桐生院先生の日常〜生徒たちが良い子すぎて困る 作:二足歩行型信号機
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高評価低評価構わず読んでいただきありがとうございます。
言い訳になりますがニワカが良いところなので復習、予習を含め頑張っていきたいです。
……周りの視線が気になってしまう。
仕方ないっちゃ仕方ない。
これを買ってしまった訳だし。
抗えない性と言いますか、ね?
特に前世ではかなりハマっていたのもあり寄り道した店のショーケースに飾られてるのを見た瞬間に一目惚れして衝動買い。
手持ちじゃ足りなくてコンビニにお金を引き出しに行ったよ。
「……ふふっ」
今もほくほくの笑顔を晒していることだろう。
その店はミリタリーショップで買ったものはモデルガン。
男心をくすぐるアイテム代表。
特に洋画や刑事ドラマなどを見ていたら自然と憧れが出てくると思う。
子供の頃は手が出せない代物でも大人になれば手を出すことができる。
自由だって掴み取れる。
今は自由……の筈。
「葵には言えないな」
絶対に怒られるし最悪捨てられる。タバコもそうだし隠すのは気が引けるけど……お金をドブに捨てたくない。
真面目ってのもあるが両親の性格を引き継いでいるってとこが大きいからね。
それに今世も前世と同じく両親は厳しかったからなぁ。常に余裕を持っておけと口酸っぱく言われたよ。
ははっ! こちとら訳が分からない不思議現象に巻き込まれたんだから余裕なんてある訳ないだろ!
それは別にいいとして━━
桐生院家の男として空手だけは否が応でもやらせると言われた時は絶望した。
興味が無かったし子供相手に容赦ねぇもん。しかも有段者になって解放されたんだ。
……されてないな。
葵に護身用として教えろと言われたっけか。
教えこんでやっとだったはず。
アンタ師範代だろ!?
と反論したらコテンパンにやられた思い出よ。
後にボクシングをやってね。
空手とボクシングのおかげか運動神経は悪くなかったから友人とパルクールやってさ。
見ていた葵が興味を持って……いつの間にか俺や友人よりも上手くなって、な。
空手の実力もみるみる伸ばしていった。
葵がひったくり犯を捕まえて感謝状を貰ったっけか。賞賛する両親と反面、俺は怒ったんだよな。
何も無かったかもしれないけど相手はナイフを持っていたんだ。そういう奴は追い詰められると何をするか分からない。
なにより葵に何かあったら俺はそのひったくり犯を絶対に許せなくなる。
それに……結構痛いからね。
ああ、死ぬほど痛かったよ。もう二度と経験したくない痛みだった。
話はモデルガンに戻そう。これまた凄くてね。精巧に作られていて本物と見間違えるほどにクオリティが高いんだ。
……調子に乗った勢いでショルダーホルスターを買って身につけていますはい。上着に隠れているけどバレたら通報されてしょっぴかれる。
大の大人がモデルガンにはしゃいでましたーなんて口が裂けても言えない。さっさと家に帰って隠さなきゃな。
本当は飾りたいけど……さー。
そういえば……。
あの一件でサイレンススズカからは避けられるようになった。すれ違えば顔を烈火のごとく真っ赤にさせ大逃げに恥じない速度で逃げていく。授業中に至ってはずっと顔を俯かせていて指名することが躊躇われるレベルだよ。
スペシャルウィークは相変わらずだったね。会う度に抱きついてくる。……他にも膝の上に座ってきたり、とか。
俺を陥れるためなのか生徒からのスキンシップが増えてきた。スペシャルウィークみたいにくっついてきたり、撫でてーと頭を出してきたり、挙句にはしっぽの手入れを頼んできたり。
トレーナーもよく話しかけてくるようになったね。試すかのようにウマ娘の事を聞きにくる。最後には先生お勧めのウマ娘は誰ですか? ……ってね。
その時に限って近くにサイレンススズカが居るんだよ。……あはははは…。
……勘弁してくれ。
止める? 断る? できるわけがない。
生殺与奪の権はトレセン学園に握られているわけだし、ね。
いつでも俺を消すことができるんだ。
理事長のひとことで。
異動するまではなんとか消されないように細心の注意をはかろう。
「…………はぁ」
ショルダーホルスターとモデルガン……。
勢いに任せて身につけて後悔している。
急に恥ずかしくなってきた。
それに━━
「お腹減った」
飢えた叫びを上げる。
お腹を擦りながら何かないかと首を左右に動かした。
お、ラーメン屋。
「……ラーメン、か」
何時ぶりだろう。
よし、お腹を満たすには丁度いい。
ん、食べて帰るだけだし。
ついでにモデルガンもしまっちゃおう。
「……大丈夫でしょ」
と、思っている時期が俺にもありました。
隊長とラーメンを食べ終えた時、あの人はやってきたんだ。
ラーメンは相変わらず美味しかったよ。
「貴方はあの時の」
「警備の……え? 君はファインモーション?」
「桐生院先生?」
先生、だった。
最近赴任してきた教師。
「先生だったんですね」
「あはは……見えませんよね」
トレセンで見るスーツやジャージじゃなくてカジュアルな服装。
モデルさんと見間違うぐらい似合っていた。
「そ、そんな! とんでもない!」
苦笑いをする先生にワタワタと慌てる隊長。
有名なトレーナーの一族である桐生院家現当主の長男。
なのに教師の道を行った変わり者。
その桐生院家は、一度調べたことがあるけど……いい噂は聞かない。
裏を含めたらキリがないかも。
誰にも分け目なくニコニコしていて胡散臭……初めはそうだったなー。
どうせ先生も……って、
そう思っていた。
あれは凄かったなぁ。
だって練習場でウマ娘を膝の上に乗せ抱きしめて愛を説いていたんだから。
偽りない本音を……。
大胆不敵に正々堂々と……。
ただウマ娘のことが大好きな先生。
それだけは十二分に分かった。
隊長さんが言ってた人って先生のことだったんだ。……タバコ、吸うんだね。
すれ違ったとき隊長さんと同じ匂いがするから気にはなってた。
「あの……」
「どうしました?」
…隊長さんが珍しく落ち着かない様子。
あれぇ? ……もしかして……?
「良ければここでお礼の方をさせて頂きたいのですが、ご一緒にどうでしょうか?」
わーお、だいたーん。
「え、ああ。…タバコですしお礼は嬉しいのですが……」
「店主。この方にヤサイマシマシ、ニンニクヌキ、大豚ディカプルをお願いします」
サラッと自分と同じ注文しちゃって。
いつも冷静沈着だから新鮮だなー。
「はいよ!」
店主の気合いの入った声。
「…えっ」
「こちらへどうぞ」
先生の手を取り隣に座らせた。
……あれぇ? 私の有無は?
隊長は私のSPなんだよね……?
この構図じゃ先生のSPにしか見えないんだけど……。
今日は休みだしいっか。
「あはは……ありがとうございます。ごちそうになりますね。ふぅ……!」
「……えっ?」
思わず声を漏らす。
先生が上着を脱ごうと袖を引っ張る。
その時……僅かに見えた。
……見えちゃった。
脇下のショルダーホルスターが。
隊長たちSPの皆が装備している。
……拳銃も見えた。
「……どうしたの?」
脱ぐのを止めて羽織り直した先生は無表情でジーッと私を見つめる。
「な、なんでもないよ」
一瞬たじろぐもなんとか平静を装う。
けど……バレてる。
見てしまったことを……。
隊長、も気づいてるよね。
さっきの態度はどこに行ったのか先生を警戒している。
いつでも抜けるよう懐に手を━━
先生の澄んだ瞳が映る。
真っ直ぐで……私を射抜かんとする、その瞳。
とても冷たい……。
今の先生には学校で見る温かさがまるでなかった。
絶対零度……それぐらいに……。
これが…先生の━━
騒がしいはずなのにこの場だけは沈黙が支配していた。ちょっとだけ肌寒さを感じる。
「ヤサイマシマシ、ニンニクヌキ、大豚ディカプルお待ち」
「……え?」
その沈黙は店主の声に壊される。
先生の目の前には……うん、煮豚のお城が築き上げられていた。
「どうぞ、食べてください」
「え、あ……えっ?」
いつもの先生に戻る。
同時に疲れがどっと出ていった。
はぁ……なんか、疲れた。
何もなくて良かったよ。
……ただの教師が持つことはありえない。
「大丈夫です。私も食べましたから」
先生……貴方は……。
「そうなの!? …そうなんですね。…そ、それじゃ……いただきます」
……何者、なの?
「うぷっ……」
口を押さえる。
な、なんとか完食できた。
……お腹が張り裂けそうだ。
歩く度に胃の中で肉と野菜が荒れ狂う。
ディカプルって聞いて嫌な予感はしていたけどあれはやり過ぎだろ。
本当、なにあれ?
肉がピラミッドみたいに積み上がっていたよ?
その下には大量の野菜ときた。
そのまた下にオマケみたいな麺が……。
ラーメンというより肉と野菜を食べていた。そう錯覚させるほどに凄かった。
あ、うん。あれはラーメンじゃない。
ラーメンの名を騙った肉料理だ。
しかもうっかり上着を脱ぎかけてモデルガンがバレるところだった。いや……ファインモーションの反応を見るにバレてるよなぁ。
えっ? って言ってたし。
思わず反応しちゃったしさ。どういう顔をすればいいか分からなかったよ。
はぁ……どうしようか。
チラッと隣を歩くファインモーションを見る。その少し先に隊長さんが歩いていた。
ちょこちょこ後方確認をしている。
そりゃ当たり前、か。SP……セキュリティポリス、だし。
まさかあの人がファインモーションのSPだなんて思っても見なかった。
警備と聞いていたけどSPとは思わないよなぁ。
ファインモーション……。先輩教師から聞いてたけどアイルランドからの留学生で名家のお嬢様。殿下と呼ばれることもあり、隊長さんも殿下と呼んでいたね。
殿下だよ? 皇族の敬称だよ?
王族、との噂もあるんだとか。
ここまでくると本物のお嬢様。
ん? アイルランドの貴族って……でもアイルランド自由国が……今は大統領制国家……あー、後で調べてみよう。
「……先生」
ファインモーションが立ち止まる。
少し遅れて隊長さんも足を止めた。
「どうしたの?」
悩んでいる。……聞きたいけど聞きにくいような、そんな顔をしていた。
「懐の…あの…えっと、見えたんだけど…」
「……殿下」
あー……モデルガンの、こと…だよなぁ。
それは聞きにくいわけだよ。
休みの日にモデルガンを持って街中を歩き回る教師なんてきっとこの先俺しかいないだろう。
……失望されたよなぁ。
隊長さんなんて心配そうに━━
こんな頭の
あはは……サイレンススズカの件に比べたらまだマシかもしれない、か?
そんな訳がない。
ファインモーションは言いふらすような子じゃないだろう。
お願いしてみるか。
「そっか」
「……うん」
「秘密にしてくれないかな」
「……先生」
言いたいことは分かるよ。
こんなアホみたいないことを保身のために口止めなんて……教師のする事じゃない。
何をやってるんだろうな。
それでも選択の余地がないんだよなぁ。
「お願い」
「……分りました」
「ありがとう。……隊長さんご馳走してくれてありがとうございます。ファインモーション明日学校だから寝坊しないようにね」
「……はい」
……なんとかなったぁ。
はぁ居心地が……自業自得だけどさ。
恥ずかしさでいたたまれなくなり二人に頭を下げて立ち去った。
コンビニのトイレで外さないとね。
葵は帰ってるよな。……あ、晩御飯……葵の分だけ作る。のもなんだ…。
少しだけ食べよっか。
「殿下」
「大丈夫。……隊長」
「なんでございましょう」
「桐生院先生の素性を徹底的に調べ上げてください。……それと…」
「分かってますよ。……私にお任せを」
「……ありがとう」
「もう少しで日没になります。寮にお戻りになりましょう殿下」
「はい、戻りましょう」
誰にしましょうか。あ、こうしよう(白目)
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