いつ連載が止まるか分かりませんが,ノルース戦記を宜しくお願いします。
2023年初投稿の本話をどうぞ!!
グラ・バルカス大陸と日本列島近海で戦闘が行われていた頃,ミリシエント大陸西部のアンティレ海でも戦闘が始まろうとしていた。
第35艦隊を一方的に全滅させた第13艦隊第2戦隊 51隻はミリシエント大陸に攻撃を行っていたエルメ・ザフェ・ルエンベータ少将率いるエルメ戦隊を殲滅すべくノルースの空を進んでいた。
旗艦の「BBB-001 アンドロメダⅡ」は先程行ったワープアウト直後の波動砲発射で補助エンジンに不安を抱えていたが,通常戦闘には支障は出ないだろうと戦隊司令官のフェイアン・アレヴィン中将含め上層部全員が結論づけていた。
司令官のみが身につけられるコートの軍服を着て,自身の椅子に座らずに立っているアレヴィンに,レーダー員と通信士が話しかけた。
「ミルメリア艦隊捕捉! 10時方向,50km地点に展開しています!! 高度は我々の方が上です!!」
「司令官。先行させているコスモレイの機首カメラと繋げられますが,繋げますか?」
「無論だ。ディスプレイに写してくれ。」
アレヴィンの言葉を受けて通信士がタッチパネルとキーボードを操作すると,艦橋上の巨大ディスプレイに偵察として第1320宙雷戦隊旗艦「DDD-274 シヴィライゼーション」から発艦したSTOL多目的偵察機 コスモレイが撮影した映像が写し出される。
機首に搭載されたパーセシャル社製のSo-20V観測カメラによって鮮明に映し出された映像には14隻ものミルメリア艦隊が海の上を進んでいた。
アンティレ海という蒼く染まったキャンパスに緑色のミルメリア艦艇は小さくても目立つ存在だった。それが魚群の如く14隻も集まっていれば,高空にいるコスモレイにもハッキリと視認出来る程に目立っていた。
アレヴィンは参謀のライナ・パラーティノ少佐と「アンドロメダⅡ」艦長のキルエト・ガンリッター大佐と意見を交わした。
「相手に空母はいないみたいだが,油断してはならんな。」
「我々の艦は艦底に主砲がありませんからね。主砲を向けられる彼らの方が有利ですぞ。
加えて波動防壁の効力も若干ですが減少していますので気をつけたほうが良いと思いますぞ。」
「ミサイル・魚雷・対艦グレネードの残弾は充分ありますので,遠慮なく撃つことが出来ます。」
参謀のライナがタブレットを操作しながら実弾兵器の残弾を報告していると,タブレットにメッセージが入ってくる。彼女はメッセージの内容を読むと,アレヴィンへと報告した。
「司令官。先程第3戦隊と第4戦隊は既にミルメリア艦隊を全滅させたと通信が入りました。」
「もうやったのか,早いもんだな。そうなると負けていられないな。」
既にスフィンシャーの第3戦隊とヒエリスの第4戦隊が役目を果たしたと知ると,アレヴィンはフッと笑うと手元の通信機を取った。
「第1320宙雷戦隊及び第1321宙雷戦隊攻撃開始!!」
アレヴィンの指示で第1320宙雷戦隊と第1321宙雷戦隊所属のドレッドノート級5隻とエンケラドゥス級宇宙護衛艦15隻がFE-224艦対艦ミサイルとXaS-332AD 対艦グレネード弾をばら撒くように発射する。
エンケラドゥス級宇宙護衛艦は艦底のTA-6G 12.7cm連装ショックカノン砲も発射して対艦ミサイル・グレネードと共にエルメ戦隊へと降り注がれた。
雨の如く降り注がれる攻撃に対して,エルメ戦隊はショックカノンを発射して,対空レーザー砲をばら撒いて迎撃体制を整える。
対空レーザー砲で次々と対艦ミサイルとグレネードが撃墜されていったが,数が多すぎた為に落としきれず次々と被弾する艦が現れる。
先頭を進んでいる軽巡洋艦「マリエディア」と左斜後ろにいた駆逐艦「ジェリト」には対艦ミサイルが何発も着弾して,高威力の弾頭で船体を破壊される。
「ジェリト」は爆発によって船体を真っ二つに引き裂かれて沈んでいく。沈んでいく最中,辛うじて生存していた第1砲塔が最後の一撃を放つが,地球艦隊ではなくあろうことか友軍の「マリエディア」に命中してしまった。
本来ならば防御フィールドによって防がれるはずの砲撃は「マリエディア」の船体を溶かすように貫き,最後の引導を渡した。ショックカノンが致命傷になった「マリエディア」は機関が爆発し,そのまま艦を包み込む爆発に呑み込まれていった。
沈んだのは2隻だけだったが,エルメ戦隊の約半数の艦が何かしらの損傷を受けていた。エルメ戦隊旗艦の「ディメイラナイト」は側面の主砲も上に向けて,砲撃の密度を増していった。
緑色のショックカノンが蒼色のショックカノンとすれ違って,第2戦隊に向かっていく。
現状エンケラドゥス級のみが発射出来る第2戦隊と上甲板と側面の主砲を向けられるエルメ戦隊とではショックカノンの数に大きな差が発生している。
何発もミルメリア側のショックカノンが第2戦隊に到達するが,波動防壁で防がれていた為に被害は発生していなかった。だがあまりの数とアンティレ海でパル・キマイラ1号機が爆沈した際に誘爆したジビルによって周辺の魔力が不安定になっていた事も合わさって波動防壁の消耗が加速していった。
そして遂に第1321宙雷戦隊所属の「EEE-123 スィオネ」の波動防壁がショックカノンの集中砲火によって破られた。
自らを守る壁を失った「スィオネ」をエルメ戦隊旗艦「ディメイナライト」が放った6本のショックカノンが貫いた。113mの小さな船体は大口径高出力のショックカノンによって簡単に破壊される。
「「スィオネ」轟沈!!」
観測員の言葉が放たれると同時に「スィオネ」の姿は爆発に消えていった。空母「ベルミナーエ」を沈めた武功艦はアンティレ海へと散った。
アレヴィンが見た頃には「スィオネ」は元いた場所に黒煙を残してアンティレ海に消えていた。遂に一隻沈んだ事にアレヴィンの顔は苦いものになったが,直ぐに艦長へと向き直った。
「艦長,本艦も前に出るぞ!!」
「了解!! 機関出力上げ!! 面舵一杯!!」
キルエトの指示が機関室へと向かい,主機のPNC-350W型次元波動エンジンと補機のHU-47ケルビンインパルスエンジンが出力を増す。
444mの巨大な船体を持つ艦は航海長の操縦でその進路を右側へと変えた。エルメ戦隊で最も左側に展開していた軽巡洋艦「パスフェライネ」は「アンドロメダⅡ」の動きに気づき,主砲を発射するが波動防壁によって防がれていた。
「艦を左舷に傾けろ!! 射角を確保でき次第主砲発射!!」
アレヴィンの指示でスラスターが動作して「アンドロメダⅡ」が左側に傾いていく。
1・2番主砲のO4-C 40.6cm3連装ショックカノンが左舷側に向き,照準を未だに撃ってくる「パスフェライネ」に合わせると間を開ける事無くショックカノンを発射した。
6本のショックカノンが「パスフェライネ」の船体を溶かして艦を貫く。40.6cmの大口径ショックカノンに貫かれた「パスフェライネ」は瞬く間に爆発に呑まれて沈んでいった。
「対艦グレネード及び左舷ミサイル発射!! 打撃を与えろ!!」
左舷側の四連装対艦グレネード投射機と多連装ミサイル発射機から
第1321宙雷戦隊のドレッドノート級も上に回り込んだ上で右舷に傾かせることで主砲の射界を確保して,エルメ戦隊を上から砲撃していた事で,2方面から攻撃を受けたエルメ戦隊はたちまち攻撃が途切れる事になった。
この隙を逃さず第1322宙雷戦隊は敵前会頭し,正面のエルメ戦隊に横腹を見せつけた。艦の全火力を集中投射出来るT字になったことで,より一層攻撃の密度は増した。
3方向からの攻撃で次々とエルメ戦隊の艦は爆発に呑まれて消えていった。旗艦の「ディメイラナイト」も多すぎる直撃弾で次々と壊れていった。
そして第1322宙雷戦隊所属の「DDD-335 カテドラル」の砲撃が止めとなり,「ディメイラナイト」は艦内から爆発して真っ二つに折れて,エルメ准将と共にアンティレ海に消えていった。
黒煙と共にエルメ戦隊が消えていく様子を眺めているアレヴィンにライナがタブレットを操作しながら話しかけた。
「司令官。損害集計が完了しました。護衛艦「EEE-123 スィオネ」が撃沈,戦艦「DDD-291 クレセント」と護衛艦「EEE-097 イオカステ」・「EEE-117 アウトノエ」が損傷を受けました。」
「いつも通り早すぎる仕事だな。にしてもちょっと多すぎたな······」
アレヴィンはライナの驚異的な仕事の速さを褒めたが,同時に自艦隊の被害が大きいことに苦い顔をした。第4戦隊の被害は戦艦「DDD-087 エキスプレス」のみで,第3戦隊に至っては損害無しで終えていた。
「いや寧ろ被害がある方が普通か,無い方が可笑しいのか。」
アレヴィンは被害が無い方が可笑しいと結論づけ,自分の罪悪感を打ち消した。だがそんな彼にふと1つの疑問が浮かんだ。
(この状況ならヴェルズリー司令官はどう戦うのだろうか?)
彼の疑問に対する答えは直ぐに出ることになった。
◇
ミルメリア宙軍第35艦隊の生き残りだったメディナ・ベリメサ・エルメ戦隊が殲滅させて,最後の生き残りとなったクレビト戦隊にも終末が迫っていた。
ドファイアン・レド・クレビト准将率いるクレビト戦隊は目標であるアニュンリール皇国へと向かっていたが,皇国軍が保有している天の浮舟や空中戦艦・魔導艦・誘導魔光弾等を投入した総攻撃で駆逐艦「セラト」・「ガフィア」の2隻を喪失して,それ以外の艦も損傷を受けた。
だが熾烈な戦闘の末に殲滅させて首都 マギカレギアを砲撃していたが,第35艦隊本隊の全滅を受けて退避していた。
取り敢えず避難して戦局を見極める筈だったが,ヴェルズリーの挑発とも言える演説でベスタル海という戦場へと艦隊を進めていた。
アニュンリール皇国唯一の外交窓口 プシュパカ・ラタンとベスタル大陸の間に広がるベスタル海の上空でクレビト戦隊は蒼色の船体の「AAA-013 オーシャン」に座乗している第13艦隊司令官のフェルド・ヴェルズリー大将が直接率いる第1戦隊と相対した。
ほぼ同じ高度で向き合う2艦隊のだったが,第1戦隊が戦いの火蓋を切った。
「対艦ミサイル及び対艦グレネード発射!! 補給母艦は波動防壁を全力で張れ!!」
第1310宙雷戦隊と第1312宙雷戦隊所属のドレッドノート級宇宙戦艦 5隻が艦底のミサイル発射管と上甲板の対艦グレネードからそれぞれ8発ずつ発射した。
続いて第1310宙雷戦隊と第1312宙雷戦隊所属のエンケラドゥス級からも
2種類の対艦誘導弾はそれぞれの誘導装置に従って,クレビト戦隊へと向かっていく。
対空レーザー砲とミサイルで迎撃するが,エルメ戦隊と同じくミサイルの数が多すぎた為に落としきれず,次々と被弾する。
先頭を行く駆逐艦「トエラ」と「ナハディア」は被弾すると,瞬く間に爆発に消えていった。
クレビト戦隊も反撃として次々とショックカノンとミサイルを発射するが,トウキョウ級補給艦母艦が展開する波動防壁によって防がれ被害を与えられていなかった。
緑色のショックカノンが防がれる様子は艦隊を守る盾だと安心づけると同時に,破られたら瞬く間に被弾するという不安を与えるものでもあった。
ヴェルズリーは安心しきった目で波動防壁越しに真正面のクレビト戦隊を眺めていた。
「彼らの目は充分に引き付けられているな。」
「充分すぎる程に引きつけられていると思いますよ。」
ヴェルズリーの言葉に艦長のマラキス大佐が答える。クレビト戦隊は正面の第1戦隊への攻撃に集中していたが,集中しすぎるあまり第1戦隊の艦艇が
「もう充分だろう。第1311宙雷戦隊に突入指示を出せ!!」
ヴェルズリーは自らの想定通りに戦局が進んでいる事を確認すると,低空に降下させていた第1311宙雷戦隊に突入の指示を出した。
「DDD-047 エンタープライズ」を旗艦としたドレッドノート級 3隻,エンケラドゥス級10隻の計13隻の艦隊がクレビト戦隊の下へと回り込んだ。
クレビト戦隊はミルメリア艦の特徴でもある下部艦橋で接近を探知したが,反撃する前に第1311宙雷戦隊の攻撃が始まった。
「DDD-102 イマジン」の1・2番主砲のAS-7v 30.5cm3連装ショックカノン砲からショックカノンが発射され,重巡「パラドニア」の艦底に直撃する。
ショックカノンによって下部艦橋は接合部を切断され,星の重力に捕まってベスタル海へと落下する。艦底を6本ショックカノンが溶かし,船内から爆発させる。
衛星ノルース1の観測基地を破壊した重巡は皮肉にも本星の海へと船体を消していった。
続く様に「エンタープライズ」の艦首両舷に4門ずつ装備されている小型魚雷発射管から8本のCF-98S 対艦魚雷が一斉に発射される。
対艦魚雷は頭部のDZ-10画像識別誘導装置の指示通りに進み,軽巡「メレハザード」へと直進する。「メレハザード」も対空レーザー砲を向けて,反撃して3発を落としたが残る5発が「メレハザード」へと着弾した。
高威力の弾頭が5発も命中した「メレハザード」は瞬く間に沈んでいった。
エンケラドゥス級「EEE-039 タイタン」・「EEE-054 イペアトゥス」も3連装魚雷発射管から対艦魚雷を発射して,駆逐艦を1隻ずつ沈めた。
クレビト戦隊も反撃して,旗艦の右斜め後ろに展開していた駆逐艦「バルファー」の砲撃が「EEE-066 パーリアク」に命中して損傷させたが,複数の艦の反撃によって沈められた為にそれ以外の戦果を出すことは出来なかった。
2方向からの攻撃で一方的にやられ続ける事に業を煮やしたのか,旗艦「アグウェイオン」の艦底から箱型のものがせり出して,「ディメイラナイト」が空中戦艦 パル・キマイラを沈めた重衝撃ビーム砲が姿を現す。
エネルギーが溜まりだした9つの砲口を「DDD-169 ディスティネーション」へと向けた。
自身が狙われている事に気づいた「ディスティネーション」は司令塔防護ショックフィールド砲を発射して,船体を二重に防御した。
エネルギー充填が完了した重衝撃ビームが発射される。ショックカノンの何倍もの威力を誇る重衝撃ビームは波動防壁と司令塔防護ショックフィールドをガラスの如く割って「ディスティネーション」の船体へと侵入した。
重衝撃ビームが命中した「ディスティネーション」は船体各所を突き破る爆発を起こし,爆発に呑まれながら高度を下げていく。
激しい黒煙が大破した250mの船体を包み隠すが,艦橋最上部に設置されている6連装大型エネルギー砲に光が宿る。
黒煙を切り裂くように発射された6発のエネルギー弾は1発も外れる事なく「アグヴェイオン」へと着弾した。
そのうちの1発が重衝撃ビーム砲の根本に直撃した。重衝撃ビーム砲は多くのエネルギーを使用する上にチャージに時間がかかるために,主機関から直接供給パイプが伸びているのだが,よりによってエネルギー弾は供給パイプを巻き込んで爆発した。
2つのエネルギーが混ざった爆発は直ぐに船内全体に広まり,主機関を完全に破壊して致命傷を負わせた。爆発は船外にも及び,主砲を空中に吹き飛ばして,クレビトが指揮を取っていた艦橋も内部から破壊された。
致命傷を受けた「アグウェイオン」は船体を突き破る爆発を幾つも起こして,推力を失って落ち始める。重力に掴まった「アグウェイオン」はその400m超えの船体で「ディスティネーション」を真っ二つに切り裂いた。
それぞれ致命傷を受けた2隻の艦はそのままベスタル海へと落ちていく。何十mもの水飛沫を上げて着水すると,それを上回る爆発を起こして2隻は散っていった。
「戦艦1隻喪失,護衛艦3隻損傷か·····艦隊の下に潜り込ませるのはやはり危険すぎたか。」
「ですけどやっていなかったら,時間がかかってより被害が出ていた可能性もありますので,これが最善だったと思いますよ。」
「そうかい? まあ君がそういうなら私は最善だと信じよう。それじゃあ目的地に向かおうか。」
副官のフレシデント・ヤラヴェー中尉からヴェルズリーは自分の選択が正しいと信じることにした。戦列を組み直した第1戦隊進路をブランシェル大陸へと向けて進みだした。
・アンティレ海とベスタル海
この2つはオリジナル設定です。
ベスタル海は近くのベスタル大陸から取ってきましたが,アンティレ海は書かずに終わった日本国召喚作品から取ってきました。
・コスモレイ
早い話が100式空間偵察機です。これだけコスモファルコンみたいな名前が無いので,オリジナルで名前をつけました。
逆に言えば名前以外は100式そのままです。
・パーセシャル社
地球防衛軍が装備しているカメラ全般を製作しています。
・FE-223 対艦ミサイルとXaS-332AD 対艦グレネード弾····
主砲や航空機搭載ミサイルには名称があるのに,艦の方には無いのは違和感があったので,今回名称を与えました。
名前の付け方は·········適当です。
・誘導魔光弾等を投入した·······
ここはまだWeb版でも不明な点ですが,クルセイリースが持っているらしいのでアニュンリールが持っていても問題ないと判断しました。
にしてもまさかのパル・キマイラが敵側として登場とは·······海自に落とされる未来しか見えん()
・ディスティネーションを真っ二つに切り裂いた·······
戦艦 ディスティネーションにはここで退場して貰いました。
因みにこの名前はカッコいいから採用したのですが,先日意味を調べてみたら“目的地・行き先”との事でした。
よくこんな名前選んだな········
まあそれを言ったら他のドレッドノート級も“冒険(エンタープライズ)”や“幻想(イマジン)”・“クレセント(三日月)”・“ディメンション(次元)”だったりしますがね。
◇
取り敢えずミルメリア艦隊との戦闘は一旦今話で終わりました。
次からはノルースの戦後処理ですが,その前に地球連邦軍のメカニックでも上げようかな?とか考えています。