ありふれた異世界で剣を振るう   作:オルフェイス

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三章二話、ふぁい。

ところで二話の紅郎の魔力の色を諸事情あって修正もとい変更しました。


寄り道、思わぬ再会

 

 豚貴族の元から離れた俺達は早速案内人に連れられ宿へと……向かおうとしていたのだが。

 

 倒れた豚貴族の一番近くにいた、という事実が面倒なことを呼び寄せたようだった。

 

 

「申し訳ありませんが、事情聴取のご協力をお願いします」

 

 

 色々と探し回ったのか、疲れた様子のギルド職員にそう言われてしまった。

 

 まさかバレたわけではないだろうが……と思い、仕方なく話を受けたのは良いのだが、ギルドにとっては俺達は容疑者の一組になっていたらしい。

 

 原因は……まさかの俺だった。

 

 

「君の噂はここまで届いているよ。ブルックの冒険者によれば、何をしたのかもわからず武器を斬られたり気絶させたりしていたそうじゃないか」

 

 

 そう言っていたのはフューレンギルドの支部長であるイルワという男だった。

 

 そんな君であれば誰にもバレることなく意識を奪うことも可能なのでは? と疑われた結果らしい。

 

 本当に俺がやったわけではない……のだが、残念なことに犯人は身内にいるので否定も出来ない。

 

 最悪全部斬り倒すか、と覚悟を決めようとしたところで、南雲が攻勢に出た。

 

 もっと言えば、自分たちの正当性を主張してきたのだ。

 

 

「貴方の言ってることには証拠がない。出来るのではないか、なんて誰にでも言えることだ。疑うだけなら勝手だけど、それで私達も巻き込まないでくれる?」

 

「確かに証拠はないが、しかし君達が一番近い位置にいたのは事実だ」

 

「遠くから命を事故を装って狙われた可能性もあるでしょう? 倒れたあのブ……人も、相当に悪名高かったみたいだし」

 

「それは─────」

 

 

 と、こんな感じに口論が続いたのだが、どちらも中々譲らないので終わりのない平行線だった。

 

 個人的な感想だが、このまま続いていたとしても分が悪いのは南雲……というよりこちらだったと思う。

 

 単純な話、あちらは権力者だからだ。暴力に訴えていいのなら俺達が勝つが、今回の話はそういうことではない。抱え込まなくていい面倒ごとを背負わされた時点で負けと言える。

 

 これはあくまで俺の予想なのであてにはならないのだが。

 

 続いた口論は、しかしキャサリンさんから貰った手紙のおかげで解決した。

 

 ブルックの町から出る時に一緒に貰っていた手紙だったのだが、それの存在を知ったイルワは態度を改めた。

 

 なんでもキャサリンさんは昔は王都のギルドの秘書長だったらしく、各町に派遣されている支部長の五割か六割は彼女の教え子なのだとか。それで頭が上がらない、と。

 

 その話を聞いて随分驚いたと思う。手紙にはトラブル体質なので出来れば目をかけてやってほしい、という内容が書かれていたらしい。

 

 あとついでにライセン大峡谷を余裕で探索できるだけの実力を持つ、と。

 

 なんでキャサリンさんがそんなことを知ってるのかと疑問に思ったが、

 

 

「どうしたのシア。何か知ってるの?」

 

「え~と、つい話が弾んいたたた痛いですハジメさん頭鷲掴みは痛いです!」

 

「なんでペラペラ話しちゃうのかなぁこの駄ウサギは……!」

 

 

 南雲がアイアンクローを喰らわせたシアが犯人だと言うことが発覚したのであとでお仕置きすることになった。

 

 ちなみにそのシアが白状してユエもその場にいたのでユエもアイアンクローを喰らうことになった。

 

 

「一つ、君達に依頼を受けてもらいたい。そうすれば今回の件は不問にするが……どうかな?」

 

「……ごほん。内容と報酬次第だけど、紅郎はそれでいい?」

 

「あぁ。南雲の判断に任せる」

 

「ありがとう。それでその依頼だが……」

 

 

 イルワから伝えられた内容は、簡潔に言えば行方不明者の捜索だった。

 

 北の山脈地帯に見られたという魔物の群れを調査するべく派遣された冒険者が帰ってこないため、その捜索を俺達に依頼したいらしい。

 

 本来なら高ランクの冒険者が行かなくてはならない内容だが、残念なことにその高ランク冒険者が出払っており手が足りないらしい。

 

 ライセン大峡谷に行って生還できる俺達ならば、なんら問題ないだろうというのがイルワの考えらしい。

 

 それを南雲は二つの条件付きで承認した。

 

 一つはステータスプレートの発行。ユエとシアの分だな。そしてその内容を他言無用にすること。そしてもう一つはイルワの持てるコネクションを使って、今後の俺達を便宜を図ること。

 

 それが南雲の出した条件だった。

 

 随分とふっかけたものだと思ったが、しかしそれは今の俺たちには必要なものだと理解できる。

 

 ステータスプレートは身分証明にはどこであれ使うし、イルワのコネクションはあって損はない。エヒト神を信仰する教会と敵対する可能性も考えれば、余計にそう思う。

 

 というかシアとかユエとか南雲とか、うちのメンバーにはバレたらヤバいのが多すぎるからなぁ。

 

 イルワは当然渋ったが、最終的に犯罪行為や倫理に悖る行為でなければ、という条件で受け入れた。

 

 そうして依頼を受けた俺達は、ひとまず目的地に近い湖畔の町へと向かうことになった。

 

 ちなみに話が終わったあとは、諸々のことを含め反省会をすることになったが、余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、現在。

 

 

「ヒャッハー! ですぅ!」

 

「……楽しそう」

 

 

 俺達は湖畔の町ウルへと向けて車を走らせていた。

 

 シアは二輪バイクに乗ってヒャッハーして取ってつけたようにですぅと口にし、ユエはそれをじーっと眺めている。

 

 多分、バイクの大きさ的にユエが乗るには色々と調整しないと難しいと思う。

 

 

「むぅ……」

 

「試しに乗せてみたらあんなに弾けるなんて……元々走り屋の気質でもあったのかも」

 

「事故らないといいけどな」

 

 

 まあ、あのバイクって魔力操作で乗りこなせるらしいから不要な心配かもしれない。

 

 ……とはいえ当然のようにウィリーやらハンドル立ちとかやってるのでやはり心配になるのだが。

 

 

「あ、あれかな」

 

「……着いた?」

 

「そろそろシアを止めるか。おーい、シアー、そろそろ止まるぞー」

 

「えー!? もうですかぁ!?」

 

 

 まだまだ走り足りないですぅ、と不満気にしているシアだったが、流石に見えてきたウルの町並みに渋々とスピードを緩め始めた。

 

 それを見た南雲は「早まったかな……まぁそれはともかく」と若干後悔しつつも話を切り替える。

 

 

「あそこって水源が豊かだから、町の近郊は大陸一の稲作地帯なんだって」

 

「それなら久しぶりに米を食べられるな」

 

「地球と同じものとは限らないけど、期待しちゃうよね」

 

 

 この感覚は同じ地球……日本出身の人間にしか分からないことだが、ユエは少し疑問そうにしながらも楽しみにしていた。

 

 

「……紅郎たちの故郷の……私も食べたい」

 

「目当ての相手を探す前に、昼で食べるか」

 

「賛成っ」

 

「んっ」

 

 

 ちなみに言うのは野暮なので口にはしないが、俺は朝はパン派である。昼夜はご飯派だが。

 

 そうして楽しそうに会話をしているとシアは仲間はずれにされていると感じたのか「皆さ〜ん、早く行きましょうよ〜」と車の外から声をかけられた。

 

 湖畔の町ウルで久しぶりの米。どのような味なのかはわからないが、南雲の言った通り期待してしまう。

 

 ……だからなのか、浮かれていたと言えるだろう。

 

 俺達はこのウルで、思わぬ相手と再会をすることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 情報を現地調達し、水妖精の宿という場所で米料理を数多く揃えてられているらしく、早速そこに向かうことになった。

 

 〝水妖精の宿〟という名前の通り、高級宿でもあるらしく一階部分がレストランになっているのだとか。

 

 

「えーと、あそこでしょうか?」

 

 

 最初に見つけたのはシアだった。耳が良いからだろうか。いやそこは関係ないか。

 

 見つけたからには早速と扉を開けて中へと入る。

 

 内装は、〝老舗〟を感じさせる歴史ある宿、という感じだった。俺は店の良し悪しには詳しくないが、なんとなく味も期待出来そうだと感じられた。

 

 一部の席にはカーテンも取り付けられているのか、外から見ても誰がいるのからわからない。とはいえ影もあるので正確ではないが人数を把握するのは難しくはないだろう。

 

 しかし、と。ふと大したことではない疑問が思考に浮かび上がってきた。

 

 

「米料理って言うけど、そういえばどんなのがあるんだろうな」

 

「正直想像が付かないけど、チャーハンとか……カレー、とか?」

 

「……美味しい?」

 

「おう。地球じゃ世界中に知られてる料理の一つと言っても過言じゃないからな。味は保証する」

 

「へぇー! 楽しみですね!」

 

 

 他愛ない話をしながら席へと向かう。

 

 …………だが、なんだろうか。直感が微妙な反応をしている。

 

 

「……どうしたの?」

 

「いや……なんか、話すべきじゃないタイミングで話してしまったような、なんともいえない感じが……」

 

「?」

 

 

 自分の中でも言語化できない、それこそ大したことでもないものをどうにか口にしようと視線を動かしていると。

 

 こちらを見る目線と合った。

 

 カーテンを少しズラしてこちらを見ていたのは、初見ではまず子どもにしか見えない女の子だった。いやでもこの人、大人なんだよな。小学生にしか見えない背丈だが既に成人している……

 

 そこまで思考を働かせたところで、あちらもようやく気がついたのか。

 

 思いっきりカーテンを開けて、

 

 

「桜田くんっ!」

 

 

 と大きな声を上げた。

 

 彼女の周りには見知らぬ顔と見知った顔が何人もいる。というかクラスメイトもいてこちらを呆然と眺めていた。

 

 

「あ、これかぁ」

 

 

 俺は言語化できないものの正体を知り、思わず天を見上げた。

 

 

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