季節外れの猛暑が唐突に終わり、体調を崩された方もいるのではないでしょうか?自分は二回目のコロナにかかりました。
二回目でもきついものはきついですね・・・
さて、今回はフォーサイト達のお話になりますね~・・・投稿・物語スピードが遅くて申し訳ないです。
それでは本編をお楽しみ下さい
アルシェを蜘蛛人にした次の日、フィアーはアトラル・カの守護する第8階層へ向かった。理由は『人化の指輪』を渡す為である。
アトラル・カが守護する第8階層は砂漠地帯。かつては砦として利用されていた建築物の廃墟が複数配置されており、中は低レベルの武器や木箱が置かれているのを見る限り、砦の倉庫のような場所だったと思わすような作りにしており、特に拘ったのが長年放置された演出にする為、壁や天井が崩落し、中には砂が大量に入り込んでしまっている様にしている。
などと作った時の事を思い出していると、廃墟の砦の頂上から黄金色の外殻・紫色の瞳をした大型の甲虫種が姿を現した。フィアーと目線が合うと跳躍し距離を縮め、数秒後には目の前に着地した。
この大型の甲虫種が【閣蟷螂アトラル・カ】だ。アトラル・カはフィアーに会えたのが嬉しいのかキシシ、と声を上げる。そんなアトラル・カが可愛く思え頭部を優しく撫でる。
「ふふ、愛い子じゃ。アトラル・カ、昨日話した通り『人化の指輪』を渡しに来たぞ。今日明日にでも部下の子と龍馬と共に出立するのじゃ。龍馬ならもう街の者と顔馴染みにもなっておるはず、冒険者登録もスムーズに行なえるであろうて・・・お主の活躍、期待しておるぞ」
聴き終えたアトラル・カは気合いの表れなのか、大きな咆哮を上げると再び廃墟へ跳躍し姿を消した。
「さて、次は・・・」
「こ、此処が第7階層・・・【熔岩洞】」
第7階層【熔岩洞】。火山らしく荒々しい溶岩地帯と、相反する豊かな水と緑が両立した独特な環境が特徴の階層だ。何故アルシェがこの階層に来たかと言うと、昨日の夜にフィアーから「明日の昼食後に第7階層へ参れ、鍛錬を行なう」と言われたからだ。ちなみに、フォーサイトと双子も一緒だ。
初めて見る光景にポカンとしていると、近くの穴や木影から小さい魔物が現れた。
「お姉様、あの子って確か・・・ヤツカ姉様が連れてた子だよね?」
「そうそう、ヤツカ姉様の脚に指輪付けてた子だよ」
そこに居たのは【臣蜘蛛ツケヒバキ】胴体の大部分を糸で包んでおり、まるで繭玉のような外見をしている。ツケヒバキ達はフォーサイトを見つけるとゆっくりと近付いてきた。以前の彼等なら臨戦態勢を取っていたが、今では此処の関係者、アルシェに至っては姫になっている為身構えなかった。
ツケヒバキ達は足元に到着すると、会えて嬉しいのかスリスリと足に身体を擦り付けていた。
「この子達、甘えてるのかしら?」
「はは、かもな。こうじっくり観察出来んのも、なんか不思議な感じするぜ」
「それもこれも、陛下の恩恵なのでしょうね」
「ふふ、可愛い・・・ん、どうしたの?」
アルシェも足元に来たツケヒバキを撫でていると、その子がアルシェの腕を糸を巻き付けクイックイッ、と引っぱる仕草をする。フォーサイトは「遊びたいのか?」「構って欲しいんじゃない?」など意見を述べるが・・・アルシェは直感でツケヒバキに訊ねる。
「・・・ヤツカダキ姉様の所へ連れて行ってくれるの?」
するとツケヒバキはコク、と頷く。当然、フォーサイトは驚き、双子は目を輝かせる。
「アルシェ、何で分かったんだ!?」
「えっ?何でって・・・何となく?」
「もしかして、蜘蛛人になったから・・・というか、百害姫になったから自然と分かるようになったんじゃない?」
「なるほど、それなら納得ですね」
「「お姉様凄〜い!」」
アルシェは照れくさそうに頬をかく。そしてフォーサイト達はツケヒバキ達の先導により、少し火山地帯よりへ向かう。
すると、ツケヒバキ達が一斉に止まりキィ、キィと鳴き声を出し始めた。ツケヒバキ達が向いている方を見ると、そこには昨日見た大型の鋏角種の魔物の姿があった。その魔物はアルシェと目が合うと跳躍し距離を詰めて来た。そして空中でくっ付いていたツケヒバキに『人化の指輪』を付けさせ、着地した時には赤と黒のドレスを身に纏った女性が現れた。
「こんにちは、皆さん。私の守護する第7階層へようこそ。この階層に御用があるのでしたら私が対応致しますよ」
スカートの裾を軽く摘みながら御辞儀をするヤツカダキに対し、少し反応が遅れたが御辞儀を返す面々。
「「ヤツカ姉様~」」
すると、アルシェの両脇から現れたクーデリカとウレイリカ。そして自分を『姉』と認め懐いてくれている!と思い嬉しくなるヤツカダキ。ヤツカダキは裾を摘んでいた手を離し、双子を撫でる・・・と思いきや、脇腹付近から新たな2本の腕が現れ、そちらで双子を撫でる。撫でられた2人は心地良さそうに目を細める。
「ふふ、2人は可愛いですね・・・おや、どうかしましたか?」
「ヤツカダキ姉様も本来は蜘蛛だものね・・・腕が他にもあって不自然では無い、のだけど・・・」
「こうもナチュラルに出されるとビクッとしちまうな」
「あぁ、なるほど。まぁ、こればかりは慣れてください」
口を隠しながら、ふふっ、と笑みを零すヤツカダキに、苦笑いを浮かべるしかないフォーサイトの面々。ヤツカダキは双子を撫でながら此処に来た理由を訊ねる。
「それで、私の階層に何用で来たのかしら?」
「母様から、この階層で鍛錬をするって言われたから来たの。母様を見かけましたか?」
「母様ですか?私は見かけて---いえ、たった今この階層に到着した様ですね」
階層守護者である彼女は、侵入者の有無を探知する事ができる。故にヤツカダキもアルシェ達の方へ向かっていた為早く合流する事が出来た。ヤツカダキは空を見上げる、釣られて他の面々も見上げる。そこには両腕を胸下で組みゆっくりと下降する我等が女王、フィアーことグレドーラの姿があった。
着地し、面々を確認すると双子が居るのは想定していなかったのか、きょとんとした表情を浮かべる。
「よく来た、お前達・・・って、クーデリカとウレイリカも来ておったのか・・・まぁ、良い。それより、アルシェ。その姿のまま、約1日過ごしたわけじゃが・・・身体はどうじゃ?」
「身体は問題は無いけど、やっぱり違和感が大きいです・・・1日じゃ全然慣れなかった」
そう言いながら自分の両腕を上げるアルシェ・・・と同時に増えた腕兼脚も証拠に上がっていた。
「じゃろうな。本来であれば母である妾が直々に教えたい所ではあるが、妾は今の姿と
もっと繊細な扱い、となるとアトラル・カになるのだが、あの子には他の仕事がある。それに、まずは基本的な動かし方をマスターしなければアトラル・カの様な繊細な動きは不可能に近い。
「そして、ヘッケラン・イミーナ・ロバーデイク」
名を呼ばれた3人は背筋を伸ばして私を見る。
―いや、そんな覚悟を決めた様な顔しなくて良いのに・・・そりゃ、アルシェ達は娘で可愛がっているが、その仲間を雑に扱ったりなんてしない―
「ふふ、そう身構えなくても良い・・・身構えるのは妾ではなく、他におるからのぉ」
私の発言に「へっ?」と顔を傾げる。
「お主達には、別々の階層へ行き鍛錬を行なう。ヘッケランは第1階層、相手は守護者のヴェラとサウル。イミーナは第4階層、相手は同じく守護者のザミエールモン。ロバーデイクは第3階層、もちろん相手は守護者のマシニング・スパークヘラクレスじゃ」
言い終えた途端、3人の顔は真っ青に変わった。人の顔って本当に青っぽくなるのね。
「安心せい、妾から先に伝えてある。あの子達にとっては遊び程度で相手してくれるであろうて・・・では、行け」
私は指を鳴らすと同時に3人に転移魔法をかけ、各階層へ飛ばす。急展開に開いた口が塞がらないアルシェに「手厳しいですね」と苦笑するヤツカダキ。
「アルシェは此処でヤツカダキから指南を受けるのじゃ・・・っと、それとこれを」
私は一冊の本を取り出し、アルシェへ手渡す。アルシェは受け取りながら問いかける。
「母様、これは?」
「蜘蛛人について、様々な事が記されておる本だ・・・まぁ、妾以外ではあるがな」
「何でお母さんは載ってないの?」
「お母さんが1番凄いのに何で?」
「ふふ、それはじゃな」
私はヤツカダキの元から来た2人を撫でながら答える。2人・・・アルシェもごくっと息を吞む。
「妾の種族が、妾しか居らぬからじゃ。故に記されていないと言うわけじゃ」
「母様しかいない・・・という事は、母様しか知る者が居ないから書くに書けない。というか書く以前に知らない?」
「「お母さん凄~い!」」
ぱちぱちと拍手する双子と、目を見開き驚くアルシェ。
―まぁ、私のこれってシークレット寄りの種族だから仕方ないけどねぇ。それに初級段階で私の見ても理解は出来ないと思うから、こういうのは段階を踏まないとね―
「ふふ、褒めても何も出ぬぞ。ではヤツカダキ、頼むぞ」
「畏まりました、母様」
私はアルシェの頭を撫で応援し、双子を連れてその場を後にする。当然自分達はどうするのか疑問になる2人。
「お母さん、私達は何するの?」
「私達も特訓?」
「ふふ、お前達が望むならやぶさかでもないが。まずは基礎を学ばなければな?2人とも別の階層へ転移するから、妾の手を離すでないぞ」
私の言葉に素直に従い、手をギュッと握る2人。うん、素直でよろしい。私は目的地を思い浮かべながら転移を行なう。そこはフォーサイト達が暮らしている屋敷がある紅葉え彩られた場所だ、階層的には闇のコヤンスカヤが守護する第6階層だ。
「良し、着いたぞ2人共」
「ん・・・あれ、此処家のある所?
「うん、綺麗な木がいっぱいの所」
「うむ、正解じゃ。しかし、今から行くのは更に奥・・・この【谿紅葉領域】を守護している者が居る所じゃ」
私は2人と手を繋ぎながら進んで行く、するとフォーサイトが暮らしている屋敷より更に大きく、歴史を感じるような屋敷が現れた。双子はポカーンと口を開けており、それを見て私は笑みが零れた。すると、私が来たのを察知したのか1人の女性が屋敷から出てきてこちらへ歩み寄って来た。白の着物に、赤の丸模様や帯で彩っていて、赤い番傘を差していた。彼女こそ、この【谿紅葉領域】を守護している【九尾の妖狐 タマユラ】・・・キツネっ娘である。
「こんにちは、お母様。そして可愛らしい妹達。わたくしはタマユラ、【谿紅葉領域】を守護している者です」
「「こんにちは、タマユラ姉様っ」」
「ふふ、元気があってよろしいですね。それでお母様、この領域にはお散歩に来られたので?」
可愛くお辞儀をする双子の所まで来ると、私に訊ねながら双子の頭を撫でる。
「それでも良いのだが、お主に頼みがあっての」
「わたくしに頼み、ですか?身体の弱いわたくしに出来ることであれば、何なりと・・・コホッ、コホッ」
着物の袖を口元へ運び軽く咳をするタマユラ。原作設定を読んだ際【太陽のもとを歩けない程病弱】となっており、それは可哀そうと思うも、設定をガン無視はできなかった為【身体が弱い】という設定にした。
「タマユラ姉様、大丈夫?」
「お母さん、明日とかじゃダメ?」
―――設定無視しとけば良かったかなぁ・・・でも、こういう子が本気で戦闘する姿凄く好きなんだよねぇ・・・まさか異世界に来て悩まされる事になるとは―――
「大丈夫ですよ2人共、心配してくれてありがとう。それでお母様、頼みというのは?」
「あ、あぁ。実のこの子達に勉学や魔法知識を付けてもらいたくてな」
「勉学を・・・畏まりましたわ。お母様」
我が娘の1人ながら理解が早くて助かる。タマユラなら教えるのも上手だし、新しい妹達と触れ合える機会が折角来たのだ、断る理由が無い。
「では、よろしく頼むぞ。タマユラ」
「はい、お任せ下さい。お母様」
私は3人が屋敷に入るのを見届けた後、自室へ転移した。後日、タマユラから聞いた話によると、屋敷の中にタマユラの護衛役として妹の【ワカモ】が待っていたのだが、双子の妹達と一緒に入ってきた時は、一瞬思考が止まり意識が戻った時には双子を両腕で抱き締めていたらしい。
「
とある墓地にて、魔法を唱える老人とサポートをする男性が数人。目の前には、埋葬されていない死体・・・なのだが、骨まで切り刻まれており最早肉塊としか言えぬ見た目をしている。
その死体に魔法をかけると、亡霊の様な者が現れた。老人はその亡霊に問う。
「お前を殺したのは誰だ?」
「―――ドラ・・・グrドーラ・・・レドーr・・・グレ、ドーラ・・・!」
初めは途切れ途切れだったが、最後には力強い念で、正確に聞こえる事ができた。言い終えると亡霊は力尽きたようにスゥ・・・と消えて行った。
「【グレドーラ】・・・確かバジウッドがその様な者の名を話しておったな」