ノルース星戦記   作:YUKANE

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なんか思っていたより短く纏まったので短期間で更新出来ました。


隠し通してきたプライド

ブランシェル大陸を収めているアニュンリール皇国へ攻撃を行っていたクレビト戦隊を全滅させた第13艦隊第1戦隊は、皇都 マギカレギアの沖合に停泊していた。

 

艦隊が浸かっている青い海と同じ碧色に塗られた船体を有する第13艦隊の旗艦 「AAA-013 オーシャン」の艦橋に設けられた司令官室に、第13艦隊司令官のフェルド・ウェルズリー大将と副官のフレシデント・ヤラヴェー中尉・「オーシャン」艦長のマラキス・ラキーノ大佐が集まっており、円と曲線で構成された高層建築物が建ち並んでいる町並みを眺めながら、かつてインドと呼ばれていた地で栽培されたフェルドお気に入りの茶葉で作られた紅茶を飲んでいた。

 

「アニュンリール皇国でしたか、この国は中々面白い町並みをしてますな。」

「衛星写真では地球連邦(我々)と似ていると思っていたが、いざ目にすると結構個性的で面白いな。」

「確かに気になる町並みですが、攻撃の傷跡が残っている姿を見ながらティータイムをするのは趣味が悪いと思いますが·····」

「それはそうだが、つい気になってな····」

 

フレシデントのキツい言葉を受けながらフェルドとマラキスは紅茶を飲み、時折テーブルの中心に置かれたスコーンを食べながらクレビト戦隊の攻撃で損傷を受けたマギカレギアの街並みを興味深く鑑賞していた。

円と曲線で構成された特徴的な高層建築物や先進的な魔導車が走る魔石舗装の道路は破壊され、黒煙を立ち上らせる。

公共交通機関として複数の回転翼で飛んでいる筈の魔導航空機移動システムは1機も飛んでいない代わりに、地球防衛軍が運用するコスモシーガルやコスモレイが救援目的でマギカレギアの上空を飛び回っていた。

 

その様子を見ながらフェルドは紅茶を飲んでいたが、不意に思い出したかのように話し出した。

 

「しかし、あの話は信じられんな······」

「アニュンリールと接触したマルサの報告ですか?」

「ああ、この国はこの超文明を周囲に隠しているなんて想像出来るもんか·····」

 

フェルドは特徴的な建物が建ち並ぶマギカレギアの中でも、特に目立つ建物群 アヴェストリアを眺めながら味がついていないプレーンのスコーンを口に運んだ。

 

 

マギカレギアの中心地には政府機関を一つに纏めた アヴェストリアが存在しており、その中央にアニュンリール皇国の皇帝 ザラトステラ・アニュンリール・ベイドフォーンの居城である オラナタ城が位置していた。

 

何処から見ても美しい曲線でデザインされたオラナタ城を囲む様に、行政機関が設置された見た目から"行政機関要塞"と市民が呼んでいるアヴェストリアはクレビト戦隊の格好の標的として徹底的な破壊が行われたが、皇帝や政権幹部は地下に建設されたシェルターへ避難する事で一命を取り留めていた。

 

皇帝や政権幹部はラヴァーナル帝国が竜魔戦争でインフィドラグーンに用いたコア魔法にすら耐えられる様に作られた地下シェルターでクレビト戦隊の攻撃を凌ぎ切る事を祈り、第13艦隊第1戦隊によってクレビト戦隊が全滅すると彼らは階級や役職を忘れて喜んだが、ミルメリアによって今まで隠してきた文明規模が全世界へバラされた現実に直面する事になった。

 

避難していたシェルターでそのまま行われた会議は数時間経っても結論が出る事は無く、途中で地球連邦が連れて来た外交官のマルサとも対談したが地球連邦は同国をノルースの中心国家だと認識していた事も知り、只でさえ何も決まらない泥沼化していた会議は更に深い泥沼へと落ちていった。

 

多種との混血を避けた為に純血に近い光翼人であり、エルフでは最秘奥魔法として伝わる時空遅延式魔法を用いて実年齢が300歳でありながら18歳の外見を有している皇帝 ザラトステラは、豪華な装飾を纏った座り心地の良い椅子に座って議論を聞いていたが、小田原評定となっている現状に難しい表情を浮かべていた。

 

ずっと聞かされている無駄話に頭が痛くなった彼が思わず溜息をつく。彼としては小さく吐いた筈だったが、特徴的な軽やかな音色は議論を続けていた政権幹部を黙らせ、彼らに気まずさという感覚をもたらした。

 

「も、申し訳ありません陛下!! こんなくだらない議論を聞き続かせてしまうなんて······」

「謝らなくて良い。こんな事態なんて建国以来始めてだから、そなたらがそんなに議論するのも理解出来る。現に私だって未だに悩んでいるからな。」

 

ザラトステラは普段なら絶対にやらないであろう釈明をしたが、政権幹部の顔色は何一つ変わっていないのが青い目にクッキリと写っていた。

全員が気不味いという感情を抱いている為に誰も話そうとしない現状を眺めるザラトステラは、白く透き通った指で瞳と同じ蒼く輝く髪を弄りながらどうにかしようと悩む。髪を弄っている中、彼の視線がこの現状を壊せるかもしれない1人の男を見つけた。

 

「ヒスタルパ、良いか?」

「な、何でございましょうか陛下!」

「この中で魔帝が残した兵器に一番詳しいのはお主だ。お主から見てミルメリアの空中戦艦はどう思うか?」

 

ザラトステラから指名された魔帝復活対策庁の長官を努めているヒスタルパ・デュラムは立ち上がって、ザラトステラと政権幹部の双方にしっかりと聴こえる様に話し出した。

 

「ハッキリと申しますと、我々の技術ではミルメリアに勝つ事は不可能だと断言します。我が軍が運用している最新鋭の魔導艦や空中戦艦は奴らに破壊され、首都への攻撃を許した事が何よりの証明になるでしょう。

加えてミルメリアは別の星からやって来たと言っており、これが事実ならあの空中戦艦は宇宙空間を飛ぶだけで無く、惑星間航行が行えるという事になります。最も地球連邦の船がやって来た以上、惑星間航行が行えるのは間違いないでしょう。」

 

魔帝の復活を支援しつつも万が一の事態を場合を想定して対策を練る魔帝復活対策庁の長であり、政権幹部の中で最も魔帝兵器に関して詳しい彼が断言すると反対意見を述べていた幹部らは頭を抱えた。

しかしながら、賛成側の政権幹部も改めて突き付けられた現実に顔を(しか)めた。ザラトステラもハッキリと言われた為に同じく苦い顔を浮かべていた。

 

会議を行っていたシェルターは再度静寂に包まれたがそれは気まずさではなく、越えようが無い現実に直面していたが故の絶望感だった。僕の星(しもべのほし)によって宇宙という概念を知っているアニュンリール人は、別の星から来たミルメリアと地球連邦との技術差を嫌でも理解させられていた。

 

「こうなった以上開示するしか無いのか·······」

「それが一番の最善策だと思います·····」

「仕方が無いのか····」

「ミルメリアの奴らめ·····なんて迷惑な事をしてくれたんだ!」

 

ザラトステラが不意に零した言葉に政権幹部は次々と賛同と落胆・今までの努力を一瞬で破壊にしたミルメリアへの憎悪を籠めた声を上げた。

これまでの政策を丸っ切り転換する事に納得出来ていない政権幹部もいたが、その理由をミルメリアへ押し付ける事で納得させようとした。

 

「方針が決まったのなら、他国へどの様に説明するか検討するのが最優先だな。」

「どの様にと言われても、この事実を知っている友好国などありませんからな······難しいですな。」

「そういえば······先進11ヶ国会議に参加した大使が、日本国が本国の事を知っていると報告していたような····」

「な、な!? それは本当か!?」

「日本国というのは、マルサとか言う地球連邦の外交官が言っていた国か!?」

 

他国への説明に関する話へ移行した瞬間に、外交部長官が投下した爆弾発言に政権幹部は声を荒ぶらせた。地球連邦の外交官が何度も言っていた事から覚えていた国が、本国について知っているらしい発言をした事にシェルター内は声が反響する程にどよめいたが、ザラトステラやヒスタルパら一部幹部はその国名を思い出す様に無言になっていた。

 

「漸く思い出した······文明圏外のあの国か」

「陛下、日本国について知ってるのですか?」

「知っているも何も、数年前にエスペラント王国でのビーコン回収を邪魔した国家だ。」

「あれを失敗させたのが日本国なのですか!?」

「文明圏外国がそんな事を出来るのですか!?」

「確か復活したアジ・ダハーカを倒したと魔帝復活支援課の長官から聞きましたが、まさか本国についても知っていたとは······」

 

ザラトステラやヒスタルパの発言に政権幹部は徐々に日本国が想像以上の強国だと察し出したが、同時にマルサが何度も言っていた事を思い出し始めていた。

 

「地球連邦によると200年ほど前に地球からこの星へ転移してきたと言っておりましたな。」

「あんな艦を作れる地球から転移してきたのなら、僕の星(しもべのほし)ぐらい持っていてもおかしくないですな。」

僕の星(しもべのほし)を持っているなら、本国についてもフィルディアス大陸の近くに位置する文明圏外の島国でも難なく知れますな····」

 

宇宙を難なく飛べる船を作れる星からやって来たという話から、日本国についての印象が変わり始めた政権幹部は納得しつつも頭を抱えたが、難しい顔をしていた一人の政権幹部がある事を不意に思いついた。

 

「日本国が我が国について知っているのであれば、他国への説明を日本国に手伝って貰うのはどうでしょうか?」

「手伝って貰うというのは、他国への根回しとかをやってもらうとかか? 我が国と対談すらやった事が無い国が応じてくれるわけ無いだろ。」

「であれば、地球連邦から説得を依頼しますか? 元々いた地球連邦から依頼されたのなら日本国も応じざる終えないと思いますが。」

「確かにあり得るかもしれないが·······大丈夫かね。」

「確信こそ抱けないが少しでも可能性があるなら、賭けてみようではないか。」

 

政権幹部の提案はザラトステラの賛同によって、一人の政権幹部の提案は実現へ移される事が決定した。この会議や発言自体は余り大規模な物では無かったが、後の歴史書にアニュンリールの大きな転換点として書かれる事となった。




・確かに気になる町並みですが、攻撃の傷跡が残っている姿を見ながらティータイムをするのは趣味が悪いと·····
爆撃を食らった街を見ながらティータイムするのは勝者かサイコパスだと思いますが、見た事が無い街並みが広がっているなら気になるよね?と私は思います。

・魔導航空機移動システム
挿絵も無いし小説6巻でしか記載が無いのでどんな物か分かりませんが、コルサントの空を飛んでいそうだなと勝手に思ってる。

・地球連邦の外交官 マルサ
本名や発言すら出ていないので現時点では名持ちのモブですが、暫くしたらちゃんと本名や発言を含めて再登場させる予定です。

・アヴェストリアの地下に建設されたシェルター
アニュンリールはコア魔法について誰よりも知っている上にミリシアルがジビルを開発した事も知っていると思うので、万が一の対策を練っていてもおかしくないと考えました。

・日本国について知っているのですか?
エスペラント王国の一件はザラトステラの耳に間違いなく入っているので、詳しくは知らないが国名だけは知っている様な描写にしました。


余談ですが投稿の前日(4月30日)は私の21回目の誕生日でした。誕生日プレゼント的な感じで頼みますが、日本国召喚Wikiの二次創作ページに書かれている名前が改名前なので、誰か直して下さい(他力本願)
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