしてその話題の人物はというと――
☆☆☆☆☆☆☆
「――ということだ。貴方たちはオールマイトオールマイトと彼のことでばかり騒いでいるが、その彼が自分が原因で生徒や同僚に迷惑をかけたらどう思うか……考えたことはあるのか?」
「い……いや、その……」
「わ……私たちはただ彼の雄英での生活について知りた……」
「ならば尚の事、事前に連絡を入れて許可を貰い、堂々と雄英へ来ればいいだけのこと。その手間すら惜しんだ結果、こうして生徒たちが登校する時間を見計らって彼らを狙い、インタビューと言って拘束する。やっていることがヴィランと変わらぬ」
先日の爆豪&轟との戦闘訓練で見せた静かなる圧倒的気迫を纏い、雄英近くで生徒を捕まえてはオールマイトに関する質問攻めをしているマスコミに説教している真っ最中。
「あの、トキ先生……」
「ん?耳郎に芦戸、時間にまだ余裕はあるが、早く教室に行くといい。わたしについて相澤先生に聞かれたら、ありのままを答えてくれると助かる」
「はーい!」
「すみません、それじゃウチら行きますね。ありがとうございました」
「うむ」
そんな二人を普段通り穏やかな笑顔で見送ったトキだが、逃げようとするマスコミ連中を見た瞬間、再びプレッシャーを放つ。
「「「ひいいっ!?」」」
「まだ話は終わっていないぞ。彼女らはヒーローの卵……厳しい試験を乗り越え、己の胸にそれぞれの大志を抱いて入学したばかりの未来への宝とも言うべきものだ。貴方がたが原因で万が一除籍処分にでもされたらどう責任を取る気でいる?」
ぶっちゃけオールマイト以上に画風が違いすぎて、ただそこにいるだけでとんでもない圧をかけてくるトキに、その場のマスコミ全員例外なく涙目。ちなみに、先の二人の後にも続々と生徒たちが登校してきたので、マスコミたちは公開処刑されたようなものである。
その様子を見ながら、トキに挨拶しつつ登校した常闇はこう語った。
「聖人君子たるトキ先生のあの怒り。まさに咎人裁く天罰の如し」
☆☆☆☆☆☆☆
そんな感じでトキは遅めに職員室に顔を出し、事の顛末を教室に行くべく準備していた相澤らに伝えると、プレゼント・マイクは大爆笑してサムズアップ、エクトプラズムには生徒のために動いた事の礼を言われ、相澤からは「よくやってくれた」と労いの言葉をかけられた。
ただ、ミッドナイトは「彼のお説教、受けてみたい」とか言い出しており本気でドン引きされたらしい。
朝っぱらからトラブルに遭遇したものの、本日はA組の教室に顔を出すことになっていたトキは相澤と共に入室。口々に礼を言われるが、普段通り穏便な返答で返していく。
そして始まったHR、戦闘訓練の批評から爆豪や出久への諸注意なども程々に、相澤はこう告げた。
「これから君たちには学級委員長を決めてもらう」
「「「学校っぽいの来たァァァ!!!」」」
「委員長!!やりたいですソレ俺!!」
「ウチもやりたいス」
「オイラのマニフェストは女子全員膝上30cm!!」
「ボクのためにあるやつ☆」
「リーダー!!やるやるー!!」
誰もが我先にと立候補。トップヒーローを目指す上ではまずリーダーになることが求められるのか、とトキは解釈する。一応、トキに相澤が『もし生徒だとしたら学級委員長に立候補するか』と聞いたところ、トキはこう答えた。
「いえ、わたしは保健委員を希望します」
予想通りだった。キリッとした表情で言う彼に、A組の生徒たちは「そう言うと思った」とでも言いたげな、温かい笑顔で頷いたという。
結局、飯田発案の投票による平等な選抜によって、出久が委員長、八百万が副委員長という結果に落ち着いた。
☆☆☆☆☆☆☆
昼休み――トキは保健室で有事に備えつつ昼食を摂っていた。なお、食堂利用時以外は自作弁当を持参。野菜多めで白米の代わりにカリフラワーを入れる健康志向。
「……あの世界ではこういったものはほとんど食せなかった。農林水産業に従事し、我々の生活を支えてくれている者たちに感謝を忘れぬようしなければ」
人にとって当たり前のことが当たり前に出来ることの喜びを感じつつ、昼食を終えたトキは食後の茶を飲んで一息入れていたのだが、突然警報が鳴り響く。
「む?」
『セキリュティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難して下さい』
「穏やかではないな。生徒の、と放送がされている以上は教師であるわたしは何かに対処せねばならないということだろう」
一先ず相澤らの指示を仰ぐべく保健室を出ると、タイミングよく相澤やプレゼント・マイクが走っていく寸前であった。これを幸運と言わず何と言おうか。
「うおおおお!?ナイスタイミングじゃねーか!地獄に仏とはまさにこの事!!」
「相澤先生、マイク先生。何か非常事態ですか?」
「非常事態と言えば非常事態だ。朝、お前が説教してくれたマスコミ共がいるだろ?そいつら、どうやら諦めてなかったらしくてな、どういうわけかここに入って来たんだよ。雄英バリアのチェックは欠かしていないはずなんだがな……ったく、これだからメディアの連中は嫌いなんだ」
「それで俺ら教師総出でそれの収束に当たろうってわけなんだよ!メシ食った直後っぽい時に悪いけど手伝ってくれねえか!?」
要はネタ欲しさにマスコミが正真正銘のマスゴミと化して雄英になだれ込んできたらしい。トキの説教を受けて尚その欲を叶えんとする図太いメンタルは称賛に値するが、人としては言うまでもなく最低である。
だがここでトキは不審に思う。自分が見た限り、朝のマスコミの中に強固な雄英バリアを突破出来るだけの身体能力や個性を持っている者はいなかった。何より、それが出来たとして実際にやろうとする者はいないだろう。不法侵入という不祥事を起こしたとして、悪い意味で認知されてしまうのだから。
(だが今回はそれがされた。彼らにそれをやるだけの力が無いにも関わらず……そして雄英のセキュリティ……即ち安全対策は万全、故に想定外の事態が起きたとあれば教師が総出で生徒の安全を……総出で?)
ここでトキはある仮説に辿り着いた。
「相澤先生、マイク先生。わたしは別の場所へ向かいます」
「ホワイ!?今度はそっちがどうしたってんだよ!?」
「……お前ほどの男がこの状況下で俺たちと協力しないとなると、何かあるな?」
「はい。杞憂に終わればそれで良し、しかしそうであれば今後生徒たちに、いえ雄英全体に危害が及ぶ恐れがあります」
プレゼント・マイクは「はあ!?」と素っ頓狂な声を上げ、相澤は一度目を見開いたがすぐに表情を引き締めた。今の彼はプロヒーローの顔だ。
「分かった。俺たちはマスコミを出来る限り早く追い返す」
「ぅおぉぉおい!?イレイザー!?」
「お二人もお気をつけて。時に執念は実力以上の力を発揮しますから」
「オーイ!?俺を置いて二人で突っ走るのやめて!?」
相澤はトキの言わんとしていることを察したのか、プレゼント・マイクを引っ張りマスコミの収束へと赴く。それを確認したトキは自身が言ったように『ある場所』へと急ぐ。
(彼らは自覚は無いだろうが『囮』として使われている。雄英のセキュリティが強固であることを逆利用した見事な策と言える。強固であるからこそ有事の際には全力を持って対処せねばならないからな)
誰もいなくなってガラリとした職員室。そこに二つの影が現れた。
「やっぱり思った通りだな。一見万全に見える雄英のセキュリティも、蓋を開ければこんなモンか。ここの教師たちがマスコミに気を取られてる間にさっさと済ますぞ、"黒霧"」
「もちろんです、"死柄木弔"。さて、確かオールマイトは今日非番……彼が出てくる日程とカリキュラムは……」
ゴソゴソと教師たちの机を探す二つの影に、一つの影が近づき――
「火事場泥棒とはやることが姑息だな」
「「ッ!?」」
殺気を孕んだ声で話しかけた。当然、全員出払っているだろうと思っていた二人は驚愕の表情をしながら、勢いよく振り向いてその声の主を見る。
「おい、黒霧……何だこいつ」
「雄英の教師……のようですね。まさか戻ってくるとは」
「お引き取り願おう。ここはお前たちがいて良い場所ではない!!」
声の主――トキは二人を即座に今回の元凶であると見抜き、白衣を脱ぎ捨て道着姿で構えを取る。雄英バリアを突破したであろう、眼前の二人は間違いなくヴィラン。それもかなりの実力者だろう。
「心配しなくても帰ってやるよ。オールマイトがいないんじゃ意味がない」
「……随分と物分りが良いな」
「ええ。つい先程目に入りましたし、何よりこれから続々と帰ってくるプロヒーローの大群とかち合うようなことは避けたいので」
(目に入った……つまり最初から偵察が目的だったというわけか。だが……)
構えを解き、静かに目を伏せるトキ。しかし、その瞬間を待ってましたと言わんばかりにヴィランの一人、死柄木弔と呼ばれた者がトキに飛びかかった。
「けど手土産の一つぐらい貰っても゛っ!?」
……が、トキは目を伏せたまますれ違うように死柄木を躱すと、その背に強烈な蹴りを叩き込んだ。当然、そんなことをしてくると思わなかった死柄木は呆気なく吹っ飛び、その先にあったドアに顔面から激突。ついでに手が触れたドアが崩れていく。
「死柄木弔!?」
「お前たちがやりそうなことは大体予想出来る。案の定わたしが構えを解いた途端に仕掛けてきたな。おかげで何故マスコミがここまで来れたかハッキリした」
「お前ッ……!!」
手痛い一撃を食らい、しかもそれが狙ってやられたことを知り怒りに震える死柄木を、黒霧と呼ばれたヴィランが諌め撤退を促す。先程のドア激突が相当派手な音だったのか、何名かが駆けてくる音が聞こえてくる。
「ここは退きましょう。あのマスコミもそろそろ追い返される頃です。このままでは下手すると多くのプロヒーローに包囲されかねない」
「……クソッ……!次に会ったら殺してやるぞヒーロー……!」
忌々しげにトキを睨みつけながら、黒霧の個性であろうその名の如く黒い霧に包まれた死柄木は黒霧と共に消えた。それと入れ替わる形で、相澤を筆頭とした教師陣が職員室へと駆け込んでくる。
「トキ!何があった!?」
「うおっ!?何かドアが粉々になってんぞ!?」
「ヴィランに侵入されていたので交戦しましたが、場所が場所だけに激しい戦闘は出来ず……相澤先生たちが到着する直前に逃げられました。すみません」
「……いや、むしろ朝のマスコミ対処に続いてよくやってくれた。お前と俺たちの挟み撃ち状態から逃げられるってことはワープ系の個性持ちか?」
「ええ。全てかどうかは断定出来ませんが、相手の個性も判明しました。外見も含めてこの後開かれるだろう緊急会議にてお話しします」
その後、根津校長も含めた教師陣の緊急会議で、唯一ヴィランと交戦したトキから様々な情報が開示された。外見や個性、ざっと見た性格……如何にトキの観察眼が鋭いか再認識させられる教師陣。
「……以上がわたしがその二名と交戦した際に得た情報です。最初から偵察目的……それもオールマイト先生絡みと見て間違いないでしょう。日程やカリキュラムと言っていたのでオールマイト先生が担当する教科、特に屋外訓練を行う場合は細心の注意を払うべきだとわたしは思います」
「なるほど……短い時間の間によくそこまで調べてくれたね。ありがとう、トキ先生」
「絵まで描いてくれてたなんて……しかも上手い」
「特徴だけだと聞いた個人のイメージで全く変わる場合がありますからね。情報を共有するという意味で合理的だ」
トキに何気に絵心があったことで死柄木と黒霧の姿も知ることが出来た雄英は、先の情報と合わせて今後の対策を練っていくことに決定。
それも踏まえて、近く行われるA組の救助訓練の授業はオールマイトも担当するとあって、早速対策会議が行われることになる。
だが、彼らは知らない。
ヴィラン側の隠し玉が想像を超えるモノであることを。
それから、A組の委員長は出久が辞退したため飯田になったらしい。非常口のマークがどうとか聞かされたトキは、黒霧の件もあって――
「まさか……彼も転移系の個性を隠し持っていたのか!?」
と変な勘違いをしてしまったそうな。
ヒーローの本懐、救助訓練に胸踊らせるヒーローの卵たち!
だがそんな彼らを嘲笑うかのように、ヴィランはその牙を悪魔と共に向ける!
次回!有情のヒーローアカデミア!!
『ヴィラン強襲!悪意の果てに仁王は蘇る!!』
「何だよ、あのデカさ……!!」
三回だけなのに次回予告に力(ネタ)尽きそうになってる自分がいる。我ながら早くないかオイ。
実は最初、マスコミ連中の秘孔突いて雄英の外に放り投げてもらうのも考えてました。さすがにダメですねそれは。
何かもう、次回のネタバレ感がすごい気がしますけどそこは知らんぷりでお願いします。
【本日の不満】
死柄木「俺のやられ方がギャグっぽいんだけど」
もし、他にも北斗キャラを出すとしたら
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ケンシロウ
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ジャギ
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ラオウ
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レイ
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シュウ
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サウザー
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ハート様
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アミバ
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むしろトキ兄さんを強化しよう
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……霞拳志郎(蒼天の拳)