ノルース星戦記   作:YUKANE

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この作品の原作カテゴリを“色々”にしたのですが,“日本国召喚”の方が良いですかね?

意見があればコメントにお書きください。


第1次ノルース攻防戦編
日本発見


蒼き星 地球。地軸がずれた事で丸々に南半球に呑まれた北米(セントラル)大陸。

 

大陸の中ほどにある五大湖(ファイブ・レイク)の畔に地球連邦の首都 セントラル・シティが建てられている。

 

かつてデトロイトと呼ばれた自動車工場が立ち並んだ町は,超高層ビルが幾つも立ち並ぶ超巨大都市へと変貌していた。

 

街を埋め尽くす超高層ビルの中で一際目立つのが,円形のビルが六角形を形作る様に並び,その中心に空まで続くかと感じる程に高い五角形のタワーが建てられている建物だった。

 

セントラル・シティの中心地でもある地球連邦官邸の一室に政府関係者が集まっていた。そこにいたのは副大統領・外務大臣・内務大臣・防衛軍幹部・第1・13艦隊司令官等の地球連邦の重要幹部が極秘で一同に会していた。

 

重要幹部らは会議事態が極秘な上に内容を知らされていない為に皆,様々な意見を飛ばしていた。

 

そんな中で第13艦隊司令官のフェルド・ヴェルズリー大将は場違いと言わんばかりの欠伸(あくび)をしていた。

 

「こんな場所で欠伸なんて度胸があるもんだ。それとも寝不足なのかい?」

 

ヴェルズリーに声をかけた第1艦隊司令官のブレロ・クランドスリー大将にヴェルズリーは目を擦りながら返事を返した。

 

「すいません。昨日あまり寝ずに()()()について調べていたもんですから。」

「そうかそうか、君らしい事だな。だが休む事も大切だ。この後より一層君を寝かしてくれなくなるだろうから、それまでに充分休んでおくとよいだろう。」

「そうしたいところですが,この雑音の中ではあまり寝れませんよ。」

「ここで寝る気かい? それはそれで胆の座った奴だよ。」

 

内容を知っている数少ない人間でもある二人は雑談を交わしながら,周りを見渡した。

 

「それにしてもケイン神国の大使まで来るとはな。彼らも驚愕しただろうな。」

 

クランドスリーの目線の先には在地ケイン神国大使の姿が写っていた。

地球連邦(自国)のみならず,他国の人間の姿まで見える事が彼らを困惑させていたのは紛れもない事実だった。

 

騒がしかった一室に新たな人物が重厚なオーク材で出来たドアを開けて入ってきた。

 

「済まない済まない。専用車が故障してしまってな。急いで来たのだが,遅れてしまった。」

 

そう言って謝りながら,地球連邦第26代大統領 ヨヘン・ライエンゼードは自分の席へと向かった。

大統領が来たことでざわついていた室内は一瞬で静まり返った。

 

「では始めようか。」

 

ヨヘンが自分の定位置につくと,今までの申し訳なさそうな雰囲気を一変させた。

太陽光が差し込んでいた窓は自動で閉められ,室内を照らしていたLEDも消灯して,室内は暗闇に包まれた。

 

暗闇の部屋を照らし出す様に,部屋中央の装置が動作を開始した。

装置に天井に向けられて設置されたレンズから何もない空中に星系のホログラムが浮かび上がった。

 

中央には太陽系が写っており,その周りにレヴィン星系等の他にも地球連邦が進出した星系が幾つも写っていた。

 

「今回皆には極秘で集まって貰ったが,地球連邦の根幹に関わる重要な事態が発生した。

あまりにも事が重大であるために,公式発表されるまでこの会議で話された事は極秘にしていただきたい。

では後はフェルド大将。お願いいたします。」

 

ヨヘンの言葉で内容を早く知りたい人々の視線はヴェルズリーに集中する。

ヴェルズリーは立ち上がって,一礼をした。

 

「紹介に預かった地球連邦防衛軍第13艦隊司令官のフェルド・ヴェルズリー大将です。

今回の話をする前にとある星系について説明させて頂きます。」

 

ヴェルズリーがそう言うと,ホログラムが一点の星系にズームアップした。

 

「こちらは十年程前に観測衛星によって発見されたトータス星系です。発見当初から新たなる開拓地として目をつけており,我々第13艦隊は観測衛星を投入していました。」

 

彼は手元のタッチパネルを操作して星系の一点を拡大した。拡大された場所には青く染まった惑星が存在していた。

 

「その結果,この星系の第4惑星に地球に良く似た惑星を発見し,我々はこの星をノルースと名付けました。

この星は見てわかる通り,地球に環境が似ており非常に人類が住むのに適した環境であると我々は見ております。

より一層の調査を行うためについ数ヶ月前にノルース周囲の衛星 ノルース1に前線基地を設置し,カナダ級パトロール艦 2隻を配備して監視していました。」

 

ノルースと呼ばれた蒼い地球に似た星の周りには月の様な衛星が2個程浮かんでおり,片方の表面をズームアップすると基地らしき物が確認出来た。

 

「ここからが本題です。これから見せる画像は基地に設置された望遠鏡が撮影しました。ここに見覚えのある土地があるとは思えないでしょうか?」

 

ヴェルズリーがそう言って写し出した画像を見た瞬間,会場はざわついた。

 

4つの島で構成された細長い土地。その姿をこの星の人類の歴史を知っている者は忘れるはずのない形だった。

 

「まさか·····これは日本か?」

「信じられん······なんでこんな星に?」

「ありえない!? こんなのありえん!?」

 

地球連邦が誕生する原因にもなった 日本消滅。その日本が未知の惑星に存在している事に彼らは動揺せざるを得なかった。

 

「我々も最初は信じられませんでしたが,これは明らかに日本そのものです。

また検証の結果,この日本は消滅してから5年程しか経過していないと結論づけられました。」

 

加えるように話された情報に室内は再びざわつく。こちらは日本消滅から200年の節目であるのに,日本自体はたった数年しか経過していないという事実に驚愕するだけだった。

 

これでは会議どころではないのだが,それを予測していたヴェルズリーは大統領席に座るヨヘンに視線を向けた。

 

ヴェルズリーの視線を察したヨヘンは敢えて聴こえるように大きな咳払いをした。

 

ヨヘンの咳払いによって騒がしかった室内は静まりかえる。

 

「確かに私もこの事実には非常に困惑した。だがこうして日本はしっかりと存在している。

これは奇跡そのものだ。もう1度会うことが不可能だと言われ続けていた日本を見つけられた。これは我々に会いに行けと言っているような物だ!! そうだろう皆!」

 

ヨヘンの煽る様な言葉に室内にいた人々は頷きだす。目の前に地球が200年前に失った物が何も変わらず存在しているのだ。

 

これに食らいつかないという選択肢は彼らには存在していなかった。

 

室内の殆んどが冷静さを取り戻していく中,地球連邦の警察組織や都市計画を取りまとめる内務省のトップである マラヴィン・マーハリスクが声を上げた。

 

「私は幼い頃から日本への憧れがありました。美しき建築物に独自の発展を遂げた文化を持ったまま失われた国である日本。

それが今目の前にあるのであれば,私は今すぐにでも向かいたいと思っています。

ですがヴェルズリー大将。日本が位置するノルースがどのような星なのか詳しく教えて頂かない限りはGOサインはおろせません。」

 

マラヴィンが投げ掛けた質問は全員の意見を代表しているのと同じだった。

 

幾ら日本がしっかりと存在しているとしても,そこは地球とは違う惑星。

一体何が地球と似ていて,異なっているのか。彼らの興味はその1点に注がれた。

 

マラヴィンの質問を受け止めたヴェルズリーはタッチパネルに指を翳して,ノルースの画像の横に各種情報を写し出した。

 

「ではまずこちらの惑星 ノルースですが,地球と比べて2倍ほどの大きさがあるにも関わらず重力加速度は9.8065m/s^2,平均気圧は1015hPa,大気も酸素が少し濃い程度と異なる箇所を見つける方が難しい程似かよっています。

このために人類(我々)が住むのに何ら問題はありません。ただ····」

 

ヴェルズリーは敢えて詰まらせて,人々の意識を注目させた。

 

「少々この星の文明の関して不自然な点がありまして,この画像に写っているブランシェル大陸(大陸)地球連邦(我々)の都市に類似する皇都 マギカレギア(先進的な都市)を有し,それ相応の文明を発展させていり事が分かります。

一方でフィルディアス大陸(こちらの大陸)皇都 エストシラント(最大の都市)は石造りの建物で構成されており,湾内には帆船がおり,文明が何世紀も遅れているのです。」

 

この発言に室内はどよめいた。何世紀も違う文明が共存しているなんて彼らの常識では考えられなかったからだ。

 

「1つの惑星に10世紀も違う文明が共存しているのか? アニュンリール皇国(この国)の属領とかではないのか?」

パーパルディア皇国(こんな国)などアニュンリール皇国(この国)の手にかかれば直ぐに滅ぶんでしまうぞ。」

「よくよく見てくれ。周りにもアニュンリール皇国(この国)程ではないが,第一・ニ文明圏(発展した国々)があるぞ。」

 

幹部らが自らの意見を思い思いに話している中,外務大臣 ハンザ・プレーストクスがある事に気がついた。

 

「おいちょっと待て。ムー大陸(この大陸)の西側にある島って,グラ・バルカス帝国じゃないのか!?」

 

かつて外務官としてケイン神国駐在員の経験を有している彼はこの国の歴史を頭に入れていた。だからこそ,ケイン神国の最大の敵であった グラ・バルカス帝国の存在に気づいた。

 

この言葉でこの場にケイン神国の外務官がいる理由を会場の全員が悟り,自然と視線が向いた。

 

「ええ,これはグラ・バルカス帝国で間違いありません。

約200年前,日本と同じように忽然と消えたグラ・バルカス帝国そのものです!」

 

ケイン神国の在地ケイン神国大使のアワン・スペル・ゲルノーサは立ち上がって意気揚々と宣言した。

 

「我々はグラ・バルカス帝国に対して劣勢で,敗北は決定的だと言っても過言ではありません。

ですがあの日,グラ・バルカス帝国は消え去りました。その混乱を征してケイン神国(我々)がユグドを統一出来ました。

ですがこの星にグラ・バルカス帝国がやって来ていました。あの国は文字通りの侵略国家で,西方世界(周辺地域)を調査した結果,かの国が周辺国に侵攻している可能性が極めて高くなりました。

我が国としてはかの国の侵略行為を止めなければ行けません。かつて我々に行われた残虐なる行いをこの星に広めてはなりません!」

 

アワンの発言は自国が受けた犠牲を他国に広めてはならないというケイン神国の意志そのものを表しているかのようだった。

 

ヴェルズリーはアワンの発言が終わってから口を開く。

 

「こちらのグラ・バルカス帝国ですが検証の結果,こちらも消滅してから5年程しか経過していないと結論されました。

つまりあの大戦艦「グレートアトラクター」が存在している時代だと推測出来ます。」

 

室内に声があがる。かつてグラ・バルカス帝国が有していた世界最大の戦艦 グレートアトラクター。

日本の「大和」と違いを探す方が難しい程似通った彼女はグラ・バルカス帝国の消滅と共に消え失せたと考えられていたが,もしかしたらあの星で現存している可能性が充分にあり得てきたのだ。

 

「グレートアトラクターも存在しているのか。なんて星だ。」

「文明の発展具合がちぐはぐにも程があるぞ。」

「もしかして大きな問題というは日本とグラ・バルカス帝国が戦闘状態に陥っているという事か?」

 

1人から飛び出した発言にヴェルズリーは答える。

 

「確かにそれも懸念されていますが,こちらはまだ確認されておりません。

ですが明確で且つ最大の問題はこの星系にミルメリアが目を向けている可能性があるのです。」

「なんだと!?」

 

ヴェルズリーの爆弾発言に室内はどよめいた。

 

地球連邦にとって現時点での最大の敵とされている侵略国家 ミルメリア。

 

各地への侵略行為を重ねており,彼らの標的となった星は無差別的な攻撃によって焼き払われ,その跡地には残骸と遺体しか残らないと言われている。

 

それが故に地球連邦の勢力下の星系に侵入を行う度に防衛軍艦隊と交戦を繰り返していた。

 

そんなミルメリアがノルースを狙っているという事実に彼らは戦慄した。もしノルースが彼らの手で焼き払われる等したら,ミルメリア(彼ら)との全面戦争が避けられないのは目に見えていた。

 

ヴェルズリーはタッチパネルを操作して,ノルースが所属するトータス星系の最端の星へと画像を切り替えた。

 

「こちらはトータス星系で最も端にある惑星であるミオン。この星にミルメリアが前線基地を作っていた事が数日前に判明しました。」

 

天王星の如く薄い青に染まった惑星 ミオン。ヴェルズリーは再びタッチパネルを操作して,この星の表面の一角を写し出した。

 

写し出された地表には薄い青の絵の具で塗られたキャンパスに1滴だけ灰色の絵の具を垂らした様に一点だけ灰色に染まっていた。

 

「こちらが観測衛星によって撮影された基地です。100隻程度の艦艇が停泊可能だと推測されています。

また周辺で確認された艦隊の規模としては戦艦 1・空母 3・巡洋艦 20・駆逐艦 50弱ですが,こちらもあくまでも推測ですのでこれより多い可能性は充分にあり得ます。」

 

艦隊の規模は未だにミルメリアについて詳細が分かっていない為に基準が不明だが,地球基準で考えるなら1艦隊分に相当する艦艇数がノルースの近くに配置されている事実に室内は緊張感が漂う。

 

「ノルースへの派遣艦隊は第1戦隊と第3戦隊で行う手筈ですが,万が一ミルメリア(彼ら)が侵攻を開始した際には残る第2/4戦隊の投入も検討しています。」

 

ヴェルズリーの言葉に人々の表情は暗くなる。

第13艦隊の全部隊を投入するという事態に万が一でもなったら全面戦争を行うと宣言しているからだ。

 

室内が冷たく染まっていくなか,大統領のヨヘンは立ち上がり,マイクに向けて大声で話し出した。

 

「あなた方が受け入れ難いのは私も充分に承知している。だがここで我々が介入しなければ間違いなくノルース(この星)はミルメリアによって全てが破壊されるであろう!!

やっと掴んだ日本への切符をここで自ら破っていいのですか!? 我々には日本へと向かう使命があるのではないでしょうか!?」

 

ヨヘンの心魂籠った言葉に決断を渋っていた人々も意見を表明し出す。

 

結果的に全会一致で,日本への艦隊派遣は決定し極秘会議は閉幕した。

 

 

セントラル・シティは地球連邦の首都であるために,多くの高速道路がここを起点に放射状に幾重の方向に伸ばされている。

 

ヴェルズリー大将とクランドスリー大将は軍港へと繋がっている道を浮遊式の専用車で走行していた。向かい合わせの後部座席で2人は雑談を交わしていた。

 

「これからドメイン星系(あっち)に戻るのかい?」

「ええ。一度戻って準備を整えてから出発する予定です。クランドスリー大将は?」

「私は休暇に入らせて貰おうと思うよ。三男が結婚式を挙げるからね。」

「ご結婚ですか。それは喜ばしい。」

 

雑談を交わしていた2人だが,クランドスリーは顔をしかめた。

 

「ヴェルズリー大将。君はミルメリアがどう出ると思うかい?」

 

クランドスリーが仕事モードに入ったのを察知したヴェルズリーも仕事モードに入る。

 

「恐らく最も早くて3ヵ月以内には侵攻を行うと判断しています。

トータス星系で人類が住める環境なのはノルース(あの星)だけ,ミルメリア(奴ら)の標的から逃れる事は無理でしょう。」

「そうか·······仮に戦争になったとしてノルースに対抗できる国はあるのか?」

「ありません。例え日本であろうと損害は与えられるかも知れませんが,最終的には敗北するでしょう。」

 

ヴェルズリーの事実にクランドスリーは唸る。

 

「君には相当な大役が舞い込んだみたいだね。確か·····幾つだったか?」

「来月で34歳です。」

「34か·········私がまだ戦艦の艦長だった時に艦隊司令官か。しかも4艦隊分の。」

 

地球防衛軍史上最年少で艦隊司令官に就任したヴェルズリー大将を見ながら,クランドスリーは時代の移り変わりをより実感した。

 

ふと外を見ると目的の1つであるハイラスティ軍港が見えてきた。

様々な船が停泊している中,1隻の大きな船が彼の目にとまった。

 

「おやそうこうしていると君の船が見えてきたよ。」

 

クランドスリーの言葉にヴェルズリーは高速道路を丸々覆っている透明なチューブ越しに外を眺めた。

彼の目線の先には自らの船でもある 1隻の蒼き巨大な軍艦が湖に浮かんでいた。

 

地球連邦防衛軍が誇るアンドロメダ級宇宙戦艦の14番艦 「AAA-013 オーシャン」。

 

海洋(オーシャン)という言葉の通り蒼く染まった船体は五大湖(ファイブ・レイク)の青さに負ける事のない存在感を示していた。

 

隣に停泊しているドレットノート級戦艦と比べてもその大きさと迫力は格段に違っていた。

 

専用車は高速道路を降り,ハイラスティ軍港の入り口で止まる。

 

ヴェルズリーは1人車を降りる。クランドスリーを乗せた車が発進していくのを見送ってから彼は徒歩で自らの艦へと向かう。

 

遠くからも巨大に見えていた「オーシャン」(自らの艦)は,近づいていく度により大きさを増していく。

近代化改修が終わり,青い塗料が塗られたばかりの「オーシャン」の姿はより一層輝いて見えていた。

 

ヴェルズリーが「オーシャン」(自らの艦)が止まっている埠頭に到着すると,船体から開いている階段の下に自らの副官が立っているのを見かけた。

 

「まさか私が来るのを待っていたのかい? わざわざここで」

「ええ。先程官邸を出発したと連絡がありましたので。」

「全く。君の情報網は一体どこまで私の情報を知り尽くしているのかね?」

 

自らの副官である フレシデント・ヤラヴェー中尉の行動だったが,ヴェルズリーはもう慣れたのか滑らかに受け流した。

 

「では行きましょうか。」

「そうだな。艦長も待っているだろうし。」

 

そう言って2人は階段を登って船内に入った。2人はエレベーターに乗り込み,艦橋へと向かった。

 

エレベーターの扉が開き,ヴェルズリーが入ったことを確認すると,艦長のマラキス・ラキーノ大佐が振り返る。

 

「司令官に敬礼!」

 

マラキスの声で艦橋内の全員がヴェルズリーに振り返り,敬礼を行った。ヴェルズリーも敬礼を返した。

 

「艦長。艦は出せるかい?」

「はい。出港準備は出来ております。他の艦も同様です。」

 

ヴェルズリーの言葉にマラキスは威勢良く答える。他の艦の情報も入ったことには驚いたが,フレシデント(うちの副官)がやったのだとして納得した。

 

ヴェルズリーは被っていた制帽を被り直し,正面を向く。

 

「よし,第1310宙雷戦隊出港用意!! 波動エンジン出力増加!!」

『了解しました! 波動エンジン出力上げろ!!』

 

機関長の声によって艦内に搭載されている次元波動エンジンの出力が徐々に上がり出す。補機エンジンとして波動エンジンの脇に取り付けられている ケルビンインパルスエンジン 4基も動作を開始しだす。

 

『波動エンジン出力85%を越えました!』

「「オーシャン」発進!! 錨を上げろ!!」

 

船を止める為に湖底に打ち込まれていた錨が上がっていく。錨が上がり終わると舷側のカバーが開いて現れたスラスターが「オーシャン」の船体を沖へと動かし出した。

 

「オーシャン」は停泊している状態から180°旋回し,艦首を沖合にへと向け,444mの船体が五大湖(ファイブ・レイク)の蒼い湖面へと動き出した。

 

「オーシャン」に続いて,護衛としてドレットノート級の「DDD-144 ハイペリオン」・「DDD-326 センチュリオン」が先行して航行しだし,更に3隻の周囲をエンケラドゥス級宇宙護衛艦 5隻が囲む陣形で湖面を進んでいく。

 

第1艦隊旗艦の「AAA-001 マジェスティック」に見送られながら,8隻の第1310宙雷戦隊は港から離れていく。

 

港から一定の距離まで離れると,艦隊はエンジン出力を上げて,速度を上げ出す。

 

ドレットノート級が湖面から水を巻き上げながら,上昇を開始しだす。

 

続くようにエンケラドゥス級が空に舞い上がり,「オーシャン」も続いた。

 

蒼き船体に白いペイントで強調する様に書かれた「OCEAN」の文字が湖面に反射する。

 

第1310宙雷戦隊は上昇を続けていき,サファイアの様な空は徐々に黒によって侵食され出した。

 

完全に黒に侵食された頃には大気圏を超えて,宇宙という名の終わりの無い大洋へと繰り出していた。

 

完全に地球から離れた事を確認するとヴェルズリーはマラキスへと話しかけた。

 

「艦長。指揮を任せてもいいかね?」

「どうしました司令官?」

「ちょっと寝不足でね? 会議やらの準備であまり寝れていないんだ。」

 

ヴェルズリーの言葉にマラキスは大声で笑った。マラキスの笑い声につられて,艦橋内にも笑い声が起き出した。

 

「そういうですか。ここは我々に任せてお休みください。何ならベルーガにつくまで寝てもらっても結構ですよ。このあともっと疲れるでしょうから。」

「おいおい,これ以上の仕事はやめてくれ。だがそう言うのならゆっくりと休ませて貰おう。休んでいる間は艦隊を頼むぞ。」

 

ヴェルズリーはそう言って,艦橋を去り艦長室へと向かった。

艦長室で漸くゆっくりと休めるかと思っていた彼だが,歴史は彼に更なる苦労を与えるのだった。




設定とか補足等々
・この作品の地球
この作品の地球は日本が消えて地軸が傾いた為に北米・南米大陸が丸々南半球に移動して,逆にアフリカ・オーストラリア大陸が北半球になっています。

分かりやすく言うと日付変更線の場所が赤道になっていると思ってください。

・セントラル・シティ
地球連邦の首都。かつてのデトロイト跡地に建てられた。
高さ1000mを超すビル群が立ち並び,北米大陸(セントラル大陸)各地に向けて高速道路やリニアモーターカーによる高速鉄道が運行されている。
周辺の五大湖(ファイブ・レイク)は軍港として機能しており,第1艦隊が拠点を置いている他アンドロメダ級の大規模な改修は主にここで行われる。

・フェルド・ヴェルズリー大将
第13艦隊司令官。乗艦は「オーシャン」。
モデルはヤン・ウェンリー。因みに外見は藤崎版です。

他にも銀河英雄伝説のキャラをモデルとした登場人物が出てきます。

・ノルース
ノルースという名称はグラ・バルカス帝国がかつていた惑星のWeb版での名前です。
書籍版では ユグドに改名された為に,今回使わせて頂きました。

・ノルース1
日本が行った惑星には月が2つあるので,スターウォーズのヤヴィン4の様にノルース1・2と名付けました。

・第13艦隊
地球連邦防衛軍が保有する艦隊の1つ。惑星 ベルーガを本拠地にしている。
惑星 ベルーガ自体が地球連邦の領域でも端の方で担当範囲が広大な上に,未開拓地への調査・防衛を担うために通常の艦隊の4倍にあたる戦力が割り当てられている。

モデルは分かっていると思っていますが,ヤン艦隊です。ヤン艦隊の濃すぎるキャラを全員出すためにはこうせざるおえませんでした()

・各艦について
本来ならここで書きたかったのですが,ここに書いたところめっちゃ長くなったので,別に書こうと思っています。

・第1310宙雷戦隊
第13艦隊に所属している戦隊。役割としては旗艦の護衛を担当しており,旗艦が動く際には必ず一緒に行動を行う。
編成表
戦艦
「AAA-013 オーシャン」
「DDD-144 ハイペリオン」
「DDD-326 センチュリオン」
護衛艦
「EEE-130 アイトネ」
「EEE-136 レダ」
「EEE-139 エウリドメ」
「EEE-146 エウアンテ」
「EEE-148 リシテア」
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