ありふれた異世界で剣を振るう   作:オルフェイス

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最奥、深層の守護者

 あのエセアルラウネを倒してからしばらく経ち。俺達は再び迷宮攻略に勤しんでいた。

 

 あのあとユエの機嫌はすぐに戻ったので良かったが、長引くようであれば色々と時間が掛かっただろう。吸血鬼なのだし、血を飲ませて機嫌を治そうかとも考えたが、それはユエ自身に断られた。

 曰く「強すぎて酔う」らしい。何が、とは言ってなかったが、以前も言ってた通り、飲めないらしい。

 

 そういった話もして、まぁどうにか機嫌を元に戻したユエと、エセアルラウネ戦の後から何かと戦闘に出させないようにしてくる南雲との迷宮攻略は順調に進んでいた。

 

 時間こそ掛かれど、確かに一層ずつ降りていくことができている。一層、一層、また一層と降りていき……

 

 ついに、俺達が最初にいた階層から百階目になるところまで到達することができた。

 

 そして百階目という区切りに到達したこともあって、今回は念入りに準備をすることになった。

 

 

「はい、二本目。使うかはわからないけど、予備用に」

 

「ありがとう、助かる」

 

 

 南雲が錬成で作り出した黒刀を手渡される。これは今の俺が持つアーティファクトのように何か特別な機能がついているわけではないが、とにかく頑丈に、鋭くなるように錬成したらしい。せめて純粋な武器としてアーティファクトに劣ることがないように、と。

 

 試しに振ってみた感じ、悪くはない。初めて持つ武器であるので多少の慣らしは必要だろうが、それもすぐに終わる。

 

 

「……二人共、いつもより慎重」

 

「あー、うん。次で百階目だし、ここで何も出ない、なんてことはないだろうから、ここで準備しておいて困ることはないと思って。それに……」

 

「間違いなくヤバいのがいる。それくらいしかわからん」

 

 

 俺の直感が囁き続けているのだ。この百階層には、とんでもない化け物がいるぞ、と。

 強く反応し過ぎて、ろくに眠ることもできないほどだ。ただ、次の敵が強いだけではなく、何か別のものにも直感が反応しているのが気になった。

 

 百階層の、さらに奥。何かがある。それだけしかわからなかった。

 

 

「桜田くんがこう言ってるし」

 

「……納得」

 

「いや、そこまで信じられるのもなぁ……」

 

 

 信じてくれるのはありがたいが、ここまで信頼を寄せられると気恥ずかしくもなってくる。

 

 ここで、俺のステータスプレートを確認しておく。

 

 

 

 

 ===============================

 

 桜田紅郎 17歳 男 レベル:■■

 

 天職:剣■

 

 筋力:1540

 

 体力:1510

 

 耐性:1010

 

 敏捷:4050

 

 魔力:2900

 

 魔耐:2900

 

 技能:剣術[+無拍子][+抜刀速度上昇][+斬撃速度上昇][+斬撃範囲拡張][+斬撃力上昇][+飛刃][+痺剣][+剣想無心][+剣閃領域][+高速抜刀][+荒御刈][+和御喰][+■■]・先読[+思考加速]・縮地[+無拍手][+幻縮地]・気配遮断・威圧[+効力上昇][+特定放射][+殺刃気]・直感[+効果範囲拡大][+危険感知]・求道[+苦境踏破][+鋼心][+■■]・言語理解

 

 ===============================

 

 

 

 

 だいぶバグっていた。

 

 ステータス自体の高さもそうだが、何より一部の技能とレベルが文字化けしてしまっている。なんだよ■■って。レベルは推測できるけど技能になんでこんなのがあるんだ。

 

 この■■は巨大サソリ戦後から現れていたので、その時に何かあったのだと察せられるが……直感でも、これに危険はないことしかわからない。

 恐らく最終決戦になるであろう時に、こんな不安要素を抱えているのはごめんなんだが……技能は消せないため、こればかりはどうしようもない。

 

 

「よし、準備完了」

 

「じゃあ行くか」

 

「んっ」

 

 

 南雲の準備が終わり、階下へと続く階段を進んでいった。

 

 コツコツと音を響かせ、百階層へと到達する。

 

 そこは、無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。柱は奥に進ませるように並んでおり、地面も荒れておらず平らで、荘厳さを感じさせた。

 

 更に奥へと向かうべく、足を動かす。

 

 そしてある程度進んだところで、巨大な扉が現れた。全長十メートルはある美しい彫刻が彫られている。

 そこが、この迷宮のゴール地点であると容易に察せられた。ここを超えることができれば、真に迷宮を攻略したことになるのだと。

 

 しかしながら、そう易々と通してくれるほど甘いわけもない。

 

 次の瞬間には、三十メートルほどの巨大な魔法陣が出現した。しかも、この魔法陣と似たようなものを俺達は既に見ている。

 

 

「っ、これって」

 

「ベヒモス……いや、それ以上だろうな」

 

 

 あの時見たベヒモスの魔法陣より大きく、より複雑な魔法陣。そこから這い出てくる怪物が、この迷宮最後の試練として現れた。

 

 魔法陣が光で弾け、そこから怪物が姿を表す。

 

 6つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼。そして、体長三十メートルは超える巨体。

 

 

「さしずめ、ヒュドラかな」

 

「どちらにしろ、倒すだけだ」

 

「んっ。私達、負けない!」

 

 

 それぞれが武器を構え、目前の敵を睨みつける。

 

 銃を、魔法を、剣を持ち。

 

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

 

 今、戦いは始まった。

 

 

 

 

 

 

 赤い紋様が刻まれた頭から火炎放射の如き炎が放たれる。

 

 それを俺達は別々の方向に避け、そのまま反撃を開始した。

 

 南雲が赤頭をドンナーの火力で吹き飛ばし、まずは一つと思ったところで白頭が一鳴きすれば、たちまちに再生していった。

 

 まず狙うべきはあれだな、と理解し、〝高速抜刀〟を併用した〝剣閃領域〟でもって白頭を切り裂こうとした。

 

 しかしその斬撃は、黄頭が頭を肥大化させて盾のように前に出ることで防がれた。黄頭を縦に斬り殺すことには成功したが、それも白頭が再生させている。

 ユエも自身の魔法で緑頭を吹き飛ばしているが、やはり白頭に治される。

 

 南雲のドンナーとユエの〝緋槍〟が同時に白頭を狙い、それを防ごうとした黄頭に直撃するが、無傷のまま。

 

 

「厄介だな」

 

 

 白頭もそうだが、何より黄頭が厄介だ。あいつ、どういう理屈か知らないが白頭のダメージを肩代わりしていた。〝剣閃領域〟の位置を無視した斬撃を、あいつが予想できているとは思えない。ただ硬いだけ、というわけではないだろう。

 

 仮にヒュドラの頭の色がそれぞれの属性に対応しているとして……赤は炎、黄色は土、緑は風で青は水か氷、白は回復か光……残る黒頭は、闇か。

 

 となれば、やってくるのは精神攻撃。まずは黒頭になにかされる前に殺しつつ、白頭を殺す。これだな。

 

 

『桜田くん!』

 

『隙を作って一斉攻撃、だな?』

 

『話が早くて助かる!』

 

 

 頭の中に、南雲の声が響く。南雲が手に入れた技能の一つ、〝念話〟だ。これを手に入れてからはよりスムーズに連携ができるようになっていた。

 

 作戦内容は簡潔だ。まず俺が黄頭を切る。次に南雲が白頭を殺す。最後にユエが最上級魔法で仕留める。以上。

 

 なるほど、簡単だ。

 

 

『桜田くんが黄色を切ったら、治される前に叩く。駄目押しでシュラーゲンも使うから』

 

『よし、わかった』

 

 

 シュラーゲン───南雲が作り出した切り札と言える武装だ。かつてここより上の階層でとにかく硬くてデカい魔物が出てきたのだが、そいつの身体をまるごと貫通してみせるほどの威力を誇る。

 

 まともに食らわせれば、間違いなく即死させられる。

 

 

 作戦会議が終わったところを見計らったわけではないだろうが、ヒュドラの頭たちが一斉に攻撃を開始した。

 

 炎を、風を、氷を、俺達3人に向かって放つ。

 

 ───しかし。

 

 

「物量が足りん」

 

 

 3人いるためか、攻撃が一箇所に集中しない。故に避けるのは簡単だった。

 残っている黒頭が何かを仕出かす前に〝剣閃領域〟の斬撃で斬り殺す。

 

 そうすれば、白頭は黒頭を治すために力を使うだろう。

 

 けどそれは、一体ずつにしかできない。俺にはわかる。勘だけどな。

 

 

「だから隙だらけだ」

 

 

 黒頭を完全に治される前に、刀を振るい黄頭を斬り殺す。

 

 これで、準備は整った。

 

 

「南雲!」

 

「わかってる!」

 

 

 南雲が背中に背負っていた特大のライフル、シュラーゲンを脇に抱えて標準を合わせた。

 

 それが危険だと、ヒュドラにも理解できたのだろう。他の残っている頭が白頭を守るために南雲の前へと立ち塞がり───

 

 

「砕けろ!」

 

 

 そのまま、シュラーゲンの放った閃光の如き一撃によって打ち砕かれた。立ち塞がった頭はもちろん、一番後方にいた白頭も含めて貫き消し飛ばされ、ヒュドラはそのまま死に絶えた。

 

 ……ように、見える。

 

 あまりに呆気なく、苦戦らしい苦戦もしていない。本当にこれで終わりなのかと思ってしまう。

 

 ───いや、まだ終わってない。

 

 

「倒した?」

 

「いや、まだだ。ユエ、最上級魔法の準備を」

 

 

 俺の直感は、今尚目の前の脅威が死に絶えていないことを告げている。頭はすべて消し飛ばし、動けるはずはない。しかし、こいつは動くはずだ。そう確信できた。

 

 

『桜田くん?』

 

『ユエに最上級魔法を撃たせる。ヒュドラから離れていてくれ』

 

『……わかった』

 

「紅郎、いつでも撃てる」

 

「よし、なら撃ってくれ。あとは、念の為」

 

「……っ!」

 

 

 南雲との距離は、多少離れているがすぐに近付ける。多少の不意打ち程度、避けてみせるだろう。

 

 一番脆く、動きが遅いのはユエだ。すぐにでも動き出せるように、ユエを片手で抱えてヒュドラを睨みつける。

 

 ユエは少し驚いたように身体を硬直させているが、今は状況が状況なので我慢してほしい。

 

 

「……〝蒼───」

 

 

 ユエが最上級魔法を繰り出そうとした、その瞬間。

 

 

 

 ムクリと銀の頭が胴体から起き上がり、予備動作もタイムロスもなく、極光のブレスを吐き出した。

 

 ───自身の下へと向けて。

 

 まるで、赤頭が繰り出した火炎放射のように。極光のブレスは、着弾点を中心に広がっていく───それは壁であり、その大きさは上に逃げるという手段も奪っていた。

 

 

「───あぁ、くそ」

 

 

 考えが甘かった。これは、避ける、避けないの問題ではない。

 

()()()()()()()()。これは、そういう攻撃だ。直感が警報を鳴らしている。まともに喰らえば死ぬと。

 

 もしものために、ユエを抱えていて良かった。もしも二人の場所が離れていたなら、間違いなく片方しか間に合わなかった。

 

 今なら、間に合う。

 

 

「───南雲ぉぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────銀頭が極光を放ったとき、ユエとハジメの二人は全く同じ行動を起こしていた。

 

 

「───天〟」

 

 

 まず、ユエは放ちかけていた〝蒼天〟を、迷うことなく撃ち放った。

 

 防御も回避も無駄であるなら、せめて極光を吐き出させる時間を短縮させるために、最大威力を喰らわせる。

 

 それが、今のユエに出来る最良であり、そしてこの場における最良の選択だった。

 

 

「クルァァァァァァ!!」

 

 

 ユエの放つ最上級魔法。極光を放っている最中だったヒュドラには防ぐことも避けることもできず、まともに喰らったことで、その巨体を蒼き炎が焼いていく。

 

 ──────しかし死なない。身体は焼け爛れ、極光を放つのを中断させたとしても、なお死なない。

 先程までのヒュドラならば、ユエの魔法を喰らえば即死はしないまでも、動けないほどの大ダメージは受けていたはずだ。

 

 だが今のヒュドラは、先程までのヒュドラよりも強い。耐久度も、攻撃力も、防御力も、全てを上回っている。だから倒しきれない。

 そして、紅郎たちに迫る死は、依然変わりなく。このままでは全員死ぬしかない。

 

 ─────一方、ユエが攻撃を行ったのに対して、ハジメもまた同様のことを行おうとしていた。

 

 即ち、〝殺される前に殺せ〟だ。

 

 

「───」

 

 

 幸いにも、時間はあった。

 

 紅郎がヒュドラから離れているように言ったおかげで、ハジメはシュラーゲンを構え放つだけの時間ができた。

 

 ユエが〝蒼天〟を放ちヒュドラに大ダメージを負わせたことも、紅郎が〝蒼天〟を放ったユエを抱えてこちらに来ていることも、把握している。

 

 そして信じていた。紅郎が、何の対策もなくこちらに来るはずがないと。

 

 だから信じて、ヒュドラを攻撃した。

 

 その選択は、この場において最善の選択だった。

 

 

「グルァァァァァ!!?」

 

 

 ユエの〝蒼天〟をまともに喰らってダメージを負っていたヒュドラに、さらに追い打ちを掛けるようにシュラーゲンの閃光の如き弾丸がヒュドラの身体に大きな風穴を空けた。

 

 今のヒュドラであれば、ダメージは負っても貫通などしないはずだった。そのための防御力が、備わっているはずだった。

 

 しかしその防御力も、ユエが〝蒼天〟で焼き溶かしたせいで意味を成さない。立て続けに攻撃を喰らったヒュドラは、もはやろくな動きはできないだろう。

 

 しかしながら、それでも充分過ぎる。なぜならヒュドラの目的は侵入者の抹殺であり、例え自分が死んでも相手も死んでいれば良いのだ。

 

 ヒュドラの勝ちは揺るがない──────ただし、手が残されていないのなら、だ。

 

 

「間にっ、あった!」

 

 

 ユエを抱えて〝縮地〟を使い、一直線にハジメの元に向かった紅郎は、片手にいるユエを降ろし、刀を構えた。

 

 それも二本。アーティファクトを加工したものと、ハジメが自作したものだ。

 あくまで二本目は予備という扱いでしかなかったが、今はこの二本目が必要だった。

 

 一本では、防ぐのには足りない。

 

 

「ユエっ、南雲っ、動くなよ!」

 

 

 迫りくる極光の壁。もはや猶予は残されておらず、即座に極光に対して構えると、その技を使った。

 

 

「〝和御喰(にぎみじき)〟!」

 

 

 和御喰。それは、あらゆる事象を飲み込み巻き込む技。攻撃もそうだが、なにより防御にも使える特性を持つ。

 紅郎は迫りくる極光を二本の刀で巻き取り、決して後ろの二人に極光が届かないようにした。

 

 まるでブラックホールのように極光が吸い込まれ、刀に集っていく。

 

 二つの刀は銀色の魔力光に輝き、集う中心である刀を、そして握り手である紅郎の身体を()()させていく。

 

 

「だろうな……っ!」

 

 

 サソリモドキ相手にユエの〝蒼天〟を巻き取ったのとはわけが違う。あれは掠めて奪い取ることで力を上げたが、今回は防ぐ用途として使った。

 であれば、何の対策もされていないモノが極光に耐えられるわけもない。ユエの〝蒼天〟は一瞬だけで、なおかつ炎であったから相性が良かっただけなのだ。

 

 ───だから、壊れる前に決める。

 

 

「極光───」

 

 

 これは再演だ。あのサソリモドキにやったように、一撃で両断する。

 だが、〝和御喰〟だけでは駄目だ。ヒュドラが巨大すぎて両断できない。

 

 だから、混ぜ合わせる。〝和御喰〟と〝荒御刈〟、両方を同時に使え。そして一撃で決めろ。次の攻撃をするだけの余裕は、もう残されていない。

 

 ここで、殺せ。

 

 

「───〝紅刈喰(べにかりぐらい)〟」

 

 

 極光の集中した二本の刀を、そのまま振り下ろす。

 

 距離もなく、長さも足りていないはずのその斬撃は。

 

 ヒュドラの身体を、三枚に卸した。

 

 

「グル、ァァァ……?」

 

 

 何が起こったのか──────それを理解する前に、ヒュドラは今度こそ息絶えた。

 

 三枚に分けられた死骸は崩れ落ち、もう動く気配もない。紅郎の直感にも反応はなく───今度こそ、勝ったのだと理解した。

 

 

「……あ”ぁ“」

 

 

 何かを喋ろうとしたが、喉にまで極光が入り込んだのかまともな声が出せない。

 

 そして極光を一点に集めた反動か、視界が暗くなる。「あ、これ倒れるな」と考えるまでもなく察した紅郎は、持ち前の精神力を発揮することもなく倒れ伏し……そのまま気絶した。

 

 最後に見たのは、こちらに駆け寄る二人の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、状況説明」

 

「紅郎、倒れた。アイツを倒したら魔法陣が出てきた。安全確認して、みんなで入った。多分、反逆者の住処」

 

「簡潔な説明ありがとう」

 

 

 気付けば清潔なベッドに寝かされていた俺は、ヒュドラを倒したあとの記憶がなかった。多分範囲が大きすぎるヒュドラのブレスに〝和御喰〟を使い、なおかつ試したこともない〝荒御刈〟との同時使用が身体に負担をかけたのだろう。

 

 なんでも刀は両方とも崩れ去り、身体は至るところに裂傷があり血が止まらなかったそうな。ポーションを飲ませても治せず、むしろ少しずつ傷が広がるものだからポーションを飲ませつつユエが慣れない回復魔法を使って三日三晩掛けてようやく完治した、らしい。

 

 

「……反省して」

 

「ほんとに申し訳ない」

 

 

 正座で謝罪しました。

 

 ちなみになぜかユエが裸だったりしたが、俺は何も見ていない。そう、直感に反応したから目を開けていないのだ。ベタベタくっつかれたりされてるのが肌で感じ取れるが、俺は絶対に目は開けません、はい。

 

 

「でも、治って本当に良かった」

 

「……あぁ、本当にありがとう。危うく死ぬところだった」

 

「んっ!」

 

 

 抱きつかれてるせいで女の子の柔らかい肢体やらなんやらがダイレクトに伝わってくるが、俺は目を開けない。

 何やら視界内に死んだ爺さまが出てきて「ほれ、目を開けてみぃ」とかほざいてるが、目を開けたが最後、多分俺は逃げられないので開けません。

 

 ……幸いだったのは、俺には服を着せられていることだろうか。

 

 

「……紅郎、どうして目を瞑ってる?」

 

「ユエ、お前はいま裸だ。俺にはわかる。だから目を開けるわけにはいかんのだ」

 

「……むしろ見て」

 

「断るっ!」

 

 

 部屋の中は、直感と視覚を除いた四感で何があるのかはわかるので、とりあえずベッドから降り───ようとしたところで、バタンと扉が開く音が聞こえた。

 

 それが誰なのかなんて、考える必要はないだろう。

 

 

「あっ! 桜田くん起き───ねぇユエ、なんで裸なのかな」

 

「……話せば分かる」

 

「話せば分かる。ふーん、なるほどね? 

 

 

 こんのっ、色ボケ吸血姫! なんで起きたばかりの桜田くん相手に夜這いかけてるの!? この節操なしっ!」

 

「節操なしじゃないっ! 私、処女!」

 

「それこんなところで暴露していいことじゃないよね!?」

 

 

 南雲がやってきて、場が混沌としてきた。

 

 なんだろう、ヒュドラ戦とは別に、何か他の命の危機を感じる。

 

 でも、聞いてみた感じだと南雲も五体満足らしい。それは良かった。

 

 俺の命を天秤に掛ける必要があったが、その甲斐はあったな。

 

 ……しかし、安心したからか今度は別の問題が起こってしまった。

 持ち前の身体能力で逃げたユエを即座に捕らえて布団で縛り上げた南雲に、空気を読まない挙手をあげた。

 

 

「はい、南雲母さん」

 

「母さんではないけどっ! はい桜田くん!」

 

「とりあえずお腹が空きすぎてヤバいので、何か食べたい」

 

「……それは、一大事だね」

 

 

 考えてみたら、俺ってば何週間も何も食べていないので、お腹がヤバい。

 

 そんな俺の発言になんとか怒りを収めた南雲は、ユエを捕えながらも食べ物のある場所へと案内してくれたのだった。

 

 

 

 

 

===============================

 

桜田紅郎 17歳 男 レベル:■■■

 

天職:剣■

 

筋力:3140

 

体力:3110

 

耐性:2010

 

敏捷:8410

 

魔力:5800

 

魔耐:5800

 

技能:剣術[+無拍子][+抜刀速度上昇][+斬撃速度上昇][+斬撃範囲拡張][+斬撃力上昇][+飛刃][+痺剣][+剣想無心][+剣閃領域][+高速抜刀][+荒御刈][+和御喰][+剣■]・先読[+思考加速][+未来予測]・縮地[+無拍手][+幻縮地]・気配遮断・威圧[+効力上昇][+特定放射][+殺刃気]・直感[+効果範囲拡大][+危険感知][+直観]・求道[+苦境踏破][+鋼心][+剣■]・言語理解

 

===============================




【紅刈喰】
荒御刈、和御喰の合わせ技。全てを切り裂き、全てを喰らう。
この技も含め、今後取得した技は全て【剣■】の●●とされ、技能として表示されることはない。
技能として表示されている荒御刈と和御喰は、【剣■】ではなく▲▲としての技なのだ。




『裏話』
今作においてヒュドラは原作より強い設定になるはずだった。
具体的に言えば銀頭が出れば他の頭も復活するし、より強力になった固有魔法を使ってくる。
……はずだったが、最大火力連続ブッパによって紅郎に重傷を負わせるだけの戦果となってしまった。

もし出番を作ることがあれば、最初から全力モードのヒュドラくんを出したいところ。
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