忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。238話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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238話 いざ、ジスタ―ヴへ

 

 

 あれから数日が経ち、遺跡調査に赴く日がやって来た。

 

 

 リムル達の準備も万端で、リムルが元いた世界の探検服をシュナに作ってもらい、完璧に決めていた。

 

 

 しかも、リンコが貸し出したリボルバーを複製した試作品も持って来ていたのである。

 

 見た目は、コルト・シングルアクション・アーミー、通称ピースメーカー。

 

 ――口径 45口径(約11.43mm)

 ――銃身長 190mm(7.5in)

 ――装弾数 6発

 ――作動方式 シングルアクション

 ――全長 317mm

 ――重量 1048g

 

 の完全コピー銃である。

 

 銃本体のフレームとシリンダーは魔鋼製。

 

 弾の薬莢(やっきょう)部分は、銅を魔素で変質させた魔銅に亜鉛を混ぜ合わせた魔真鍮(しんちゅう)で出来ており。

 

 薬莢後部の中央部分には、雷管ではなく刻印式の発火術式が刻印されていて、それを撃鉄で叩くと薬莢内で小爆発を起こし弾頭を飛ばす仕組みである。

 

 通常は鉛玉だが、対魔物専用弾には魔力を込められる魔銀製(ミスリル)のものを使用する。

 

 始めは自動拳銃を複製しようとしたが、ヒナタから量産しての兵器使用は慎んでくれと言われていた為、このリボルバーを数丁だけ試作したのであった。 

 

 そして、通常の威力は、44マグナム弾より強力な454カスール弾並の威力を誇る。

 反動は強烈だが、この世界の魔物なら何ら問題はないし、人間でも正しく銃を持ち構える事が出来れば問題はない。

 

 リンコが試射を行った際の感想でも、同様であった。

 

 (なお)、これを作ったのは、カイジンが銃本体とドルドが刻印を施した。

 

 だがしかし、一点だけこの二人が再現出来なかったのが、銃身内部のライフリング(旋状)である。

 

 これに関しては、リムルが『胃袋』内で作った銃身を提供する事でとりあえず解決したのだ。

 

 ちなみに、リムルは個人的に内緒で教授に旋盤機なるものを開発してくれないかと打診していた。

 

 魔導ドライブを用いた旋盤機を開発すれば機械工作の幅が広がるので、あくまでも銃の量産じゃないよ? といった言い訳をかましていたりもする。

 

 そんな訳の、コルト・ピースメーカーを模した、〝リムル・ピースメーカー〟と銘打った銃を持ち込んだのである。

 

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(そう、某遺跡発掘冒険映画のように、リボルバーに冒険服! まあ、あの映画主人公みたいにフェドラ帽被り、左腰に鞭をぶら下げて革のショルダーバッグを肩からかけるスタイルにしたかったけど、今回は皆と合わせて一緒の冒険服にしてみたんだ。ロマンを追求するのは、男の美学だよね!)

 

 と、至極ご満悦のリムルである。

 

「これ、カッコいいっすよね! こう、試し撃ちした時に、ズキュンッとした衝撃が手と肩まで響く感じがめっちゃ最高っす!

「うむ。わかるかね、ゴブタ君? でも、危ないから決して人に向けちゃ駄目だぞ。これは本来貸し出し用なんだが、ゴブタ君には今手にしてるその一丁をプレゼントしよう」

「勿論っす! ありがとうっす!」

 

 そこへシオンが、満面の笑顔で口を開いて来た。

 

「フフッ、私にはこの〝剛力丸・改〟がありますし、リムル様がプレゼントして下さった服も――」

「シオン、その恰好で遺跡調査に行くのは却下だ。ちゃんと遺跡調査に適した服にしなさい」

「ええ、そんな~。リムル様?」

「そんな泣きそうな顔をしても駄目。着替えて来なさい、いいね?」

「はい。わかりました、リムル様」

 

 リムルに駄目出しをされて、ションボリしながら着替えに行くシオン。

 

 敬愛するリムルからプレゼントされた服が余程嬉しかったのか、どこへ行くにもこの服を着ようとしていたのだ。

 

 流石にお洒落(しゃれ)用の服なので、遺跡調査には向かないのは当然であった。

 

 

「リムルよ、ワタシはどうだ?」

 

 ウキウキとしたミリムが、そう聞いて来た。 

 

「お、中々似合ってるな。今日の為に新調してもらった甲斐があったね」

「うむ。着心地はいいし、動きやすいのだ! それに、ポケットがいっぱいあって、何だか恰好いいのだ!!」

 

 ミリムの冒険服は、半袖半ズボンである。

 最初はこれに難色を示したリムルだったが、似合っているから良しとしたのだった。

 

「そうだろうとも。シュナに感謝だね!」

「うむ」

「そうっすね!」

「ところで、ツキハはどこだ?」

「あそこにいるぞ」

 

 ミリムが指差した方向には、ホクホクとしたリムル達とは少し離れたところで、シャドーボクシングみたいに拳を繰り出し、スパッと風切り音を立て横蹴りを放ったツキハがいた。

 

 シーッと息を吐きながら放った右足をゆっくりと上に上げて行き、最後には軸足の左足と一直線になり、上半身は完全に真横になり、ようやくこっちを見ているリムル達に気付く。

 

「ん? おお、リムル。これ、めちゃ動きやすくて戦いやすいぞぉ~」

 

 と、右足を上げたまま満足したように言うツキハであった。

 冒険服は、ミリムと同じ半袖半ズボンである。

 

「うむうむ。気に入ってもらえて何より。しかし、何ちゅう体幹をしてるんだよ。これだから、戦闘猫族は。ククッ」

 

 ニコニコ顔で言うツキハに、リムルも笑顔で返す。

 

 そして、いつものスーツ姿に着替えたシオンが戻って来て、リムル達は意気揚々と待ち合わせ場所に向かったのだ。

 

 イングラシア王国首都の自由組合本部へと向かい、そこで落合ってそのまま傀儡国ジスタ―ヴへと移動する予定である。

 

 本部へ着くと、既に入口の扉の前でカガリ女史が待っていた。

 

 

「お久しぶりです。今日から(しばら)く、御世話になりますね!」

「初めましてだな、ミリムだぞ。宜しくなのだ!」

「初めまして、カガリと申します。こちらこそ宜しくお願いしますわ」

 

 にこやかに挨拶を交わし、カガリ女史はふと足下に変な気配を感じ視線を下げて見ると。

 

 

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 一匹の黒猫がカガリ女史を見上げていた。

 

「にゃあ『よお、カザリーム。女装趣味が板について来た感じ?』」

 

 この黒猫はツキハであり、いつの間にか変幻(ヘンゲ)していたのだ。

 

 にゃあと鳴きながら『思念伝達』で、カガリに話しかけて来たのである。

 

「黒猫?『何かしら? 番外魔王ツキハ。言っときますけど、女装趣味はないから』」

「にゃああ にゃんにゃ」『他意はないのよ。ただ、何となく。ほんとに女装趣味ないの? ふ~ん』

「ちょっと、困りましたわねえ『ある訳ないでしょうが、こんの性悪(しょうわる)猫が! マジにぶっ殺したくなるわね!』」

「ツキハ。何を遊んでおるのだ?」

「にゃ?」

 

 カガリ女史が平静を装い、困ったふりをしてると、そこへミリムが早くいつもの姿に戻れと、拳にハアーッと息を吹きかけながら言って来た。

 

 ポヒュウ~と魔素粒子を巻き上げ、慌てていつもの姿? に戻るツキハだった。

 

 

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「あいあい、ちょっとお茶目かましただけじゃん。初めまして、ツキハだよぉ~」

 

 お道化たように挨拶をするツキハ。

 

「初めまして、先ほど名乗ったカガリと申します。以後、宜しくお願いしますわ」

「ほ~い」

「ところで、人間の姿とは聞いていませんでしたけど?」

「ん? ツキハがいつもの姿だと他の者達がパニックを起こすかもだから、ワタシが今日だけは人間の姿でいるのだぞと言ったのだ。人の姿であれば、多少は恐怖感は薄れるだろう? ツキハ達のやらかしは、人類にとって悪夢レベル以上だからな」

「まあ、それは、お気遣い頂きありがとうございます」

「うむ」

 

 人間の姿でいるツキハに疑問を持ったカガリ女史に、ミリムが即答する。

 

 カガリ女史としては、ツキハが来るのも想定はしていたので何ら問題はないというような態度を示した。

 

 そして、今度こそツキハが敵対するのも織り込み済みである。

 

 

 カガリ女史に案内されて、リムル達は場所を移す。

 

 歩きながらリムルとカガリ女史は、遺跡調査に向けての軽い会話を交わしていた。

 

「ミリム?」

「むう、特に問題はないようだな。だが、ちょっと何かこう……」

「――?」

 

 リムルとカガリ女史の会話に怪訝(けげん)そうな顔を浮かべるミリム。

 

 リムルは、コハクとツキハからカガリ女史については、何も聞いてはいない。

 

 しかし、ユウキの部下という観点から疑ってはいた。

 

 だから、今のミリムとの会話は、カガリ女史に怪しい点がないかミリムの『竜眼』で確認をしてもらっていたのだ。

 

 何かが引っ掛かるようなミリムだったが、特に問題はないだろうと今は結論付けたリムルである。

 

(とりあえず、警戒はしておこう。コハクに言われた事もあるしな)

 

 

 ほどなくして、本部近くにある広場に来たリムル達。

 

「ワタクシのチームが集まっておりますので、紹介しますわ」

 

 そう言ってカガリ女史は、紹介を始めた。

 

 チームの面々は整列して既に待機していた。

 

 自分が鍛え上げた調査団であり、特にその中でも優秀な者を数名選抜したと説明する。

 

 男女混合の、十名近い隊員達である。

 

 その隊員達の服装は、調査団に相応(ふさわ)しく完全装備であった。

 

 リムル達とは違って〝なんちゃって冒険装備〟ではなく、全員が重装備である。

 

 皆が重厚な上下の服に皮厚のショートブーツに、大きなリュックを背負い。

 杖やツルハシ、男性は腰にショートソード、そしてスコップ等々、役割に応じて装備を振り分けていた。

 

 やがて、隊員達の紹介が終わり、カガリ女史がにこやかにリムルに言う。 

 

「それで、リムル様。荷物を運ばせますが、どちらに置いてあるのですか?」

 

(え? 俺達に荷物などないんだけど。あるのは、この新調した服だけだし……)

 

「いや、特に用意していないからこのままだよ」

「は? 冗談が御上手ですわね」

「あーそう言われても――」

 

 リムルが返答に困っているところへ。

 

「荷物ならあるよ。あたしは、これだけだよ」

「はい?」

 

 ツキハが腰に下げていた〝ヒョウタン型水筒酒樽君〟を手に持ち前に突き出し、ヒョウタン型水筒に巻いてある飾り紐がだらりと垂れ下がっていた。。

 

 それを見たカガリ女史は、怪訝(けげん)そうな表情を浮かべる。

 

「これには酒が入ってるんだよぉ~」

 

 そう言うと、小さな紐でヒョウタン型水筒と繋がってるコルクみたいな栓を口で咥え抜くと、クピクピと飲み、うま~と美味しそうに声を漏らす。

 

 そこへ。

 

「ツキハ。遺跡調査中のお酒は、晩御飯の時のみと、俺と約束したよな?」

「へいへい」

「ぬッ!?」

「お前らなぁ……」

 

 即座にリムルに言われ、栓をして腰に下げるツキハであった。

 

 ツキハに便乗して、可愛らしい胸の谷間からオヤツ用の〝ハチミツの小瓶〟を取りだそうとしたミリムが、そそくさと仕舞う行為にリムルがやれやれと首を横に振る。

 

 

「それにその恰好は――」

 

 更にカガリ女史は、ツキハとミリムの服を見てどこかやるせなそうに(つぶ)く。

 

 それを察したリムルは、穏やかにミリムとツキハに告げる。

 

「ああ、と。やっぱり、素肌を見せるのは良くないって。虫刺されとかもあるし、怪我(けが)しやすいだろう?」

 

 と、二人に(さと)すリムルだが。

 

「うーむ、そうなのか? だが、ワタシの肌は常に妖気(オーラ)で守られているので、大丈夫なのだぞ!」

「あたしもミリムと同じなんだけど?」

「いや、でもな――」

「ちょっと、待ってね。ミリム」

 

 リムルの言葉を止めて、ツキハはミリムの前まで行くと、二人してニカッと笑うと――

 

 

 ズビシッ!! 凄まじい打撃音が鳴り響き、軽い衝撃波が円形状に広がった。

 

 

 いきなりの行為に隊員達の目は点になり、カガリ女史は目を大きく開いたまま固まっていた。

 

 そう、ツキハとミリムがお互いの頭に軽くチョップを入れただけであり。

 ちょうど二人を中心にして、半径三メートル程の深さ三センチくらいの浅いクレータが出来ていた。

 

「ね?」

 

 と、ツキハが素肌を出していても問題なしよと、いうように言うと。

 

「ね、じゃねーよ。いきなり何してんだ、危ないだろうがッ!」

 

 リムルのカミナリが、二人に落ちた。

 

「リ、リムル。ツキハが悪いのだ!」

「ちょッ! ミリム何言ってんの!? アンタもあたしの誘いに乗ったじゃん!」

「どっも同罪。ほら、調査団の隊員の皆さんが驚いているじゃないか、謝りなさい!」

 

 リムルが隊員達の方を指差し、ツキハとミリムを(しか)る。

 

「ごめんなのだ」

「さーせん」

 

 二人してぺこりと頭を下げると隊員達は、魔王リムルってあの二人にモノ申せるんだと小声で口々に言い、どこかホッとした表情を浮かべていた。

 

 カガリ女史だけは右手を額にやり、これからの遺跡調査の事を思い、不安な気持ちが込み上げるのを我慢していた。

 

 

「まあまあ、大丈夫ですって。この二人は俺がきちんと面倒を見ますんで。それにこう見えて、俺も冒険した経験は豊富ですんで!」

「そこまで(おっしゃ)るなら、お任せしますが……。ですが、困った事があれば、直ぐに言って下さいませ」

 

 リムルが自信満々に言うと、カガリ女史も気を取り直したように笑顔で返す。

 

 そして、出発の時間となる。

 

 

「それでは、馬車を用意しておりますので――」

「え? 馬車なんていらないでしょう?」

「え?」

 

 リムルがそう返すと、キョトンするカガリ女史に、同じようにキョトンとするリムル。

 

(いやいや。馬車なんかで移動したら、ジスタ―ヴまで二ヶ月以上かかりそうだし、魔導ドライブ付きの馬車でも一ヶ月と半月くらいだろうしなぁ) 

 

「その、どういう意味でしょう?」

 

 リムルの言葉におずおずと聞いて来るカガリ女史。

 

 とそこへ。

 

「先行ってるよ」

「ツキハ待つのだ!」

 

 言うや(いな)や、ツキハは『空間転移』でジスタ―ヴへ直行し、ミリムも直ぐさま追いかけて『空間転移』していった。

 

「アイツらぁ……」

 

 ジト目で転移した後の散り舞う魔素粒子を見るリムル。

 

 とりあえずあの二人の事は置いといて、リムルはカガリ女史に街の郊外まで行こうと促した。

 

 カガリ女史はそれに(うなづ)き、隊員達もリムルに続く。

 

 そしてリムルは、人気のない場所まで移動したら、『空間支配』でジスタ―ヴまで『転移門』を繋いだ。

 

 

「お、来た来た。早く『転移門』を通って来なよ」

「何をしてるのだ、リムル。早くするのだ!」

 

 『転移門』の向こう側からひょっこりと顔を出し、皆を急かすツキハとミリム。

 

「つッ」

 

 額に手をやりながらも、()ぐに笑顔を浮かべながら言うリムル。

 

「それでは、どうぞ、通って下さい。直ぐに消えたりはしないので、落ち着いてどうぞ」

 

 リムルがそう声をかけると、唖然(あぜん)として固まっていた隊員達が騒ぎ出す。

 

「嘘でしょ!? ここからどれだけ離れていると……」

「先に消えた、魔王と番外魔王の二人が既にジスタ―ヴに着いているではないか……」

「魔王二人と番外魔王……凄いな、凄すぎる……」

「あ、ありえん。俺達がした準備は、これで大半が無駄になったぞ……」

「は、ははは、はっ……。何でしょう、これは……」

 

 と、どこか(むな)しさ満載の感想を口にする隊員達であった。

 

(あー何か、ごめん。ちょっと可哀想だったかな。ジスタ―ヴまで旅をする工程をいきなり短縮しちゃったからなぁ。でも、俺も『空間支配』の扱い方に、結構慣れて来たんだよな) 

 

 隊員達に同情する反面、ちょっと得意な気分になったリムル。

 

 

 と、こんな訳で、リムル達一行はあっという間に傀儡国ジスタ―ヴへ到着したのだった。

 

 

 そこでリムル達を出迎えたのは、城の入り口に整列して深々と頭を下げる黒妖耳長族(ダークエルフ)の方々。

 

「ようこそ、ジスタ―ヴへ! 長旅、お疲れでしょう?」 

 

 代表の長老が、そう言いつつリムルの前に出た。

 

 長老と言っても、見た目は二十代後半の褐色肌の金髪美人な女性である。

 

「いやあ、そうでもないんだけどね。ところでさ、部屋の用意は終わってる?」 

「勿論で御座います、リムル様。各自個室でも問題はありませんが、必要であれば大部屋も用意して御座いますわ」

「おお、流石に手際が良いな」

 

 リムルは微笑みながら長老にそう返す。

 

 それからリムル達は一旦大部屋に向かい、隊員達に荷物を降ろさせる事にした。

 

 長老に案内され、大部屋に着いたリムル一行。

 

 隊員達はどこかぎこちなく動き、各自荷物を降ろし始める。

 

 一時間も経たない内にジスタ―ヴへ到着し城の大部屋にいるのだから、隊員達の若干混乱した様子は仕方のない事なのかも知れない。

 

 と、そんな隊員達へ。

 

「リムル様より、皆様の面倒を見るように仰せつかっております。何か不便な点が御座いましたら、遠慮なく申し付けて下さいませ」

 

 長老がほわりと柔らかな笑みを浮かべ言うと、ようやく隊員達の緊張も(ほぐ)れ、皆に笑みが(こぼ)れる。

 

 

 それからリムル達一行は、城の中を案内してもらう。

 

 元はクレイマンの居城だけあり、そこはもう豪華の一言に尽きた。

 

 ダークエルフの者達が、この城を総出で管理しているので、どこを見てもピカピカである。

 

 この城はかなり広く、ダークエルフ全員が寝泊まりしてもまだ余裕があった。

 

 城下町はないが、魔人達の住処は存在した。

 

 その魔人達も今は、ゲルドの指揮下で働いている。

 

 そして、遺跡の入口へと案内されて来たリムル一行。

 

 

 リムルは扉に手を当て開けると、中に入る。

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 〝リンコとグレンダ〟

 

 あの日、食堂でリムル達と別れた後、リンコとグレンダは〝迷宮領地シャルフューズ〟に来ていた。

 

 

 グレンダは、地下迷宮を利用した広大な土地に目を奪われ、リンコの後について歩いていた。

 

(何なんだい、ここは……。番外魔王が隠し持つ、本拠地ともいえる迷宮領地? 何てこったい、今まで誰もが必死になって暴こうとしたルヴナン最大の秘密がここに……)

 

 グレンダはこれを知った事で歩きながら一瞬身震いをし、もしこの秘密を漏らしたらと考えると、顔から血の気が引く思いであった。

 

(はあーっ……本当にここから逃げれなくなったねえ。まあ、それはいいんだけど、アイツ等がこれを知ったら歓喜するだろうさね。ククッ)

 

 今まで自分を良いように使って来たマリアベル達に、意趣返しでもしたような笑みを口元に漏らす。

 

 それに気付いたリンコが話しかけて来る。 

 

「どうしたんです? 何か、どこかしてやったりみたいな顔してません?」

「え? いや、何でもないさね」

「そうですか。ここ凄いでしょ。丸ごと一つの町が入ってるみたいなものですからねぇ」

「ああ、まさかこんなところにルヴナンの本拠地があったとはね。どんなに探しても見つからないわけさね」

「もう、千年以上も前からあるんですよ、ここ」

「そうなのかい」

 

 ニコニコと言いながら、リンコは大通りから路地裏へと入っていく。

 

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 そして、先に見える階段を上ると、左側に大きな二階建ての建物が見えて来た。

 

 それは長方形の建物であり、真ん中に大きな玄関があった。

 

 

「ここです、グレンダさん」

「ここがアンタが住んでいる寮なのかい?」

「はい。じゃあ、寮管のリンダさんを紹介しますね」

 

 そう言うとリンコは玄関を開け、中に入っていく。

 

 寮に入ると、ちょっとした中央ホールがありその真ん中にカウンターが設置されていた。

 

 ホールの左右から各部屋があり、一階は右側に二十五部屋、左にも二十五部屋があり、大浴場がカウンター直ぐ左にあり、右側には男用と女用の共同トイレがあった。

 

 二階も同じく中央階段を左右二十五部屋あり、食堂と大浴場に当たる空間は(ひら)けた談話室と、一階と同じく男用と女用の共同トイレがある。 

 

 

 カウンターの奥にある業務用机に白髪で赤い目の若い女性が座っていて、リンコを見ると席から立ち、カウンターの中央に立つ。

 

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 そして気怠(けだる)そうに口を開く。

 

「おかえりぃ、リンコ」

「ただいまです、アリッサさん」

 

 リンコが挨拶をした女性が寮の管理責任者である、寮菅のアリッサであった。

 赤いブラウスを少し着崩し、黒のロングスカートを穿いていた。

 

「でぇ、コレが、コハク様から伝言があった新しい子なのかな?」

 

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 どこか胡散臭(うさんくさ)そうに、リンコの隣にいるグレンダを見て言うリアリッサ。

 

「え? (また、コレ!? それにアタイとそう変わらない歳の癖にして、アタイを子供扱いかい!)」

 

 またもコレ呼ばわりされてムッとするグレンダ。 

 

「はい。今日からルヴナンの傭兵になったグレンダさんです」

「ふ~ん。何かずる賢そうでいい感じだねぇ、この子」

「アンタねぇ、さっきから聞いていれば、言いたい放題言ってくれるじゃないか!」

「ちょ、ちょーっとグレンダさん。こっち、こっち来て、早く」

 

 アリッサの言動にキレたグレンダに、リンコが慌てて止めに入り、グレンダの手を引っ張りホールの隅まで行き、小声で話し出す。

 

「グレンダさん」

「何だいリンコ。あれは流石に、アタイもキレるさね」

「はいはい、わかってます、わかってますって。でも、アリッサさんと喧嘩は駄目です、ヤバイですよ」

「ルヴナンは自由なんだろ? 喧嘩ぐらいは問題はないだろさね」

「はい、そのくらいは日常茶飯事です。眷属の方達はそれはもう、毎日が大喧嘩ですからね」

「なら――」

「でもですね、アリッサさんと、喧嘩は駄目です、死にますよ?」

「え?」

 

 グレンダの文句を途中で(さえぎ)り、怖いものでも見たような顔をして言う。

 

「えとですね、アリッサさんは、見た目は若いですけど、あれでももう六百年は生きている元人間の魔人なんです」 

「マジかい?」

「はい、本当です。そしてですね、どこかの国の元宮廷魔導士で、何の因果か、暗殺者に成り果てた怖い人なんですよ」

「え? 何の冗談さね、その経歴は。それに成り果てたって、良いんかねそこまで言って」

「えーと、本当の事ですし、大丈夫ですよ? それに私達と同じ『空間操作』系の能力(スキル)を持っていて、あらゆる魔法を操る凄腕暗殺者なんです。ハッキリ言って、私の絶対に喧嘩はしたくない人のリストに入るくらいなんですよ」

「いや、アンタ、リストって。そう言うンコも大概(たいがい)じゃないかい?」

「酷ーい、グレンダさん。アリッサさんに、心臓を握り潰されちゃえ」

「ちょっとリンコ。言うに事を欠いて、それかい!?」

 

 グレンダを(なだ)めるつもりが、言い争いに発展するリンコ。

 

 そこへ、アリッサがリンコに何か仕掛けて来た。

 

「お~い、リンコぉ。全部聞こえてるぞぉ」

「はい!? いた、痛たたたたたーッ!」

 

 アリッサが声をかけたと同時に、リンガ頭に手をやり、見えない何かを振り払うように手を動かす。

 

「きゃあああー! 割れる、割れますって、頭、頭、やめ、やめてえぇーー!」

 

 痛さに叫びながら涙目のリンコ。

 

 グレンダは、それを見ながらアリッサに視線を移すと、アリッサはリンコに向かって右手を開き向けて、五本の指を何か握るように動かしていた。

 

(あれは……アタイのワープショットと同じ原理に似ているね。掴む範囲を、目視、いや、恐らく『魔力感知』の範囲内なら、感知した相手を距離を無視してどこからでも掴めるみたいか?)

 

 グレンダはアリッサの能力(スキル)を計りながら、自分ならどう相手にすると脳内シュミレーションを繰り広げ演算するも、アリッサは感知した瞬間に相手の心臓を握り潰せる。

 

 対して自分は、感知して引き金を引き弾丸が飛んで空間を繋げる僅かな時間がいる。

 そう、このワンアクションの差が致命的だと予測が出て、よくて相打ち、しかしアリッサは魔法も使えるし、強力な『結界』や防御魔法を持っていたら確実に自分が死ぬ事になる。

 

(全く何さね、ルヴナンの奴らは、どいつもこいつも化け物揃いかい)

 

 そう考えた途端に、乾いた笑いが出る思いに襲われた。

 

 痛がるリンコを横目に、カウンターまで行くグレンダ。

 

「あー、グレンダ・アトリーだ。今日から世話になるさね」

 

 そう言い、頭を下げる。

 

「ん。一応相手の力量は計れるみたいだねぇ。歓迎するよ、グレンダ」

 

 アリッサはリンコに向けていた右手をいったん下ろすと、グレンダに向けて差し出した。

 

 グレンダもその手を握り、二人は軽く握手を交わす。 

 

「アリッサさーん、何するんですかーッ!」

「人をバケモノみたいに言うから」

「でも、本当の――」

「なに?」

「えへへ、ごめんなさい~。何でもないです」

「ん」

 

 文句を言うも、アリッサからジト目で見られ、笑って誤魔化すリンコであった。

 

(へえ、見た感じ、いつもの他愛のないやり取りに見えるね。これがあの、傭兵商会ルヴナンって、かい) 

 

 リンコとアリッサを見て、クスリと笑いを漏らすグレンダ。

 

「グレンダ。君の部屋は二階の七十七号室だ。ここは百名分の部屋があるけど、今は結婚や自分の家を買って寮を出た者がいたから、君を入れて六十九人がこの寮にいるよ」

 

 アリッサはそう言い、コトリと部屋の鍵をカウンターに置いた。

 

「じゃあ、今日はもう部屋に戻って休むと良いよぉ。暫くお役目はないかもだから。あ、それと、これ。支度金」

 

 アリッサはグレンダに、金貨を一枚手渡した。

 

「有り難いね、飯とかどうしようか思っていたところさね」

「ん。ご飯は、シャルフューズの町で食べてもいいし、〝上で(魔国)〟食べてもいいよぉ」

「そうかい。ここに来る途中酒場を見つけたから、後で行ってみるさね」

「ん。あ、それと、明日の午前中に〝上〟の本店に顔を出して、傭兵契約を済ませて来る事。リンコ、頼むよぉ」

「わかったさね」

「は~い」

 

 鍵を受け取ったグレンダは二階へと上がるべく階段へ下向かうと、リンコは一階の十二号室だからと言い、自分の部屋に戻って行った。

 

 部屋の鍵を開けて入り、窓際にあるベッドに目をやるグレンダ。

 

「へえ、枕に布団、毛布も付いてるのかい。しかも、新品じゃないか。贅沢だねぇ、ここは」

 

 そう言い、ベッドにそのまま身体を放り投げる。

 

 そして、仰向けになり、天井をぼんやりと眺め(つぶや)く。

 

「……元傭兵だったアタイが、傭兵に戻る、か。因果なものだねぇ」

 

 はぁっと短い溜息を吐きつつ、右手に持った金貨を上に掲げ見る。

 

「とりあえず、これで生活用品を揃えないといけないねぇ。魔国が良かったんだけど、こっちの方が気楽でいいかも知れないね。さあて、一体どんな傭兵人生が始まるんだろうかねぇ。精々(せいぜい)、ここでもしぶとく生き残ってみせるさね」

 

 身体を起こし、金貨を指でピーンと弾いて宙でパシッと掴むと、部屋を出て酒場に繰り出すグレンダ。

 

 

 ルヴナンの傭兵になったグレンダは、リンコとコンビを組む事になる。

 

 

 そしてグレンダもまた、後に起こる〝大戦〟にリンコと共に戦う事になるのであった。

 

 

 





 この作品を読んで頂きありがとうございます!

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