ノルース星戦記   作:YUKANE

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漸く日本国召喚のキャラが出てきます。

4話目でやっと出る作品って他にあるかな?

というより更新に1ヶ月位かかった!! なんでや!!


世界中への脅迫

ノルースには3つの文明圏が存在している。

神聖ミリシアル帝国を中心とした中央世界こと 第一文明圏。

 

約1万2000年前にこの星にやって来たムー大陸を中心とした 第二文明圏。

 

覇権国家 パーパルディア皇国を中心としてした 第三文明圏。

 

その周囲には西方/南方世界・文明圏外国・圏外文明国等の様々な国が存在している。

 

そんな各文明圏の中から主要国を選んで世界の流れを決める“先進11ヵ国会議”が,神聖ミリシアル帝国第二の心臓とも呼ばれている港湾都市 カルトアルパスで2年おきで開催されていた。

 

4年ぶりの開催となった今年は常時参加国だったレイフォル・パーパルディアに変わって日本とグラ・バルカス帝国という新たな顔ぶれを見せていた。

 

そんな先進11ヵ国会議だったが,開始早々列強国の1つ エモール王国の代表 モーリアウルによってかつて世界を恐怖で支配したラヴァーナル帝国(古の魔法帝国)が復活する可能性が大々的に発表された事で会議は荒れ始めた。

 

モーリアウルが結束を呼び掛けた中,グラ・バルカス帝国代表 シエリア・オウドウィンが彼らを見下し,侮辱する発言をしたことでより会議は荒れ出した。

 

「なんか······凄いとしか言いようがないな。」

「ええ······こんな言い争い国会でも見られませんからね。」

 

日本国代表の近藤 俊介は思わず部下の井上 一巳に話しかける。

 

彼らの目線の先ではモーリアウルとシエリアが人族だの亜人ごときがと日本で行ったら辞職レベルの人種差別な発言が飛んでいた。

 

そんな中列強2番手のムーと,世界最強の地位を持つ神聖ミリシアル帝国がグラ・バルカス帝国に介入することを宣言し,会場がどよめく中シエリアは静かに立ち上がった。

 

「言うのを忘れていたが,我が国は今回,意見を言うためにこの会議に参加したのではない。この世界の有力国が一同に会するこの機会に,通告しに来たのだ。

グラ・バルカス帝国 帝王グラルークスの名において貴様らに宣言すrっ!?」

 

シエリアを宣言の最中,会場中を不快なノイズ音が支配した。

 

聞こえてくる大音量のノイズに会場の全員は思わず耳を塞ぐ。シエリアも不快なノイズによって話を中断せざる終えなくなる。

 

「な······なんだこのノイズは!? よりによってこんな時に!」

 

1分間程続いたノイズが収まると同時に会議場の中央に1人の老人の姿が巨大なホログラムで写し出された。

老人は白を基調に,金色の刺繍が至るところに入った服を着ており,見るからに位の高い人物だと言うことが見てわかった。

 

老人は混乱から抜け出せていない会場に対して顔を下ろして語りだした。

 

『ノルースの全諸君。余はミルメルア皇帝 ミルメルア16世である。』

「み·······ミルメリア?」

「何を言っているんだ?·········こいつは·······」

 

シエリアとモーリアウルの混乱を隠しきれない声が漏れる。

2人の声はある意味会場の全員の声を代弁していた。

 

『ミルメリアと言っても諸君ら様な原始人には分かるわけもなかろうが故に余自ら教えてやろう。我々ミルメリアというはこの広い銀河系に存在する全ての星を統治するべく生まれた素晴らしき国家である。』

「は? え········は?」

「宇宙から来た?········」

「げ······原始人だと········」

 

ミルメリア16世の言った言葉で会場は更に困惑する。

 

『今日は余自ら諸君らに大変素晴らしき知らせを伝えにやってきた。今日をもってしてこの星は我がミルメルアの配下に入る事が決定した。』

 

全員が目の前の皇帝が言っていることを理解できずに膠着していた。

いきなり宇宙から来たと言い出したかと思ったら,直後にこの星を一方的に支配すると宣言するという飛んでもない情報が僅か数分で雪崩れ込んできたのだから,頭の処理も追い付かない。

 

『諸君らのような原始人も我が国の素晴らしき理念と技術で生まれ変われる事を理解したであろう。

余の大変素晴らしき提案を断る理由などあるわけなかろうが,余は非常に聖人だ。2日程考える時間を与えよう。だが·····』

 

そう言うと皇帝のホログラムに重なるように西方世界からフィルディアス大陸を写し出した地図が写る。

 

その中で現在会議が開かれているカルトアルパスが存在するミリシエント大陸・西方世界の島というには大きすぎて大陸としては小さすぎる土地・南方世界のブランシェル大陸・そしてフィルディアス大陸の東方に位置する小さな列島に1つずつ赤い点が打たれる。

 

『もしも余の素晴らしき提案を断るというのなら,この4つの都市は永久に消滅するだろう。』

 

日本国・神聖ミリシアル帝国・グラ・バルカス帝国・アニュンリール皇国の代表者は凍りつく。

もし目の前の皇帝の言葉の通りなら,答え次第なら自国の首都が灰塵に帰すと大々的に宣言しているからだ。

 

『諸君らは余に選ばれたのだ。こんな素晴らしき恩を仇で返すことのないように願っておるぞ。』

 

皇帝はそう一方的に宣言すると巨大なホログラムは消えた。

 

会議場は静寂が支配していた。全員があの皇帝が話した内容を現実として受け止めれなかった。

 

誰もが現状を把握出来ず混乱している中,議長席に座っていた先進11ヵ国会議議長でもあり,神聖ミリシアル帝国外務省統括官のリアージュ・クライトがマイクに向かって口を開いた。

 

「え,えっと·················と,取り敢えず会議は中断します。

再開の時には·········また連絡します。」

 

彼の言葉に皆は静かに従った。4年ぶりの先進11ヵ国会議は波乱の中一旦お開きとなった。

 

 

先進11ヵ国会議はカルトアルパス北部に建てられた帝国文化館の別棟 国際会議場で開催されている。

ミリシアルの繁栄を象徴するが如く豪華絢爛な国際会議場の1室に日本国を含む多くの国の代表が集まっていた。

 

室内にはグラ・バルカス帝国とアニュンリール皇国以外の国の代表が集結していたが,表情は非常に暗かった。

 

「そういえばグラバルカスとアニュンリールの姿が見えませんが,彼らはどこへ?」

「グラ・バルカス帝国とアニュンリール皇国は自分達の船に戻ったとのこと。恐らく本国と話し合っているのでしょう。」

 

アガルタ法国代表のリピンの疑問にミリシアル代表のベリアン・ジェナイトが答えた。

 

議長のリアージュは緊急で帝都 ルーンポリスに向かったらしく不在だったが,副官である彼が代わりに出席していた。

 

「なるほどなぁ。シエリア(あの女)も何か言いかけていたが,流石にこんな事態を想定出来るわけもないか。」

「何を言っておる。グラ・バルカスは我々を亜人と見下し,挙げ句の果てに“空間の占い”を馬鹿にしたのだぞ。あんな奴ら等気にしなくてもいいのではないのか? 。」

 

モーリアウルのグラ・バルカスを見下した発言に思わず近藤が切り込んだ。

 

「待ってください。今はそんな事を言って争っている場合ではありません。

幾らあんな事を言ったとしても,味方になってくれるのなら共に戦うことになるのですよ。それにそうのような事を言った段階で,あなた方もグラ・バルカスと同じですよ。」

「しかしだがな·········ムーはどうですか?」

 

モーリアウルは苦い顔をしながら近藤の隣に座るムーの代表に話を回す。ムー代表のオーディクス・ライエンは護衛として来た「ラ・カサミ」艦長のミニラル・フォリエンの率直な意見も混ぜて答えた。

 

「我々は日本と同じです。それに仮に彼らの「グレートアトラスター」が味方になるというのであれば我々の戦力は格段に増します。」

「なるほど。機械文明のムーがそれほど言うのであれば······」

 

列強の中でもプライドが高く,差別意識も強いエモール王国の代表があっさりと引いた事に他国の代表が驚いていると,室内にミリシアルの職員が入ってくる。

 

「グラ・バルカス帝国の大使が来ました。」

「そうか。直ぐ様通してやってくれ。」

 

ベリアンの指示で職員が去ると数分でグラ・バルカス帝国代表のシエリアが部屋にやってきた。

 

シエリアは空いている椅子に座ると,全員の方を向く。その視線は厳しいものだったが,シエリアは怖じ気づくことなく口を開いた。

 

「私には色々言いたいことがあると思うが,取り敢えず一言言わせてくれ。我々は帝王 グラルークスの命であなた方と共に戦わせていただきたい。」

 

シエリアの宣言にベリアンが厳しく問い詰めた。

 

「つまり我々と手を組みたいということでいいか?」

「その通りだ。我が国の首都も奴らの攻撃目標になっている。奴らはあなた方の都市も攻撃の目標になっている。我々は奴らに徹底的に抗う気だ。あなた方もそうであろう?

我々が言うのもなんだが,敵の敵は味方というではありませんか。」

 

シエリアの言葉に各国の代表が何か言いたげだったが,オーディクスと近藤によって宥められる。

 

「あなた方の意見は充分理解した。では聞かせてもらうが,貴女は会議の場で何か宣言しようとしていたが,何をする気だったのだ?」

 

ベリアンの言葉にシエリアの眼が一瞬曇るが,シエリアは答えを返した。

 

「我々はあの時全世界に宣戦布告を行う予定だった。行った後にはあなた方の艦隊を殲滅する予定だった。」

「なっ!?」

 

予想していない答えに室内がざわつく。そんな中モーリアウルは納得したような顔をしていた。

 

「やはりか········ならばあのように言ったのも納得がつく。聞くがそこの港に泊まっている「グレートアトラスター」だけでここの艦隊を潰す気だったのか?」

 

モーリアウルの質問にシエリアが答える。

 

「いえ「グレートアトラスター」に加えて,南に海軍特務軍の2艦隊が展開しています。

その艦隊に関しても宣戦布告中止の通信が行っている事を確認済みです。」

「既に艦隊が展開していたか······確かそっちでは第零魔導艦隊が演習をしていた筈だ。あれは世界最強艦隊だが,やっつける気だったのか?」

「でなければ宣戦布告は行わないだろう?」

 

ベリアンの言葉にシエリアは皮肉を込めて返す。ベリアンは“そうか·······”と声を上げた。

 

「にしても幸運だったな。もし宣戦布告していたら貴女はここにいられなかった。」

「我々に関してもです。宣戦布告していたら「グレートアトラスター」の主砲で撃たれるかもしれなかったのですから。」

 

マギカライヒ共同体代表の言葉にトルキア王国・ニグラート連合・パンドーラ大魔法公国の代表も頷く。

 

それに近藤も頷く。

 

「我々も安心しました。我々の「PLH-31 しきしま」ではあの46cm主砲の砲撃に耐えられませんから。」

 

近藤の何気ない言葉にシエリアは驚きの表情を浮かべて反応した。

同じように他の代表も反応した。

 

「よ,46cm!? 確かミスリル級の主砲が38cmだったから,ミスリル級よりも上ではないか!?」

「46cm··········レイフォリアも壊されるわけだ。」

「そんなに大きければ戦列艦なんか直撃すれば粉々ではないか!」

 

ベリアン以下各国の代表が主砲の大きさに戦く(おののく)が,シエリアだけは顔面蒼白で近藤の方を向いた。

 

「よ····46cm!? 私は41cmと聞いているぞ!! 一体どこ情報だ!!」

「ええっと········実を言うと約70年前に我が国には「大和」という「グレートアトラスター」そっくりの戦艦がいました。

日本国民全員が一番知っている戦艦です。」

 

近藤の言葉に全員が驚愕する。日本国がかつて「グレートアトラスター」と同じものを持っていたという事実を軽々しく言うのだから,最早困惑の域に達していた。

 

「70年前に「グレートアトラスター」が日本国にも········ではあの白い戦艦はなんなのだ?」

「あれは戦艦ではなく巡視船です。分かりやすく言えば沿岸警備隊の船です。」

「あれが沿岸警備隊の船だと!? あの船ならば文明圏の戦列艦でも沈められるぞ!

まさか貴国の軍艦はあれよりも大きいのか!?」

 

ベリアンの言葉に近藤は自分の記憶から護衛艦に関する知識を引っ張り出す。

 

「一応「しきしま」(あれ)よりも大きな船は10隻位ですがいますね。

まあ大砲は1つだけですが,その分········日本国製の誘導魔光弾のミサイルという物を積んでいます。」

 

近藤の言葉に室内から歓声が上がる。

 

「やはり誘導魔光弾を実用化していたのか!」

「そこまでの技術があったとは!!」

「これなら魔帝も倒せるかもしれんぞ!!」

 

各国の代表が揃いも揃って日本に対して希望の光を抱き始めた中,シエリアだけはその意図を理解しかねていた。

 

「す,すまないが,その誘導魔光弾とは文字通り砲弾が誘導されて相手の船に当たると思えばいいのか?」

「まあある意味そうですね?」

「百発百中の砲弾とは·········日本国というのはそんなに技術が発展しているのか?」

「ええ。あまり実感がないのであればより分かりやすい物を見せましょう。」

 

そう言うと近藤は側に置いていた鞄から1枚の地図を取り出す。

折り畳まれていた地図を丁寧に広げると,日本国からグラ・バルカス帝国までが載っている精密な地図が姿を現す。

もしもの際にと持ってきていた事に近藤は安堵し,周囲は一瞬でどよめく。

 

特にシエリアがあからさまに動揺し,隅から隅まで地図を眺めていた。

 

「なんだこれは·······なんて精密な地図だ! 我が国の本土もこんな綺麗に写っている!」

「やはりここが貴国の本土でしたか。ではここが首都ですか?」

 

ベリアンが指した場所をにシエリアは頷く。

 

「ああ,あんな事をされては隠蔽する意味なんて存在しないからな。ここが我が国の首都 ラグナだ。」

「ラグナですか·········中々良い響きですな。」

「ええ,しかしこんな精密な写真を一体どこから!?」

 

シエリアも疑問に近藤が答える。

 

「これは空の更に上の宇宙空間に人工衛星という大きなカメラを打ち上げて,撮影しています。」

「空の上にだと!? そんなの僕の星(しもべのほし)ではないか!!」

 

アガルタ法国代表の言葉に室内はどよめく。だがシエリアは何故そんなに動揺している理由を知りかねていた。

 

「その僕の星(しもべのほし)とは一体何ですか?」

「簡単に言ってしまえば魔帝········ラヴァーナル帝国版の人工衛星だ。現在も何機かは存在しているらしい。」

「なっ!?」

 

ベリアンの返答にシエリアも驚愕する。さっき自分がバカにしていた占いで出ていた国が自分の国を全部見透かす技術を持っているという事実に彼女は冷や汗をかいた。

 

「そんな技術があったとは········その魔帝が復活すると言うのか!?」

「先程は空間の占いをバカにしておったのに今はこれか········」

 

モーリアウルはお手本として出せる程の手のひら返しに呆れる。

そんな様子のモーリアウルに近藤は話しかけた。

 

「ですがモーリアウル殿。実を言うと我々もあなた方の占いを理解しかねていました。」

「というと?····」

 

近藤の言葉にモーリアウルは彼の方を向く。

 

「ご失礼ながら,あなた方が先程言っていた“空間の占い”というものを我々はどういうものなのかあまり分かっておりませんでした。」

「それに関しては我々も同意だ。占いとは言っているが一体どのようなものだ?」

 

近藤とシエリアの言葉にモーリアウルは“ふむ····”と唸った。

 

「なるほど····お二方は知らないのか。“空間の占い”とは年に一回行われる未来予知の儀式の事だ。竜人族の中でも特に魔力が高い選りすぐりの30人を集めて行われる。

的中率は98%だ。」

「98%·········」

「もはや予言の域だ·······」

 

モーリアウルの説明に2人は驚愕する。特にシエリアは98%で当たる占いをバカにしたとあってより一層申し訳ない気持ちになる。

 

「ではそれで魔帝が復活すると出たわけですね。」

「その通りだ。」

 

近藤も“空間の占い”の精度から魔帝復活という事が事実であると理解した。

 

と,パンドーラ大魔法公国の代表が独り言の様に口を開いた。

 

「もしかしたらあのミルメリアという奴らが魔帝かも······」

「流石にそんな話は,」

「あり得る話だな。」

 

トルキア王国の代表が何か口を挟もうとしたが,モーリアウルがそれを肯定する。

 

「仮にあいつらが魔帝なら占いの内容にも一応は繋がる。だがあまりにも来るのが速すぎるがな。」

 

モーリアウルの言葉にトルキアとパンドーラの代表は納得した様な顔をする。

話が途切れたタイミングを狙ってベリアンが話しかける。

 

「ですがモーリアウル殿。幾ら魔帝があいつらだとしたら我々に勝ち目はあるのですか?」

「それに関してだが,魔帝復活と同時に魔帝に対する鍵も示された。それは「()()」だ。」

「なっ!?」

「なんだと!?」

 

モーリアウルから出た言葉に近藤とオーディクスは驚愕する。いきなり自分達の国が存在していた星が何も知らないであろう人から出たことに彼は動揺した。

 

「やはりそうか。我々も転移してきた貴国には興味があってな。ガハラ神国経由で色々調べさせてもらったぞ。

それによるとこの地球というのはかつて日本国とムーがいた星だと言うが,本当か?」

 

モーリアウルの視線は2人に向く。自然と残りの視線も2人へと集中する。

 

「本当です。ただ幾ら地球が鍵と言われましても我々には地球と連絡する手段がありません。せめて地球(あちら側)から来て貰う位して貰わないと納得できません。」

「ムーも同意です。日本国から得た情報ですが,彼らがいた頃は地球を周回する衛星に人が降り立つ位にしか宇宙技術が発展していませんでした。

地球から日本国が消えて何年経っているか分かりませんが,余程の事が無いとここにはこれないかと······」

 

近藤とオーディクスの返答にモーリアウルは難しい顔をする。

“もしかして2%の外れか····”と彼が思っていると,井上が室内に入ってきて近藤に話しかける。

 

「どうした?·······は? 本当に言っているのか? 写真?···········嘘だろ····」

 

2人は暫く話し合うと,持っていた写真を渡して井上は去った。

何か信じられない物を見たかのような近藤の反応に視線は自然と集中する。

 

「えっと·········我が国の天体望遠鏡がとらえた写真とのことです。」

 

彼が見せた写真には緑色の葉巻の上下に,砲塔や艦橋らしきものをつけた軍艦らしきものが()()()()()()()

 

「これは··········」

「空に浮いてるだと·········」

「バカな·········」

「合成·········ではなさそうだ。」

 

見せられた写真に全員が目を見張る。この写真が合成によるフェイクという可能性は,日本国がわざわざこのような事をするメリットがないとして自然に消滅する。

 

となると残されたのはこの写真に写っているのがミルメリアだとする答えだった。

 

「まさかこれがミルメリアなのか·······」

「空を飛ぶ軍艦にどう勝てと·······」

 

シエリアやベリアンが弱音を吐くなか,オーディクスは隣の近藤に話をふった。

 

「日本国はあのパーパルディアを被害なしで打ち破ったと聞く。そんな貴国にこれを撃退する力はあるのか?」

 

オーディクスの質問に室内の視線は集中する。近藤は来る最中に蓄えた自衛隊知識から最善の答えを導きだそうとするが,あいつらを撃退するという彼らが望んでいるであろう答えはどうやっても浮かんでこなかった。

 

「1~2隻程度ならやれると思いますが,何せこんな代物は我が国でも空想上の産物です。

どこまでやれるかは········未知数です。」

 

辛うじて出した答えに,良い答えを期待していた皆が顔を落とす。

 

「日本国ですらこうか·······果たしてどうなるやな。」

 

ベリアンが再び弱音を吐いたと同時に部屋に職員が駆け込んできた。ベリアンが思わず振り返ると同時に職員が息を乱しながら口を開いた。

 

「あ,アニュンリールの船が逃げました!!」

「何だと!? 確か地方隊の魔導巡洋艦がいたはずだ!! 彼らはどうしたんだ!!」

「それが····アニュンリールの船の速度が速く,追い付けなかったとの事です!!」

「はあ!?········確かアニュンリール(あいつら)の船は帆船だったよな!! そんなに速かったのか!?」

 

予想だにしていなかった展開にベリアンは驚愕を隠せない。室内の大半が同じような反応をする中,近藤は冷静に分析を開始していた。

 

「まさかここまで派手に動くとは·····もしかしてあの皇帝の話の際に今まで隠していた事が全部バレてしまったから,問い詰められて面倒な事になるより逃げることを選んだのでは?」

 

近藤の考察にモーリアウルが納得した様な顔をする。

 

「ある意味開き直ったということか。逃げなられるのなら私もこの場から今すぐ逃げたいものだ。」

 

彼の言葉に思わず笑いが漏れる。ある意味緊張がほぐれた中,ベリアンが全員に聞こえる様に話し出す。

 

「これで先進10ヵ国会議となったわけだが,皆奴らと戦う事に異議はないか?」

「勿論だ。このまま降伏などあり得るか。」

「私達は戦う為にここに残っているからな。」

 

モーリアウルとシエリアの言葉に各国が続く。ベリアンの視線は近藤へと向けられた。

 

「我が国に関しても先程防衛出動(戦闘体制)に入ったと連絡がありました。

我が国は戦争を好みませんが,首都を消すと堂々と言われてしまえば戦う以外に道はありません。」

 

先程受け取った日本政府の答えを伝えた近藤にベリアンは頷いた。

 

この日 中央暦1642年4月22日。アニュンリール皇国を抜いた10国でミルメリアに対して戦うという事が決定したとニュースで世界中に伝えられた。

 

当事者の近藤らは当日中に雷力式ロータリー機関車が牽引する列車でカン・ブリットへと避難した。

 

そして各国で戦争への準備が急ピッチで始まるのだった。




・ノルースの諸君。余はミリシアル16世··········
え? 皇帝の言っている事が矛盾しまくって分からないって?
大丈夫です。作者が書いていて一番困惑しています。

・ベリアン・ジェナイト
彼はオリジナルキャラクターです。集まる場にミリシアルがいないのはおかしいなと思ったので,急遽追加しました。
それ以外にもリアージュさんとミニラルさん・オーディクスさんのフルネームもオリジナルです。

・近藤は自分の記憶から護衛艦に関する知識を······
これは先進11ヵ国会議で自衛隊に関して説明を行う可能性があったために,来る際に資料を呼んでいたとしています。
防衛省の職員に任せればいい? ならわざわざ巡視船では来ません。

・ガハラ神国経由で·······
この下りはオリジナルですね。ガハラが最近目立ち始めましたが,彼らは“神通力”で風竜を乗りこなしているのでエモールが興味を抱き,交流をするのではという考察から生まれたオリジナル設定です。

因みにパーパルディアがガハラを侵略しなかった理由に“ここに手を出すとエモールが絡んでくる”という裏設定もあります。

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