ありふれた異世界で剣を振るう   作:オルフェイス

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十五話っ


大火山、マグマの魔

 

 グリューエン大火山。

 

 そこは簡潔に言ってしまうと、ラ◯ュタのような巨大積乱雲のような巨大な渦巻く砂嵐に包まれた場所だ。

 

 砂嵐に包まれているものだから視界は最悪、しかもその中でサンドワームや他多数の魔物が襲ってくるのだ。冒険者はまず用事がなければ近寄ることはない。

 

 まぁブリーゼに乗り込んでいる俺達には関係のないことだが。

 

 ハジメが戻ってきた後、俺達はグリューエン大火山へと向かうことにした。白崎は、今も苦しむ患者達のために残ることになった。

 

 二日。〝静因石〟を持ってこなくてはならないタイムリミットだ。白崎がいてもこれなのだから、もし白崎がいなかったらもっと短い時間での迷宮攻略を行わなくてはならなかっただろう。

 

 白崎にはミュウを預けている。流石に大迷宮には連れていけないので、ミュウも二回目だったおかげか比較的大人しくしてくれた。

 

 俺達は砂嵐へと侵入し、グリューエン大火山へと突き進んだ。

 

 道中には多数の魔物が接近したが、ユエとティオの砂嵐の風を利用した魔法や俺の〝飛刃〟を使い蹴散らした。シアは得意の感知能力で敵の接近を知らせていたが、それはハジメも同じなのでちょっと落ち込んでいた。

 

 そして砂嵐を抜ければ、今度は火山を登っていく。大迷宮の入口はグリューエン大火山の頂上にあるらしく、最初こそブリーゼに乗っていたが途中から傾斜がきつくなってきたので徒歩に切り替えた。

 

 だがまぁ、大火山というだけあってここは暑い。途中まで冷房の効いたブリーゼに乗っていたこともあってだいぶ暑かった。しかしティオだけは大して気にならない様子だったな。

 

 頂上に辿り着くのに一時間もいらなかった。グリューエン大火山は入るまではそう難しいと感じるほどの難易度ではない。

 

 だから、ここからが本番だと言える。

 

 歪にアーチを形作る全長十メートルほどの岩石。その下にグリューエン大火山内部に続く階段が隠されていた。

 

 

「よし、行くか」

 

 

 そして、その階段を下り、俺達はグリューエン大火山の内部へと侵入した。

 

 大迷宮攻略、そして〝静因石〟確保。

 

 開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グリューエン大火山の内部はとんでもないところだった。

 

 まず、マグマが空中を流れている。どういう原理かは知らないがそういう事が出来るらしい。川のように流れるマグマは、まるで巨大な龍が飛び交っている様を彷彿とさせる。

 

 また、通路などのいたるところにもマグマが流れている。頭上のマグマと地面のマグマ、当たればどうなるのかは想像に難くない。

 

 しかも……

 

 

「シア、一旦ストップ」

 

「は、いぃ!?」

 

「ギリギリだったな」

 

「は、はう、ありがとうございます。いきなりマグマが吹き出してくるなんて……察知出来ませんでした」

 

 

 シアを呼び止め、その直後にマグマが吹き出しシアが通っていたであろう場所を通過していく。

 

 このように、いたるところからマグマが吹き出してくるのだ。そのタイミングは通常の方法では察知が難しく、兆候もない。

 

 俺の〝直感〟とハジメの〝熱源感知〟がなければ攻略スピードは大幅に落ちていたことだろう。

 

 道中で〝静因石〟を見つけるが、そのどれもがサイズ的に小さく量が足りていない。奥に進まなければ必要量は集まらないだろう。

 

 火山内部には魔物も生息しているらしくマグマを纏った雄牛やマグマを翼から撒き散らすコウモリ型の魔物、壁を溶かして飛び出てくる赤熱化したウツボモドキ、炎の針を無数に飛ばしてくるハリネズミ型の魔物、マグマの中から顔だけ出しマグマを纏った舌をムチのように振るうカメレオン型の魔物、頭上の重力を無視したマグマの川を泳ぐ赤熱化した蛇などなど……

 

 オルクス大迷宮ほどとは言わないが、相当にバリエーションに富んでいると言えた。

 

 まぁだいたいがこちらに接近あるいは気付く前に先手必勝で殺したが。ハジメの方も、シアのドリュッケンに追加した新たに手に入れた固有魔法の実験をしていた。

 

 ただ、一番厄介だと感じたのは刻一刻と増していくこの暑さだった。

 

 俺はまだ問題ないが、暑さに強いティオはともかくユエ辺りがそろそろ限界だった。

 

 冷房型アーティファクトを使ってなおこれだ。並大抵の者では潜り続けることは不可能だろう。

 

 ひとまずハジメが錬成して横穴を開けて魔物やマグマが来ないようにし、そこにユエが氷塊を作り穴の中心に置いてティオが氷塊から漂う冷気を部屋全体に流し、急速に冷やしていった。

 

 

「はぅあ~~、涼しいですぅ~、生き返りますぅ~」

 

「……ふみゅ~」

 

 

 特に暑さにやられていた二人は天国にでもいるかのように気を緩めていた。まぁ実際、天国にいるかのような心地良さを感じているだろうな。

 

 とはいえ、休憩したらまた行かなくてはならないだろう。

 

 

「二人とも、汗は拭いてね。冷やしすぎると動きが鈍くなるし……はい、紅郎も」

 

「ん、ありがと」

 

 

 〝宝物庫〟から出されたタオルを受け取り身体の汗を拭き取っていく。

 

 冷気にやられていた二人もノロノロとタオルを受け取り、汗を拭き取っていた。

 

 

「紅郎殿は、まだ余裕そうじゃの?」

 

「そういうわけでもない。ただ他よりも耐えれるだけだ。まぁそれがこの迷宮のコンセプトなのかもしれないが……」

 

「ふむ……確かにの。話に聞いたオルクス大迷宮ならば数多の魔物との戦闘を経て経験を積み、ライセン大迷宮ならば魔法に頼らずあらゆる攻撃への対応力を磨く。この大迷宮ならば……暑さによる集中力の阻害とその状況下での奇襲への対応、といったところではないかのぉ?」

 

「……あぁ、そっちか。てっきり俺は精神的な部分でも試練にしてるのかと思ったよ」

 

 

 ティオの発言に、なるほどという納得が湧き上がってくる。

 

 俺は精神的な部分を鍛えるためにあぁいう迷宮になったのかと思ったが、どちらかと言えば戦闘のほうがメインなのか。

 

 まぁいくら心が強かろうが、力がなくては抗うことすら出来ないか。

 

 

「紅郎殿の意見も、あながち間違ってはいないはずじゃよ。力とは、心なくして成り立たぬものだからの」

 

「……あぁ、そうだな」

 

 

 その言葉に、一人の男の顔が浮かんだ。

 

 天之河。力を持ちながらあまりに心が未熟なクラスメイト。

 

 あいつが大迷宮に挑んだとして、果たして試練を超えることが出来るのだろうか。

 

 ……いや、それは俺にも言えることか。

 

 力だけが有って、心が伴っていない。

 

 少なくとも俺は自分のことをそう認識していた。

 

 

「ね、紅郎」

 

「ん? どう、」

 

 

 した、と。ハジメに言葉を返そうとして。

 

 振り返れば、色々と着崩したハジメの姿が。

 

 胸の谷間に汗が滴り艶やかで……いや不味い見るなこれ以上はいけない。

 

 

「拭いて?」

 

「……すぅー……」

 

 

 深呼吸する。ちょっとさぁ……それは不味いってさぁ。

 

 顔を逸らすが、ハジメも譲らない。どんどん身体を近づけてくるのが……

 

 と、そこでハジメの身体がぐいっと引っ張られた。

 

 

「抜け駆け……!」

 

「ふふ、油断してるから」

 

「……いいだろう。私はユエ、このような状況でも手加減はしない女……!」

 

「二人とも落ち着くのじゃ、今は大迷宮攻略中なのじゃぞ?」

 

「おおっとハジメさんの背後から何やらオーラが……紅郎さんあれはなんでしょうか? ユエさんのは話に聞く龍だというのはわかるんですが」

 

「……シア、お前結構楽しんでるな?」

 

 

 互いに余裕を取り戻したからか、シアやユエが元気になっていた。

 

 ハジメとバチバチさせているし、なんならス◯ンドのように背後にオーラを漂わせているが……こちらとしては、助かった。

 

 だがそれはそれ。とりあえず止めなくては。

 

 

「仲が良いのはわかったから、ほら、元気出たならもう行くぞ」

 

「「違うから!」」

 

「喧嘩するほどなんとやら、というやつじゃな」

 

 

 ひとまずの休憩を挟み、俺達はグリューエンの攻略を再会した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして今、ハジメの作った小舟に乗ってマグマを下っている。

 

 簡単に説明すると、マグマの不自然な流れから〝静因石〟が大量にある場所を特定、〝宝物庫〟に入れたらマグマが勢い良く噴射、咄嗟に障壁でマグマを防ぎながら小舟を作り……今に至る。

 

 マグマの流れに流されるままに進み、奥へ奥へと進んでいく。

 

 多分本来のルートとは異なるが、しかし最奥に近づいてることには間違いない。しかも先程通っていた道よりもずっとショートカット出来ている。

 

 つまり結果オーライ、というやつだった。

 

 道中魔物に襲われることもあるが、大した脅威ではない。シアとハジメの察知で充分に奇襲は防げる。

 

 と、マグマの道がトンネルに続いていることを確認する。

 

 

「そろそろだな。皆、気をつけろ」

 

 

 四人に声をかけ備える。

 

 トンネルを通り、さらに先へと進んでいく。

 

 流されていったマグマの道は、ある地点で急に消えていた。

 

 いや、落ちてるのか。まるで滝のようにマグマがある地点から落ち始めている。

 

 ……なるほど。

 

 

「ユエ、ティオ、ハジメ! 制御は頼んだ!」

 

「んっ!」

 

「心得た!」

 

「わかった!」

 

「あの、紅郎さん、私は……?」

 

「落ちないようにしがみつこうな」

 

「はいぃ……」

 

 

 魔法が得意だったり錬成で形を変えられるする仲間たちに声をかける。ちなみに俺とシアは力になれないのでただ小舟にしがみつくだけだ。

 

 とはいえ何もしないわけではない。

 

 小舟が落下を始めたときから、既に周りに〝殺刃気〟を振りまいていた。

 

 流石の迷宮の魔物も、この殺気には堪らず近付こうとしない。

 

 そのため意外にもスムーズに落下していき、マグマの激流空中ロードを勢い良く進んでいき……ついに道が途切れた。

 

 

「掴まれ!」

 

 

 その号令と共に小舟が空に放り出される。

 

 出たのは、とてつもなく広い空間。所々に足場となりそうな岩石がせり出している。

 

 自然にできた場所、という印象だった。しかしこのマグマの空間の中心にあるものがそれを否定する。

 

 小さな島だ。その上をマグマのドームが覆っている。

 

 何かある、と如実に伝えていた。

 

 

「全員警戒、」

 

 

 しろ、と最後まで言うことは出来なかった。

 

 宙を流れるマグマからマグマの塊が噴出された。

 

 飛ばされたマグマを〝飛刃〟で斬り、左右に分断されたマグマはマグマの海へと落下した。しかし、それで終わることはなかった。

 

 

「散開!」

 

 

 乗っていた小舟からそれぞれ飛び出す。

 

 瞬間、小舟に目掛けて大量のマグマ弾がマシンガンのように放たれていた。

 

 敵は見えない。まるでマグマが自らの意思を持って攻撃しているようだった。

 

 ……いや、実際にそうなのか。

 

 だとしても、もしそうなのだとすれば心臓となる核が必要になるはずだ。

 

 辺りを見渡し……それらしきものが、あったな。

 

 よくよく見てみれば岩壁に取り付けられた鉱石があった。あれが核……というには単純すぎるか。多分あれを壊しても意味はないか。

 

 そう考察している間にも事態は動く。

 

 

「紅郎、あれ」

 

「……あの蛇を倒せ、ってか?」

 

 

 マグマ弾によるマシンガンが一旦止み、今度はマグマから次々と巨大なマグマの蛇が鎌首をもたげた。

 

 数は、二十か。しかしこれだけの数で終わりってわけじゃないだろうな。

 

 

「ハジメ、あれを」

 

「鉱石が光って……数は、百あるね」

 

「多分百体倒せってことだと……あ?」

 

 

 現れたマグマの蛇を百体倒す。それが最後の試練だと予想し……

 

 ソレが、()()()であると思い知る。

 

 

「……マグマが」

 

「なんじゃ、集まっておるのか……?」

 

 

 海と形容出来るほどに存在していた大量のマグマ。

 

 それが、空に浮かぶ一体の蛇に集まっていく。

 

 地から、空から、底から。

 

 あまりに大量のマグマが、収束していく。形成していく。

 

 恐らくグリューエン大火山の大半を満たしていたマグマが、全て一体の怪物に集中し、その身体を創造した。

 

 

「敢えて名付けるならイフリート、ってところか?」

 

 

 それは、まさしくマグマの魔神と言い表せる存在となっていた。

 

 あまりに巨大な魔神。イフリート、という名前に相応しい威圧感。こちらを見下ろす人型の化け物。収束したマグマに比べれば小さく見えるが、恐らく圧縮したが故の小ささだ。

 

 その強さは……あの覚醒ヒュドラにも劣らないだろう。

 

 

「……ガ」

 

 

 イフリートが、口を開ける。

 

 

「ガガガガァァァァァァ!!!」

 

 

 咆哮を、轟かせる。

 

 その強大過ぎる脅威を……俺は、笑い飛ばしてやった。

 

 

「はっ、上等だ。やってやるよ」

 

 

 用は初見の覚醒ヒュドラってことだ。

 

 幸いにもマグマは全てイフリートに吸収された。動くのには支障はない。

 

 こいつを倒し、神代魔法を手にする。〝静因石〟もアンカジに持っていく。

 

 

「やれるな!」

 

「っ、はい!」

 

「もちろん!」

 

「んっ!」

 

「うむっ!」

 

 

 皆の声を聞く。戦意は、削がれてはいない。

 

 ならばやれる。こいつは倒せる。

 

 刀を手に、戦意を滾らせる。

 

 強大な敵、イフリートとの戦いの火蓋が、切って落とされた。

 

 

 

 




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