アンリミテッド・ブレード・ライブ   作:夢物語

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今回は物語本編に入るために必要になる、大切な導入部分です。

表現の自由と、できるだけ世界観を表現できるようにしたのですが……正直自信が(ノД`)・゜・。

ま、まぁ、兎にも角にも生暖かい目でみてやってくだせぇ!


記憶

――――ゴオオオオオオオオォォォォォオオォォオオォオオォオオォオオオォ――――

 

 

 

 音がする。どこか聞き覚えのある音だ。

 

 それはものが激しく燃えるような音で、ところにより時々 パチパチ という何かがはじけるような音まで聞こえる。

 

「俺は……いったい」

 

 そこはまるで、士郎が幼いころに見たことがあるような光景が広がっていた。

 

「ここはいったい何処なんだ……」

 

 少年はつぶやいた。

 見覚えのない光景なはずなのに、見覚えがある。

 今までお目にかかったことがない大きな災害なのに、何度も体験したことがある感覚。

 少年の中に渦巻くこの感情を彼は持てあましていた。

 

「何なんだ、これは。何なんだ、この感情は。こんなもの俺は知らない。俺はこんなもの認められない!」

 

 僕は、俺は、私は、何だ? 君は、アンタは? お前は、いや彼女は? いったい何なの? いったい何なんだ? 

 

 少年は訳も分からず湧いて出てくる経験したこともない経験と、見覚えのない沢山の人たちの姿を、あるわけがないと認められないでいた。

 

「沢山の人が死んだのも、守りたかった人を守れなかったのも殺したことも殺されたこともアイシタコトモアイサレタコトモ切リ捨テタコトモオオオオオオオオオオォォォオオオオオォォオオォ!!!!!!!!!」

 

 その姿は取り乱しているというより、発狂しているといったほうがいいほどのものだった。

 

 少年は前世の記憶などあるはずもなく、普通の少年として生まれた。

 名前は○○士郎。かつての衛宮の性を名乗る前の名だ。

 そして家族に囲まれて普通に幸せに暮らしていた。

 ○○士郎は世間で言われるような在り来たりな幸せを感じながら生きていたのだ。

 

 普通に母に甘え、父と遊び、学校に通い、友達と度付き合い、時にじゃれあう。

 そんな当たり前がそこにはあった。

 そんな幸せはそこにあったのだ。

 

 だが、それも長くは続かなかったようだ。

 

 突然起こった大きな爆発音は耳をつんざき、あたりを一瞬にして戦場の跡地かのような光景と情景が広がった。

 あたり一帯は少なくとも、おおよそ半径六キロメートルは火の海に包まれ、地獄の世界はこのようなものだと一見しただけですぐに一部の例外を除いてどんな人が見ても分かる。

 

 その光景は○○士郎が衛宮士郎となったきっかけの出来事とあまりに似ている。

 そのせいからなのだろうか。○○士郎は過去の記憶を思い出しつつあった。

 それも、遠坂凛との分かれの日から、時間を巻き戻しにして言っているかのように前世のことを思い出しているのだ。

 

 世間一般に言われる軍人ですら顔を背け、口元を抑えたくなる衝動に駆られてしまうような環境下で生きてきたのだ。

 それが己の前世だとはいえ、子供の○○士郎からしたら発狂するのも当然のことだった。

 

「うあああががあがああああかかかああああがががあがっぁぁぁああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

 遠坂凛との別れ、世界を渡り戦争に割り込んで個人の力で巨大な数の暴力を鎮圧し続けた地獄のような生活、何人かの犠牲者をだし、凛とともに生き残った聖杯戦争。それらの鮮烈な記憶は少年の脳を焼き尽くす。

 

 なんで!? なんで僕は! 俺は! 私は! 君は! お前は! 平気でこの地獄に身を投じることができる!! 

 

 少年は耳をふさぎ、目を強くつぶり、地面に四つん這いになる。

 少年には理由がない、これほどの地獄の中にありながらこれほど純粋でいられた理由がまるで分らない。

 そして何より、芯がない。

 芯がない追体験など、ましてや地獄の中で汚れずにいた己の姿など訳が分からないのだ。

 

「なんで……なんで!? なんでそんなにまっすぐでいられるの!?」

 

 少年の叫びは已むことを知らない。

 

「なんでだああああああああああぁぁぁぁあああぁあああああああぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チリン

 

 遠い昔に置き去りにしてきた懐かしい光景と共に聞こえるのは、小さな虫の音だった。

 コオロギや鈴虫が羽をすり合わせ、自然界でしか流れ出ないような、風情を思わせるような音が聞こえてくる。

 

 ときは夜。あの時の月は満月で、それは本当にきれいだった。

 

 そこには、少し古く感じる日本屋敷があった。

 屋敷に住むものは二人――衛宮士郎と

 

『子供のころ、僕は正義の味方に憧れてた』

 

 衛宮切嗣だけだった。

 

『なんだよ、憧れてたって。諦めたのかよ』

 

『うん。残念ながらね。ヒーロー(正義の味方)は期間限定で、大人になると名乗るのが難しくなるんだ』

 

 二人は、中庭の開けた縁側で窓を開け、月を見上げながら腰を下ろしていた。

 

『そっか……』

 

 士郎にとって切嗣は憧れだった。自分の命を助けてくれた時に、彼が見せてくれた笑顔がうらやましくて、今にも死にそうな少年が素直に綺麗だと思えるその笑顔に、強い憧れを感じていたのだ。

 

 生きてる。生きてる。そう何度もつぶやきながら士郎の手を握り涙を流し、むしろ自分が救われたのだと云わんばかりの思いが顔に現れる。

 

 切嗣は正義の味方になりたかった。

 そのためにとってきた行動は、一を切り捨て、九を救う方法だった。

 二人を救うために一人を殺し、百を救うために十を切り捨て、千を救うために百を滅ぼしてきた。

 その勢いは彼の妻や娘を殺すことさえ、躊躇(ちゅうちょ)はするも、最終的には殺すだろうほどのものだった。

 

 だが、切嗣はそんなことをしながらも本当は人など殺したくはなかった。

 僕はすべてを救いたかったと、世界の平和が欲しかったのだと、そう願い続けた。

 

 だが、皮肉なことに彼は一つの街を滅ぼした。

 

 聖杯戦争。その中心となる聖杯のゆがみに気が付き、切嗣はセイバーに礼呪の二度掛によって聖杯の破壊を命じた。

 だがそれは、大きな間違いだったのだ。

 

 聖杯はあくまで器でしかない。その本質を見誤り、中身の泥のことを考えていなかったのだ。

 結果、泥は聖杯から零れ落ち、町全体を覆った。

 

 そう。

 一番世界の平和を望んでいた彼が。

 自分の力ではどうすることもできないからと、奇跡の力が。

 一つの街を滅ぼしたのだ。

 

 そんな地獄の中で、切嗣は涙を流しながらも必死に人を探し続けた。

 がれきをどかし、燃えている家の中に入り、もう冷たくなった少年の体を抱きかかえ、消し炭になった子供の体を抱き上げようとした“物”が崩れ落ち涙を流し、叫び、目には光が消え、最後には幽鬼のように生きている者はいないかと地獄をさまよい続けた。

 

『そんなこと、もっと早くに気付けばよかった』

 

 だがそんな時、切嗣は希望を見つけた。

 

『そっか……それじゃあしょうがないな』

 

 それは、士郎だった。

 士郎の家族や、はたまた記憶は切嗣が奪い取ったようなものだ。

 だが、それでも少年は生きていた。生きていてくれた。

 ごめん。ごめん。生きてる。よかった。生きてる。

 切嗣は、泣きながらも何度もつぶやくのだ。

 

『そうだね。本当に……しょうがない。』

 

 切嗣は空に浮かぶ月を見上げる。

 思い出していたことはきっと、士郎を見つけたときの、あの日のことなのだろう。

 

『あぁ、本当にいい月だ』

 

『うん。しょうがないから、俺が代わりになってやるよ』

 

 士郎はつぶやいた。

 

爺さんは大人だから、もう無理だけど、俺なら大丈夫だろ』

 

 切嗣は眼を少しだけ見開いた。

 そして薄く笑った。愛おしそうに、慈しそうに。

 

『任せろって。爺さんの夢は――――』

 

 切嗣は嬉しそうに眼を細めた。

 

『そっか……あぁ、安心した』

 

 そして目をゆっくり瞑った。

 その日から彼は二度と目を開けることはなかった。

 ○○士郎に衛宮の姓をあたえ、正義の味方という(呪い)をその身に刻み込まれた少年は

 

 

『ねぇ、切嗣は何になりたいの?』『僕はね、正義の味方に…………なりたいんだ』

 

 

 正義の味方になるために、歩き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思い……だした」

 

 仰向けになって横になっていた体の上半身を起こした○○士郎は、すべてを思い出した。

 

「そっか。俺の元の名前、○○っていうのか」

 

 ○○士郎はすべてを思い出した。

 約束したことも、切り捨ててきた人たちのことも、もう二度と会えない最愛な彼女のことも。

 

「もういい、俺は十分に約束を守れたはずだ。この世界でも、正義の味方になるために頑張ろう」

 

 そして今度は。

 

「それだけじゃない。今度は爺さんだけの約束じゃなくって――」

 

 彼女との約束を守ろう。幸せを思い出したのだから。

 

「凛、君との約束も守ろう」

 

 世界はいまだ、燃え続けてる。

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