桐生院先生の日常〜生徒たちが良い子すぎて困る   作:メジロマッチョイーン

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大変お待たせ致しました。
メジロマックイーンから急遽変更しております。

後ほど修復していきますのでご了承ください。
暑くて脳が熔けていきますね。もう自分が何書いてるか分からなくなります。だから少しでも涼もうと思ったらこうなりました。
夏といえばホラー……。

誤字、脱字修正は後日して


邂逅

「……終わったぁ」

 

 机には積まれた資料。飲みかけの珈琲。

 

 ペンを落とし腕を伸ばせばポキポキと軽い音が響いた。

 

 やっぱり教師は大変だ。

 受け持つ教科によって多少は変わると思うけど。

 

 クラスを受け持ってないだけマシか。

 こんな若造がクラスを任せられるわけもなく……。

 

 といっても中高一貫校なので教科担任でも学年クラスごとに授業の進行度を把握しないといけない。

 

 レースに目が行きがちのトレセン学園だが偏差値も高い。赤点や補習にならないようしっかり生徒たちに教えていかないと。

 

 ……と、言っても覚えることが多過ぎる。

 

 四苦八苦していた俺を見兼ねてアドバイスしてくれる先輩教師もいてなんとか終わらせることができた。

 

 今度何かご馳走させて頂こう。

 

「ふわぁ……夜だ」

 

 職員室の窓から月が見える。

 俺以外の教師はもう居ない。

 

 ウマ娘やトレーナーと違い寮があるわけじゃないし車で数時間かけて出勤する強者もいる。

 

 歩いて数分の俺には無縁なんだけどさ。

 睡魔もピークに達しそうだしパパっと帰る準備を━━

 

「ん?」

 

 コーヒーを飲み干し資料を纏めていると上の方から音が聞こえた。

 

 地面をカツンカツンと叩く音。

 足音? ……誰か居るの? 

 

 消灯時間はもう過ぎてる。

 夜間外出の許可があっても厳しい時間。

 

 どこの教室にも備え付けられている時計を見た。

 午前2時過ぎ。

 ……流石に寝ているだろうね。

 

「……はは」

 

 まさか幽霊……とか、ないよな? 

 ……怖くはないけど気味が悪い。

 

 どちらかと言えば超常現象の類は好き。

 好きだけど…好きだけどそれは傍観をしている時に限る。

 

 渦中に立たされたり巻き込まれるのは嫌だ。よく考えたら丑三つ時、ね。

 

 偶然にしては出来過ぎた現象に心臓の鼓動が早くなる。

 

「ッ!」

 

 ……後ろから扉が開く音。背中に這い寄る視線。加速する鼓動に引き攣る顔。

 

 全身に鳥肌が走り額には冷や汗が流れる。……だ、大丈夫。深呼吸、深呼吸。

 

「だ、誰かな?」

 

 忘れ物を取りに来た教師かなーと塵レベルの望みを携えながら振り返った。

 

「桐生院先生」

 

 良かった……生徒だ。

 ほっとしつつ生徒を見つめる。

 

「……君は━━」

 

 黒い長髪で片目の隠れた少女。

 とても不思議な雰囲気を纏っている。

 

「マンハッタンカフェ……だったかな?」

 

「…………覚えていてくれたんですね」

 

「生徒の名前は覚えてるよ」

 

 教師内ではよく耳にする名前だし。

 ……ゴールドシップとアグネスタキオン……ナリタタイシンとか。

 

 アグネスタキオンとはなんだかんだ、ね。少し前の事だけど先輩教師に頼まれてアグネスタキオンの様子を見に行ったら倒れていて……。

 

 何事かと慌てて駆け寄ったらお腹の音。昼に食べる予定だった弁当を食べさせたらお気に召したみたいでさ。

 

 それからちょくちょくね。

 他の教師は……なんていうかアグネスタキオンに関わりたくないみたいでさ。

 

 授業や選抜レースを頻繁にサボっていて除籍が危ぶまれたことがあったんだっけ? なんとかしよう頑張っても無理だったとか。

 

 なんとか除籍は免れているんだと。

 

 だからといって教師が生徒を見限るのは間違っている。……俺だけでも支えていこう。……異動するまでの間だけど、ね。

 

 選抜レースは赴任してからまだみたことないから分からないけど授業には参加してくれているから大丈夫だろうと思う。

 

「先生?」

 

「あ、ごめん」

 

 しかしこんな時間に職員室に来るなんて……まさか不良!? な、わけないか。

 

 容姿だけ見ればオカルトマニアの方がしっくりくる。夜の校舎に肝試しをしに来たと言われたら方がまだ信じられる。

 

「こんな時間にどうしたの? 門限はとっくに過ぎてるよ」

 

「……ちょっと気分転換に」

 

「そうなんだ」

 

 気分転換で夜の校舎に来られるのも困るんだけどなぁ。

 

 ここはビシッと注意を……と、思ったんだけどさ。……あのー……。

 

「…………」

 

「……先生どうしました?」

 

 いやー、あのー……。

 

「マンハッタンカフェ」

 

「……はい」

 

「もう一人いたんだね」

 

 マンハッタンカフェの後ろから少女が見えた。……ウマ娘、みたいだけど。

 

「…………え? ……()()()んです、か?」

 

「?」

 

 口元に手を当て驚くマンハッタンカフェ。見えるって……後ろの少女のこと、だよね? 

 

()()()けど……それがどうしたんだい?」

 

「……少し待ってください」

 

「あ、うん」

 

 マンハッタンカフェは振り返ると後ろの少女を連れてくる。俺とマンハッタンカフェで少女を挟む形になった。

 

 白い肌で長い髪。顔は隠れて見えないけど美人だと思う。目隠れさんが美人なのは定番だからね。

 

 なにより特徴的な耳と尻尾がウマ娘と物語っていた。顔を見ないことには……これじゃ確認のしようがない。

 

「…………見えますか?」

 

「もちろん。うーん……ちょっとごめんね」

 

「……ッ…!」

 

「先生……!?」

 

 少女の前髪に上げて顔を確認する。

 うーん……やっぱり見たことない。

 

 美人というよりは可愛いよりだった。

 それよりも……なんていうか()()()()()()()()()()()()()()()()だね。

 

 これで姉妹と言われたら納得する。

 

「……この子は生徒じゃないよね?」

 

「あ、は……はい。お友達は生徒ではありません」

 

 少女の髪を下ろしてマンハッタンカフェに顔を向ける。まだ驚いているみたいでぎこちない。

 

 んー……この子どうしよう。

 もう夜中だしご家族の方も心配しているはず…………うーん…。

 

 

 

 私はとても動揺している。

 

「君はこの辺りに住んでいるのかな?」

 

「……」

 

 先生はジッとお友達を見つめていてお友達は恥ずかしそうに首を上下に振っている。

 

 常に一緒。だからお友達が答えは間違っていない。間違ってはいないんですけど……。

 

「そっか。それじゃあ送るよ」

 

「ッ!」

 

「夜遅いし一人だと危ないだろうし」

 

 それは……お友達に視線を送られますが助けを求められても困ります。

 

 ……桐生院先生。トレセン学園で知らない人はいない。もちろんいい意味で。

 

 ウマ娘の誰かにどの先生が好みかと問えば開口一番に先生の名が上がることでしょう。

 

 あのタキオンさんも先生の前では大人しい。……最近は顔を合わせれば先生に差し入れてもらったお弁当の内容を自慢げに語ってますし。

 

 普通にムカつきますが……羨ましいとも思います。あれだけ尻尾を興奮気味に振って……どれだけ美味しかったのか気になってしまう。

 

 ……先生の手料理だけで大変なことになりそうな方もいそうですけど。

 

 女性の嫉妬は怖いですからね。

 闇夜には気をつけた方がいいですよタキオンさん。

 

 あ、流石のお友達も限界のようですね。

 

「先生」

 

「ん?」

 

「お友達には今日は寮に泊まって貰います」

 

 ……今更ですが先生はお友達をただのウマ娘だと思っている。視える人みたいですが自覚がない。

 

 ……面白い先生。

 お友達があんなに取り乱すなんて━━

 

「だ、大丈夫? バレたら大変だと思うんだけど……」

 

 やっぱり……。

 本当に私やお友達の身を案じている。

 

 それを感じ取ったお友達。

 控えめながらも尻尾を左右に大きく振っている。

 

 あー……お友達(族ならざぬ者)に優しくしてしまうと懐かれて(憑かれて)しまいますよ? 

 

「……なんとかしてみます。先生もお友達の事はご内密にお願いします」

 

「うん、分かった。この事は僕とマンハッタンカフェと……君だけの秘密ね」

 

 そんな事は知らずに先生は無邪気な笑みを私とお友達に向けた。

 

「…………」

 

 お友達は私の後ろへと隠れる。

 これは……。

 

「……あっ…怖い顔してたかな」

 

 しょんぼりと項垂れる。

 照れてるだけですよ……とは言いません。

 

 コロコロと表情が変わる先生。

 タキオンさんや他のウマ娘がああなってしまうのにも納得できます。

 

 ……ええ、とっても。

 

「ごめん。お手洗いに行ってくるから少しだけ待っててくれないかな?」

 

「はい」

 

 顔だけ出しコクリと頷くお友達。

 

「ありがとう」

 

 先生はゆっくりと職員室から出ていく。

 視界から先生が消えるとホッと息を吐く。

 

「面白い人ですね」

 

「…………」

 

「ええ……()()、ですね」

 

 先生の机に……マグカップ。底に見えるコーヒーの痕。

 ……今度ご馳走しましょうか。

 

 

 …昨日……今日は色々とあったなぁ。

 二人を美浦寮まで送り届けたのまでは良かったんだけどね。

 

 寮長であるヒシアマゾンに怒られてしまった。

 ……仕方ないっちゃ仕方ない。

 

 咄嗟に口から出てしまったんだ。

 僕が深夜まで連れ出してしまったって……。

 

 マンハッタンカフェの目が点になってた。

 

 だってヒシアマゾンが凄い顔してマンハッタンカフェを問い詰めていたし……あの子も怯えていたからね。

 

 そのせいで大変なことになったんだけど。

 

 時が止まったかと思うぐらいの沈黙が続く中、急にヒシアマゾンが顔を真っ赤にすると俺の胸ぐら掴んで……。

 

 就寝中の生徒達を起こしちゃって……軽いお祭り騒ぎ。……窓から手を振る生徒もいて思わず振り返したらヒシアマゾンに頭突きをかまされた。

 

 トラブルが収拾して自宅に帰った頃には朝日が登っていたよ。

 

 一徹……前世に比べればマシ、か。

 

 それよりもマンハッタンカフェとあの子は大丈夫だっ━━

 

「ふわぁ……んあっ!?」

 

 廊下で欠伸をしていると背中に小さな衝撃。

 慌てて振り返ると昨日……じゃなくて今日出会った少女がいた。

 

 トレセン学園の制服を着た。

 

「あれ? 君は……その制服」

 

「………………」

 

 悪戯が成功した子供のように口元を歪ませると離れ駆け出していく。

 

「あ……待って!」

 

「先生おはようございます!」

 

 慌てて追いかけるが生徒の声で足を止める。制服を着てるってことはここの生徒だったのかぁ。

 

 マンハッタンカフェは生徒じゃないと言っていたけど。

 

 ……まあいっか。

 

「おはよう。少し良いかな?」

 

「はい!」

 

「さっき走っていった生徒のことなんだけど」

 

「そんな生徒いましたっけ?」

 

 見えなかった? ……でも目の前で走っていたんだけど。

 

「ついさっき一緒に居たんだけど」

 

「……先生」

 

「うん?」

 

「遠目で見ていたんですけど……()()()()()()()()()()()

 

「……え?」

 

「せ、先生……?」

 

 ……え? 

 いや……え? 

 

 あー……おーけーおーけー。

 疲れが溜まっているみたいだね。

 

 ……今日は早退しよう。




あータイトルが思いつかなかった為、後で変えますね。

メジロマックイーン修復中の間に。思いついた子をアンケに置いてます。

  • アグネスタキオン
  • マヤノトップガン
  • シンボリルドルフ
  • エアグルーヴ

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