昨日の時点でUAが一万を超えました!まさかこんなに早く一万超えるとは思ってもいませんでした。ありがとうございます!
今回からやっと原作開始地点に入ります。
では、どうぞ!
入学編Ⅰ
入学式当日の朝、慎悟はいつもより早くベッドの上から降りて朝ご飯を食べていた。作ったのはもちろんマルカリータである。慎悟がこの家に住むようになってから炊事などの家のことは全て彼女の仕事であった。
これらを全て一人でやるというのは一見大変そうに見えるが、大抵のことはマルカリータが持つ杖を振るだけで解決した。しかし、マルカリータは料理だけはその力を使わず彼女の手ずから作っており、ものすごい速さで作業をしていたがその動きには一切無駄がない。
(あれも一応身勝手の極意なのか?)
思わずそう思ってしまったが口に出すことはなく、朝食を食べ終わった後慎悟は立ち上がり身支度をし始めた。
部屋のクローゼットを開き先日届いた一高の制服を見て特徴的な制服だなと思いながらそれを着た。
一高の制服は裾の長い、コートと燕尾服を混ぜ合わせたような上着で、白地に緑のアクセントと黒のラインが入っており、ブレザーの下は黒のベストにグレーのシャツ、黒のネクタイと黒スラックスとなっている。
普通に外を歩けば目立ちそうな見た目であり正直似合っているのかと疑問に思っていた慎悟であったが、マルカリータから微笑んで似合っているのですますよと言われたため納得することにした。
それからCADなどの荷物を持って家を出た。一高へと向かう慎悟の後を当然のようにマルカリータが付いていったが、慎悟はもう彼女には何も言わなかった。事前に学校へも行くと言うことは聞いており、本人もいないものとして扱ってくれて構わないと言っていたため慎悟は了承した。
国立魔法科大学付属第一高校、通称『一高』は全国九つある魔法科高校の中でも特に秀でた生徒が多い高校であった。現在三年生であり十師族でもある七草真由美、十文字克人、そして十師族ではないが二人と肩を並べるほどの実力を持つ渡辺摩利は『三巨頭』と呼ばれており、その三人の甲斐あってか一高は九校戦を二年連続で優勝している。
そんな学校なのだから入学できただけでも周りから見れば優秀な人物と思われるが、一高にも闇がある。
それが『一科二科制度』である。一学年の定員は200名の中でそのうち魔法力の高い100名を一科生、残りの100名を二科生としている。そして何を勘違いしたのか分からないが二科生は一科生のスペア扱いであり、肩に一高のエンブレムがついている一科生を『
二科生は施設の利用や資料の閲覧などは許可されているが、彼らにとって最も重要な魔法の個別指導を受けることは出来ない。自力でやって結果を出すしかなく、結果を出せなければ魔法科大学へ進学することは勿論出来ない。
魔法を教えられる教員が不足しているために起きてしまった問題なのだ。
慎悟はこれについては訳が分からないと思っていた。教員が不足しているなら尚のこと二科生にも実技指導の教員をまわすべきであり、たかが試験の結果で何をそんな威張れるんだと理解に苦しんだ。この制度のことをマルカリータに話すと彼女も
『なんともまぁ、愚かなことをしているのですますね』
と呆れた声で言っていた。
そんな問題を抱えている高校の校門に着き、慎悟は入学式が行われる講堂へと歩いて行った。
講堂の中にはすでに多くの生徒が入っておりどこに座ろうかと辺りを見ていた慎悟だが、講堂の様子を見ると顔がだんだんと歪んでいった。
講堂の席はどう見ても前の方に一科生、その後ろに二科生とものの見事に分かれていた。ここまで来るともはや芸術だなと一高の一科二科問題を目の当たりにしてそんなことを思い、わざわざ後ろに座る必要もないなと判断して前の端の方に座った。
ちなみにマルカリータは慎悟の横で自身の杖を横向きに宙に浮かせ、そこに座っていた。
それから入学式は滞りなく進み、あっという間に新入生総代の答辞の時間になった。今年の新入生総代は司波深雪、黒く澄んだ瞳に、背の半ばまである艶やかなストレートの黒髪を持つ十人中十人が振り返る程の美少女であった。
(うわぁ、沖縄で一度見たけど、改めて見ると本当に綺麗だな。これは皆んなが見惚れるのもなっとryゴチンッ!!....イッテェッ!!)
『どうして鼻の下を伸ばしているのですますか?』
『伸ばしてないって.....ってか俺今反応出来なかったんだけど?!どんなスピードで殴ったの?!』
深雪の容姿について感心し、皆んなが見惚れるのも仕方ないなと思っていた慎悟の頭をとてつもないスピードとパワーでマルカリータが杖で殴った。
身勝手の極意を常時発動させている慎悟の反応速度と防御力はちょっとやそっとじゃ超えられるものではないのだが、マルカリータはそれをあっさりと超えてしまった。慎悟じゃなかったら頭なんぞ簡単に消し飛ばしている威力である。慎悟は頭を押さえマルカリータを睨み付けようとしたが、隣の席からヤバい奴を見る視線を感じたためすぐに元の姿勢に戻って深雪の答辞を聞いた。
内容は現在の一高の制度について苦言を呈しているようなもので「皆等しく」とか「魔法以外にも」等々少し際どい発言が何度かあった。慎悟は内心大丈夫かよと思ったが、周りの生徒たちは深雪の美貌やその堂々した態度に見惚れていてその際どい発言については聞いていないようであった。
新入生達は入学式が終了してこのまま解散というわけではなく、そのままIDカードの交付のために残らなければならなかった。IDカードは複数の窓口から配っており、これをもらってようやく一高生としてここで過ごすことが出来るようになる。
慎悟がカードに書かれているクラスを見るとA組と書かれていた。司波深雪もA組であるため、奇しくも慎悟は原作のメインキャラと同じクラスとなってしまった。
『ホームルームはどうするのですますか?』
『う〜ん、一応行っとこうかな。やっぱり友達とかは欲しいし』
入学式が終わったため各クラスではホームルームが行われ、そこでクラスメイト達と顔を合わせ交流を持つことが出来る。さすがにボッチ生活は嫌だと思った慎悟はその足をクラスルームへと向けた。
廊下を歩いていると何故か途中で人だかりが出来ていた。何があるんだと慎悟がその中心にいる人物の気を探ると、司波深雪と司波達也そして先程入学式で挨拶を行っていた生徒会長の七草真由美であった。慎悟は深雪と真由美がいるからこそのこの人だかりなんだと理解した。
特に会話が気になる訳でもなく野次馬する気もなかった慎悟は人を掻き分けて二人と離れた位置から移動しようとした。しかし、一人だけこの人混みから抜け出そうとしている慎悟を真由美が見つけ、廊下に響く大きな声で慎悟を呼んだ。
「あ!そこにいるのは神楽慎悟君!ちょうどいいから貴方もこっちに来て!」
「え?」
『お呼びですますね』
真由美が大きな声を出したため周りにいた生徒の視線は勿論慎悟に行くこととなり、逃げられないと悟った慎悟は大人しく真由美の方へと歩いて行った。げんなりしている慎悟とは反対に真由美はニコニコと顔に微笑を浮かべていた。
「いきなりごめんなさいね、改めまして生徒会長をしています七草真由美です」
「初めまして神楽慎悟です、それで何かご用でしょうか?」
「今司波さんと話していたのですが、そこに神楽君がいたのでついでに紹介しようかと」
そう言って真由美が慎悟に向けていた顔を美雪の方へと向けたが、当の本人は慎悟の方、主に髪に目を向けて驚いたような表情をしており、隣にいた達也も概ね同じような反応をしていた。これにはさすがの真由美も困惑してしまい深雪に声をかけた。
「え〜っと、司波さん?大丈夫ですか?」
「......!は、はい、大丈夫です」
「そうですか、では気を取り直してこちらが神楽慎悟君。今年の入試成績二位の生徒です」
「え.....」
慎悟は真由美の口から出た入試成績二位という言葉に驚いた。生徒たちには首席以外自分の順位は教えられていなかったため、慎悟は今初めて自分の順位を聞いたのだ。驚いている慎悟をよそに真由美は説明を続ける。
「理論の方では点数をいくらか落としていたのですが、魔法実技においては首席である司波さんを超える結果を出しているんですよ」
真由美がそう言った瞬間あたりはシンと静かになり、周りの生徒達は驚愕した。総合成績では目の前の可憐な黒髪の美少女深雪がトップであるが、魔法実技──魔法力に関してはその隣にいるよく分からない銀髪の男の方が上だったのだから無理もない。
場が変な空気になってしまったところで、その状況を壊すために慎悟は深雪に挨拶をした。
「初めまして司波さん、神楽慎悟と言います。これからよろしくお願いします」
「はい、司波深雪と申します。こちらこそこれからよろしくお願いします」
互いに挨拶をした後、慎悟はその流れで隣にいる達也について質問をした。
「えっと、隣にいるのはお兄さんで間違いない?」
「え、はい、私の兄ですが.....」
「そっか、神楽慎悟と言います。よろしくお願いします」
そうして慎悟は深雪の隣にいる達也に向かって自己紹介をし手を差し出した。慎悟のこの行為に対して司波兄妹は驚いたが、達也は努めて冷静に差し出された手を握り言葉を返した。
「あぁ、司波達也だ。同学年だからタメ口でいいし深雪と区別しづらいから俺のことは達也と呼んでくれ」
「そうか、んじゃよろしくな達也。俺も慎悟でいいよ」
「わ、私も!タメ口で構わないですし、お兄様と同じで私のことも深雪とお呼びください」
慎悟は深雪のこの申し出に面食らった。達也から区別するために自分のことを名前で呼ぶようにし妹のことは名字で呼べと暗に言われたと思ったからだ。そんな達也の顔を慎悟がちらりと見ると、向こうも慎悟のことを見て小さく頷いていたため深雪に返事を返した。
「分かったよ、よろしく深雪」
「挨拶はもう済んだようですね、もう少し話をしたいのですが......今日はここで失礼しますね。私も深雪さん.....と呼ばせてもらってもいいかしら?」
「あ、はい」
真由美に話しかけられた深雪は打ち解けた笑みを神妙な表情に替えて頷いた。
「では、深雪さんと神楽君も詳しい話はまた日を改めて」
そう言って真由美は慎悟たちに軽く会釈をしてこの場を去っていった。去り際に真由美の斜め後ろにずっと立っていた一人の男子生徒が慎悟達の方へと振り返ってきた。まるで舌打ちが聞こえて来そうな表情で慎悟と達也のことを睨んできたが、二人ともどこ吹く風といった感じであった。
その後慎悟は達也達に挨拶をしてホームルームに行くことなく家へ帰ることにした。理由は単純にあの場でかなり目立ってしまいとてもホームルームに行く気にはならなかったからだ。
*********
「あの、お兄様.....」
「分かってる、慎悟のことだろう?」
達也達が学友と別れ家へ帰っている途中で、深雪が少し言いにくそうに達也へと声をかけた。深雪が言わんとすることがなんとなく分かっていた達也は深雪が何かを言う前に自分で言葉を続けた。
「あいつの見た目、というより髪は銀髪だった。しかも俺達を助けてくれたあの仮面の男と色の具合がそっくりだ」
「やはりお兄様もそう思われましたか。ですが、あの仮面の人が私達と同い年だということは絶対にありえません」
達也達は先程あった慎悟の髪の色に対して既視感を覚えていた。それは三年前の夏、沖縄海戦に巻き込まれた時に深雪達を助けた仮面の男の髪色だ。しかし、その男と出会った時どう見ても相手は年上であったため達也達と同じ学年に入学してくるなんてことは現実的ではない。かといって慎悟がその男の子供であるというのも考えにくかった。二人は答えの出ない疑問に対して時間を消費していくこととなった。
「明日師匠のところに行くついでに慎悟について相談し、調べてもらおうと思う」
「先生に、ですか?」
「あぁ、俺も自分で調べてはみるが師匠の方が何か分かるかもしれない」
達也は結局慎悟について、自分の体術の師匠であり高名な「忍術使い」でもある九重八雲に尋ねることにするのだった。
*********
『結局ホームルームは行かなかったのですますね』
『あんな悪目立ちした後にホームルームとか胃が痛いわ』
慎悟は学校に残らず、帰り道にマルカリータと今日のことについて色々と話していた。『
『はぁ、マルカリータも気付いてるよな?』
『もちろんなのですますよ、何者かが私達の後を尾行しているのですますよ』
『やっぱそうだよな、このままついてこられても困るしちゃちゃっと瞬間移動するか』
自分の後を複数ではなく一人の人間が追いかけて来ていることは気を探っていたため分かっていたのだが、気のせいだと思いたかったため放置していた。しかし、しばらく歩いていてもその気配が無くなることはなかったので慎悟は瞬間移動を使い一瞬でその場を切り抜けることにした。
それから流れるようにして路地裏の中へと入り、相手から死角になったところで気を探った。そして、マルカリータの手を掴みながら同じマンションに住んでいる住人の気を使って瞬間移動した。位置は微調整したため住人に気付かれることはなく、慎悟は追っ手に悟られることなく帰宅した。
*********
慎悟がその場からいなくなった後、きれいに髪を剃り上げた細身の身体の男が路地裏の方を見ながら右手で頭の後ろを押さえてぼやいていた。
「ありゃ、逃げられちゃったか。でも一体どうやったんだろう?魔法を使った形跡もないし」
彼の名は九重八雲──天台宗の僧侶をしており忍術を昔ながらのノウハウで現代に伝える古式魔法の伝承者。見た目は三十代だが、実年齢は五十五歳であり、法衣をまとっていても「似非坊主」に見える胡散臭さがある。
そんな八雲は何故か慎悟のことを調べ、尾行もしていたが結果はご覧のありさまであった。
「うーん、多分明日あたり達也くんが僕のところに来ると思うけど、どうしたもんかね」
文字だけ見れば何をすべきか悩んでいる男のように見えるが、実際は飄々とした態度で笑っていた。
今回の話は駆け足気味に書いてしまったため、もしかしたら書き直しをするかもしれません。
次回は森崎君のとこまでいくといいなぁ。
感想と評価もお待ちしてます!