SCP財団の報告書的な物を書いてたら英霊になったんだが???   作:我等の優雅なりし様を見るや?

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小説を始めて書いたもので、色々と伏線やら何やらを先走り過ぎてしまいました。様々な感想欄でのご指摘ありがとうございます。不定期な投稿になりますが,今後とも拙作をよろしくお願いします。
今回は加筆、修正したものを投稿します。


No.8 閲覧要求セキュリティクリアランス・7

「此処らで死んでしまいなさい!」

『さて、先日は中々に懐かしい物を見たのでね。サーヴァントに堕ちたとは言え、“此方”の方が幾らかオリジナルに近い───。真髄をお見せしよう。現実錨、投錨!』

 

 

 

聖女の姿を模した拷問器具、鋼鉄の処女が空気を切り裂く音と共に飛来し、それとライトブラウンのコートを纏った男の周囲に展開されていた数枚の何らかの機構が衝突し、空間を揺らす波紋と共に対消滅する。

其れを放った仮面の女は、その仮面の下の口を苛立ちに歪める。先程から己が放つ攻撃は全て、彼の周囲に浮かぶ機械細工によって消滅させられているのだ。

 

 

だが、あの機械細工が目の前のサーヴァントの宝具だとするならば、度重なる彼女の攻撃によってその数を残り三枚へと減らしていた。

それに、彼女は此処へと一人で来ているわけではない。自らの横で盾を構える乙女と交戦していた、病的なまでの白い肌をした貴族然とした男がその盾へと蹴りを見舞い、その少女をよろめかせる。その隙を埋めんと彼へ旗を振るう聖女の足元へと槍を発生させ、仮面の女の元へと跳躍しその側へと降り立つ。

 

 

「随分と苦戦している様だな、バーサーク・アサシン。」

「それは貴方も同じではなくて?」

 

 

彼等の背後に立ちその会話を聞いていた、聖処女の全てを反転させたかの様な黒い鎧へと身を包んだ少女は、その顔を苛立ちに染め近くの瓦礫を旗の一振りで八つ当たりの様に打ち砕く。

 

 

「バーサーク・アサシン。バーサーク・ランサー。何をしているのです?

理想塗れの聖女とサーヴァントの成り損ない、防御用の宝具しか持たないルーラー等とっとと始末してしまいなさい。

其れとも、血を啜り夜を闊歩する吸血鬼として人々の歴史に刻まれた貴方達は真っ昼間だから力が出ないとでも言うつもりですか?」

 

「まさか、我等がマスターよ。狂気に身を任せ、戦場へと身を投じる悦楽に浸っていただけの事。」

 

 

苛立ちを隠さない少女───竜の魔女と化した黒きジャンヌに対し、その端正な顔を獰猛な色に染める男は笑う。

仮面の女も其の手に持つ杖を弄び、残忍な笑いを隠そうともしない。

両者の圧が高まり、マシュは手にした盾を握り締める。

背後ではオレンジの髪を戦場の熱気に靡かせ気丈な顔を保ってはいるものの、頬を伝う冷や汗が心中を雄弁に語る一人の少女が荒い息を吐いている。

 

 

《不味い、立香ちゃんにそろそろ限界が来る……!》

 

 

前の砦での戦闘とは違い、力量が拮抗或いは上回っている相手との本当の意味での命のやり取り。

それは彼女にとっては余りにも強烈な体験であり、その精神には少なからず負荷が掛かっていた。

 

 

『……マスター、宝具を一部真名解放させる。足止めにはなるだろう。私を置いて撤退したまえ。』

 

 

油断なく相手を見やり、周囲の空間に残った三枚の機械仕掛けの板を泳がせていたルーラーが指を鳴らし、其れらは空気へと溶け込む様に黄金の燐光と共に消える。そしてそれと入れ替わるかの様にルーラーの右手が赤い霧を纏い始める。

 

 

『緋色の王ならば、この一帯ごと奴等を始末出来るだろう。故に───』

 

 

自らを犠牲にして進めと口にするルーラー。他の三人の少女の眉間に皺が走り、反論しようとするが……その機会は飛来するガラス細工の薔薇によってかき消された。

瓦礫と殺意が支配する鉄火場が、一瞬にして幻想的なガラスの薔薇が咲き乱れる花園へと変貌する。

殺意を振り撒き、今にも襲い掛からんとしていた二騎のサーヴァントもその目を丸くし、毒気を抜かれたかの様に身体から力が抜ける。

 

 

「アマデウス!機械みたいにウィーンとやっちゃって!」

「任せたまえ。死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)!」

 

 

 

そしてその致命的な隙へと、死神にすら愛された男の音が質量を伴っていると錯覚させる程の重圧と共に炸裂した。

竜の魔女や彼女の召喚したサーヴァント達は顔を歪め、耳を押さえながら蹲る。

だが、その身が萎縮せんとするのを戦場の熱への悦楽のみで捩じ伏せ、此方へと跳躍する影が一つ。

ヴラド三世、ルーマニアの串刺し公。狂気に身を蝕まれているとはいえ、その武人としての気質と冴えは如何程も衰える事がない。

だが、ガラスの薔薇を踏み砕いて行われる彼の追撃は、一人の存在によって強制的に中断させられた。

 

 

『成る程……ならば私も合わせよう。真名封鎖、宝具限定解放。【001提言】起動。うつくしい世界へ

 

 

その身より出た槍を掴み、野生動物の様な俊敏さで踏み込まれたバーサーク・ランサーの足元へと多種多様な花々が咲き乱れる。

彼は顔を歪め、一瞬で後方へと飛びのこうとするものの大地へと触れていた彼の足は一瞬にして壊死を起こしたかの様に黒ずみ、手にした槍は霧散する。凡ゆる暴力を許さず、安らかなる死の先触れとして咲き誇るとされる花々は、その静かな花園に生命の喧騒がある事を良きとしない。

可憐なる花々に行手を阻まれたバーサーク・ランサーが顔を顰め、片脚を失った事により倒れ込む。

 

 

「それでは皆様、ごきげんよう!」

 

 

少女の快活な声を残し、その場から撤退するカルデアの一行達。

一瞬で死を告げる花園は消えたが、其れが稼いだ時間は彼等が逃げ切るには十分だった。ゆっくりと槍を杖の代わりとして立ち上がったバーサーク・ランサーは己の狩りがいのある獲物が現れたとばかりに獰猛に微笑むのだった。

 

 

 

 

 

 

「それ以上此方に近づくな」

 

 

“争いとは何も生まない”。あまりにも偽善が過ぎる様に思える言葉だが、今の私はこれを声を大にして叫びたかった。何故こんな事になってしまったのやら。

私の前では、いっそ芸術的とも言える程に巻き上げられた髪の毛と、黒を基調とした美しい服に身を纏った男が此方へとその手に持つ指揮棒を此方へと向けていた。

共にジャンヌ・オルタ達の魔の手から逃れた仲だというのに、全く困ったものである。彼は我々が無事逃げ切り、マスターがお礼を言おうとした瞬間に此方へと敵意を露わにしたのだ。

 

 

 

その背中には窮地に陥っていたマスターと私達を硝子の薔薇を無数に咲かせると言う、何とも豪奢な方法で救ってくれた白百合の様な美しさと成長途中の危うい色気を垣間見えさせる少女がまるで庇われる様に立っていた。

 

 

「ちょっと、アマデウス!」

 

「僕の前に出るんじゃない、マリー。

其処の顔が分かり辛い君、君は身体の中に動物園でも作ってるのかい?

僕は耳が良い方でね。自慢じゃ無いが……いや、正直言って自慢の耳だが、その自慢の耳が君から嫌な音を拾うんだ。

何かの爪が壁を引っ掻く音、床を何かが擦り付ける音、どうにも寒気のする啜り泣き。其れ等が全て君の体内から聞こえる。申し訳ないが、マリーを君に近づける訳にはいかない」

 

 

……おいおい、嘘だろ?

耳が良いと言ったって限度があるだろう。私の“中身” は物理的な存在では無い。『財団の管理者』として認識されている私の存在自体に紐付けされたものであり、

いくら耳を澄まそうとも聞こえる筈が無いのだ。だと言うのに、全く……。

流石は死神の為に作曲をしたと逸話が残る程の天才音楽家。魂の音すらも聞き分ける、という事だろうか。

 

 

『困ったな……私の死後は他者のプライバシーを考慮しないというのが一般的な作法なのかな?』

 

 

興味深い。私の生前───つまりは人類史に位置付けられた『管理者』としてでは無く、純粋にSCPオブジェクトの再現に奔走していた頃の私。

その頃の私は『魂』というものに造詣が浅かった。私の現実改変能力はほぼ万能に近いものではあったが、己が認識できないものに対しては如何にも干渉のしようが無かった。

だが、この世界がFate/Grand Orderの世界ならば話は別だ。私がサーヴァントとなってからの時間は私に多くの認識と知識を授けてくれた。

魂、剪定事象、並行世界、『魔法』。これらは私が再現出来なかったものへと、この指をかける事への助けとなるだろう。

 

 

だが、それはこのサーヴァントの身では不可能だ。私が生前に得ていた力の多くはロックがかけられ、その行使を不可能のものとしている。

理由としてはサーヴァントとしての身に過ぎたものというのも有るだろうが、一番は私の能力が人類史において全くと言っていいほど既知では無いという事だろう。

私の事は凡ゆる人類史の地点において、『管理者』としてしか認識されていない。本来ならば己の知覚すらも塗り替えられてもおかしくは無い程に人類史に刻み付けられた集合認識だが、

私の魂がこの世界を由来とするものでは無い事が功を奏したのだろう。私は私を『管理者』では無い『私』として認識できている。

そうなのだ。私は全くもって財団になりたいと願った事は無い。財団の物語は私抜きで進行する筈だったのだ。なのに私という異物を『管理者』として位置付け、この物語は進もうとしている。

 

 

 

それに、私の本質はどう考えても財団では無いだろう。

どちらかと言えばそう、『創り手(Factory)』─────

 

 

 

だが、そんな私の思考はアマデウスが次いで投げかけた言葉によって中断された。

 

 

「確かにCoolな行いでは無いけどね。でも君から響く音は余りにも酷い。

音楽を探究する上で多くの異常に触れて来たけど、此処までCoolじゃ無いのは初めてだ。」

 

 

……?アマデウスってこんなキャラだったか?Cool担当のキャスターも確かにこの特異点に居るだろうが、彼とは全く接点は無いはずだが……

 

 

Are we cool yet?(我等の優雅なる様を見るや?)に居た音楽家の端くれとして、そんな音を垂れ流す人間を信用しようとは思わない。後ろのお嬢さん方とならば協力も吝かじゃ無いけどね。」

 

 

 

なんて??????

 

 




【ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト】
言わずと知れた人類史を代表する音楽家の一人。
中世の文化史に散見される異常をモチーフとした芸術を追求する、かつて『財団』の時代において活動していたとされる組織『Are we cool yet?』の系譜を継ぐ組織のメンバーであったとされる。



リリーの提言 http://scp-jp.wikidot.com/lily-s-proposal - 執筆者:LilyFlower@2018
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