『貴様…!』
『くっ…離せ!』
「私はいつの間にか持っていた剣を振り上げた…奴は即座に私から手を離し、バックステップ…そして私を睨み付ける奴の姿を視界に入れながら、生前のアーチャーが幾多の戦場の中で構築し、練磨して行ったと思われるいくつもの戦闘知識が頭の中に次々と書き込まれる頭痛に耐えつつ…まだ実戦経験も無い私でもある程度再現が出来そうなものを選択する…手札を選び終わり、私が奴に向かって一歩踏み出そうとしたところで…」
『士郎!…アーチャー、コレはどう言う事ですか!?』
「そこで部屋にセイバーが踏み込んで来たんだ。その瞬間アーチャーが息を吐き、俺から目を逸らし…セイバーに視線を向けた。」
『いや、何…少々揶揄い過ぎた様でね…』
『誤魔化さないで『セイバー、大丈夫だ』何を…士郎、その姿は…』
「そこで俺は剣を消し、自分の事を確認した…と言っても私から見えるのはさっきまで着ていた長袖のジャージでは無く剥き出しの右腕と赤い布に覆われた左腕…更に両腕を覆う白い布、それから視界にチラつく布切れ…取り敢えず俺は目を閉じ、自分の身体を解析し…カードを取り出せないか確認した…」
『…有った…ッ!』
「その場に再び現れたカードを咄嗟に掴むと同時に、私はその場に座り込んだ…いや、文字通り立っている事が出来無くなったんだ…」
『士郎!アーチャー!貴方は何を『私は何もしていない』嘘を『いや、セイバー…違うんだ』何を言って…!』
「セイバーにどう思われてるか不安だった私にとって、私の身を案じて取り乱すその姿には戸惑うしかなかった…そうでなくても、あの時は自分に何が起きてるかまだ良く分かっていなかったからな…そうやって、まだ狼狽える私に対しアーチャーが声を掛けて来た。」
『衛宮士郎。』
『?…何だ?』
『その力、結局何処で…いや、お前はその力…一体何に使うつもりだ?』
「分からない事だらけだったが…その事に関しては、私の返答は決まっていた。」
『俺は桜を、皆を…助けたい…こんな下らない戦争…早く終わらせたいんだよ…』
『…正義の味方になりたいのか?』
『…爺さんみたいな事言うんだな…いや、お前ならそりゃそうか…俺にはそんな大層なモノ向いてないし、なるつもりも無いよ…強いて言うなら、俺にとって大事な人たちを守れるなら…俺はそれで良い。』
『…本当か?』
『ああ、本当だ……俺は、お前みたいには成りたくないし…』
「最後の言葉は小声で言ったが…アーチャーには聞こえていた様だし…当然、セイバーにも聞こえていただろうな。」
「…衛宮さんは、その時点では正義の味方になるつもりは無かったんですね…」
「ああ、そんなつもりは全く無かった。」
そう言う意味では、確かにこのカードは私の運命を狂わせたと言えるだろう…もちろん、私がそっちの道に進もうと考えた直接の原因はそれでは無い…このカードを解析したあの時…全てでは無いが見えてしまった奴の記憶の一部…命を奪い、その感触に対する嫌悪感と拭い難い罪悪感…段々それすらも消えて行く奴の苦悩…そして、俺とは違う答えを出した切嗣との最後の語らい…奴の原初の記憶…あのカードに見せられたモノだけなら、悍ましさは感じてもそれ以上は無かった…だから、私の道を真に定めたモノが有るとすれば…
『そう、か……ならば、それを貫いて見せろ…』
その時見せたアーチャーの何処か寂しげな笑み…私はその意味を知りたいと、そう…思ってしまった…きっとそれが…私の原初になるのだろう…