ただお前と馬鹿なことやりたい、それだけの話   作:迷探偵

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この話の次でオリジナルの話は終わります。
以降はP4Gのストーリーに合流しますので、P4Gネタバレを避けたい方はどうか自己防衛をお願い致します。
ここまで読んでくださりありがとうございました。


第3話

ゆっくり体を休めて、翌日。元気を取り戻した明智は、ゴールデンウィーク明けの学校に登校した。さすがに元気なのに休んでテレビの中の世界に行くのは義両親の手前できなかった。

らしくなくそわそわと落ち着かない明智を、クラスメイトは「いつも一緒にいる1年の男の子行方不明らしいよ」と訳知り顔で話していた。田舎の連絡網早すぎだろ。授業にもイマイチ集中できなかったが、終礼のチャイムが鳴り次第さっさと帰宅して、着替えてジュネスに向かった。

一応ちらりと屋上に足を運ぶも、まだ誰もいなかった。確認したら、再び屋内に戻る。

テレビコーナーを見ると人はいなくて、これならテレビの中に入っても大丈夫そうだ。ペルソナを使える者はテレビの中に入れることは昨日クマに教えてもらってる。

あとは霧の中をどう進むかだが、それも昨日休憩中に教えてもらってる。メガネだ。クマがくれるメガネは霧を見通す特別仕様なのだそうだ。通りで明智以外の皆がテレビに入った途端にメガネを装着し始めたはずだ。

テレビに手を突っ込むと、水面に手を入れるようにずるりと入っていった。頭から慎重に、一応売り物だから傷を付けないようにテレビの中へと入っていった。

相変わらず霧に包まれて1m先も危ういが、どうやら昨日と同じスタジオに降り立ったらしい。入ってきたテレビの場所と出てくる場所は決まっているのだろうか、と思いながらどこかにいるクマに声をかける。

「クマくん!いる?」

「ゴロー!」

「うわぁ!?」

背後の存外近い場所から声が返ってきて肩を跳ねさせた。振り返ると目の前にクマがいて、更に驚いた。バクバクと鳴る心臓を落ち着けながら愛想笑いを浮かべる。

「やあ、クマくん」

「はれ?先生達は?」

「ああ、ちょっと僕だけ先に来たんだ。クマくんにお願いがあるんだけど、いいかな?」

「なにクマ?」

コテンと首─もはや体全体─を傾げながらこちらを見るクマに、思った以上に御しやすいクマだとニコリと笑う。

「鳴上さん達がかけてたメガネ、僕も欲しいんだ」

「なーんだ、そんなことクマ!いいクマよー、ちょうど渡したかったところクマ」

そう言ってどこからか取り出したメガネを受け取る。白いフチなし─確かリムレス─のメガネだ。かけると、1寸先は霧だったのが一気に視界が晴れる。

「おぉ……」

思わず声が漏れる。ここまでだとは思わなかった。これなら霧なんてないようなものだ。「すごいね」とクマに言うと「照れるクマ〜」と照れ照れと顔をだらしなく緩めていた。

「あっそうだ、もう1つ頼みがあるんだ」

「はいはい!なにクマ?」

むしろこれが本題なのだが。努めてなんでもないことのように言葉を紡ぐ。

「昨日の監獄、あそこまで連れていってほしいんだ」

「えぇ!?そ、そりは……」

難色を示したクマに、内心盛大に舌打ちを零す。1人で行くことがいかに危ないかをさすがに理解していたらしい。

面倒だな……。

だが、最初からいつ来るかわからない鳴上達を待つくらいなら1人で行くつもりだった。

「ダメかな?」

「ひ、1人で行くのは危ないクマ…先生達が来るまでクマと待つクマよ」

「そっか……じゃあ僕はそこら辺ブラブラしてるよ」

「えっ」

歩き出した明智にクマが驚いたような声を出す。当たり前である、明智の足はしっかりと自分が答えなかったあの監獄に続く道を進んでいたのだから。

実はスタジオの中心にはテレビが安置されていた。明智は昨日霧で視界不良の中怪しく光るテレビの画面を目印に、どの方角に歩いていたかを覚えていたのだ。すなわち、テレビの画面に背を向けるようにまっすぐ。なんとも覚えやすい方角で助かった。

「ゴ、ゴロー!待つクマ!」

「なにかな?」

「ク、クマ、あっちが気になるクマ」

「ごめんね、僕こっちが気になるんだ」

足を止めることなくクマと喋る。

着いてくる気配を察知すると、なんだかもう面倒になって走った。

「ゴロー!?」

「ごめんねクマくん、鳴上さん達によろしく言っといて!」

自分を呼ぶクマの声がどんどん遠くなる。

走ってるとあっという間に刑務所の外見の監獄に到着した。後ろを見るとクマはもう見当たらず、それを確認すると気を引き締めて扉を開けた。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

監獄を進むと当然シャドウに襲われたが、基本は走って避けたり、どうしても戦わなければいけない時はペルソナで対処した。

ペルソナ召喚は気力と体力が必要なのだ、まだ最奥までのルートを確保できていない現状では戦いは最小限に留めたかった。

「射殺せ、ロビンフッドォ!」

召喚されると同時に大きな弓に矢をつがえて放つと、文字通り射殺されたシャドウが霧散した。

ペルソナを戻して昨日と同じルートを辿ると、30分ほどで昨日シャドウの明智と対峙した広間に辿り着いた。

持参したお茶で喉の乾きを潤していると、思い出すことがある。『前回』怪盗団と行動を共にしていた時、セーフルームでコーヒーとカレーを振る舞われたことを。どこから取り出したのか水筒と魔法瓶で出張ルブランだと蓮に言われた時は正気を疑った。ゾロゾロと一列に並ぶ怪盗団の仲間達に、今度は自分の正気を疑った。

ふっと懐かしさに顔に笑みが浮かぶ。

まだそんなに昔というほどでもないのに、もう随分と懐かしい。今なら、あの当時決して受け入れられなかった感情を素直に受け入れられる。

……楽しかったな。

「……よし」

喉は潤った。気合いも入った。休憩は終わりだ。ここからは初見の迷宮だ、気を引き締め直す。

広間から続く階段を登ると、一見して変わらず牢獄が続く通路があるように見える。通路を進みながら違和感を抱き、やがてその正体に気付く。

牢獄の中に、処刑道具が入っていた。

それはギロチンだったり、電気椅子だったり、首吊り縄だったり。ギロチンは時々刃が降りたものがあり、しかし血痕は見えなかった。

ギョッとしながら何故こんなものが蓮の抑圧された心で出来たこの場所にあるのか考えたが、わからなかった。

あいつ、自殺願望でもあったのかよ……。

時折扉かと思ったらだまし絵だったり、宝箱があるだけの部屋に繋がっていたりもしながら、そこまで難解な仕掛けもなく大きな階段の前まできた。

「この先が、最奥か……」

あきらかに階段の先から今までと違う空気が漂っている。ピリピリとした緊張感が肌を刺す。

道中のシャドウは徹底的に避けたため気力も体力も十分、蓮をぶん殴るという気合いも十分。

「待ってろよ……」

二重の意味で。

階段を登りきると、広い部屋に出た。

今までの通路は薄暗かったが、ここは明るい。窓から月明かりが差し込んでいる……いまはまだ夕方のはずなのだが。

あまり物は置いておらず強いて言うならド真ん中にドンと置いてある巨大なギロチン……。

「待て待て待て!!!蓮!?」

なんとギロチンにかけられているのは探していた蓮だった。これは突っ込まざるをえない。キランと月明かりを反射して輝く刃の下に、無防備に首と手を晒している。顔は俯いていて見えないが、声にも反応しないから気絶しているのだろうか。

すぐに駆け寄ってまず安否確認。

よかった、息してる……。

まずはそれにホッとして、次いでギロチンから解放しようと観察する。幸い手の拘束自体は簡単に外せそうで、カチャカチャと弄れば外せた、さあ次は首だと手をかけようとすると……

 

チャキ

 

……頭に、固いものを押し付けられる感触がある。覚えのあるそれに、一気に冷や汗が吹き出す。ピタリと止まった明智の体に、クツクツと笑いを浴びせる何か。

「ソレから離れろ、ショーが始められない」

ドスの効いた声でも、不快な声でもない。

でもどこか、強制力のある声。

……どこかで聞いた声だ。

そろりとゆっくり体を動かし、ギロチンから離れる。少し離れて振り向き、脅した張本人を視界に入れる。

癖の強い黒髪。顔の上半分を隠すドミノマスクから金色の瞳が愉しそうに覗いている。口元は不敵に弧を描いている。黒のロングコートに、真紅の手袋が映える。

「ジョーカー……」

正しくはシャドウなのだろう。

けれどその姿は、瞳の色以外在りし日のジョーカーそのものだった。聞いた事ある声なのも納得だ、つい4日前まで毎日聞いた声なのだから。

『久しいな、明智』

「……そうだね、本当に久しぶりだ。君、今メメントスでシャドウ相手にカツアゲするノリだろう」

『そう睨むな』

クスクスと笑うシャドウを横目に、さてどうするべきかと思考を巡らせる。自分も蓮も危ない。残念ながらこのテレビの中の世界はパレスやメメントスと違って身体強化なんてないから弾避けなんて芸当はできない。蓮は首を拘束されており、シャドウのすぐ傍にある縄を切れば繋がっているギロチンの刃が落ちる。せめて蓮の拘束を解けたら、負傷覚悟で突撃できるのに。

「彼の拘束を解いてくれたり…なんて」

『無理な相談だな』

ですよね。

ペルソナで突撃かますか?でもなにかの衝撃で縄が切れたら…。手数が足りないな。

これは素直に鳴上達を待つべきだったかもしれない、と明智は少し後悔した。

鳴上達がいれば蓮の救助、シャドウとの戦闘を同時に行えるのだが。弱くなったものだと自嘲する。たった1人抱えただけで、こんなに身動きが取れなくなった。

『弱くなったな、明智』

「ほんとにね、僕もそう思うよ」

『拘束を解くのは無理な話だが、目覚めさせるのはできるぞ?』

「えっ」

『起きろ』

「……ぐっ!?」

シャドウの振り下ろした足に脇腹を蹴られた蓮が、呻きながらモゾモゾと動く。

手が動き、首が動かないことに気付いて、動かないなりに理解しようと周囲を見渡す。

「あけ、ち」

「蓮、無事かい」

「……なんとか」

4日も飲み食いしていないせいか、ガサガサの声に自分で驚いているようで、喉元に手をやろうとして拘束されていることに気付いたようだ。ノロノロと首を動かしこちらを見ると、明智と対峙しているシャドウに驚いた声を上げる。

「俺…?」

『俺はお前で、お前は俺だ。ああそうとも』

忌々しいとでも言うように、シャドウは銃を降ろしながらナイフを取り出し、縄に這わせる。

もう明智なんて眼中にないとでもいうように、あっさり明智を解放した。

『よかったな?長年の願望がついに叶う』

「なに、を」

『何を?これは俺が望んだことだ。繰り返される1年に飽きた俺が、最終的に逃げた救いだ』

「ちがう……」

言葉で嬲るように、真綿でゆっくりと絞めるように、シャドウは蓮に毒を吐く。ペルソナを召喚しようとすると、這わせたナイフがゆっくりと縄に食い込む様子に、盛大に舌打ちをして召喚を止める。どうやら明智ことも警戒しているらしい。

『疲れた。飽きた。皆が求める怪盗団のリーダーであることにウンザリしてた。どんなに強固な絆を結んでも忘れてしまう仲間達なんて大嫌いだ』

「ち、違う…」

『何が違う。本当は辛い。痛いのもしんどいのも、忘れられるのも、もうたくさんだ。放っておいてほしい。眠らせてほしい。終わりにしてほしい。救ってほしい。助けてほしい。

………殺してほしい」

息を呑む。どうやってこの状況をひっくり返すか思考していた頭が止まる。

知らなかった。そんなこと、考えてたのか。

暴走したシャドウの言葉を一から十まで信じる訳ではないが、あれもまた蓮の本音なのだろう。

シャドウは、嘘をつかないから。

『だからこうして舞台を整えてやったのさ。世間を騒がせた心の怪盗団、その成れの果ての公開処刑ショーだ!大衆も盛り上がると思わないか?それとも……過去だから誰も見向きもしないかな?』

「違う……そんな、こと…思ってない!!」

『言っただろう、俺はお前だと。今のお前は反逆の牙も腐り落ちた、ただの凡人だ。せめて終わりくらい、華々しく散ってくれよ?』

「っ……!お前なんて…」

嫌な予感がした。

自分のシャドウを否定するとどうなるか明智にはわからない。ただ、良いことにはならないだろうということだけはわかった。

「蓮、だめだ!」

「お前なんて、俺じゃない!!」

『その言葉を待っていた!!』

ザクッと音がして、シャドウがギロチンの縄を切る。

スローモーションがかかったかのように、全てが遅く感じた。叫んだ声は、音となっていただろうか。

ギロチンの刃が、蓮に迫って、そのまま、

「イザナギ!!」

明智の横を風が通り過ぎる。

思わず目を瞑り、風が収まって恐る恐る開くと。

「蓮!」

迫っていたギロチンの刃を、寸でのところでペルソナが止めていた。あれは鳴上のペルソナだ。振り返ると、階段から走ってくる鳴上達が見えた。

追いついてきてくれたのか。

そのまま鳴上のペルソナがギロチンの上半分を破壊して刃を取り除き、拘束されたままの蓮を明智のもとへ運んでくれた。受け取ると鳴上の元へ帰って行く。

「大丈夫かい?」

「だいじょ…けほけほ」

「今外す」

どうやら喉が乾き過ぎているらしく、軽く咳き込む蓮の拘束を外しにかかる。

「外れたよ」

「あり、がとう」

とりあえず喋りにくそうなので明智はカバンからもう1本のお茶を出して蓮に渡す。

ぐびぐび飲む蓮を横目に明智は今の状況を把握しようと周囲に目を走らせた。

鳴上達は自身のペルソナを召喚して何かと戦っている。

鎖で体をグルグル巻きにされていて、赤い装束を身にまとっている。顔には不敵な笑みを浮かべながら、鎖からはみ出している翼でペルソナの攻撃をスイスイ躱していた。

それは、どこか蓮のペルソナであるアルセーヌと似ていて……。加勢に行くべきかと考えていると、自分の名前を呼ぶ声に気付く。

「ゴロー!」

「クマくん」

「ゴローひどいクマ!1人で行くなんてー!」

「ごめんクマくん、その話は後で。アレは何?」

アレ、と言いながら鳴上達が交戦中のものを指すと、クマは答えてくれた。

「アレはシャドウクマ。たぶんそこの黒髪の子のシャドウが、本体に拒絶されて暴走してるクマよ」

やはり自分のシャドウを拒絶するとろくなことにならないのか。蓮はだんだん状況がわかってきたのか、申し訳なさそうな顔で黙っている。言いたいことは山ほどあるが、まずは鳴上達に合流して加勢しようと立ち上がる。

「クマくん、蓮頼むね」

「任せるクマ!」

「すまない、明智」

「後で覚えてろよ…ペルソナァ!」

ロビンフッドを呼び出して鳴上に合流すると、シャドウに苦戦していたらしく加勢に入った。

「ロビンフッド!」

明智の指示にロビンフッドが祝福属性の攻撃を仕掛ける。避ける素振りもなく攻撃は吸い込まれるように命中した。

ガキン!!

弾かれる音がしてロビンフッドの放った攻撃が跳ね返ってきた。まさか跳ね返ってくるとは思わず、慌てて避ける。

祝福反射!?

「こいつ、氷結も反射するよ!」

「さっきから弱点が見つかんねぇ!」

「速い……!」

里中と花村が悲鳴のように叫ぶ。天城のペルソナが爆発を起こすがそれも躱される。

縦横無尽に飛び回るシャドウは、ケタケタと愉しそうに笑う。正直、目で追うのもやっとだ。

『我は影、真なる我…』

「イザナギ!」

「いっけー!ジライヤ!」

鳴上と花村のペルソナが攻撃するのをまたしても躱して、挑発するように笑う。

………躱す?

「ロビンフッド!」

試しにロビンフッドにもう一度祝福属性の攻撃をさせると、躱す素振りも見せず反射させてきた。わかっていたので難なくそれを明智も躱す。1つの仮説が浮かび上がった。

「里中さん!」

「えっなに!?」

「氷結属性の攻撃をした時、ヤツは躱していましたか?」

「へ?いや、受け止めて反射されたけど…」

「それと、皆さんこの戦闘中にダメージは受けましたか?」

その問いに、鳴上達はお互いに目を合わせ、互いに首を横に振った。

「あいつからはなにもされてないな」

「確かに…」

「私も」

「攻撃手段がないとか?ほら、あんなに鎖で簀巻きにされてたら殴れないし」

里中が思いついたと言わんばかりに放った一言に、全員の視線が里中に集中する。いきなり注目されて里中は訳がわからないように慌てた。

「へ?何かおかしなこと言った、あたし!?」

「いえ、案外そうかもしれません」

「どういうことだ?」

「まずこちらの攻撃ですが、躱すってことは多少なりダメージがあるのかと思って。現に、反射する属性の攻撃は躱さず受けていました」

「そっか、躱すってことは受けたくないってことだもんね」

「次にあちらの攻撃ですが、里中さんの言う通り、攻撃手段がない、もしくは攻撃するのにタメが必要なのかもしれません。よくあるでしょう、大技だけど発動まで時間がかかるって」

里中と花村が関心したように「へー!」と声を出し、天城が納得したように頷く。鳴上だけは理解したのか難しい顔だ。

そう、これではいつまでも平行線だ。

仮にシャドウの攻撃手段がタメる必要があると仮定する場合、こちらが攻撃する限りタメができない。だがこちらも攻撃が当たらず躱される。どちらにも決定打がない。

今こうして話している間もペルソナ達がシャドウを相手にしているが、正直いつまで持つか。

せめてあの異常に飛び回るのをどうにかできたら……。考え込み、眉間に皺が寄る。

「明智、明智!」

蓮の声がして振り向く。蓮がクマに支えられながらこちらに来ていた。どうしたのだろうか。

「明智、俺わかった。あいつがなんであそこまで攻撃躱せるか」

「……なに?」

「たぶんあいつ、俺が『前回』使ってたアルセーヌのスキル全部使える。氷結反射も祝福反射も付けてた覚えがある」

目を見開く。それは大きな情報だ。

似てる似てるとは思っていたが、まさかペルソナのステータス全てを反映しているのか。

「異様に躱すのが上手いのはアリ・ダンス覚えてるからだし、攻撃してこないのはタメが少しいるから。当たってるよ、明智の推理」

「……その、攻撃って?」

「……万能ブースタとハイブースタ込のメギドラオン…」

「………」

「ごめんて……」

思わずジト目で睨むと蓮がしょんぼりと謝ってくる。許さんからな。

どうしよう、勝てるかこれ。とりあえず攻撃の手を緩めることは絶対にできなくなった。

「あと、あいつの動き止める作戦も思いついた」

「へえ?聞かせてもらおうか」

「わかった…なんだか明智とこうして作戦会議できるの嬉しいよ」

「いいからさっさと話せ馬鹿」

緊張感のないやつだと頭を叩く。

それでも蓮は楽しげにクスクスと笑ってた。

 

 

 

 

****

 

明智に作戦を伝えると早速前線に戻っていった。こういう時自分のペルソナがないのが歯痒い。蓮がソワソワしていると、自分を支えてくれてた謎の着ぐるみXが気遣わしげに見てきた。

「無理しちゃダメクマよ」

「大丈夫だ、えっと……クマ?」

「クマはクマだクマ。君はゴローが言ってたレンクマね?」

「そうだ。よろしく、クマ」

謎の着ぐるみXはクマというらしい。なんとものんびりした自己紹介だが、前線でへは決定打のない戦いが続いていた。

「イザナギ!」

飛び回るシャドウをイザナギが追いかけ回している。特定の場所に追い込むように、じわりじわりと。

「今だ、ジライヤ!」

決められた場所までイザナギがシャドウを追い込むと、シャドウの近くに風の渦が出現した。逃げようとするシャドウをイザナギが阻む。場所が部屋の隅っこなこともあって、さすがに逃げ場所がないようだ。

翼があるってことは、風の影響を少なからず受けるんじゃないか。例えばそう、竜巻とか。

案の定、勢いの良い風に煽られてシャドウは上手く飛べなくなっている。これで逃げることも躱すこともできなくなった。

「明智!」

「やっちまえ!」

「逃げ道確保、ヨシ!」

「雨宮くん、乗って!」

別行動だった女性陣が戻ってきて、茶髪の女性に促されて背に体を預ける。高校2年の記憶を持つ男が同い年くらいの女性に背負われるのはいささか格好悪いが、今は中1だしと自分に言い訳をする。

「射殺せ、ロビンフッドォ!」

背負われている蓮以外が入口に全力ダッシュを開始する。残されたのは体勢を立て直しきれていないシャドウと、タメに入ったロビンフッドだ。

まあ、射殺せなんて言って実際は魔法攻撃なんだけどな。そこはご愛嬌だ。

周りが巻き込まれないように必死に走っているのを横目に、のんびりと蓮は思った。

───そして、目に痛いほどの光が辺りを照らし、メギドラオンが発動した。

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