pixivで上げた雛祭り関係の作品です
デジタルとデジタルを信用しているオタク気質のトレーナーの話です
ーーオタクの聖地・秋葉
追加で言うなら私とデジタルにとっての聖地でもある。ここに来ればある程度のウマ娘のグッズは買えるし、トレセン学園以外のウマ娘達とも交流が持てたりといい事ずくしで、休日の時はトレーナーと言う事を忘れてデジタルと楽しむのが一種の日課になっていた。
「同志!」
ヨド○シカメラの前にある交差点。
いつものようにデジタルと並んで信号が後になるのを待っていた矢先、彼女が声をかけてくる。
「どうしたの、デジタル?」
「そろそろひな祭りの時期ですよね!」
デジタルが視線を向けた先の看板には和服を着たモデルのウマ娘達が映し出されたポスターが貼り出されていた。
そっか、もうそんな時期でござったか……
「そう言えばもう、そんな時期だったでござるな」
「今度はどんなウマちゃん達が見えるんですかね!」
「うん、そう、だね……」
雛祭りかぁ、雛祭りと言えば、あの事もあるし、個人的にはあんまり思い出したくは無い行事かなぁ。
不安げな様子が伝わったのか見上げて来たデジタルが眉間に皺を寄せる。
「あれ、どうかしたんですか、同志」
「あー、うん、あのね、デジたん、雛祭りっていうのは嫁ぎに行く女性にかかる災厄を身代わりとして受ける為に飾るものでござるよ」
「え、そうなんですか?」
「うん、でも、結婚するつもりのない自分とは関係無い事でござるけどな」
驚いたようにデジタルは目を見開く。
「え、するつもりないって、同志は結婚願望とかないって事ですよね?」
「んーそれはそれはないかなぁ」
結婚願望かぁ、あー本当にやだなぁ、その言葉。嫌な記憶というか、オタク気質だったからこそ、受けた事を考えると嫌な思い出しかないんだよね。
「本当に、結婚は考えていないでござるし、万が一でも結婚する事はないでござる」
「え、なんでですか?」
不思議そうにデジタルが首を傾げてくる。
「なんでって、それは愚問でござるよ、デジたん」
本当に愚問で、それでいて本当は聞いて欲しくない質問。そう、私は結婚なんてしたくない。
『女なのにウマ娘が好きとか、キモいんだよ』
頭の中に高校生の時に言われた言葉がよぎる。
昔からのウマ娘オタクで、ウマ娘が好きなだけなのに、それだけで異端とされて
『えーそれどーなの、ウマ娘が好きってさー』
『はぁ?そんなきめぇ奴と付き合ってられるか』
自分の恋人までが私から離れて言ってしまった。でも、それでもウマ娘が好きでこの道に進んだ。
「……人に自分の趣味を否定されるぐらいなら結婚しないで、デジタルと一緒に居る方が楽しいんだもん」
「え、あー、そう、ですか……」
何かを察したのかデジタルは気まずそうに視線を逸らす。
まぁ、察しのいいと言うか、いい子と言うか、だから、デジタルの事が好きなんだけどね。
「そんな気まずい顔しなくても今はそんな事思ってないから」
ポンっとデジタルの頭の上に手を乗せる。
「……トレーナーちん」
「こーら、こっちの姿の場合は呼び方違うでしょ」
こちらを見上げていたデジタルのおでこをピンッと指で弾く。
「イタッ、むーそー言う、トレーナーちんこそ、いつもの口調に戻っているですよ!」
額を摩りながらも楽しそうにデジタルは笑う。
その笑みを見るだけで私の中にある負の側面が、否定されて嫌な思いをしていた事が浄化されていくのを感じる。
『私は、貴女が思ってる程きっちりとしたトレーナーじゃないの』
『それでも、デジたんは、どんなトレーナーさんだったとしても受け入れますよ!』
ふと、過去にデジタルとした会話が頭の中を過ぎる。
そうだ、あの時、初めて自分の趣味を肯定してくれたんだ。それが、彼女なんだ。
「……戻ってもいいじゃん、別に」
「えーいつも口うるさいのにですかー」
信号が青に変わり歩き始める。
「それはそれ、これはこれでござる」
「なんですか、その言い草はー」
文句を垂れつつもデジタルは腕に抱きついてくる。
文句は言ってくるとは言っても、彼女は本気で言っているわけではなく、戯れ合う様に言ってくる。それこそが、信頼している証拠。
ーーだから、私はずっと、デジタルといたい。
私の表と裏、二つの顔を知っている彼女との失望をされない世界を知ってしまった以上、私は、もう過去には戻れない。