ありふれた異世界で剣を振るう   作:オルフェイス

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第七話。
自分で忘れないようにするために前書きしてます。


散策、買い物へ

 

 マサカの宿で夜を過ごし、起きて朝食を取ると南雲は用事があるからと少し部屋に籠もることになった。

 

 なんでも数時間もあれば終えられるらしい。

 

 

「構想は出来てたし、本当なら昨夜にはやろうと思ってたんだけど……」

 

「……」

 

「ユエ? 目を逸らしても事実は変わらないからね?」

 

 

 なんか、すみません。そう謝りたくなった。

 

 まあそんなことがありつつも手持ち無沙汰になった俺達三人は町に買い物に出かけることになった。

 

 具体的な目標は食料品関係と薬関係、それとシアの衣服である。流石にハウリアの衣装のままでは少し防御力的に不安があった。

 

 そうしてギルドの受付ことキャサリンさんの地図を頼りに店を回っていくことになった。

 

 ……出ていく前に南雲にすごく心配そうにされたが。主にユエが何かしないか、という感じで。

 

 シアに関しては「そういう感じじゃなさそうだから、多分大丈夫?」とのことらしい。

 

 時間帯としては昼頃になるまで数時間ほど。なので帰る時間もそのくらいが好ましい。食料品関係の店は時間帯的に混むらしいので、ひとまずシアの衣服を買うことになった。

 

 そんなわけで、キャサリンおすすめの冒険者向きの店だという場所に向かった……のだが。

 

 

「あら~ん、いらっしゃい♥可愛い子達ねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~、た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♥」

 

「おぉ」

 

 

 思わず声が出てしまうくらいには、見たことがない感じの人がいた。

 

 まず、身長がデカイ。普通に2mを超えてる。

 

 そして筋肉が凄まじい。一瞬とはいえベヒモスを想起させた。

 

 さらには顔面。化粧がかなり濃い。こんなに濃いのはテレビで見た役者くらいか。

 

 ついでに添えるように可愛らしい髪型。長い髪が三つ編みに結われピンクのリボンで纏められている。

 

 ……正直、見たことがない人種だった。ユエとシアも硬直しているのが気配でわかる。

 

 しかしまあそれはそれとして。

 

 

「シアの……彼女の旅の衣服を探してまして。何か良いものはありますか?」

 

 

 衣服の店だというのなら、ひとまず店員もしくは店主に聞くのが一番手っ取り早い。

 

 ユエとシアからの驚愕の視線を受けつつ、俺は何か良い服はないかと聞くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~、最初はどうなることかと思いましたけど、意外にいい人でしたね。店長さん」

 

「ん……人は見た目によらない。けど、紅郎もすごかった」

 

「そうですよ! いきなり何事もなかったかのように話しかけて、私達びっくりしたんですよ!?」

 

「何事もなかったんだから、それが正しいはずなんだけどなぁ」

 

 

 無事に買い物を済ませ店を出ていく。

 

 この短期間で店長……クリスタベルという名前らしい……への印象はがらりと変わり、気遣い上手であることも判明した。やはり人は見た目ではない。(ハート)なのだ。

 

 

「何か通じ合うものでもあったんですかねぇ……」

 

「ん、見事にハートキャッチしてた」

 

「そうか?」

 

 

 ちなみにクリスタベルからはすごい熱視線を貰っていたが、特に何事もなかったとだけ言わせてもらう。

 

 最初こそ何か起こりそうだと思っていたが、案外このまま何事もなく買い物を終えられそうか……と思っていたのだが。

 

 

「「「「「ユエちゃん、俺と付き合ってください!!」」」」」

 

「「「「「シアちゃん! 俺の奴隷になれ!!」」」」」

 

「頭おかしいのかこいつら」

 

「ん、気にしたら負け。行こう、紅郎」

 

「えっと、道具屋さんはこっちらしいですよー」

 

 

 思わず悪口が出てきたが、ユエは全く気にしておらずシアに至っては極力視線を向けないようにしていた。

 

 二人共、美少女だというから告白したい、付き合いたい、というのは理解できる。男の欲求……いや、男女関係なく持つ欲望というものだ。

 

 けどさぁ……普通、人のいる場所で、しかも複数同時に告白及び奴隷になれとか……人としてないだろ。それで受けて貰えると思っているのならもはや病気だと思う。

 

 

「ん、同意」

 

「紅郎さん、中々キツイこと言いますね……いえ、気持ちはわかりますけど」

 

 

 二人からも同意を得られた。まあ、だろうな。

 

 告白してきた男たちの何人かは俺の言葉に胸を抑えたが、しかし諦めきれない男もいるもので。

 

 

「そ、それでも……それでも君のことが好きなんだー!」

 

 

 そう叫んで飛び上がって……なんか見たことある構図だな。なんだっけ、確かルパ─────

 

 

「〝凍柩〟」

 

 

 空中に飛び上がった男を、ユエが魔法を使って氷に閉じ込めた。最低限呼吸は出来る程度に手加減したらしいが……

 

 どうやら他にも、諦めの悪い男が何人もいるらしい。ユエの魔法を見ても諦める様子がないのは褒めればいいのか、飽きれればいいのか。

 

 ここは〝殺刃気〟……は強すぎるから〝威圧〟を使って脅して……

 

 そう思考していると、男を閉じ込めていた氷が一部溶けて、そこにユエが近寄っていく。しかしなぜか股間部分だけが溶けてるように見えるのだが……

 

 え、まじか。

 

 

「あ、あの、ユエちゃ────」

 

「……漢女(おとめ)になるがいい」

 

 

 そうユエが言って、風の魔法が連続で男の股間に……うわぁ、これ実況したくないんだけど。

 

 ……とりあえず、南無。

 

 流石にこれを見てユエに近付こうという猛者はいなかったらしく、今度こそ何事もなく買い物を済ませ、マサカの宿に帰宅することが出来た。

 

 ちなみにこの一件でユエが男を震え上がらせる〝股間スマッシャー〟などと呼ばれることになったり、女の子から熱視線を貰ったりしたらしいが……そんなことは関係なく、俺が思ったことは一つ。

 

 ユエは怒らせないようにしよう。シンプルにそう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、シア」

 

「これは……?」

 

「シアの新しい大槌だよ。手に持って魔力を流してみて。あ、重たいから気をつけてね」

 

「は、はい……っと、本当に重たいですね。これで……わっ!」

 

 

 買い物を終えた俺達は南雲の待つ宿に帰宅し、南雲が作っていたシア専用の大槌を渡していた。

 

 どうやら様々なギミックが施されているらしく、南雲の技量の向上によって随時アップグレードしていくらしい。

 

 先程までは円柱に取っ手がついているだけだったものは、魔力を流すことで本来の大槌のアーティファクトとしての姿を露わにしていた。名前はドリュッケンというらしい。

 

 

「これなら滅多なことじゃ壊れないし破壊力も抜群。ギミックで戦闘の幅も広がる。大迷宮に挑むんだから、最低でもこれぐらいはないとね」

 

「ハジメさん……!」

 

「それにシアはこの中だと一番弱いし、こういうところで戦力向上させておかないと」

 

「ハジメさぁん……」

 

 

 南雲の言葉に感情が上下するウサミミ。キラキラした目をしたかと思えば落とされてしょんぼりとしている。

 

 シアはいじられキャラとして定着しつつあるのかもしれない。まあ弄りやすそうな性格してるしなぁ。

 

 

「そういえば、町中が騒がしかったけど何もなかった?」

 

「あぁ。無事に……うん、無事に何事も起こらなかったぞ」

 

「なんだか含みがある言い方……本当に大丈夫だった?」

 

「ん、問題ない。この町に一人の漢女(おとめ)が生まれただけ」

 

「ごめん余計にわからなくなったんだけど」

 

 

 準備を済ませ、四人で宿を出る。

 

 必要なものは揃えた。あとは、場当たりで乗り越えていくことになるだろう。

 

 大迷宮は何が起こるのか分からない。対策していても足りない、なんてこともあるだろう。

 

 それでもやる。南雲の願いを叶えるには、神代魔法は必要だ。

 

 

「じゃあ、行くか」

 

 

 次の目的地─────ライセン大迷宮に向けて、旅を再開した。

 

 

 




ちなみに流石の紅郎もユエの股間殺しは怖かったらしく、しばらくユエに近付くのを躊躇するようになる。
ユエは泣いた。
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