オーバーロード ~百害女王~   作:ジェイ・デスサイズ

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こんにちは、ジェイで御座います。
最近は寒暖差が激しく頭痛が続く日々ですが、皆様はどうでしょうか。
さて、今回は階層守護者達がしゃべります!嬉しい!・・・まぁ、全員ではないのですが。
今後のこの子達の活躍を楽しみにしていただけると幸いです。
他の小説もペースはバラバラですが綴っておりますので、もうしばらくお時間をいただければと・・・。

それはそうと「アルシェ・In・ビーストテイマー」、完結お疲れさまでした!よく読ませていただきました。同じくアルシェを救いたい者として更新が楽しみでした。自分のあの方のように更新を早められたらと思っております。





前置きが長くなりました。
それでは本編をお楽しみください。


第12話 誕生【百害姫(イビルフィーリア)

「さて、集まってもらったのは他でも無い。妾が離れている間に発動したと言う【超位魔法】についてじゃ」

 

 言い終えると同時に私は本来の姿になる。こっちに来てから殆どの子と会ってなかったから「おぉ」と感嘆の声が上がる。

 

「知っている者も居るだろうが、あれは【失墜する天空(フォールンダウン)】・・・第10位階を超えた魔法の1つじゃ」

 

 私の子達は頷いているが、フォーサイトは驚愕の顔をしていた。まぁ、この世界の基準だと疑いたくもなるわね。

 

「そして、その魔法を放ったあのローブを纏った骸骨・・・彼奴は昔、妾が所属していたギルドのギルドマスターじゃ」

 

 今度は守護者達が驚愕していた。そういえばモモンガ、ダンジョン内とか私のこだわりは見てたり聞いたりしてたけど、性能に関しては【イベントで当たった時の楽しみにしたいんですよ】と言って守護者達は極力見ないようにしてたっけ。

 

「妾と同じく、この世界に居るかもしれぬという可能性はあったが限りなく低いと思っておったから考えずにいたが・・・いやはや、誠愉快な話じゃ」

 

 口元を手で隠しくく、と笑みを零す。すると手を挙げるフレシア。

 

「何じゃ、フレシア」

 

「じゃあ、ママはそのギルドマスターさんに会いに行くおつもりなのかしら?」

 

 他の子達も気になっていたのか、頷いていた。本来なら合流して情報共有した方が良いんだけど・・・。

 

「いや、行くつもりは無い。あの戦い、彼奴は自分のギルドの階層守護者と戦っていた。故に彼奴が妾の知る彼奴であると言う事に確証が持てぬ。仮に知る者であったとしても味方になるかはまた別の話だ、目的が違えばいつかは衝突するからの」

 

「とはいえ。戦を仕掛けるにしても此方もかなりの戦力を出さなければいけませんし、私達の死を御母様が黙認するとも思えません。だからと言って放置は愚策ですわね・・・可能であれば拠点を見つけ監視をしたいですが」

 

 光のコヤンスカヤが自分の意見を述べる。それに対しマシニング・スパークヘラクレスが反応する。

 

「拠点ヲ見ツケル、逆ヲ言エバ相手ニ我等ノ存在ヲ見ツケラレル可能性ガアル。ソレダケハ避ケネバナラヌ」

 

「ですから、『可能であれば』と言ったじゃないですか~」

 

「なら、それ等に関する情報の収集に力を入れるべきじゃないか?」

 

「・・・うん、私もヴェラ姉の意見に賛成」

 

「じゃあ人の国に潜伏?」

 

 私の子達があれやこれやと意見を言い合っている。うんうん、自分の意見を言うのは良い事だ。とは言え、この子達の言う事も事実・場所を把握したい気持ちはあるけど逆に見つけられると色々と厄介な事になる。

 

「・・・守護者とその配下の者を『冒険者』にさせこの世の情報を集めさせよ。主にバハルス帝国や周辺国家、又は歴史を。問題は『誰』を冒険者に送り出すかなのじゃが」

 

 私は守護者達に視線を移す。あからさまに視線を逸らすもの・行きたいのか眼を輝かせる者・私の命令に従いますと言った眼をする者と別れていた。その中で私が指名したのは---

 

「アトラル・カ、頼まれてくれぬか?」

 

「ふふ、頼まれた私はお母さんのお願いを快く引き受けます。私の配下の子も連れて行くから『人化の指輪』を下さいな?」

 

「うむ、後でお前に渡そう。それとキャノンビーモン達を収容せよ、彼奴が居ると分かった以上直ぐに見つけられてしまうからの。今後はステルス・ミリピード及びステルス機能・光学迷彩等を持つマシニング部隊に任命する。ヘラクレス、部隊の編成は任せる」

 

「ハッ、畏マリマシタ」

 

「さて、今の所はこんなものか・・・。それと、もう知っておるとは思うが。妾の新たな娘、長女の『アルシェ』と双子の次女『クーデリカ』・『ウレイリカ』じゃ。みな、仲良くするのじゃぞ」

 

 私は玉座から立ち上がり愛娘達の傍に寄り守護者達へ紹介する。そして3人は一歩前に出る。

 

「・・・先日、正式に母様の娘になったアルシェと言いますっ。そして双子の妹のクーデリカとウレイリカ。まだまだ分からない事だらけの若輩者ですがよろしくお願いしますっ」

 

「「よろしくお願いしますっ」」

 

 アルシェの挨拶に続くように双子も挨拶をし頭を下げる。少しの間の後、守護者達から拍手と歓迎の声が送られてきた。この様子なら問題無さそうね。

 

「では、今回の集会はこれで終了とす---」

 

「か、母様っ」

 

 私の声を遮る様に発した言葉が聞こえ、その声の主はアルシェだった。ダークフェイスが「陛下の御言葉を遮るとはっ」と言いたげな顔をしていたが私が制し宥める。

 

「どうした、アルシェ?何か言い忘れた事があったか?」

 

 私は目線を合わせ優しく声をかける。するとアルシェは覚悟を決めたような表情をしており、発した言葉は此処にいる全員を驚かせた。

 

「母様・・・私を、母様と同じに---『魔物』にして下さいっ!」

 

「「「!!??」」」

 

 以前お風呂で提案した話、『アルシェ、並びにフォーサイトの魔物化』計画。聞いた時は動揺していたのに今は本気の眼をしており、当時聞いていたセシリア達はもちろん、知らない・聞いていないフォーサイト2人と守護者達も動揺していた。

 

「アルシェ、答えは急がず良いと話したであろう?それに話をしてから数日しか経っておらぬぞ?―――それとも、その眼にさせる程の何かきっかけでもできたかえ?」

 

「・・・店での出来事と、守護者の皆さんを見て、です」

 

「店での、出来事?」

 

「はい・・・あの時私は妹達を庇う事しか考えてなかったけど、力があれば守る事ができたし、そして守護者の皆さんを『視て』嫌でも力の差を感じてしまったから」

 

 チラッと守護者達を見るアルシェ。もしかしてこの子達に合わせたから判断急いじゃったのかな・・・でも、眼は本気そのものだし。

 

「・・・本当に良いのだな?受け入れたら二度と『人間』には戻れぬぞ」

 

 【母】としてだと甘さが出ちゃうから【女帝】としてアルシェに問い掛ける。そしてアルシェはそれに怯む事無く、真っ直ぐ私の眼を見て

 

「はいっ、母様っ!」

 

 と、言い放った---

 

「・・・宜しい。ならば愛し子の願い、この母が叶えてやろう・・・これより儀式(リチュアル)を行なう」

 

 私が宣言すると、守護者達がざわめき始めた---まぁ、するのは初めてだもんねぇ。女性で虫好きの友人なんていなかったし。

 フォーサイト及び双子はキョトンとしていた。

 

儀式(リチュアル)・・・儀式と言っても生贄だの魔法陣は使用せぬ。妾のは至ってシンプルじゃ」

 

 私は左手の爪先で右手の人差し指の腹を軽く刺し、血を出す。あ、血は赤いままなんだ私。

 

「妾の血を飲む。ただそれだけじゃ」

 

 私はアルシェの方へ少し血の出た指を向ける。するとダークフェイスが右腕の鋏をアルシェへ向け言い放つ。

 

「お前の様な小娘が、我らが女王の血を取り込みただで済むと思っているのか!血、即ち陛下の魔力が混じっているということ!それを体内に入れ、その貧弱な身体が耐えられると思っているのなら陛下への侮辱となるぞっ!」

 

 その台詞によりアルシェはショックを受けてしまった・・・が

 

「訳すると『陛下の強大な魔力が混じってる血を飲んで身体が耐えられる可能性が低いから、鍛錬を積んでからでも良いんじゃないか』って言ってるわ」

 

 と、セシリアがフォローを入れる。ダークフェイスったら、シンプルにアルシェが心配だったのね。すると慌てるダークフェイス。

 

「なな、何を言っているセシリア!?このオレ様がそんな事言う訳ないだろう!」

 

「だから、訳してあげたんじゃない。大丈夫よアルシェ、心配してただけだから」

 

 そう言いながらアルシェを優しく撫でるセシリア。ダークフェイスは「ふんっ、言っていろ」と顔を逸らす。素直じゃないなぁダークフェイス。

 

「くくく・・・安心せい。無論アルシェの身体が耐えられる様に調整しておる。まぁ、他種族を同族にするのは妾も初めてだからな。ダークフェイスが心配するのも頷ける」

 

「えっ。母様、初めてなの?」

 

 ダークフェイスが慌てふためいるのをよそに、驚きだったのか問い掛けてくるアルシェ。

 

「うむ。虫属は同性には不人気じゃったからな・・・っと、話が逸れたな。ではアルシェ、妾の血を飲むのじゃ」

 

「・・・」

 

 アルシェはゆっくり私の指に口を近づけ・・・血を飲んだ。

 

「急がずとも良い、ゆっくり、落ち着いて飲むのじゃ」

 

 優しく頭を撫でながらアルシェを落ち着かせる。アルシェは私の眼を見てコクッと頷き飲み続ける。時間にして10秒弱、私の血を飲んだアルシェは私の頷きと共に指から口を離す。トロンとした表情をしていたが、数秒後には目を見開き表情を強ばらせる。

 

あ・・・あぁ・・・くぁっ・・・あぁっ!?

 

 自分で自分を抱き締め身悶えるアルシェ・・・そろそろね。

 

暗黒繭(クレイドル)

 

 私は両手の指先から糸を出しアルシェを包み込む。私がスキルをアルシェに使った為フォーサイトや双子から不安そうな表情が見られる。

 

「詳細は省くが、包んだ相手を無力化させるスキルじゃ。これを解くにはこの繭の防御力を超える斬撃・・・もしくは炎系魔法を使用する事。そして・・・妾と『同じ存在』である事じゃ」

 

 フォーサイト・双子は理解が追い付いてないのかキョトンとしていたが・・・流石は天才、ミッドウェーは最初に気付いた。

 

「プレジデント!まさかアルシェを」

 

「くく、流石自称天才じゃな。もう分かったか」

 

「自称じゃありませんー!」

 

 と、ミッドウェーをからかっていると繭の隙間から薄緑の光が零れ---ゆっくりと繭が解けていく。そして現れたのはーアルシェである事はもちろんだが、異なる部分が多数あった。

 1つ目は、目元。私の目元に赤い縦ラインがあるのだが、それがアルシェにもあった。それと私に似た為か、つり目っぽい感じがする。

 2つ目は髪。金髪の艶やかな髪だが、肩口辺りまでだったのが腰まで伸びており毛先数cmが私と一緒で紫になっていた。

 そして、1番変化があった3つ目・・・それはアルシェの両脇腹背中寄り付近にあった(第11、12肋骨)。彼女の腕と同じ太さ・長さの私の下半身の蜘蛛脚と同じものが生えていた。左右に2本ずつ。

 眼を開いたアルシェは私を確認にし腕を伸ばす、すると右脇腹に生えた脚2本も一緒に動いた。違和感があったのか、脇を見ると普段の自分には無いものがあり混乱し始めたアルシェ。

 

 ―あぁ~無意識に動いちゃう感じのあれね。私も慣れるのに苦労したなぁ―

 

 なんて、思い出に浸っている場合ではない。私は落ち着かせる為に声を掛けようとしたら、先に双子達が声を掛けていた。

 

「お姉様、綺麗~」

 

「お姉様、小さいお母さんみたい~」

 

 アルシェの脇腹に生えた新たな脚を握り、姉を見上げる。それで落ち着いたのか頑張って残っている脚で双子の頭を撫でようとするアルシェ・・・だが、プルプルと震えるだけで撫でる事はできなかった。私は可愛いと思いながらアルシェに近づき頭を撫でる・・・そして守護者達の方を共に向き

 

妾の愛おしい子供達よ、喝采せよっ!この瞬間、【メガコロニー】の歴史に新たなページが紡がれたのだ!この子こそ、妾の次に『女王』になる者・・・【百害姫(イビルフィーリア)アルシェ・ダークフェイス】じゃ!

 

 と高々に宣言した。言い終えると同時に拍手喝采大歓声がこのフロアを満たした。身辺警護の子達もオーバーリアクションと思うくらい身体を動かしていたり拍手をしていた。

確かラテン語で姫を『フィーリア』と言うので、それを使わせてもらった。ドイツ語はあの骸骨と被るから敢えて避けた。万が一会った時、アルシェが名乗った時に変な目で見られないようにする為だ。

 

百害(イビル)・・・(フィーリア)・・・ダークフェイス?」

 

「このメガコロニーの姫と言う意味と、選ばれた者しか得られぬ名だ・・・ふふ、これからの成長が楽しみじゃ」

 

 優しく微笑みながら説明し、アルシェは元気良く「はいっ」と答える。

 

 ―さて、今回する事は終わったし。今度こそ終了ね―

 

 と、私が終了と伝えようとした瞬間、待ってましたと言わんばかりに私の声を遮られた。

 

おやおやぁ、(わたくし)を仲間外れにするなんて酷いですわ。御母様

 

 声の主は玉座の間の天井から聞こえた。そちらを向くと天井の一部が歪んでいる様になっており、そこから1人の女の子が現れた。

 

「今回の集会の対象は『階層守護者』じゃ。間違ってなかろう?」

 

キヒヒ、御母様は意地悪なのですから」

 

 黒髪で左右非対称のツインテール、深緑と黒を基調とし肩・胸元・背中が大きく出ているデザインのドレスを身に纏っている。眼は虹彩異色(オッドアイ)で、右が赤・左が金色で時計の文字盤となっており、針までしっかりと動いている。 彼女は空中からゆっくりと玉座の間の中心へ降り立ち、スカートの裾をつまみ優雅に挨拶をする。アルシェと双子は、恐らくあの娘の美しさにポカンとした表情をしていた---凝って創った甲斐があった!

 

「初めまして、ですわね。私の名は『ナイトメア』、親愛なる御母様の切り札の1つにして原初(ゼロス)を司る者。私とも仲良くして頂きたいですわ」

 

 ナイトメアは姉妹達に優しく微笑みかける。すると姉妹達も頭を下げ返事をする。

 

「こ、こちらこそよろしくお願いしますっ!ナイトメア姉様」

 

「「よろしくお願いしますっ、ナイトメア御姉様」」

 

「ふふ、素直で可愛い子なら大歓迎ですわ」

 

 『ナイトメア』:原初の精霊(ゼロスエレメンタル)と言う精霊種の最上位種族。全ての属性の魔法が使用可能で各属性を司る六大竜『原初の竜(ゼロスドラゴン)』を私以外で唯一使役出来る子だ。元ギルメンでさえ教えていない私のとっておきだ。

 

「ナイトメア、時が来た際には頼むぞ」

 

「はい、もちろんです。可愛い妹達を護る為なら、存分に私の力を使って下さいまし」

 

「色々挟んでしまったが、これで集会を終了とする。妾の愛おしい子供達よ、己が責務を全うするのじゃ」

 

 私は言い終えると、転移し自室へ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィアーが転移した後、階層守護者達の動きは様々だった。そのまま自分の階層へ戻る者・お喋りをする者・アルシェ達の元へ向かう者の三通りだ。

 

「・・・アルシェ。体調はどうですか?具合悪くありませんか?」

 

 初めに声をかけたのはヤツカダキだ。ベースが同じ【蜘蛛】である為、アルシェも何となく親近感が湧いていた。

 

「ヤツカダキ姉様。はい、今の所大丈夫です・・・新しく増えた腕?脚?の扱いが出来てないだけです」

 

「御母様も意地悪な事をなさいますわねぇ。可愛い娘を蜘蛛人にして、そのままお部屋に戻ってしまうのですから」

 

 アルシェを後ろからぎゅっとしながらナイトメアは愚痴を零す。

 

「ナイトメア、陛下の事です。何か特訓できる物を探しているのでは?」

 

「しかしミッドウェーよ、その様な都合の良い物があるのか?陛下も儀式をするのは初めてと申されていたぞ」

 

「ぐぬぬ、それは確かに・・・ですが陛下が無策とは到底思えませんっ」

 

 今度はミッドウェーやブルムロードモンも歩み寄って来る。アルシェの後ろにはフィアーの切り札の1つ【原初の精霊】その周りに【第10、7、5階層守護者】その光景を見たセシリアは思った。

 

 ―アルシェやクーデリカ、ウレイリカがもし泣いたら、国の1つや2つ消し飛ぶわね―

 

「自分が他国にとって存亡を左右するトリガーになっているとは、夢にも思っていないだろうね~アルシェちゃん」

 

 いつの間にか隣に来ていたアトラル・カが心を読んだかの様に語る。アトラル・カの台詞に苦笑いをするしかないセシリアだった。




「・・・あ。あったあった!私もこの本には助けられたな~。これゲーム内での説明だから、これを元に私風に説明を取り入れて・・・」

 自分の書斎からとある本を一冊取り出す女王。タイトルは《蜘蛛人の操作の仕方(初級編)》
 

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