新年初の女王様になります。
続きが気になっている方、がいるといいなぁ。
近々階層守護者達を紹介させようと思っております。
それでは、本編をお楽しみ下さい。
「そ、それは・・・人を辞めて、魔物になれって事?」
私の問い掛けに驚きと不安が混じりあった様な顔を向けるアルシェ。まぁ、いきなりそんな事言われて即答できる訳ないわよね。
「簡単に言うならそうじゃ。先に言うておくが、拒んだからと言って妾が向ける愛は変わらぬ、そこは安心せい」
不安が見えたので女帝のオーラを出しながら、優しく頭を撫でる。
「イミーナよ、そなたらどうじゃ?」
「うぅ〜ん・・・流石に即決は、難しいわねぇ」
「先程申した通り拒んだからとて何もせん、ただの提案じゃ。妾もそなたらも利益がある。お前達は今以上、即ち人を越えた力を得る事が出来る。妾は戦力強化、そして愛おしい子らの成長を見られる。まぁ、人のままを選んでも此処で鍛錬を積めば強くなれるじゃろうて」
クスクス、と口を手で隠し笑う私。そう、どっちの道を選んだとしても此処で鍛錬を積めばこの世界で上位の力を持つ人間にはなれるはずだ。そういえば、この世界で上位の人間の情報が足りないわね。
「今すぐ答えを出せとは言わぬ。それに今は辞めておき、別の機会に申すでも構わぬしな」
「・・・うん、分かりました」
こうして、家族団欒のお風呂タイムが終了した。
「お母さんっ、こっちこっち!」
「こっちに美味しいお菓子屋さんがあるんだよっ!」
「分かった分かった、菓子屋も妾も逃げはせぬ。慌てる必要は無いぞ」
私は元気な2人に手を引かれながらお勧めのお菓子屋を目指している。もちろんアルシェもいる。私達は今この子達が育った国、【バハルス帝国】に来ている。以前はこの子達の家周辺や路地裏しか見てなかったから、こうしてちゃんと街を見る事が出来なかったから新鮮だ。
何故私がこの国に来ているのか?答えは単純なもので、フォーサイトはこの国では名の知れたワーカーだ、そのワーカーが姿を消したとなれば大小問わずいつか調査を行なう筈だ。恐らくアルシェ達が森の方角へ向かったのを見た者もいる、となると【メガコロニー】が見つかるのも時間の問題になり最悪大きな戦闘に発展しかねない。そうさせないために定期的にフォーサイトのメンバーの姿を見せておく必要があった・・・という訳で私はこの子達を連れ【バハルス帝国】に来ている、という事だ。
もちろん、私の護衛をする子も連れてきているが、私達を気遣って距離を取って対応してくれている。相変わらず良い子達だ。
何て考え事を終えて現実に意識を戻してみると、周りのひそひそ話も聞こえるようになった。
―おい、見ろよあの人。めっちゃ美人じゃね?―
―綺麗過ぎて今まで美人と思ってた人が普通に思えてきたー
―美しいわぁ、何処の貴族様かしら?―
―きっと高位の貴族に違いないわよ―
―いやいや、そんな大貴族様だったら自分で来ないでしょ―
―ってか、3人の子持ち!?あの美しさで!?―
―あれ、良く見たらフォーサイトの
など、様々な話声が・・・正直・・・。
「(すっっっっごく照れる恥ずかしい!!!)」
―そりゃ自分の分身とも言えるキャラだもん、可能な限り綺麗に・可愛く・美しく作りたいじゃん!まぁ、綺麗なキャラクター制作なんて私より課金しまくっている人の方がクオリティ高いんだけどねぇ―
「お母さん、どうしたの?」
「具合悪い?走りすぎちゃったかな」
「ん・・・?あぁ、何でもないぞ。ウレイリカ、クーデリカ。さぁ、案内を続けてくれ」
優しく語りかけると双子は笑顔になり「うんっ」と元気良く返事を返してきた。
―うんうん、子供はこれくらい元気じゃなきゃね―
と、愛しの娘達の笑顔を見ながら思っていると前方から興奮寄りの声が聞こえてきた。
「せ、先輩っ!」
「ん・・・誰じゃ、あの小僧らは」
そこに居たのは片方の目を眼帯で覆っていて、パッと見暗い雰囲気を宿した少年だ。その少年は視線を曲げることなくこちらへ向けている。もう1人はおっとりとした雰囲気をした少女だ、その子は少年の隣に立っていた。先輩って言ってたけど・・・あ、もしかして。
「ジエット、ネメル!」
―ですよねぇ―
「母様、あの子達は私が学院にいた時の後輩。良い子達なの」
私の疑問に対して、アルシェが答えてくれた。へぇ、学院時代の後輩かぁ・・・懐かしいなぁ、学校。まぁ碌な思い出は無いんだけどねぇ、家やお金や身体目当てばっかだったし。少し虚無っていると立っていた2人が私達の前に来ていた。
「先輩、お久しぶりです。元気そうで良かったです」
「先輩の家が売却済みって看板が立ってて驚きましたよっ」
「ごめんね、2人共。色々あって」
そう言いながら私をちらっと見るアルシェ。そして・・・表には出ないようにしている様だが、私を警戒しているジエットと呼ばれる少年。
―あれ、初対面の筈よね。なんでこんなに警戒されてるのかしら・・・なんか視線が私に向けられてるというか、私の周囲に向けられている様な気が・・・って、まさか!―
私はスキルを使用し、少年を調べさせてもらった。すると眼帯の下には『魔眼』を宿していた。恐らく全てではないにしろ、私が人間ではない事はバレていると考えた方が良い。この世界のスキルや魔眼は油断できないわね。
「なるほど、アルシェの後輩であったか。道端で話すのもなんじゃ、何処か店にでも入るとしよう」
「「えぇ~、お菓子屋さんは~」」
む~っと頬を膨らませてせがむウレイリカ、クーデリカ。流石双子、息ぴったりね。
「忘れておらぬよ。アルシェ、すまぬがその子らと先に店に入っていてくれぬか?妾は菓子を
私はアルシェに金貨を数枚渡し、双子と一緒にお菓子屋へ向かった。
「ということだから、先に落ち着ける場所へ行こっか・・・って、どうかした?」
「き、金貨を軽く手渡した・・・」
「先輩・・・ほんと。あの人は一体・・・」
「は、話すから・・・でも、これだけは言える。悪い人ではないよ」
こうして3人はアルシェが良く利用していた『歌う林檎亭』へ向かうことにした。
アルシェ達と別れ、お菓子屋に着いた時に私はある事を思い出した。
「あ。アルシェが向かった店、分からぬではないか」
分からない、というのは実は嘘であり本音である。あの子が身に付けているネックレスは完全な場所の把握はできないが大まかな場所なら分かる代物だ。故に近づいたら後は自力で探す必要が出てくる。それ自体は私にとっては簡単な事だが、あの少年の眼もある。この世界では簡単にできない芸当の可能性がある故、そういった行動は街中等ではなるべく控えるべきだ。と、いう訳で私の護衛役の子にお願いする事にした。手を軽くパンっ、と叩き
「【リリミ】、【ララミ】」
私が呼ぶと、私の影から2つの人物が飛び出してきた。いきなりの登場に驚いたウレイリカとクーデリカはビクっとし私の後ろへ隠れる。
「大丈夫じゃ、2人とも。この子らは妾の護衛をしている子じゃ」
私の影から出てきた子達は、アルシェより少し背が大きく、紫と黒を基調としたドレスを身に纏っている。正式名称は【ダイアフルドール リリミ】【ダイアフルドール ララミ】、男女の双子の
「お呼びかしら、お母様」
「お呼びかな、お母さん」
「うむ。そなたら、アルシェの向かった店を探し発見次第妾に報告、その後アルシェと合流するのじゃ」
「た、多分【歌う林檎亭】っていうお店かも!」
「ありがとう、お嬢様。えぇ、任せて」
「ありがとう、お嬢。うん、任せて」
2人は軽くお辞儀をしそのお店を探しに向かった。
「さてと、では菓子を買うとするか」
「---という訳で、私達はあの人・・・母様の養子になったの」
アルシェはメガコロニーやそれ等に関することを省き、話が繋がるように2人に話した。
『森内のモンスターの討伐依頼中に両親が暗殺され、戻ったらあの惨劇。借金が自分に移行し、自分や妹達以外の家や高価な家具には思い入れは無い為売却。借金が無くなったのは良いが行く宛てが無かった時にあの人と出会い今に至る』、と
話を聞いたネメルはハンカチで目元を拭き、ジエットは理解はしたが完全には納得していないといった表情を浮かべていた。
「納得、いかない?ジエット」
「・・・あんな人、いたら帝国で知らない人なんて居ないはずですから。素性が知れない、と言いますか」
「ジエットから見たらそうかもしれない。でも私達は無理やり養子になったわけじゃなく、自分の意思で決めたって事は知っていて欲しい」
「まぁ、先輩がそう言うなら」
「お嬢様見~つけた」
「お嬢見~つけた」
丁度話が落ち着いた時に、不意に私達以外の声が2つ聞こえた。驚きながら振り向くと紫と黒のドレスの様な服を着た人形の様な子達が立っていた。誰なのか聞こうとしたが、首から下げていたネックレスの形が【メガコロニー】のものだった為、母様の子供なのだろう。
「もしかして、母様の?」
「ピンポンピンポン!」
「大正解〜。お母さんから、店の場所を探して報告をお願いされた」
そう言うと、男の子?は耳に手を当てる仕草をしていた。恐らく母様に連絡をしているのだろう。女の子は自然な動きで私の左側の席に腰を下ろし、連絡を終えたであろう子は私の右側に腰を下ろした。
「私は【ダイアフルドール リリミ】、そっちは【ダイアフルドール ララミ】。よろしくね、お嬢様」
「よろしくね、お嬢」
「よろしくね、2人とも」
アルシェ達はリリミとララミを加え、世間話をし始めた。暫くするとフィアーと双子が『歌う林檎亭』に到着した。
「さて、この店にいると思うのだが」
「あ母さん、あっちあっち!」
「お姉様~」
私は双子に引っ張られアルシェのいる席にたどり着いた。
「待たせてすまぬな、目移りしてしもうて中々決められなかったようでな」
私は微笑みながら双子の頭を撫でる。撫でられた2人は気持ち良さそうに眼を細め「えへへ」と笑っていた。私達が来るのを配慮し、大人数向けの席を用意してくれたおかげでリリミとララミが居ても全然問題なかった・・・のだが、真面目なこの子達は『じゃあ私達は影に入って護衛の続きをするわね』『うん、続きをしなきゃ』と言って私の影に戻ってしまった。その時双子以外の3人はまぁ、驚いていた。
アルシェに話を聞くと、取り敢えず話は落ち着いたらしい。そこで私はこの子達と親睦を深めたく思い、食事をしながら話をする事にした。もちろん私の奢りで。
初めは遠慮していたが、アルシェと双子の口添えもあり了承してくれて親睦会を始めることになった。
世間話や質問の受け答えをしていると、店内に夕日が差し込んできた。思った以上に長話をしてしまったようだ。気付けば静かだった店内が賑わい始めていた。仕事終わりの者達がやってきたようだ、するといかにもガラの悪そうなグループが店内に入ってきた。
「あぁ?なんだよ満席じゃねぇか」
「マジかよぉ、ここで5軒目だぜ」
「・・・お前ら、終わってんならさっさとどけろ。痛い思いしたくねぇだろ」
グループの1人はほぼ食事を終えかけていた私達のテーブルに目をつけ、威圧してきた・・・何故か首からかけているプレートを見せつけながら。とりあえず私は無視して子供達にデザートを勧める事にした。
「お前達、食後のデザートは決めたか?遠慮する事はないぞ」
そう言うと後輩2人は『何言ってんの!?』と言いたそうな顔をし、アルシェは私にではなく男に対して同じ顔をしており、双子は目を輝かせて私を見上げる。無視された男は怒ったのか、声を荒げる。
「てめぇ、クソ
「・・・貴様、先程からギャーギャー喚きおって。大人しく待つ事も出来ぬのか・・・いや、実力差も測れぬ愚か者じゃったなぁ、出来なくて当然か。よくそのランクになれたものだ」
私は敢えて煽る様に言い返してやり、取り出した扇子で口元を隠しクスクス笑った。男共が集まってまた下賎な言葉が来ると思ったら、意外な人物から声が上がった。
「お母さんはそんなのじゃないよ!」
「とっても綺麗で優しいお母さんだよ!」
双子達が自分達より強く大きい男共に言い返していた・・・ちょっと感動した。
「口答えしてんじゃねぇぞクソガキぃ!」
男は苛立ちがブーストされたのか、腕を大きく振りかぶり双子のどちらかへぶつける体勢に入っていた。双子は互いに抱き合い目を瞑り、後輩2人は顔を逸らし、アルシェは双子を守ろうと席から立ち上がった・・・しかし、男の拳が双子に届くことは無かった。目を瞑り、逸らしていた子達が男を見ると驚きの光景が広がっていた。
「[怒り]は確かに、戦士の力の源となる。じゃが、囚われすぎれば見失う・・・妾に対する戯言であれば手を出さないでおこうと思うたが、妾の愛おしい子供に対して暴言、暴力・・・母として、女王として、子に対する無礼・・・そして、妾の前に立ちながら余所見をした罰じゃ」
私は相手の顔面を片手で掴み持ち上げた。いわゆる『アイアンクロー』と言うやつだ。思わず《女帝のオーラ》を使ってしまった、そのせいか仲間らしき男共は青ざめていた、掴まれた男は痛いのか両手で私の指を外そうとするがビクともしない。周りの客達も驚きで目を見開いていたり口を大きく開けていた。
「言葉には言葉を・・・力には力を!」
私は男から手を離すと同時に、身体をくるっと回し男の鳩尾に回し蹴りをぶち込んでやった。
この時のオーラと蹴りで、これから厄介事に巻き込まれる事になるのを、当時の私は知る余地も無かった。
男はそのまま店の壁まで吹っ飛び穴が空いた。仲間達は口を開けたまま吹っ飛んでった男の方を見つめていた。
「貴様らも、同じ運命を辿るか?」
再び《女帝のオーラ》を出し、仕上げの圧をかける。すると男共は血相を変えて吹っ飛んだ仲間を回収し店を出ていった。私はフッ、と一息つくと見ていた客達から歓声が上がった・・・流石に気を抜いた瞬間だったからビックリした。
―スゲェぜ、姐さん!―
―いいやぁ、良いもん見せてもらったぜ!―
―アイツらいつも似たような事してんだ。いやぁ、スッキリした。ありがとうな!―
等など、感謝の言葉が多く投げられた。周りの客もアイツらに対して鬱憤が溜まっていたらしい。まぁ・・・発散出来たなら、いっか。
あ・・・良くない事があった。
「・・・店主よ」
「あ、あぁ。なんだ?」
「そう身構えずとも良い・・・まずは謝罪を。妾が加減出来なかった故に壁を破壊してしもうた、すまぬ」
私が壊した事には変わりないので、まずは謝罪をした。すると店主は予想してなかったのか、キョトンとした表情をしていた。
「して、質問なのだが。壁の修理費用はいくら位かの?」
「修理費?まぁ、金貨2枚あれば足りるくらいだが・・・」
「そうか。では迷惑料も兼ねて・・・受け取るが良い、店主よ」
私は金貨3枚をカウンターに置いた。店主は驚き返そうとするが、私は店主の前に手を出し微笑みかけながら首を左右に振った。店主は返すのを素直に諦め「ありがたく受け取らせて貰うよ」と笑って言ってみせた。
私の行動に何か刺激されたのかまた歓声が上がった。
「さて、すまぬなお前達。食事を続けようか」
私は優しく微笑みかけ、食事・・・デザートを食すことにした。
食事を終えた私達は店を出て、別れようと帰路に進もうとした時にジエットに裾を掴まれた。
「ん、なんじゃ?」
「その、すみませんでした。俺、貴女の事を疑っていました。でも、あの冒険者に対しての言動で疑いが晴れました・・・先輩を、妹達を、どうか幸せにして下さいっ」
ジエットが頭を下げると同時にネメルも頭を下げて来た。私は2人の頭を優しく撫でる。
-あぁ この子達もなんて良い子なのだろうか―
「ふふ、当然じゃ。妾はあの子らを愛し続けると誓おう」
私は言い終えた後先に歩いていた愛おしい子達の後を追うように歩き始めた。少し歩いた所でネメルが思い出したように大きな声を出して問い掛けてきた。
「あ、あの!お名前は、なんというのですか〜!」
普段こんな大きな声を出さないのだろう、顔を赤くし肩で呼吸をしていた。私は彼女達の方を向き、微笑みながらも女王としての威厳を保ちながら答える。
「妾は、グレドーラ。ダークフェイス・グレドーラ。この名、お主らの心に然と刻むが良い」
【女帝のオーラ】発動時
とある宮殿
「・・・っ!?何だ、このプレッシャーは!?」
「こ、これほどのプレッシャー・・・長い事生きてきましたが感じたことがありませぬ」
「爺、即急に調査せよっ。これ程のプレッシャーを放つ者を野放しには出来ん!」
とある皇帝が調査へ踏み出していたり。
【回し蹴り時、店内】
―おいおい、あの細身であんな出鱈目なプレッシャーに力かよー
この店に呑みに来ていたとある帝国の四騎士のうちの1人がその現場を目撃していたり。
・・・女帝には、知る余地もなかった・・・