アンリミテッド・ブレード・ライブ   作:夢物語

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 皆さん、大変長らくお待たせしました。

 私もこんなに遅くなるとは思ってもみませんでした。
 それもこれも岐阜から来たくそじじいのせいですよこんちくせう。
 ただでさえ忙しいのに何日もうちに泊まりやがって、それだけならいざ知らず同じことをペラペラペラペラ、しまいには妹は泣くし、ストレスで体調が悪くなるし、仕事は忙ししい……って、はっ( ゚Д゚)

 すいません、なんか愚痴っていしまいました。
 次はこんな遅くならない様にして投稿していきたいと思いますので、どうかこれからもよろしうくお願いします<(_ _)>

 それでは本編をどうぞ!!


それだけで俺は救われた気がしたんだ【前篇】

 ○○士郎は過去の自分を思い出し、一人称は僕から俺に“戻った”。

 その記憶には楽しかったことよりも辛かったことのほうが遥かに多い。何より、幸せとはどういうものなのか理解していなかった。

 理想は高くあっても、それをなすための土台がスッカラカンで目的と現実が厭離しきっていたのだ。

 

 それでも止まることを知らなかった士郎は最後のその時、すでに捨てたはずだった愛を求めた。

 そして遠坂凛と出会い、魂だけを今の○○士郎の体に定着させた。

 

 そう。すべてを思い出した。

 だからこそ少年は衛宮士郎に戻った。

 すべてを思い出したのだから旧姓である○○と名乗ることは最早甘えだろう。

 

「そうだ。俺はもう○○士郎と名乗れない」

 

 この身は遥か昔に交わした彼女との約束を守るために。

 

「凛。俺はもう少し頑張ってみるよ」

 

 少年は新たに決意した。

 

 そう、決意したのだ。だからこそ衛宮士郎は止まることを許されない。

 背景はいまだに火の海に包まれている。

 もしかしたら逃げ遅れた生き残った人たちが助けを求めているかもしれない。

 士郎は強い意志を瞳に宿し立ち上がった。

 

「お願いだ。誰か……誰でもいいから生きていてくれ!」

 

 そして少年は当てもなく走りだす。

 

 

 

 

 

『精霊の様な力を感じたから、あの子たちに力を与えたついでに様子を見に来たんだけど、面白いことになっているね』

 

 “存在”は士郎が去ってしばらくした後に、そこに突然姿を現した。

 いや、姿といってもいいのだろうか。

 確かに手があるし、両の足で地に足をつけ立っている。

 もちろんそれには頭もついているし気配もある。

 その在り方はまさしく人のそれだった。

 だが、その“存在”は人のそれであるにも拘らず、あり方は人のそれではなかった。

 

 “存在”人の姿をしているにもかかわらず姿を認識できない。

 まるで闇に喰らい潰されたかのように体は黒い靄のようなもので覆われていた。

 唯一はっきりしている眼で見て取れる感情をうかがえる指標は。

 

『しかし、この光景を作ったのは新しい力を制御できなくて暴走させた力が原因だと知ったらあの子はいったいどんな顔をするのかなぁ』

 

 ニヤアアァァァァァアアア……と不気味にゆがめる真っ白い口元だけだった。

 

『それじゃぁ、少しだけあの子のことをからかってきてあげてみようかな?』

 

 

 

 

 

同調、開始(トレースオン)

 

 魔術の行使とは、それは死を容認するということである。

 つまりは、魔術回路をこじ開けるときにおこる激痛ともいえる傷みすらも受け入れるということである。

 実際、前世の幼き頃の衛宮士郎は魔術回路は開くものではなく一から作るものだと勘違いし、魔術回路の暴走による死と隣り合わせのかなり効率の悪い、彼曰く修行をしていた。

 要するに、毎回魔術を使うたびに無駄に死にかけていたということだ。

 

 話は若干脱線したが、要するに士郎は、今現在の肉体で初めて己の体に眠る、今この時まで使われることのなかった魔術回路を無理矢理、しかも全部開いたのだ。

 当然それに伴い、世間一般に言われるような激痛というものが生易しく感じるような体中の神経を焼き付くすような激痛にみまわれる。

 これが常人ならば発狂するほどのものだろう。

 だが、そんなものはすでに“経験”したものだ。

 

 少年は気にせずに走る。

 

 当然、士郎が痛みを無視してまで魔術回路を開き、魔力を通したのにはちゃんとした理由がある。

 それは士郎が己自身である衛宮士郎のことを――より正しく言うならば己のステータスを知るためである。

 そして、この体になって初めて行う魔術は、辛くも何とか成功した。

 

 

――筋力 E(14)

  魔力 A(50)

  耐久 C(24)

  幸運 E(10)

  敏捷 C(30)

  宝具 ??(??)

  身体能力若干退行

  若干の衰弱はあるが戦闘可能

  全て遠き理想郷(アヴァロン)正常稼働

  魔術回路数 50!?

 

 なんでさ! 魔術回路五十!? それだけじゃなく魔力がAに上がってるだって!? それに全て遠き理想郷(アヴァロン)はすでにセイバーに返したはずなのに……いったいどうなってるんだ。

 

 士郎は突然降って湧いた現実に唖然とした。

 

「ちょっと待てよ! 確かに何度も経験したこととはいえ、こんなに痛みが走るものなのかと疑問に思ったが、なんでこんなに魔術回路が増えてるのさ!」

 

 士郎はこの以上について考えた。

 疑問に思ったことは一つだけで、それは、なぜ俺の魔力と魔術回路がこんなに増えているのかということだ。

 

 今現状で考えられることは大きく分けて二つだ。

 

 一つは、たまたまこの体には五十本もの魔術回路があっただけというもの。

 実際に考察すると、そんなことは絶対にありえない。

 何せこの世界に魔術など存在などしていなかったからだ。

 本来魔術師でもない衛宮士郎が27本もの魔術回路を持っていたことのほうが規格外なのだ。

 それはもしかしたら、士郎の先祖に魔術師がいて、その家系が途絶えはしたが、たまたま先祖返りして魔術回路をもって生まれてきたかもしれない。

 だがそれは、あくまで魔術師がいたあの世界ならばの考え方だ。

 魔術師がいないこの世界には魔術回路を持つ人間がいるはずがない。

 だから、この世界に生まれた士郎が魔術回路を持っていること自体ありえない。

 

 そうなれば残る可能性はただ一つ。

 

「そうか、遠坂が」

 

 遠坂凛が士郎の魂を○○士郎に定着させるときに何かしたということだ。

 

 もしそうだとするなら遠坂には絶対に足を向けて寝れないな。いや、足を剥ける気ないけど、などと苦笑いせざるをえなかった。

 

 

 士郎はいまだ、誰も助けることができていなかった。

 

 

 

 

 

 ――その日。琴里は一人、家のすぐ向かいにある小さな公園で遊んでいた。

 いや、遊んでいたというと少し間違いがあるかもしれない。小鳥はつまらなさそうに口をへの字にしながら公園のブランコにゆられ、鉄と鉄がこすれあう音が聞こえていた。

 

 五河琴里は今日、九歳になる誕生日だ。だというのに、彼女の父お母は仕事でいない。

 琴里はそのころの年齢の割には聡明な子だ。毎年彼女の誕生日にはプレゼントを買い与え、ともにケーキを作り、一緒に楽しいひと時を過ごしていた。

 それでもどうしようもないときには何日か日にちをずらし、少し早目か、それとも遅めかの家族での誕生日会を開いてくれていた。

 だから、彼女はそれだけ愛されているということを知っていたから特に不満はない。むしろ、無理しないでと彼女はおとーさんとおかーさんに拙い言葉で心配するぐらいだった。

 

 そう、父と母が仕事に行ってしまったぐらいならば琴里はここまで膨れはしなかっただろう。

 それでは何が彼女にとって不満だったのだろうか。

 

 彼女には一人の血のつながらない兄がいる。いわゆる養子というもだ。

 名前は五河士道という。

 当時彼女の父と母が士道を琴里の目の前に連れてきたときには、まだ幼い、それこそ幼女といってもいいような彼女は士道の眼を見たときに恐怖を覚えた。

 何せその眼には何も映すことはなく、暗く濁っていたのだから。意思も何もない透明な人形。なのにその眼は濁っている。そんなアンバランスが彼女にとって得体のしれない存在だった。

 

 そして、彼が来てから数年のときが過ぎた。士道は様々な色が色づき、うれしいとか、悲しいとか、とにかく様々な感情を思い出せるようになった。それもこれも、士道を温かく見守り、沢山のやさしさで包み込んでくれた琴里の父と母のおかげ以外にない。何より、透明で濁っていた彼のやさしさを知った琴里が誰よりも、おとーさんとおかーさん以上にずっと一緒にいてくれた。

 だから、士道という名の幼い少年は心を取り戻すことができたのだ。

 

 ゆえに琴里は士道のことが大好きだ。兄としてではなく、もしかしたらそれ以外の何かの感情。

 

 ――そう、彼女がここまでふてくされていた理由は士道おにーちゃんにあった。

 士道はいつも彼女と一緒にいた。当然、誕生日会のときも例外ではない。いつも誕生日会が終わった後に、必ず士道は琴里に誕生日プレゼントと祝福の言葉を送っていたのだ。

 だが、今日はどういうことなのか彼は琴里のそばにいなかった。

 

「ぅ……、ぅ……」

 

 眼からジワリと流れてくる涙を、琴里は片袖で両目をごしごしと擦った。

 琴里は何かとよく泣く女の子だった。要するに泣き虫、ということだ。

 彼女のおにーちゃんである士道はそれを知っていて、彼女が泣くたびによく『ずっと泣いていてはだめだ』と注意されていた。

 今朝も同じように注意された。なのにまるで宝石のような大粒の涙が頬を伝っていく。

 琴里は寂しいのだ。もしかしたら大好きなおにーちゃんに私の誕生日を忘れられているのでは。そう思うと寂しくて淋しくて涙が止まってくれないのだ。

 それでも、こんなんだからおにーちゃんに注意されちゃうんだと、おにーちゃんに嫌われてしまうと思って、袖で涙をふく。だけど、もしかしたら琴里はおにーちゃんに愛想をつかされてしまったのではないかと思うとまた涙が出てきてしまう。

 その度にもっと強くならないと、と思う。けどそれは逆効果だったようで、また涙が出てしまうのだ。

 

「ぅ……、ぇ……っ」

 

 だが、そんなとき。

 

『――ねぇ、何を泣いているの?』

 

 琴里の頭上から、そんな声がかけられた。

 

「え……?」

 

 顔を上げるとそこには形容しがたい何かがいた。

 そこにいるのはわかるのに、どんな姿形しているのか分からない。

 言葉は認識できるのに、どんな声なのか分からない。

 唯一はっきりしている眼で見て取れる感情をうかがえる指標は白く映るその口元だけだった。

 そんな得体のしれない何かがそこにいた。

 

 琴里は普段から知らない人に話しかけられても注意するようにと言われているが、ただでさえ薄気味悪いこの“存在”に無警戒でいることは無理な話だ。

 

「だ、大丈夫です。もう、おうちに帰るところです」

 

 琴里はそういうと目をこすり、ブランコから降りて家のほうへ走って行った。だが、

 

『ふうん、お父さんとお母さん、お兄ちゃんもいないんだ。誕生日なのに、寂しいね』

 

 そんなことを言われて琴里は思わず足を止めた。

 

「な、なんで、そんなこと……」

 

 琴里はその声を強張らせながら問うたが“存在”は質問に答えることはなく、静かに続ける。

 

『――君が今より強くなれたら、お兄ちゃんも君を認めてくれるのにね』

 

「……っ、それ、は」

 

『ねぇ、もっと強くなりたくない? お兄ちゃんに心配をかけないでいられるぐらいの力が、ほしくはない?』

 

「…………」

 

 琴里が押し黙っていると、その“存在”が薄く笑った。

 そのまま“存在”は琴里のほうに向けて手のひらを上にし、てを伸ばしてくる。

 そのまま手のひらを見ていると『ズズズ・・・・・・』という何とも言えない音を放ちながら、まるで体の中から吐き出されるようにして赤い宝石のようなものが現れた。その物体は、ぼんやりとした輝きを放っていた。

 

「きれい……」

 

 その言葉に気分を良くしたのか“存在”はもう一度笑うと言葉を続けてきた。

 

『もし、強くなりたいのなら、これに触れるといい。そうすれば君は誰よりも強くなれる。お兄ちゃんも、きっと強い君を好きになってくれるよ』

 

 琴里は、ごくんと唾を飲み込んだ。

 

「本当に……おにーちゃんが……私を、好きになってくれるの?」

 

『あぁ、もちろんだとも』

 

 “存在”は肯定した。誘うように、微笑みながら。

 

 琴里は恐る恐るゆっくりとその手を伸ばし、それに触れた。そう――触れてしまったのだ。

 

「……!? あ、ああ……っ」

 

 突如として身を焼かれるような熱が琴里の体を襲い、苦痛に顔をゆがめる。しかし、事態はそれにとどまらず、周囲に赤い焔が生まれ――

 

「あ……あああああああ――ッ!」

 

 あたりに響き渡る絶叫と共に、それが周囲にまきちらされた。

 それは異世界で行われた第四次聖杯戦争の結末かの如く、焔は充満し、ありとあらゆるものをもやし、様々なものを殺し、それは一つの街を飲み込んだ。

 

 突如として上空より一線の光が地面に突き刺さり、琴里の目の前にいた“存在”は姿を消していた。

 だが、今の彼女にはあまりの熱量に、まるで劫火の灼熱の中に身をはりつけにされ、全身を焼くような苦痛と痛みがその全身を駆け巡り、“存在”のことなど気にしていられるような余裕はどこにもなかった。

 

 

 そう、地獄はまだ、始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 五河士道は妹である琴里のための誕生日プレゼントを買うために半年の間ためたお金を小さな財布に入れ、歩いてアクセサリーショップへ訪れていた。

 

 実は、士道は五河家にその命を拾われ、養子にしてくれた時より前の記憶を持っていない。

 相当ショックを受けるようなことがあったのだろうか、それとも頭に強いショックを与えたために、物理的に記憶が飛んでしまっただけなのだろうか、どっちなのか分からない。

 唯一はっきりしていることは、当時彼は世界に絶望をし、自分自身の感情を殺してしまったのだということだけだった。

 だけど、その絶望を壊してくれた女の子がいた。

 

 五河琴里だ。

 

 琴里はいつも士道のそばにいた。彼女にとって士道は得体のしれない恐ろしい存在だったに違いない。少なくともしばらくの間琴里は士道のことを怖がっていたように思う。

 それでも、一人は寂しいからと、悲しいからといつも黙って隣にいてくれた。

 琴里は泣き虫で、怖がりな癖に、士道の本質を見抜いてずっと一緒にいてくれたのだ。

 

 そんな琴里に感謝という意味も込めて何かしてあげられないかと考え、あることを思いついた。

 それは琴里の誕生日に貯めたお金で何かプレゼントを買ってあげることだった。

 

 あたりは人であふれ、活気付き、笑顔であふれていた。そんな場所に一人で買い物に行くことは、まだ幼い士道にとって勇気がいることだった。

 それでも、大切な妹の喜ぶ顔を見たくて人に道を聞きながら歩き、目的地にたどり着いた。

 

 デパートをあっちこっちさ迷いながら、士道は自分が持つお金で買えそうな、且つ琴里が喜んでくれそうなものは何かないかと捜し歩いた。

 そしてしばらくしてたどり着いた場所はアクセサリーショップ。そこの一角に飾られた黒いリボンに目が付いた。

 

 黒は琴里のイメージとかけ離れた色だ。どちらかというと、白か薄い青色のほうが生えるかもしれない。それに黒は大人のイメージが強く出ている。

 そんな色のはずなのに、その色のリボンから眼を放すことができない。

 士道は思ったのだ。

 琴里は泣き虫の女の子だ。その芯は強くても、やはり幼いということもあり、尚且つ怖がりの面もある。それでもそれ以上に見せる無垢なその笑顔が士道は大好きだった。

 士道の心を照らし、凍った氷をゆっくりと溶かしてくれたその笑顔が大好きだった。

 だから琴里には泣いてほしくないと士道は思っていた。

 そう、つまりは琴里にずっと笑っていてほしいのだ。

 

 幸い今日は琴里の誕生日だ。プレゼントを買うお金だってある。

 今はまだこのリボンは琴里に合わないだろう。けど、このプレゼントをきっかけに、ほんの少しだけ大人に、ほんの少しだけ強くなってほしくて……

 

 士道は右手に二対一組のリボンをもってレジの方へ歩いて行った。

 

 

 こうして士道はプレゼントを買い、少しだけ口元を緩めながら家へ帰っている途中、

 

――――ゴオオオオオオオオォォォォォオオォォオオォオオォオオォオオオォ――――

 

 強い熱風が顔を叩いてきた。

 士道は熱から眼を守ために眼をつぶり、買ったプレゼントを放さない様に両腕で抱えながらその場で屈みこんだ。

 だが、その熱風もほとんど一瞬ですんだ。

 士道はゆっくりと顔を上げ、硬く閉じた眼をゆっくりと開くと、

 

「な……!?」

 

 あたり一面は火に包まれていた。見渡す限りの焔の海。この様はまさしく地獄界そのものだった。

 

「……こ……と、り?」

 

 乾いた唇からついて出てきた言葉は、可愛い妹の名前だった。

 

 

 

 

 

「……こ……と、り?」

 

 士道の眼に入った琴里の姿は、日ごろ見慣れているそれではなかった。

 見慣れない日本製の和服を加工し、着崩したような恰好をしており、体には焔の帯をまとっていた。

 その帯は焔という性質上、ゆらゆらと揺れ、あおられている。

 

「お……にーちゃん……! おにーちゃん……ッ!」

 

 そんな琴里は涙を流しながら兄である士道の名前を呼んでいる。

 琴里は今まさに絶望していた。

 こんな人を傷つけるとうな力はいらないと泣き叫ぶことしかできない、ここにはいない兄の幻影にすがらなければ何もできない弱い自分に絶望して、怖くて、恐くて、コワクテ、泣いていた。

 士道は、今にも壊れそうな姿の琴里を見て、琴里の呼ぶ声にこたえるために走りながら「琴里!」と叫んだ。

 

 士道が呼ぶ声に気が付いた琴里は顔を上げ、ゆっくりと士道の声がした方向へ顔を向けた。

 

「ぅ、ぁ、ぁ、お、おにぃちゃん……っ、おにーちゃん、おにーちゃん……ッ!」

 

 涙でクシャクシャになった顔を両手で拭いながら士道の名を呼び返す。

 しかし、士道が琴里の近くに寄ろうとした瞬間に琴里の身体にまとわりついていた焔が急に大きく膨れ上がった。

 

「……っ!」

 

 琴里は身を固くした。これは――だめだ。このままでは――

 

「おにーぢゃん! 来ぢゃだめぇぇぇぇぇっ!!」

 

「え?」

 

 士道が呆然と声を発する。

 しかし、琴里の焔は士道のことを、

 

同調、開始(トレースオン)

 

 ――吹き飛ばすことはできなかった。

 

 そこに開かれるは紅い半透明の七枚の花弁。投射物に対しての絶対の守りを誇る無敵の盾。一枚一枚が古の城壁と同等の防御力を持つ力を一人の少年が――

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!」

 

 その右手を起点に一気に展開させた。

 

 

「はてさて、俺は何しろ無知なものでね。いったい何がどうなっているのか教えてくれないかね?」

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