申し訳ありませんでした。
その後、なんだかんだで士郎からのお説教を受けた琴里は涙目になりながら嗚咽を漏らしていた。
「いいじゃん。別にご飯を食べたあとでチュッ〇チャップスを食べてもいいじゃん。
なんで叱られなくちゃいけないの~? うぅ~……」
先ほどからグチグチと愚痴をこぼし、頬を膨らませながら士郎を睨んだ。
本当ならば睨むべきもうもう一人の人物は、厄介事はご勘弁をと言わんと体で表し、さっさと別の部屋に駆け、逃げた。そういう意味では、正しく士道は真っ当な人間なのかもしれない。生存本能的な意味で……
「馬鹿者。俺は何度も口を酸っぱくして言っているはずだぞ。今はまだいいかもしれんが、食事をとった後お菓子を食すのはまだ良い。しかし、歯を磨いた後すぐに口に飴を放り込むとは何を考えている。そんなに虫歯を作りたいのか?」
「うっ……」
「それに琴里は糖分の取りすぎだ。いったい俺の眼の届かないところで何本のチュッ〇チャップスを消費している。五本か? 十本か? どちらにしろ食べ過ぎだ。しまいには太るぞ?」
「はう!?」
琴里は息を詰まらせ、顔が真っ青……とまではいかないが、普段の天真爛漫なその表情とは逆ベクトルで極まりつつあった。
だが士郎は追撃の手を緩めることはなかった。正しい意味での口撃はやむことなく続いた。
「はてさて、さぞかしうまかっただろうな。俺の眼の届かないところで食べるおやつは。
たまにならば俺もそこまで目くじらをたてるようなことは言わんが、はてさて、琴里の場合はいったいその日数はいかほどか。
一日か? 二日か? 飛んで一週間程か?」
「うぅ――~~」
「なるほど、もっとか。ならばいいだろう。俺も今まで目を瞑ってはいたが、このさいだ。徹底的に修正してやる。監視してやる。管理してやる」
「い……いやぁぁぁあ~!」
琴里は目から涙を、それこそマンガで表現されるような滝のように流しながら頭を抱えて部屋の隅に向かって走りだした。
あえて言うが、五河琴里は甘い食べ物が大好きである。お菓子が大好きである。とりわけチュッパチャップスは好物中の大好物である。
それが大好物であるならば、好きな時に好きなように食べたいものだし、いくら食べても飽きることなどない。
多少大量に食したくらいで飽きるようならば、それは最早、大好物とはいえないだろう。
それぐらい好きな食べ物を士郎は修正すると言ったのだ。そのために琴里の大好物を管理すると言われたのだ。管理するために監視すると言われたのだ。
うん。琴里じゃなくても脱兎のごとく逃げ出したくもなる。
いくら自業自得とはいえ、そんなものは御免被りたいものだ
そんなこんなで、冷めた士朗の視線と口撃から逃げようとしたわけだが、唐突に何かにぶつかった。
「わぷ!?」なんて声を発した琴里は、それが何者なのかと顔を上げると、そこには苦笑いしながら右手の人差指で軽く頬を掻く士道がいた。
「しろ兄、いくらなんでもやりすぎだと思うんだけど」
「そんなことをいうがな、士道。これは琴里のことを思ってでの言だぞ。俺も好き好んでこのような厳しいことをいっているわけではない。
厳しいことをいっている自覚はあるがな、だからと言って、今いわねばきっと琴里のためにならん」
「言いたいことも分からなくなないけど、ほどほどにな? しろ兄」
士道はそういいながら苦笑いを浮かべ、小さくため息をついた。
と、そんなやり取りを座った眼で、主に士道を睨んでいる琴里の視線に気が付いた。
「お兄ちゃん。なんで逃げたの?」
…………
沈黙。
そういえば、士道は不穏な雰囲気を感じ取り、巻き込まれまいと逃げ出した。
妹としての心境としては、いくら頼りない兄とはいえ、士郎のお叱りから庇ってもらいたかったというのが心情である。
それをドライブスルーかの如く無視されたのだ。いくら普段天真爛漫、底抜けの笑顔を振りまく琴里としても許せるものではない。
かくいう琴里も、士道が士郎に叱られているとき、真っ先に逃げ出すため、本来ならば何も言うことが出来ぬはずなのだが、それはそれ、これはこれである。
士道は苦笑いを顔に張り付けたまま、ごめんごめんと琴里の頭を優しくなでるのだった。
閑話休題。
「まぁ、今回は士道に免じて許してやろう。ただし、またこのような馬鹿なことをするというのなら……」
「――にゃ!?」
士郎は琴里のことを小さく睨み、これが最後と警告した。琴里は小さく悲鳴をあげ、士郎の方に顔を向け、コクコクと首を縦に振った。
「まぁ、この話はここまでにして、そろそろ家を出よう。これ以上ゆっくりしていたら遅刻しちゃうよ」
「そういえば、今日は琴里の学校も午前中で授業が終わるのであったな。ならば今日は早々に家に帰って何かしら作らねばな」
「うん、そういえばそうだな。琴里、昼飯に何がリクエストはあるか?」
琴里は「んー」と思案するように頭を揺らしてから、しゃきッ、と姿勢を正した。
「デラックスキッズプレート!」
近場のファミレスで出しているお子様ランチだった。
というか、中学生にもなってお子様ランチとか……
普通ならばそんなものは家では用意できるようなものではない。ましてや、ファミレスは冷凍食品のオンパレードだ。
士郎ならば、然る材料さえそろえば、多数店舗で取り揃えられているようなものより数段質の高い、しかも栄養があり、食べておいしいの三拍子そろった上等なものを用意することが出来る。
しかもそこには材料費しかかからないので、消費税込みでそこまでのお金もかからず、懐に優しい。
外で食べると野口英世が何人羽を生やしてどこかへ旅立つのか分かったものじゃない。
外食では、それ相応のデメリットが発生してしまうものの、家でならば、その短所を払拭することも可能なのだ。
しかし。
「そうか、分かった。ならばキョウの昼食はファミレスですますとしよう。いつもならば許しはしないが、たまにならば俺は何も言うまい」
普段ならば上記のような理由で家で食事を済まそうとしている士郎が、珍しくも「よし」といった。
どのぐらい珍しいかというと、一日十杯ほどのお茶を飲んで、そのうちの一回、茶柱が立つか立たないかというほど珍しい。
故に士郎以外の二人はびっくりして唖然とした。
「し……しろ兄が」
琴里が。
「外食に行くことを許容するなんて……」
続いて士道が呟いた。
「む、何だね。そのような目で俺を見て。……何かおかしなことを言ったか?」
確かに、二人からしたら珍しいことであろう。故に二人はずいぶんと失礼なことをのたまった。
だが士郎にしてもそれなりの理由がある。
確かに前提として自炊できるのであれば、それにこしたことはないだろう。
だがしかし、今日は朝から少々、いや、ほんのちょこっと琴里を叱りすぎた。そのことに反省しないでもない。
ただ、士郎はそれを素直に口に出すことは憚られた。というか恥ずかしかった。
なれば、謝罪の意を態度で示そうと、たまにの外食もよしとしたのだ。
実際それを琴里と士道に言わなければ伝わるわけもなく「ホラ、がっこうに行くんじゃなかったのか。とっとと行くぞ」とごまかし、ローファーを履いて外に出たのだった。
士郎と士道が高校に着いたのは午前八時十五分を回った頃だった。
廊下に張り出されたクラス表を適当に確認してから、これから一年間お世話になる教室に入っていく。
「二年――四組、か」
「どうやら同じクラスのようだな」
三十年前の空間震が起こったあと、東京都南部から神奈川県――つまりは空間震で更地になった一帯は、さまざまな最新技術のテスト都市として再開発が進められてきた。
士道が通う都立来禅高校も、そんな例の一つである。都立高とは思えない充実した設備を誇るうえ、数年前に創立されたばかりのため内外装も損傷がほとんどない。もちろん旧被災地の高校らしく、地下シェルターも最新のものが設えられている。
そのためか入試倍率は意外に高く、「家が近いから」だけの理由で受験を決めた士道は、士郎によるスパルタ授業を実践し、少々……いや、かなり苦労することになったのは出来ることならば士道にとってあまり思い出したくない記憶のうちの一つである。
「んー……」
小さく唸り、何とはなしに教室を見渡してみる。
まだホームルームまでは少し時間があったが、もう結構な人数がそろっていた。
「大分ある程度の人数がそろっているみたいだな」
「うん。そうだね」
「みたところ、どうやら見覚えのある者は、このクラスには少なそうだ。だからといって問題があるわけではないが、わかっているだろうな。士道」
「分かっているよ。俺は責任なんか取りたくないからね」
士道は小さく呟くことで答えた。
士郎は士道を鍛えるにあたって大きく分けて二つのことを教えている。
一つは見ること。
相手の観察をすることにより、その者の動きの癖をつかみ、それに対応するための方法などを教えている。
見の眼弱く、観の眼強く。一部を見て動きを読むのではない。全体を見て動きをつかむというものなのだが、この技術はそう簡単に身につくものではない。
いくら見ることを鍛えようと、所詮は経験がものをいう。まずは経験を積まなくてはいけない。
ならば手っ取り早く何をするべきか。
もう一つは実践。
所詮筋肉トレーニングで身につけた筋力は武術や格闘において純粋に必要な筋肉なのかどうかというと、実はそうではない。
むしろ無駄に着けた筋肉は柔軟性をなくし、かえって邪魔になることもある。
ならば無意味な筋肉トレーニングなど不要、無駄以外の何物でもない。それが不必要になるほどの実践組手を、経験を繰り返し積めば問題ない。
何より上記に挙げたような観の眼を手に入れるほどの実力も手に入る。
この二つはそれぞれ関係のないものだと思えるようなものだが、絶対に切っても切り離せないようなものであり、連動し、力を増幅しあっている関係にある。
それらを突き詰めていった結果、見ただけで力の流れを感じ取り、他人の身のこなしや雰囲気を見ただけで、その人の強さの『核』が分かるほどの技術を士道は身につけたのだ。
そして人の力を感じ取ることが出来るということは、士道自身の中にある力の流れというものも分かるようになってくる。
――それは幼いころの……もう一つの力のかたちが…………
今ではその力を任意にコントロールできるようにもなり、身体能力の強化に回すことが出来るようにもなった。
ここまでくると、下手な軍人など眼ではないぐらいの化け物じみた強さだといってもいい。
その強さを授けるにあたり、士郎は常に士道に言っていたことがある。
それは、
「人並み外れた強さを持つ者には必ず責任というものが付いて回る。力は力を、破壊は破壊を呼ぶ。それを防ぐために己を律することを覚えろ」
という言葉である。
士道にとって強さとは防衛のためや護るための手段。故に、それ以外には力など不要。
責任を取りたくないという言葉は、要するに士道という核が電子という力を外部から引っ張ってきた場合、守り切れるか分からないし、どうしても責任を取ることが出来ないということなのである。
二人は各それぞれグループに分かれて雑談している人たちを尻目に、黒板に書かれた座席表を確認しようと首を動かすと
「――五河士道と士郎」
後方から不意に、静かで抑揚のない声が語り掛けてきた。
「ん……?」
「どうしたのかね?」
聞き覚えのない声である。不思議に思い二人は振り向く。
そこには、細身の少女が一人で立っていた。
方に触れるか触れないかくらいの髪に、人形のような顔が特徴的な少女である。
この人形のような、という形容に異を唱える人間は、恐らくそうはいないだろう。
なぜなら、正確に測量された人工物のように端正であると同時に――彼女の顔には全くの表情のようなものが
「……え?」
「何……?」
そして、そんな少女を見た二人は一瞬、驚愕し表情を凍り付かせた。
うっそ。実際に彼女のことを視界にいれるまで存在に気が付かなかった。
いったいどうなっているのだ? 彼女の存在は余りに希薄。だか、強い力を感じるという矛盾を内包している。そんなことがあるというのか?
しかし、二人はそんな考えをおくびに出すこともなく、すぐに表情を緩め、彼女に声をかけた。
「なんで俺たちの名前を知ってるんだ……?」
「俺も君に会った覚えはないのだが……」
士道たちが訊くと、少女は不思議そうに首を傾げた。
「覚えてないの?」
「あ、あぁ。すまん」
「ごめんな?」
「……そう」
二人は少女に謝るも、特に落胆らしい様子も見せず、短く言って窓際の席に歩いて行った。
そのまま椅子に座ると、机から分厚い技術書のようなものを取り出し、読み始める。
「士道、気が付いたか?」
「あぁ。存在があんな希薄だなんてな。けど、本当はそうじゃないみたいだ」
「だろうな。どうやら彼女はいくらか気の扱いに心得があるらしい。
まったくと言っていいほど揺らぎは見当たらなかった」
気とは本来、誰の生命にも宿っているものだ。活気、瘴気、士気、闘気、病気、生気、それらは体内に宿る生命の力は、常に循環しており、その総称が“気”と言われている。
その“気”は、本来揺らぎやすいものであり、常に変化しているものだ。
しかし、彼女から感じたものは、揺らいでいなかった。まったくと言っていいほどに。
薄く、広く、しかし完全にないというものでもなく、感じれないというものではない。
触ってみて初めて感触がわかるあまりに軽い羽のような、空気に吹かれてすぐにでも溶けてしまいそうな雪のような……
そのくせ、見ればその力強さがよくわかる。
まるで羽が集まり、空を駆ける翼のような、束となり、触れたものを芯まで冷やす積雪かのような……
いや、それらのことも気にはなるが、何よりも気になることがある。
「だが、いったい何だったのだろうな。彼女はどうやら俺らのことを知っているような感じではあったが……」
「そんなわけがないよな、あんな特徴的な雰囲気な奴、俺はともかく、しろ兄なら一度見れば忘れるようなことはそうそうないと思うんだけど……」
「いや、お前は俺を何だと思っているのかね。俺は人間だとも。ミスをすることもあれば忘れることもあるさ」
言いながら、士郎は苦笑いする。
「まぁ、なんだもうそろそろ先生が来る頃の時間だから、そろそろ座ろうか。しろ兄」
「あぁ、そうだな」
「そうだなじゃないですよコノヤロー!!」
唐突に多少、ふざけが混じった色を持つ怒声が聞こえた、と同時に何かしらの不吉な気配を背中に感じ二人は、そこに手を添えた。すると、そこに吸い込まれるように、おそらく声を放ったであろう人物の手首が収まった。
そちらの方に眼をやると、そこにいたのは両手首を士郎と士道にがっしりとつかまれ、それに対して不機嫌そうに眉根を寄せた哀れな男がそこにいた。
「またお前か。よくもまぁ飽きないものだな」
「というか不意打ちかよ。殿町、お前随分な奴だな」
「うるせぇ、今日も元気そうだなセクシャルビースト五河兄弟」
方や失敬なと、方や失礼な奴だなとため息をつき、突然不意打ちをしてきた
士道と士郎がいる教室にいるということは、彼も同じクラスなのだろう。そのことに彼は喜びを感じるより先に、ワックスで逆立てた髪と筋肉質な身体を誇示するように腕を軽く組み、小さく苦笑いした。
「だいたい、この淫獣めらが、ちょっと見ないうちに色気づきやがって。いつの間に鳶一と仲良くなりやがったんだコノヤロー!」
言いながら彼は、表情をがらりと変え、ニヤニヤしながら士道に肩を回しながら聴いてくる。
「鳶一……? 誰だそれ」
「おそらくは、さっき話していたあの子のことをいっているのではないか?」
「そうだ、士道。今の今まで楽しくお話していたじゃねえか」
そういいながら、殿町は顎で、先ほどの少女が座っている窓際の席をさした。
つられて二人は眼を向ける。そこには先ほどの少女が座っていたままのようだった。
士道と士郎の視線に気が付いたからなのか、彼女は書面から眼を外し、こちらに向けてくる。
どうやら邪魔をしてしまったようだと、二人は申し訳なさそうに苦笑いをしながら小さく会釈して眼をそらした。
ふと士道は隣を見ると、反して殿町は、馴れ馴れしく笑って手を振っていた。
「殿町、お前いい加減にしろ」
ぱし! という小気味いい音が鳴った。
士道は殿町にこれ以上は恥をかく必要もないと、軽く背中を叩きながら注意しからだ。
「いって! おい士道、何すんだよ!」
「なにするじゃない! お前は少し自重することを覚えろ!」
そんな士道の言葉に、どこか疲れたように殿町はため息を吐いた。
「自重も何もないって。お前ら、もう一度あっち見てみろ」
「殿町、もういい加減にしたらどうだ? これ以上はあちらにも迷惑がかかるだろう」
「そうだぞ? もうこれ以上恥の上塗りをする必要はないと思うけど」
「あ~! もう、何でもいいから、もう一度彼女のことを見てみろ!」
二人は殿町の強い言葉に、仕方なしと渋々彼女の方を見た。
「…………」
再度目が合った。しかし少女は、特段何も反応を示さなないまま、手元にある本に視線を戻した。
特に何か気にした様子もなく、何かを気に留めようと思う意思すらない。
彼女の眼には、まるで世界を拒んでいるかのように、色をまったく写していなかった。
「わかったか? いつもあの調子だ。うちの女子の中でも最高難度、永久凍土とか米ソ冷戦とかマヒャデドスとまで呼ばれてるんだぞ。一体どうやって取り入ったんだよ、二人は」
特に何も取り入るようなこともなく、そもそも会うのは、この一回、今日が初めてだ。
「で、鳶一とな。そのような名前は今日、初めて聞いたのだがな」
「ちょ、おまえ、本気で言っているのか?」
「本気だが何か?」と士郎。
「いや、絶対に聞いたことはあるはずだ! 成績は常に学年主席、この前の模試に至っちゃ全国トップとかいう頭のおかしい数字だ。
しかもそれだけじゃなく、体育の成績もダントツで、ついでに美人ときている。
一度も聞いたことがないわけがない!」
確かに、二人は噂話ぐらいなら聞いたことがあるかもしれない。しかし、いや、だからこそ、そんなものには構うことは一切なかった。
なぜなら二人は知っているからだ。それがどれほど下らないかということを。
士郎にとっての遠坂凛。士道にとっての衛宮士郎、改め五河士郎。
士郎は噂を信じ、いざ凛のかぶっていた猫の皮の下を眼にしたとき、あまりのぶっ飛び具合に頭を抱えた。
士道はブラウニーとは呼ばれている士郎の、家での意外な抜け具合にあきれていた。
二人は、噂などあてにならないことを、誰よりも身近に、誰よりも深く知り、実感している。
故に二人は、本人を見て、人を知り、名前を知る。名前を聞く。それが何より大事だと知っている。
だから、
「まぁ、名前ぐらいだったら聞いたことはあるかもしれないけど、でも会ったことはないよ」
と返した。
「そもそも、なんでそんな奴が公立校にいるんだ?」
「さぁてね。家の都合とかじゃねぇの?」
大仰に肩をすくめながら、殿町が続ける。
「ま、士道。てめーはともかく、士郎はこんなことには興味がないだろうが、去年の『恋人にしたい女子ランキング・ベスト13』でも第3位なんだぜ? 見てなかったのか?」
「お……俺はともかく?」
殿町の言葉のとげが、地味に心に刺さった。
「そりゃ、そうだろうがよ。士道は士郎と違って、世間に関することに疎いからな。
本当に義理とはいえ、おんなじ環境で育った兄弟なのか疑いたくなるレベルだぜ?」
「まぁ、そういうな。それを言うなら、俺も同じようなものだろう。
何せ、そのようなケッタイなものがこの学校にあるとは知らなかったのだからな」
溜息をつきながらも、苦笑いしながらいう士郎だった。
確かに、殿町の弁は確かにわからないことではない。
わからなくはないことではあるが、それは何も知らない他人から見た言であり、第三者の言葉であり、悪い言い方をすれば関係ない他者のたわごとであることは確かである。
何せ根本的なところから違うのだ。
確かに性質は似ているだろう。 その人間としての在り方さえ似ているといっても過言ではない。もしかしたら始まりが似ているを通り越して、同じといっても過言ではないかもしれない。
しかし、根っこは似ているといっても根本が似ているとは絶対ない。『根っこ』の『本』が似るわけがない。いや、そもそも同じ形をした根っこなど、この世のどこにも存在しえない。存在できない。
とまぁ、このような理由付けを延々と続ければできなくはないが、それを飲み込み、というかぶった切り、士道は根本的な疑問を殿町にぶつけた……が
「まぁ、いいんだけどさ。今更だけど、何でしろ兄の言う、そのケッタイなもののランキングがベスト13なんて中途半端なところまで公表されてるんだ?
普通はベスト5までとか、10とか……もっと切りのいい…………――あ」
察してしまった。察しざるを得なかった。というか、そのあまりにも悲しくも涙ぐましい
そして、そんな士道の様子に気が付いた士郎は苦笑いをし、殿町は気まずそうに頭をガシガシ掻いていた。
「――あ~……その通りだな、うん。つまりはそういうことだ。」
要するに、『恋人にしたい女子ランキング・ベスト13』なるものを催した者の順位がベスト13だっただけの話である。
こうして、気まずいような、気まずくないような、かといって開き直ればどうにかなるわけでもなく、むしろ、そうしたら余計にbroken air(空気が壊れる《造語》)しそうな場になってしまったとか。
そして、決してドアの端のところで恥にされされたために羞恥心が目から零れ落ちたりしたとか。
そんなカオスな空気が、担任と副担任が来るまでの17秒間、続いたとか、続かなかったりしたそうな。
あとがきだからこそ、ここで記しますが
実は超弩級のスランプに劣ってしまいまして
文章を書くのがものすっごく苦痛に感じていたときかありました
それを完璧に克服した……と這いきれませんが
少しずつではありますが、頑張ろうと思えるぐらいには立ち直りました
とはいっても、実は俺のパソコンが臨終遊ばしまして
人のPCを借りて執筆しています
ですので、相も変わらず投稿速度が上がる見込みはありません
おそらく早くて1か月に一回
遅くて半年に一回のペースになると思います
そのことをご了承ください
さらにさらに、正直スランプが抜けきらない状態で執筆していたために
文章がぐっだぐだになっている感が否めません
大変長い間待てせてしまい
そのうえで見苦しい文章をさらしてしまったことに大変心苦しく感じております
重ね重ね、深くお詫び申し上げます
なお、誤字脱字の報告がありましたら感想覧までお願いします_(._.)_