ただお前と馬鹿なことやりたい、それだけの話   作:迷探偵

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オリジナルの話、終わりです。
次回からP4Gストーリーに合流します。
そして、私が書き溜めていたストックも終わりです。
これからは今までのような頻度では更新できません。
予めご了承ください。


第4話

「全員、無事ー……?」

「なんとか…」

「威力ヤバ過ぎだろ、アレ…」

 

全員がゼェハァと息を整えている中、里中に降ろしてもらった蓮は周囲をキョロキョロと見回す。物の見事に全壊している刑務所に、ぼんやりと立つ者がいる。

目当てを見つけた蓮は力の入らない体を引きずるように、しかし一歩ずつ瓦礫の山を歩く。

時々瓦礫に足をとられながら辿り着くと、シャドウの自分の目の前に立った。

 

「……いつからだったかな、お前を使わなくなったのは」

『………』

 

問いに答えるでもなく、ぼんやりとこちらを見つめるシャドウに、別に答えてほしい訳でもないので構わず話し続ける。

 

「いつもお前は俺の傍にいてくれたよな。それをすっかり忘れてた。今俺がすべきなのは、終わりを望むことじゃなく、少しずつお前と向き合うこと、だよな。

気付くのが遅れてごめんな、アルセーヌ」

 

ぼんやりと蓮を見ていた瞳に意志がこもりはじめる。無表情だった口元は口角が上がり、不敵な笑みを作る。

それと全く同じ表情を、蓮もしていた。

終わりたい、楽になりたい、そう思う自分が嫌いだった。それは、皆の求める俺らしくない。そう思ってた。でも、そうじゃない。

 

「俺はお前で、お前は俺だ。もう忘れない」

 

思ってもいい。きっと、諦めなければ、いつか。

満足げに頷くシャドウが淡く光る。姿が消え、赤い装束にシルクハットを被った怪盗紳士が現れた。見下ろされる視線に、蓮も見上げて応える。

その姿がやがて一枚のカードに変わり、蓮はそれを受け入れた。

 

「これからもよろしく、アルセーヌ」

 

急速に襲い来る疲労にガクリと膝から崩れ落ちそうになるのをグッと耐える。伊達に毎周ペルソナ覚醒させてから学校に登校してない。要は慣れだ。

 

「蓮!」

 

背後から明智の声がする。

振り返るとそこには、拳が迫っていた。

避けることも出来ずに、頬で受けた。

 

「がっ!?」

 

せっかく膝を付かなかったのに、殴られて背中から倒れ込んだ。背中にゴツゴツの瓦礫が食いこんで痛い。痛みで呻く蓮に、ゆらりと明智が歩き寄る。

控えめに言って怖い。直感でヤバいと感じる。

 

「明智……?」

「柄じゃないことだけれど」

 

見上げた明智の顔は、色んな感情を煮詰めたような、複雑な顔をしていた。拳を握りながら、明智は口を開く。

 

「お前とは1回、こうした方がいい気がして」

 

そう言ってまた、明智は殴りかかってきた。力が入らない体では避けることも出来ずに腹に直撃する。

 

「なんなんだよ、お前!なにが友達だよ馬ッッッッ鹿じゃねぇの!?俺はお前裏切ったんだぞ!!お前に全ての罪ひっ被せようとしたんだぞ!?そんなやつと友達になろうとかお前正気か!?」

「えぇ……」

「お前が付き纏うようになってから散々だ!会うたびに負い目や引け目感じるし一人になる時間がほとんどないし!避けると探すし!ストーカーかよ気持ち悪ぃんだよ!!俺に構うな!!」

 

怒涛の明智の言葉に唖然とする蓮に構わず、明智は尚も言い募る。

 

「へらへらへらへら笑って済ませやがって!本音は隠して、それがお前の言う友達か!?………やり返せよ!!言われっぱなしのお前じゃないだろ!!」

「…じゃあ言わせてもらう!!」

 

売り言葉に買い言葉という訳でもないのだが、蓮は乗ることにした。明智が蓮に言いたいことがあったように、蓮にも明智に言いたいことがある。それこそ、まさに積年の思いが。

 

「毎回毎回どれだけ手を尽くしても死んでいくお前を見る俺の気持ちがわかるか!さっきだって気軽に銃向けられるなよ、心臓止まるかと思った!!」

「誰も好き好んで銃向けられてねぇよ!」

「校長も奥村社長も助けることはできる、だけど!お前だけは!助けることができない!親しいやつを救えないとわかった俺の絶望がお前にわかってたまるか!!」

「知ったこっちゃねぇよ、諦めろ!」

「お前は怪盗団のこと聞き出すために近付いたかもしれないけど、俺は普通に友達だと思ってるんだ!!諦められるか!!」

 

口論はやがて殴り合いに、ついにはペルソナまで召喚しての大喧嘩になった。蚊帳の外だった鳴上達が止めるのも聞かずヒートアップしていく喧嘩に、高校生組はお手上げ状態だった。

 

「ねえ、どうしよう!すごい怪我してるよ!」

「早く止めないと…でも2人のペルソナが強すぎて手が出せない!」

 

慌てふためく女性陣に、男性陣はずいぶんと落ち着いた様子で事の成り行きを見守った。もちろん危険だと判断したら全力で止めるつもりだが。

 

「男にはな、殴り合いでしか語れねぇこともあるんだよ…」

「>そっとしておこう」

「友達友達って、なんでそんなに俺にこだわるんだよ!友達ならいっぱいいるだろうが!」

「お前と!友達になりたいからだ!!他に友達がいるのと明智と友達になりたいのは関係ないだろ!というか俺は友達だと思ってるって言ってるだろ!!」

「……一応天城に回復準備してもらうかぁ」

「そうだな。見事なクロスカウンターだ」

 

結局そのまま大喧嘩はたっぷり1時間は続いて、最後は体力の限界を迎えた蓮が気絶して幕を閉じた。2人は天城のペルソナによって怪我を治療され、そのまま解散となった。

気絶した蓮は鳴上が背負い、明智の案内で家に帰された。蓮の祖父母が大騒ぎだったのは言うまでもない。どこで見つけたのかと聞かれたが、明智が適当な場所で倒れているのを見つけ、通りがかった鳴上が運んだことにした。

そして明智は鳴上と別れ、家路についた。

昨日と同じくらい、下手するとそれ以上にクタクタだったが、不思議と気分は晴れやかだった。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

目覚めたと連絡がきて、明智は蓮の家に向かった。蓮の祖母から飲み物を2人分もらって、勝手知ったる様子で部屋に着く。事実、たまに泊まったりしてるので勝手は知ってるのだが。

ノックをして、返事を待たずに入る。

蓮は眠たげにしながら、別段気にした様子もなく明智を迎え入れた。

 

「眠い…」

「もう昼だけど」

「わかってる…」

 

なんとものんびりとした雰囲気だ。数日前殴り合いの大喧嘩をしたとは思えない。が、今回の件はその殴り合いの時のことだ。単刀直入に聞こうと、明智は口を開く。

 

「先日の件だけど」

「うん」

「君がどうしてそんなに僕に執着しているのか、気になって」

「……友達だから」

「度が過ぎてる。『毎回』僕を助けようとしてるんだろう?」

「かれこれ百周以上は」

「ひゃく……」

 

口元がひくりと引き攣る。

つまるところ、こいつの心は一年を百回以上繰り返してる訳だ。パレスでもできそうだ。

 

「最初は、小さな違和感だった。デジャブって言うのか、聞くこと成すことなんだか既視感があって。だんだんこうするとどうなるとかの未来もわかるようになって、ついにははっきりと『前回』の記憶を思い出して。

それで気付いた、今の俺は記憶を取り戻す前に数え切れない程の高校2年生の一年間を経験してる。何千何万と繰り返される一年、その隙間に生じたバグが俺だ。さっき言った百周以上というのは、俺が記憶を取り戻してからカウントしたものだ。それ以上は数えるのも面倒になって数えてない」

「待て、思ったよりスケールのデカい話になってきた。……その記憶を取り戻す前の周回の記憶もあるのかい?」

「実感は薄いけど、あるな」

「うげぇ……」

 

嫌そうに顔を歪めた明智に蓮は苦笑いで返す。実際思い出した時は自分も同じような顔をしたのだからそれを指摘することもない。

 

「初めは戸惑ったけど、チャンスだと思ったんだ。お前と奥村社長と校長を助けられるって…生きて、償わせることができるって。奥村社長と校長は助けられたんだ、だけどお前…お前が……」

「無理だったと」

「おのれ明智……」

「逆恨みやめてくれない?」

 

ベッドに突っ伏して「おのれ明智…」と呪詛を吐き続ける蓮に、呆れたように明智はコップのお茶を飲む。要するに百回以上やって一度も明智を助けられなかったのだ。

自虐でもなんでもなく、一つの事実として自分に害を成した明智をそこまでして助けようとする蓮の心理がわからなかった。

……まあ、そこまでして助けようとしてくれることに何も感じない訳ではないが、それより先に不可解さがくるだけだ。

 

「で、なんでそこまで僕を助けようとするんだい?友達だからって、そこまで執着する?」

「…本当に、友達だからなんだ。明智が俺に近付いた目的は何であれ、俺は明智と遊んだら楽しいし、死んで悲しい。明智はどうか知らないけど、俺は友達だと思ってる。だから明智が死ぬ未来を回避したいと思うし、お前の犠牲無しでは俺の生きる未来がないのが腹が立つ。……ようするに、意地と反抗心だ」

 

「たぶんゲームで明智に対する俺の好感度があったら、MAXになってるぞ」と笑顔で語るが、目が笑ってない。文字通り年季が違う。

 

「そんなに僕、君になにかしたっけ?」

「特に何も。お前、猫被ってただろ。おかげでずっと苦手意識あったぞ」

「ひとの処世術にむかって失礼なやつだな」

「……けど、だんだん全部がそうじゃないって思って、確信が持てたのは獅童のパレスでだな。その時思ったんだ、素の明智と友達になりたかった、もっと話したかった、遊びたかった……他の皆とはこれからもできる、でも明智はもうできない。それは、悲しい。寂しい。惜しい」

 

目を細めて口を歪ませる蓮を見て、明智はぼんやり考えた。

なんだか……こうして聞くと、自分は案外悪くない最期を迎えたのではないかと思える。無念ではあったが、蓮がここまで惜しんでくれたなら、満足だ。……もっとも、蓮本人は満足していないようだが。

 

「明智」

「なに」

「お〜ま〜え〜さ〜ぁ」

「だからなんだよムカつくやつだな」

「頼むからいい加減救われてくれ」

「………そんなに情けない声出すくらい辛いなら諦めたら?」

「諦めようとした。けど、どうしても諦めきれなかった。なあ、お前言ってたよな、『誰かに望まれる為に』って。それ、俺じゃダメか」

「……は?」

 

聞いて、理解するのに少し時間がかかった。やっと絞り出した声は、さっきの蓮に勝るとも劣らないくらい情けない声だった。

それは、欲しくても手に入らなかったもので。それは、努力してきた理由で。

いきなりそれを差し出されて、及び腰にならないほうがおかしい。

 

「俺が、お前がいるのを望んでる。友達として、ライバルとして、隣に並び立つ存在として、お前がいることを望んでいる」

 

明智が本当に望まれたかった人じゃない。

明智が俺に求めるものと違うかもしれない。

でも、それでも。

蓮は明智に生きていてほしかった。それは、『望む』ということではないだろうか。

 

「……俺、人殺しだぞ」

「うん」

「何人もの人生をめちゃくちゃにした」

「そうだな」

「正真正銘の、悪人だ」

「そのとおりだ」

 

ポツポツと俯きながら話す明智に、蓮は短く肯定の言葉を返す。言い聞かせるように、少しでも蓮の心が伝わるように、祈りながら。

 

「お前は、真反対だ。人を助けて、救って、善人だ」

「いや?そうでもないさ。一歩間違えれば、俺も明智と同じような道を辿る。俺は、俺達はそういう存在だ」

 

初めて否定の言葉を返すと、バッと明智が俯いてた顔を上げる。その顔は、迷子の子供のようだった。

事実、自分達はそういう『対の駒』なのだ。違いは、出会った人達というだけで。

 

「だから、お互いに支えあうんだ。俺が間違ったことしそうになったら、ぶん殴って連れ戻してくれ。お前が間違ったことしそうになったら、蹴っ飛ばして連れ戻してやる」

「それが、お前の、望み?」

「明智が何に囚われることなくお前の望むことをするのが俺の望み。それが間違ったことならさっき言ったように無理矢理にでも連れ戻す」

 

だから安心して、明智は明智の道を行っていいのだ。隣で見てるから。

 

「………お前、人たらしって言われない?」

「誰が呼んだか、魔性の男なら言われたことある」

「言い得て妙だと思うよ」

 

明智は深く深く息を吐き出した。それはただの溜め息ではなく、緊張を解そうとしたものだった。

それに蓮は不敵に笑う。『駒』やら『ゲーム』やらなんてもう知らない。明智は頂いていく。自分は怪盗なのだから、なんらおかしいことはない。今ここで、明智と悪神を繋ぐ糸を断ち切る。

 

「で、どうだ?俺じゃ力不足?」

「顔と言葉が一致してないんだよ。わかった、わかったから。力不足じゃないから、一旦ほっといて」

「よし、一緒に『約束ノート』作ろう」

「話聞いてる?よしじゃないんだよ」

 

何かを言ってる明智は華麗に無視して、蓮はベッドから立ち上がり机の上からルーズリーフを取り出して明智の前でぴらぴらと振った。

 

「ネタ、考えよう」

「まずその約束ノートとやらを説明してもらえるかな」

「目標みたいなもんだ。本当はスタンプとか一言コメントとか付けるらしいけど、まあ今回はいいだろ。明文化した方が守らないとって意識も芽生えるし」

「女子かよ」

「女子から教えてもらったんだよ」

 

笑いながら「俺からな」とシャーペンを持ってサラサラと書く蓮。

 

『1.明智と一緒に獅童を改心させる

2.明智に嘘をつかない

3.何事も一生懸命やる

4.趣味を作る

5.明智を裏切らない』

 

「君って無趣味だったの?」

「以前はモルガナのブラッシングが趣味だった」

「ああ…彼今いないしね……」

「あの温もりと毛並みが恋しい……比喩じゃなく一日中一緒にいたからまだペットロスが抜けてない…」

「ペットって。というか、5個中3個僕のこと?」

「ああ、俺の場合明智との約束ノートだからな。嘘も裏切りもないって明確に書けば明智も安心するかなって。ほら、次明智。明智は普通に目標でいいからな、友達たくさん作るとか」

「馬鹿にしてる?」

「だって明智交友関係広く浅くだろ。政治家から小学生まで絆を結んだ俺を見習え」

「むしろ君の交友関係がおかしいっていう自覚持とうか」

 

「いーからいーから」とシャーペンを押し付けてきた蓮の勢いに押されルーズリーフに向き合ったが、特に書きたいこともない。そもそも書くことに同意してないのだが。

……まあ、いいか。さっさと済ませよう。

 

『1.獅童に復讐する

2.蓮を裏切らない』

 

「書いたよ」

「少なッ」

「うるさいな、今はこれくらいしか思いつかないよ」

「まあ、後で書き足してもいいんだ。俺に教えてくれた子もそうしてた。あ、でもこれは追加」

 

そう言って蓮は明智からシャーペンを奪うと、明智の約束ノートに勝手に書き足した。

 

『3.自分をもっと大事にする』

 

「勝手に書くなよ!」

「これは譲れない」

「僕は十分自分を大事にしてるけどね」

「いのちだいじに。心も大事に」

蓮はルーズリーフを大切に机の引き出しにしまうと、またベッドに腰掛けた。

……そういえば、まだ聞きたいことがあったのだった。

「君、仲間が嫌いになったの?」

「………」

 

無表情ながらに満足げにしていた蓮が、ピシリと固まる。聞かれたくなかった質問のようだ。しばらく固まって、やがて重々しく口を開いた。

 

「……嫌い、というより、虚しい」

 

まあ、そりゃそうだよな。いくら仲良くなっても、心を砕いても、絆を築いても、その周が終わればまた初めましてだ。それは、こいつには辛いだろうなぁと明智はぼんやり思う。

 

「あ、俺も明智に聞きたいことあった」

「え?」

「俺、お前から離れた方がいいか」

「はあ?」

 

藪から棒になんだと蓮を見る。

 

「俺はお前といると楽だし、楽しいからいるけど。お前が俺に負い目や引け目感じるのはお前の罪だ、どうすることもできない。けど、俺は明智に心の負担をかけたい訳じゃない。お前がやめろって言うならやめる」

 

蓮の申し出は願ったり叶ったりだ。引け目、負い目、劣等感…それを感じる回数も減るし、一人になりたい時だってある。そもそも一人で生きてきたから誰かと一緒に行動するということにまだ慣れてない。

………が、蓮といると楽なのは明智もだった。無理に取り繕う必要もないし、蓮と話すことは有意義だと感じる。

 

「『前回』と同じでいい」

「わかった」

 

そこら辺の適切な距離は、蓮が勝手に取ってくれるだろう。人との距離の取り方が上手いのだ。

 

「そういえば、なんでお前テレビの中の世界にいたんだ?」

「ああ、うちのテレビの前で足が縺れて、そのままテレビの中に落ちたんだ」

「馬鹿だろ」

「知恵の泉と呼ばれた俺を捕まえて何を」

「二つ名多すぎない?」




雨宮蓮
百回以上高校2年を繰り返している元怪盗団リーダー。
ステータスオールMAX、だが中学生の問題に悪戦苦闘してるのは高校の勉強は解いてた訳じゃなくて暗記してしまっていたから。高校2年に繰り返し見たものなら教科書の問題から買った本の内容まで諳んじれる。
幾千幾万と繰り返した中で生じたバグ。今の状態はゲームで例えるとプレイヤーが操作していた『主人公』がバグで勝手に動き出したようなもの。
自我が芽生える前のことも薄らボンヤリと覚えてる。全ルートの記憶あり。
自我が芽生える前も後も、唯一明智が救えなくてSAN値がピンチだったが今回の周で順調に回復中。
明智のひっつき虫だったのは目を離すと死ぬんじゃないかと怖かったから。殴りあって「こいつ早々に死なないだろ」と一応納得した。
繰り返し過ぎて少しダウナー気味だがやる時はやる。
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