ありふれた異世界で剣を振るう   作:オルフェイス

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第二章です。

まだ全部は出来てませんけど、出来上がってる分は投稿します。


第二迷宮・ライセン編
外へ、その先には兎さん


 ───魔力光が視界を包み、目から何も映さなくなった。

 

 しかし、しばらくすれば光は収まり見えてきたのは……洞窟だった。

 

 ……うん、まぁ、とりあえず。

 

 

「よし行くか」

 

「洞窟に出たことにはノーコメントなの……?」

 

「……秘密の通路は、隠されてるから秘密の通路。バレたら意味ない」

 

「あー、なるほど」

 

 

 ささっとユエが説明してくれたが、ここがまだ洞窟なのは通路を隠しているからだ。バレやすい通路など、探してくださいと言っているようなものなのだ。

 

 それに、直感も特に反応していない。なら、危険はないと判断してしまっても良いだろう。

 

 三人全員が無事にいることを確認して、続く洞窟の先へと進んでいく。

 

 途中には扉やトラップがあったが、それも南雲が持っていたオルクスの指輪によって解除され、危険もなく進むことができた。

 

 そうして進んでいくと、光が見えた。魔力などで照らされた光などではない、本物の……そう、太陽の光だ。

 

 三人で目を合わせ、そして同時にコクリと頷きあった。

 

 足を動かす速度を速め、しかし最低限の警戒は怠らず─────その、光の先へと到達した。

 

 

 そこは、地上だった。

 

 

 今いる場所は谷底であるらしく、断崖絶壁が見上げることができた。相当に深いらしく、真上に顔を向けると太陽の光が見えて眩しかったので、手で光を遮った。

 

 そこは、少し地上と評するには深い場所ではあったが──────しかし、確かに地上だ。

 

 南雲や俺からすれば数カ月ぶりの。ユエからすれば何百年もの間、見ることのなかった光。

 

 俺達は、ついに地上に出ることができた。

 

 

「……久しぶりに見たな、太陽」

 

「ついに、戻ってきたんだね」

 

「んっ」

 

 

 二人も久しぶりの太陽に、いや地上に出れたことに感動しているようだった。太陽の光の暖かさが、身体に染み渡るようだ。

 しばらくこうして見上げていたいくらいだが……まぁ、流石に場所が場所か。

 

 真上に向けていた顔を戻し、隣にいるユエと南雲に伝えた。

 

 

「感動しているところ、本当に申し訳ないんだが……敵だ」

 

「……まぁ、そりゃいるよね」

 

「……無粋」

 

 

 辺りを見渡せば、いるわいるわ魔物の数々。

 

 ……しかしまぁ、脅威ではない。というより、オルクス大迷宮の魔物に比べて弱すぎる。

 

 耐久力、防御力、知能、攻撃力、速力、全てにおいて劣っている。

 

 だから、戦いすら起こることなくすぐに終わった。

 

 腰に下げている刀の鍔を切り……そのままチンと収める。それだけの動作で、全てが終わっていた。

 

 

「さて、行くか」

 

「相変わらず規格外だよねぇ」

 

「……ちょっと意味がわからない感じはする」

 

 

 散々な感想だが、俺が実際にやったのは簡単なことだ。範囲が広がってきた〝剣閃領域〟を使い、同時に両断した。ただそれだけのことだ。

 

 最近になって同時に斬撃を何個も繰り出せるようになったので、雑魚潰しなどには丁度いいだろう。

 

 

「というかここって、ライセン大峡谷だよね」

 

「あー、確か魔法が使えない場所、だったか?」

 

「……使えないわけではなさそう。でも、魔力が大量に持っていかれる」

 

 

 ユエが試しにと初級魔法を手元に浮かべてみせたが、普段見ている魔法よりも幾分か小さく、弱々しい。

 通常通りに魔法を使おうとすれば、こんな感じになってしまうのだろう。

 

 戦力外、とは言わないが、戦力低下は免れないだろう。

 

 

「んー……〝纏雷〟を使ってみた感じ、ざっと通常の十倍くらい魔力がいるかな。まぁ使えなくもない、か。長期戦闘は避けたほうがいいね」

 

「……ここ、紅郎の独壇場」

 

「そうなるよな」

 

 

 俺の技能って魔力とか使わないもんな。そりゃあ俺の独壇場にもなる。

 

 そんなことはさておき、ここに魔物が沢山出てきたわけだが……ここが大迷宮の一つである、ということはないだろう。

 単純に弱すぎるし、余りにも隠し通路と近すぎる。ライセンが攻略出来てしまえばすぐにオルクスに行けてしまうのだ。

 

 なので、ここは大迷宮ではない。あるとしても、分かりにくい場所にある可能性のほうが高そうだ。

 

 

「というのが俺の考えなんだけど」

 

「同感。紅郎が規格外にしても、何の反応もできてない時点で駄目だよね」

 

「ん、弱い」

 

 

 すぐに納得してくれた。流石である。

 

 確か、ライセン大峡谷は東西に伸びた断崖だったはず。特に分かれ道もないと記憶しているので、真っ直ぐ進むだけで良かったはずだ。

 

 こんなところを長々と歩くのは時間が掛かりすぎるので、早速南雲先生のアーティファクトの出番である。

 

 

「じゃあ四輪で行こうか」

 

「任せる」

 

 

 南雲は〝宝物庫〟から四輪の車を取り出すと、そのまま乗り込んだ。俺とユエも続いて乗り込むと、車は静かに発進した。

 

 燃料が魔力だからか、まったく音がせずガタガタと揺れもしない。なんでも走らせているのと同時に〝錬成〟で道を平らにしているのだとか。うまいことを考えるものである。

 

 ちなみに俺は助手席には乗らず、後ろの方に乗っている。それはユエも以下同文。

 何かしてきそうなユエを一人で隣に置けば何かしらしてきそうなものだが、未だに何もない。

 

 それもこれも、南雲のおかげなのだが。

 

 

「……ハジメ、これ外して」

 

「やだなぁ、外したら何するかわからないでしょ? だから駄目」

 

「…………けち」

 

 

 南雲がユエが乗った瞬間に〝錬成〟でユエの座った部分の形を変えて、足の部分を固定したのである。これで動けないわけだ。

 ……まぁ壊されたら意味ないんだけど。流石に派手に壊したらいけないのはわかっているのか、ユエも壊そうとはしていない。

 

 魔力で肉体を強化して、今尚抜けようと藻掻いてはいるが。

 

 

「……?」

 

 

 しばらく走り続けていると、ふと何か引っかかった。

 

 魔物……は、南雲が見つけ次第サーチ・アンド・デストロイしてるので除外。

 直感は……なんだろう、人がいますよ〜、みたいな緩い反応を出してくる。というかこんなキャラのあるやつだったかこいつ。

 

 そんなことを思っていると、遠くから魔物の咆哮が聞こえてきた。かなりの大声量だ。相応に大きい魔物に違いない。

 少なくともさっき倒した魔物よりかは強いのだろう。

 

 南雲は咆哮が聞こえても進行方向を変えず進み、突き出した崖を回り込んだ。すると、向こう側に大きなティラノサウルス……のような双頭の魔物がいた。

 

 そして、足元には逃げ回っている兎耳を生やした少女が──────いたので、さくっと助けることにした。

 

 

「よっと」

 

 

 とりあえず車から降りて、刀を抜き振り下ろす。〝剣閃領域〟が使えれば楽なんだが、残念ながら範囲外なので〝飛刃〟を使うことにした。すぐに斬撃が当たるのは前者だが、より遠くまで行くのは後者なのだ。

 

 飛ばされた斬撃はティラノモドキに命中し、そのまま左右に両断された。

 ウサミミは呆然としながら、死んでいったティラノモドキを見つめている。

 

 

「……あれって助けて良かったの?」

 

「害もなさそうだし、良いかなと」

 

 

 直感も悪いやつではないと反応してる。多分大丈夫だろう。

 流石にこれ以上の手助けはしてやれないが……あとはまぁ、自分でなんとかしてもらおう。

 そう思っていたのだが……

 

 キョロキョロと辺りを見渡していた兎耳の少女が、こちらを見つけた。

 見つけて──────なんと走り出した。こっちに向かって。

 

 

「……紅郎」

 

「あーうん。なんか感謝の言葉でもくれるんじゃない、か?」

 

「それ、フラグって言うんだけど知ってる?」

 

 

 知ってるけど言わないでほしかった。

 

 なんてことを思っているうちに、どんどん近付いてくる兎耳の少女─────車に乗って何処かに行くという選択肢もあったが、直感が妙な反応を示してくるので一旦やめた。

 

 

「……待つの?」

 

「あぁ、ちょっとな」

 

 

 しばらく待っていると、這い上がってきた兎耳の少女が疲れのあまりか、四つん這いになりながらぜーはーぜーはーと息を吐いている。

 

 

「何か用か? 助けた礼なら言わなくてもいいが」

 

「そ、その節はどうもありがとうございます……」

 

「礼儀正しいな。じゃあそういうことで」

 

「って待ってくださーい! 話を、せめて話だけでも!」

 

 

 大丈夫そうだったので去ろうとしたらガシリと足を捕まれ離れようとしない。いやまぁ、この程度の力なら無理矢理に引き剝がすことも出来なくはないのだが、それだとこの少女が傷付いてしまうだろうしなぁ。

 

 などと悠長に考えていると、先程まで見ているだけだった南雲がこちらに近付き───

 

 

 ガシリ

 

 

「はえ?」

 

 

 少女の首根っこを掴んで──────

 

 

「ア────ー!!」

 

 

 崖の下へ放り投げた。

 

 

「死なないか、あれ」

 

「死んだらそれまでだよ。ほら、行こう」

 

「……ハジメ、そろそろこれを外してほしい」

 

「あぁごめん、すぐ外すから。でも何かしようとしたらすぐに固めるからね」

 

「……仕方ない。今は諦める」

 

 

 もはや先程のウサミミ少女のことなど綺麗サッパリ忘れ、車に乗り込もうとしている南雲。元から気にしていなかったユエは平常運転だった。

 

 ……うちの女性陣たち、容赦ないな。

 

 仕方ないので早速車に乗り込もうとすると─────足が重くなっていることに気付いた。

 

 なんとなく理由に察しがついて、下を見ると……

 

 

「に、逃しませんよぉ! 話を……具体的には私の仲間を助けてもらうまで離しません……!」

 

 

 どうやって来たのか、先程よりもボロボロになって俺の足にしがみついていた。涙や鼻水が服にくっついて正直汚い。

 顔を見るに、元は可愛らしい少女なのだろうが……諸々のせいで色々と台無しである。

 

 というかだいぶ図々しいな、こやつ。

 

 

「……とりあえず、話は聞こう」

 

 

 多分話を聞かないとずっと付いてくる気だろうからな、この兎耳は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話を聞いたので、結論だけ言うと。

 

 

「駄目です」

 

「そんなぁ!?」

 

 

 曰く、この少女─────シア・ハウリアと名乗った兎人族は、元々【ハルツィナ樹海】で数百人規模の集落でひっそりと暮らしていたのだとか。

 兎らしく聴覚や隠密行動が得意らしいが、如何せんそれ以外のスペックが他の亜人族と比べて低く、さらには温厚で争いを嫌うため、格下と見られがちであったそうな。

 しかし亜人族の中では一、ニを争うほどに家族の情が深い種族でもあるようだ。

 

 さらには容姿端麗であるため、帝国などに捕まると愛玩奴隷にされることも珍しくないらしい。

 

 まぁこのシア・ハウリアを見ていれば、それにも納得できる。さっきまで顔を汚しきっていたが、今は真面目に話してるので容姿端麗であることも分かる。

 

 本来なら樹海深部にある亜人族の国【フェアベルゲン】に兎人族も属していたようだが、諸々の事情があって樹海から出ていくことになり、未開地である北の山脈地帯を目指していたらしい。

 

 その、諸々の事情とは、当の本人であるシア・ハウリアが原因であるそうだが……今は省こう。

 

 北、となればこことは違う場所を目指していたらしいが……樹海を出た途端に帝国の兵に追い回され、半数以上が捕まりながらもここに辿り着いてしまったらしい。なんでも苦肉の策だったとか。

 

 で、さらにはここに住む魔物のせいで更に数を減らし……どうにか助けを求め、ここまで来たようだ。

 

 まぁ辛い思いをしたのだろうな、とか、そういう同情がないわけではない。しかしそれだけで見知らぬ他人を助ける理由になるのかといえば、それはない。

 

 

「納得できないだろうから一つずつ説明していくぞ。まず、助ける理由がない」

 

「理由、ですか?」

 

「あぁ。俺にはお前を含めた仲間を助けるメリットがない。無償で助けてくれなんて、虫が良すぎるだろ。

 二つ目。俺達には旅の目的がある。ここで時間を潰している暇なんてない」

 

 

 まずどの七大迷宮を目指すにしろ、時間は有限だ。見知らぬ誰かのために労力を割き続けていては、先に進むことなんて出来ない。

 

 まぁぶっちゃけシア・ハウリアだけなら連れて行ってもいいんじゃないかとは思っている。樹海の案内人も、最低一人は必要だろうからな。

 しかし逆に言えば、連れて行くのは一人だけでいい。他の兎人族を連れて行く理由はない。

 

 

「それに、お前たちを助けるかはどうかは俺の一存で決められることじゃない。俺にも、仲間がいるからな」

 

 

 他人と仲間。誰を優先するかと言えば、考えるまでもなく後者だ。全部を助けられるほど、俺は器用でもなければ万能でもない。

 

 俺も結局、仲間に助けられてばっかりの男だしな。

 

 

「助けてあげてもいいんじゃないかな」

 

「ん、問題ない」

 

「えっ!? い、いいんですかっ!」

 

 

 なんか問題ないらしい。俺の仲間は懐が広いようだ。

 

 

「さっきも紅郎が言ったけど、何の対価もなしに助けるわけじゃない。元々は【ハルツィナ樹海】にいたっていうなら、そこの案内をしてもらうから」

 

「……代わりに、命は助ける。紅郎はそれでいい?」

 

「大丈夫だ。ユエと南雲が良いなら、何の問題もない」

 

 

 正直、このまま見捨てるのは後味が悪かったので助かった。シア・ハウリアの先程までしょんぼりと萎んでいた兎耳も、嬉しさのあまりかピン! と立ち左右に揺れている。

 

 感情表現が分かりやすいが、亜人族の耳とはだいたいこのようなものなのだろうか。

 

 

「あ、ありがとうございますっ! 良かった、これで家族が助かる……あ、それで、三人のことはなんと呼べば……」

 

「……紅郎だ。それだけ覚えていたらいい」

 

「私は南雲ハジメ。ハジメでいいよ」

 

「……ユエ」

 

「紅郎さん、ハジメさん、ユエちゃんですね」

 

「……さんをつけろ残念ウサギ」

 

「残念っ……!?」

 

 

 シア・ハウリアが口を滑らせたせいで、いきなり剣呑な雰囲気に成りかけているが……それはともかく。

 

 こうして、俺達の旅に同行者が一人増えることになるのだった。

 

 

 

 

 




【■■武■】
現在、閲覧不可。
いずれ明かされ、力となることは●●で把握されている。
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