ありふれた異世界で剣を振るう   作:オルフェイス

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第七話〜

◯☓の答えは……








☓だ。


望み、その結末

 

 

 ウルの町に向かっていた魔物は壊滅、南雲も清水を捕らえて畑山先生の前に引きずり出した。

 

 ……連れて来るのが面倒だったのか、バイクに乗って引きずり回していたが……周りの表情は引き攣っていたが、こいつがやったことを考えれば殺さないでいる時点でまだ優しい方だ。

 

 それに異世界から召喚されただけあって、こいつ自身の肉体もそれなりに丈夫だしな。

 

 ……さて。

 

 

「それで、どうするつもりなんだ。畑山先生」

 

 

 事の首謀者を引き摺り出し畑山先生含む一行の前に気絶したまま跪かせているが、このまま連れて行こうものなら何をしでかすかわからない。

 

 ……魔物の大群を使って町を滅ぼそうとしていた奴だ、地球での倫理観を期待するのは間違っている。

 

 

「清水くんから話を聞きます。なぜこのようなことをしたのか、どうしてこのようなことをするに至ったのか……彼の気持ちを聞き出します」

 

「……先生の望むようにはならないとは思うけどな」

 

 

 生徒だからと信じ過ぎだ、とは思う。

 

 だが、それが畑山愛子という人間なのだろう。ならば好きにすればいいと、先生の行動を止めないことにした。

 

 先生が気絶した清水を揺すり起こそうとする。それを畑山先生の護衛……というより恐らくハニトラ要員……の一人であるデビットが止めようとしたが、わかっていたことだが先生はそれを拒否した。

 

 拘束だってするべきなのに、それをしないのは……どこまでも生徒を信じたいからなのだろう。

 

 揺すられた振動で清水が気絶から目覚める。

 

 先生と清水、そしてクラスメイトたちによる会話が始まった。

 

 

─────結論から言うと、清水は魔人族と繋がっていた。

 

 魔物の大群を従えたのも、契約した魔人族の手を借りたのが原因らしい。

 

 そしてその契約とは……畑山先生を、殺すことだと。

 

 

 それを聞いた先生は、酷く動揺していた。まさか生徒から命を狙われるなんて微塵も考えてなかったのだろう。

 

 だが改めて考えてみれば、生徒からはともかく魔人族から狙われるのは必然だと言える。ある意味、勇者よりも厄介な存在だ、殺せる機会があれば殺そうとするだろう。

 

 それこそ、偶々遭遇したであろう清水を使って。

 

 その事実に動揺したのは先生を護衛しているクラスメイトも同様であったらしく、しかしその真相よりも先生を殺そうとした、という事実から怒りを覚えたようだ。

 

 

「絶対、あんたを殺せると思ったのに! 何だよ! 何なんだよっ! 何で、六万の軍勢が負けるんだよ! 何で異世界にあんな兵器があるんだよっ! お前は、お前は一体何なんだよっ!」

 

 

 激昂する清水。見ているのは南雲の方だった。俺に関しては全くのスルー……というより怒りのあまり気付いてないのか。

 

 確かに六万近くの大群なら、絶対に成功すると確信したとしてもおかしくはない。それにティオもいたのなら、決して覆りようのない結果を齎しただろう。

 

 だが、そうはならなかった。

 

 俺達がいて、ティオは支配から解かれ、魔物は壊滅した。

 

 それが現実だ。

 

 ……だが、清水の悪行を知ってなお、畑山先生は清水を信じることを諦めなかった。

 

 先生は清水を説得しようとした。

 

 あなたは間違えたかもしれない。あなたは特別になれる。もう一度やり直そう。共に地球に帰ろう、と。

 

 その言葉は、聞くものが聞けば本当に改心するようなものだったはずだ。

 

 人は、後戻りできないと思い込むから間違えてもやり直そうとしない。先生の説得は、それを出来るのだと肯定する言葉だった。

 

 …………だと、しても。

 

 その言葉を聞いてもなお、改心しない人間は存在する。してしまう。

 

 

「動くなぁ! ぶっ刺すぞぉ!」

 

 

 例えばそう、至近距離にいた先生を人質に取り首筋に針を突きつける、この男のように。

 

 清水はヒステリックな声で叫んだ。

 

 

「いいかぁ、この針は北の山脈の魔物から採った毒針だっ! 刺せば数分も持たずに苦しんで死ぬぞ! わかったら、全員、武器を捨てて手を上げろ!」

 

 

 その言葉には、狂気があるように聞こえた。

 

 ……本当にこいつは、先生を殺すことに何の躊躇いもないらしい。

 

 こいつは、何処まで行っても考えを改めようとしなかった。説得に応じようとしなかった。

 

 なら、もういいだろ。

 

 足を一歩踏み出す。

 

 それに気付いた清水が、ようやくこちらを見た。

 

 

「おいっ! 動くなって、言って……」

 

「どうした、亡霊でも見たような顔をして」

 

「さ、桜田……は? おま、なんで生きて……」

 

 

 動揺。

 

 隙だらけだ。

 

 清水との距離はあまりに近い。ほんの僅かな一瞬であっても、こいつを斬るのに苦労はしない。

 

 〝高速抜刀〟で針を持つ手を斬る─────

 

 その直前、〝直感〟が反応した。

 

 いるのはわかっていたが、このタイミングか。

 

 畑山先生はもちろん、射線的に南雲も狙える。あんな兵器をぶっ放していた南雲を一番の脅威と思ってもおかしくはない。

 

 なるほど合理的だ。

 

 

「だからどうしたって話だが」

 

 

 〝縮地〟を使って清水の後ろに回り込む。

 

 これで清水からは俺を見失い行動に迷いが出る。数秒稼いだ。

 

 次に迫り来る魔法の迎撃。これは、

 

 

「〝和御喰〟」

 

 

 和御喰を使って吸収。撃たれたのは……確かユエがライセン大迷宮で使ってた貫通力に優れた水属性魔法〝破断〟か。

 

 それを刀に纏わせたまま、片手で刀の向きを持ち変え逆手持ちに。

 

 そのまま、流れるように回転して清水の針を持っている方の腕を切断。

 

 勢いを殺さず、魔法を使ってきたであろう魔人族へと向けて連続で〝飛刃〟を放った。

 

 

「え、は? ……お、俺の……俺の腕がぁぁぁぁぁ!?」

 

「チッ、逃したか」

 

 

 後ろで叫ぶ清水を他所に俺は自分の失敗を悟った。

 

 魔人族には確かに命中した。胴体を切断できたし、あれでは助かる余地はない。

 

 だが、魔人族は飛ぶ魔物を従えていたらしく、死にかけてなお魔物にしがみつき、魔物の逃亡を許してしまった。

 

 ……口伝で伝えることは出来ないだろうが、魔人族にも文字の概念はあるだろうし……南雲のアーティファクトは、あっちに伝わってしまうだろう。

 

 くそ、しくじった。

 

 

「すまん、南雲。魔人族は殺せたが魔物を逃した。多分、アーティファクトのことが伝わると思う」

 

「大丈夫、伝わったところで対策できるものでもないから」

 

「清水くんっ!」

 

 

 先生の焦りを含んだ叫びに振り返る。

 

 倒れて顔を青くさせている清水の近くに先生とクラスメイトが集まっている。

 

 腕の傷跡は回復魔法で治したようだが、腕をくっつけようとはしなかったらしい。これは先生の判断というよりも治した当人の判断だろう。

 

 殺すまでにはいかないが、かといって許す気もない。そんな複雑な感情から来る処置だろう。

 

 

「一応追えないか探してみるけど……多分もう離れてるだろうね」

 

 

 そう言う南雲だが、既に〝オルニス〟を派遣して追えないか試しているのだろう。

 

 しかし、速度の差は歴然だ。元より偵察のためのアーティファクトであり攻撃する手段も搭載していない。追いついたとしても殺害は不可能に近い。

 

 ……俺が殺せていれば、それで良かったんだがな。

 

 痛みのあまり気を失った清水を心配そうに見ている先生の元へと足を運ぶ。

 

 こちらに気付き、先生は顔を見上げてくる。

 

 

「桜田くん……」

 

「もうわかっただろ。そいつは先生を殺そうとした。説得も、ほぼ不可能だ」

 

「それ、は」

 

「……それでも殺さないでおいたんだ。死なせたくないのなら、厳重に拘束して王宮にでも連れて行けばいい」

 

 

 本当なら。

 

 あいつを殺すことだって出来た。腕じゃなく、首を斬ればそれで終わる。

 

 それでも殺さなかったのは……きっと優しさからじゃない。

 

 これは、俺の……

 

 

「桜田くん」

 

「……なんだよ」

 

「ありがとうございます。私を助けてくれて……そして、清水くんを殺さないでいてくれて」

 

 

 ぺこりと先生が頭を下げる。

 

 ……本当は色々と言いたいことがあるだろうに。それを押し殺して感謝する、とは。

 

 何処まで行ってもこの人は……

 

 それに対して何を返すでもなく、俺は無言でその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 去って。

 

 

「……なあ、何やってるんだ二人とも」

 

「ぎゅー」

 

「ぎゅー」

 

「あれは妾も参加したほうが良いのじゃろうか?」

 

「やめましょうティオさん。あれは二人だけの特権です」

 

「ふむ、そういうものなのじゃな」

 

 

 なぜだか南雲とユエに抱きつかれている。

 

 というより包みこまれている? 詳しい説明がしにくい。

 

 ユエは俺の胴体に腕を回してくっついているし、南雲は頭を抱きしめている。そのため胸に挟まれている。

 

 ……剣想無心、剣想無心……剣の如き心となれ……

 

 

「……ん、紅郎が辛そうだったから」

 

「抱きしめてあげれば和らげられるかな、って」

 

「……大丈夫だ」

 

 

 礼を告げて、二人の頭を撫でる。

 

 ……しかし、そうか。辛そうか。

 

 俺は、そんなふうになっているように見えたのだろう。

 

 傷つけたのは俺の方なのに、何様なのだろうか。

 

 奈落での経験は確かに俺の変えたはずなのに。

 

 優しさは確かに必要だ。それを失えば残されるのは苛烈な凶器だけ。

 

 ……だけど。

 

 俺が清水を殺さなかった理由。

 

 それは俺の……甘さから来るものだ。

 

 きっとそれは……捨て去るべきものなのだ。

 

 そうでなければ、俺はいつか大切なものを─────

 

 

「……それは、違う」

 

「ユエ?」

 

 

 言葉に出したわけでは、ないはずだ。

 

 けれどユエは、俺の心を見透かすように俺の目を見つめてくる。

 

 

「捨て去っていいものなんて、きっとない。あなたの中にある全てが、紅郎という人を作っているだろうから」

 

「……」

 

「それに!」

 

 

 自分のことを忘れるなと言わんばかりに主張する、南雲の重みと柔らかさ。

 

 思考が逸れそうになるが、なんとか踏み留まる。

 

 

「あなたには、私達もいるから。一人でなんでも背負い込まないで」

 

「……あぁ、そうだな」

 

 

 ユエと、南雲の言葉。

 

 それは俺自身の問題解決になったわけではない。

 

 問題の先送りと言われても反論は出来ないだろう。

 

 ─────しかし。

 

 心が軽くなった気がするのは、きっと思い違いではない……はずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……良い雰囲気だったのに」

 

「全く、油断も隙もないんだから」

 

「ん、譲れない」

 

「それは私もだよ、ユエ」

 

「喧嘩はやめてくれ」

 

「「はーい」」

 

 

 

 

「ユエさんとハジメさん、それに紅郎さんの恋愛模様を見るのが私の密かな楽しみです」

 

「……ほどほどにするのじゃぞ?」

 

 

 

 





『好感度』

ハジメ:100+
ユエ:100+
シア:75
ティオ:60


 まだ途中なのですが、またしばらく執筆して貯めてから投稿します。

 では。

ティオはヒロインである。◯か☓か

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