ノルース星戦記   作:YUKANE

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1月に2話更新できた事に満足した結果, こんなに更新が遅れました。

今話で序盤にしか出てきていなかった人物や組織が再登場します。死に設定にはさせません!!


国と星への執着

地球連邦の首都 セントラル・シティは“光に覆われた町”という別名を持つ。

北米(セントラル)大陸の都市同士を結ぶ高速リニアや他大陸や他惑星との定期便が24時間絶える事なく,出発と到着を繰り返すこの都市に眠るという言葉は存在していない。

 

五大湖(ファイブ・レイク)が巨大な宇宙港の役割を担った為に地球の入口として大々的に発展したこの都市には,コルスファイス・エアクラフト社等の様々な企業が幾つも本社を置き,300mを超える超高層ビルが百単位で建ち並んでいた。

 

その中でも700mもの五角形をした超高層ビルを6つの円形のビルが囲む 地球連邦官邸の存在感は格段に際立っていた。条件さえ揃えば雲によって隠される最上階は1フロア丸ごと大統領 ヨヘン・ライエンゼードの執務室でもあった。

 

ヨヘンは白い本革の椅子に座りながら,テーブル越しに巨大なディスプレイを見ていた。

 

『ノルースに侵攻していたミルメリア艦隊は全滅させました。戦艦と護衛艦を1隻ずつ失いましたが,艦隊の被害はそれだけです。』

 

ディスプレイにはノルースにいる第13艦隊司令官 フェルド・ヴェルズリー大将の姿が写っていた。幾つもの星を経由して送られている映像は鮮明で,その場にいるかの様な雰囲気を感じさせた。

 

「そうか。ノルースの方の被害はどうだね?」

『それですが······東京を含め3つの都市に甚大な被害が及んでいます。』

 

ヴェルズリーが言いづらそうと言うと,ディスプレイに3つの都市の映像が映し出される。映された都市は3つとも建物を破壊され,燃え上がった黒煙に覆われていた。

元の姿を完全に破壊された惨状にヨヘンも思わず苦い顔をした。

 

「これは酷いな·······」

『救助には我々第13艦隊と惑星 ベルーガから出せる戦力を投入させて貰いますが,食糧や医療品等の救援物資の不足が確実視される為に迅速な救援をお願いします。』

 

ヴェルズリーの訴えにヨヘンは何処か分かっていた様な表情をしていた。

 

「それに関してだが,先日大規模な輸送船団を第12艦隊の護衛付きで派遣する事が決定した。第12艦隊は第2,第3戦隊と交代でノルースの防衛に当たることになる。

それとノルースの復興に関してだが,オルデランやインペリアル星系連合も協力してくれるとの事だ。彼らはあの星に興味を抱いているようだ。特にインペリアル星系連合に関しては大規模な救援船団と護衛戦力を送ってくれるそうだ。」

 

ヴェルズリーが望んでいた救援を送ってくれる事に加え,オルデランやインペリアル星系連合も協力してくれるという事に,強張っていたヴェルズリーの表情は少しだけ和らいだ。

 

『ありがとうございます。オルデランやインペリアル星系連合も協力してくれるとは········』

「あの星は我々の常識とは色々違っているからな。彼らを引き付ける何かがあったのだろうな。」

 

ヴェルズリーもヨヘンも技術者では無いので詳しくは分からないが,ノルースの技術が我々にとって異質な存在であり,多くの星が興味を抱いている事だけは理解出来ていた。

 

「輸送船団がそっちに着くには最速でも1週間かかるが,その間は第13艦隊だけでやることになるな。」

『我々は助けられるだけの人々を救おうと思います。それでは。』

 

そう言うと通信は切られ,ヴェルズリーが写っていたディスプレイは暗転して,椅子に座るヨヘンの姿が反射して写っていた。

 

ヨヘンは右の肘置きに埋め込まれている液晶パネルを中指で操作すると,彼が座っていた椅子が180°回転する。回転が終わると彼は立ち上がって,執務室の壁の半分を支配していた巨大なガラス越しに,セントレア・シティを見下ろした。

 

今日は天候が良く,雲も少なかった為にセントレア・シティは太陽の光に照らされて,隅々まで見渡すことが出来た。

空を突き刺しているかの如く並んでいるセントレア・シティの姿からは,この場所が約100年前は全てが破壊されていたと気づくことは不可能であろう。

 

「あの日,日本が消えてから地球は一度完全にリセットされて今の姿になった。日本というたった1つの小さな国に我々は翻弄されてばかりだな。」

 

ヨヘンの視線は蒼い空の先にあるであろうノルースに向いていた。

 

 

「何故だ!? 何故だ!? 何故だあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ミルメリア現皇帝 ミルメリア16世は声を荒げ,手当たり次第の物を投げて暴れ回っていた。

 

綺羅びやかなクリスタルが部屋の各所に使われている専用の執務室で支配下の星から献上された資源や物資が纏められた報告書をタブレットで確認していた所に,ノルース侵攻が完全失敗した事が伝えられた。その報告に彼は憤慨し,勢いのまま癇癪を起こした。

 

彼の周囲には金色で縁取られた彼専用のテーセットやタブレット端末・花瓶・ランプが破片として散らばっており,ティーカップの中に入っていた紫色のお茶や花瓶に生けられていた水色の花が無残にも床に広がっていた。彼は希少で高価なクリスタルが埋め込まれた壁にも傷をつけ,クリスタルが持っていた輝きを失わせた。

 

ミルメリアの最高権力者で各地で神と同格として国民から崇められている彼が,子供の様に暴れ回り散らかす姿は違和感そのものだったが,宙軍の最高指揮官として各地の戦況を皇帝に直接報告を行う立場にあるミルメリア宙軍長官 ヴェレスタ・エムズ・グアンバーロ元帥はこうなる事を分かりきっていた。

 

戦闘で敗北したと聞こえると彼は一瞬で火山の様に憤慨し,どんな状況であっても自身を感情を抑えられずに部屋を荒らし回る。そうなる事を分かっていてどうするか報告を躊躇うと彼は"報告が遅い!!"と自分勝手な罵倒を浴びせ,報告の内容を聞くとより怒り狂った。

 

それでいて自分自身を"冷静沈着で全てを受け入れる完璧な人物"だと思っている矛盾した思考をしていたが,皇帝自身がその事実に気づいている素振りは1つも感じられなかった。

 

今回も内容を言う前に確認したが,本人が"問題ない"と言った為に報告したが,その結果はこの有り様となった。事前偵察で少ない損害で占領できると報告していた事が,より一層激怒させた要因だった為に事前偵察でもそう言わない様にしようと彼は内心で決めていた。

 

「ノルースの原始人なんか1日で消し去ることが出来た筈なのに!! 地球め·········我らの聖戦を邪魔するとは········絶対に許さん!!

ヴェレスタ!! 増援はどうする予定だ!!」

 

ミルメリア16世から話しかけられた事で,ヴェレスタは彼の機嫌を更に損ねない様に返答した。

 

「第35艦隊の穴埋めとして,本国艦隊から第12艦隊と第48艦隊を引き抜く予定です。」

「足りん!!」

「···········はい?」

 

機嫌を損ねない様に返答した筈だったが,彼の返しは予測していない物だった。ヴェレスタは返答に困った苦い顔をしていたが下を向いていた為にミルメリア16世が気づくことは無く,彼は言われていないにも関わらず自身の考えを話し出した。

 

「彼らは我々の聖なる戦いを邪魔したのだぞ!! ノルースと地球には邪魔してくれただけの報いを受けさせなければいけない!! そうであろう!!」

「お,仰るとおりでございます。そうおっしゃるのであれば,皇帝陛下には何か考えがあるとお見受けしますが,私にお聴かせ願います。」

 

ヴェレスタは取り敢えずミルメリア16世の考えを聞いて,彼の機嫌を取ることが先決だと結論づけた。

 

「無論だ。各戦線から1つずつ艦隊を引き抜いて,全ての戦力を持って,ノルースを取り戻すのだ!!」

「各戦線からですか!? 本国艦隊なら兎も角,前線からいきなり引き抜くとなると戦況に甚大な影響が出る可能性がありますが·······」

「その代わりに本国艦隊を送れば良いだろう? 艦艇数の多い艦隊ならば何も問題はないであろう?」

 

ミルメリア16世の言葉にヴェレスタは絶句した。

 

ミルメリア宙軍の本国艦隊はミルメリア本星の警備や新兵練習・新装備実験などを目的としている為に艦艇数こそ多いが,前線で幾重にも戦闘を重ねている艦隊とは戦闘経験や練度が圧倒的に違っていた。

 

戦いに勝利する要素には数も重要なのは間違いないが,練度が余りにも低すぎた場合は足手まといにしかならず,戦闘に影響を及ぼす事は間違いなく,最悪 撤退や敗北もあり得る。

 

その結果,大激怒して暴れ回るミルメリア16世の姿がヴェレスタの脳裏に浮かんだが,ここで指摘したら自分自身に危害が及びかねないので彼は黙った。

 

だがその行為がミルメリア16世をより暴走させる事になった。

 

「いや,待て········転送レーザー砲を投入せよ。」

「···········はっ?」

 

ヴェレスタは再び絶句した。彼は軍の研究所で絶賛開発中の転送レーザー砲を投入しろと言ってきた。

転送レーザー砲は衛星を経由して視界外からレーザーを撃ち込める画期的な兵器だったが,完成していない現状では実戦投入には不安しか存在していなかった。

 

ヴェレスタは実際に開発や実射試験の様子を見学していた為に現在の完成具合と問題点を理解していたが,試験の報告書しか読んでいないミルメリア16世はそんな現状など全て無視して一方的に投入を決定した。

 

「しかし,あの兵器はまだ試験段階で実戦投入出来る段階には達していません!!

また現状では効果的に使うにはトータス星系の第4惑星 ヴァルハトに衛星を展開する必要があり,地球側に気づかれて戦闘が勃発する事が間違いなく上に,破壊もしくは鹵獲されるリスクも高いです!!」

「そんな不安など艦隊で守れば問題ないであろう!! つべこべ言わず投入せよ!!

これは我が皇帝の聖なる命令ぞ!!」

 

ヴェレスタの言葉を聖なる皇帝の命令として全て跳ね除けた事で,もはや彼に反論する術は残されていなかった。

 

自分の言ったことが間違っていると考えられず,自分の考えを無理矢理でも通そうとするミルメリア16世の様子に,ヴェレスタは幼い子供が駄々をこねている様に感じれた。

彼自身には子供が3人いるが,全員ここまで駄々をこねることは無い。それは目の前の皇帝が自分の子供以下の精神をしている存在だと認識したと同義だった。

 

ミルメリア16世はヴェレスタに子供以下の存在だと認識された事など知る由もなく,感情のまま更に言葉をぶつけた。

 

「とっとと命令を出せ!! 今すぐにノルースの原始人と地球を滅ぼして,我々が正義だと見せつけるのだ!!」

「承知しました!」

 

最早彼に構っている時間が無駄だと感じたヴェレスタは返事をして,執務室を退室した。

 

執務室に残されたミルメリア16世は背後に振り返って,徐ろに跪いた。

 

部屋の壁や備品は彼の理不尽な癇癪によってボロボロになっていたが,その中で唯一彼の背後に描かれていた巨大な壁画だけは1つも傷がついていなかった。

 

ミルメリア16世は両手を組んで,祈るような姿勢を取ると話し出した。

 

「先祖様,地球という愚か者が聖戦を邪魔して故郷を奪ってしまい,大変申し訳ありません。

我らミルメリア16世が地球という邪悪を滅ぼして,ノルースを元の持ち主であるあなた方に捧げます。」

 

彼以外正常に理解する事が出来ない言葉は返事する事が無い巨大な壁画へと吸い込まれていった。

 

壁画には赤い光で覆われた荒廃した地面に積み重なる様に倒れる様々な人種が混じった人々と,積み重なった人々の上に平然と佇む()()()()()()()()を持つ人物が描かれていた。




・東京を含め3つの都市に····
攻撃目標は東京・ルーンポリス・ラグナ・マギカレギアの4つ。甚大な被害が起きたのはその内3つ。
唯一攻撃を受けていない都市は何処なのでしょうか? もしかたら消去法で分かるかもしれませんね。

・ミルメリア16世
簡単に言うなら体だけ大人になった子どもか,痛いなろう系主人公ですかね?
自分自身も書いていて"どうしてこうなった?"と思っています。ここまで矛盾したキャラを書いたのは初めてでした······

()()()()()()()()を持つ人物が·······
もしかしてこれは·······日本国召喚ファンなら正体は直ぐにわかるかも
というより壁画のセンスがヤバすぎる······自分で書いていてもちょっと引き気味になった。
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