ノルース星戦記   作:YUKANE

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この作品って日本国召喚の二次創作だと,どの場所に入るんでしょうかね?

あとこの作品と何にも関係ないけどVTuberって実在人物のカテゴリーに入るのかな?って思いました。


対応

黒き宇宙に蒼い海で覆われた星 ノルースは自分自身を強く主張していた。

 

美しき蒼き星を周回する2つの衛星の間にミルメリア宙軍第35艦隊は展開していた。

100隻以上の艦艇は真下に見えるノルースに艦底部に搭載されている3連装カノン砲を向け,“攻撃開始”の言葉を今か今かと待っていた。

 

そんな艦隊の中心には100隻以上の艦艇の中で唯一艦側面にも3連装カノン砲を装備した旗艦「ドルヴィーオン」が展開している。

 

500mを越える船体の1室で司令官のペイン・ドン・プレクティリア大将と副官のクフェン・カフ・レデナベリサ中佐は真っ白な皿に鮮やかに装飾されたロッペン鳥のソテーにナイフとフォークをおろす。

 

軍専用の牧場で最高級の餌で育てられたロッペン鳥はあっさりと切れ,赤色のソースを絡めて口へと運ぶ。

 

ロッペン鳥は口の中で旨味を放出しつつ,食道へと消えていく。

皿の隣に置かれている金色の装飾が入った紙ナフキンで口を吹くと,クフェンがペインへと話しかけた。

 

「そういえばペイン大将。ノルース1上にあった基地の残骸には遺体はありませんでした。恐らくクレビト戦隊が沈めたパトロール艦(駆逐艦)に乗っていたものと考えられます。」

「了解した。一応確認するがノルースから降伏の通信は入っていないか?」

「一件も入っていません。徹底抗戦する模様です。」

「当たり前だ。あんな演説で降伏するなど私は絶対にしない。」

 

ペインの言い方は自国の皇帝の発言をバカにするようなものだったが,クフェンや同席するコックはいつもの事なので驚かない。

 

ペインはそのまま軍人だからこそ許される愚痴を続ける。

 

「君は皇帝の演説を聞いたかい?」

「ええ。何を言っているか分かりませんでした。」

 

クフェンも愚痴に乗る。ペインは彼に対して更に語りだす。

 

「これは聞いた話だが,あの演説は()()()()()()()()()()()(),()()()()()()()()()にしているそうだ。」

「何ですかそれ········ふざけた理由ですね。」

 

ペインとクフェンの話の内容は,自国の皇帝に対するものでは無いものだが,ミルメリア宙軍の一部にはこのような雰囲気が蔓延していた。

 

彼らは皇帝に対する愚痴を語りつつ,ロッペン鳥のソテーを食す。

ソテーが皿の上から消え,金色の装飾が入った紙ナフキンで口を吹きながら,ペインはコックの方に向く。

 

「今日も美味しかったぞ。それにしてもロッペン鳥のソテーは景気付けか?」

「ええ,翌日には戦闘が始まりますので。」

 

ロッペン鳥は育てるのが非常に難しく,成鳥になる個体が少ないために,いくら軍専用の牧場で育てているとしても,彼らのお目にかかる回数は少なかった。

 

上がる場面と言えば王族を迎える時や,戦闘前等の限られた機会だった。

 

「なるほどな。他の乗組員にも何か与えたか?」

「ミバンサンのステーキを与える予定です。今頃出されている頃でしょう。」

「ミバンサンか。あれは旨いから乗組員の士気も上がるだろうな。

これで明日は取り敢えず無事だろう。」

 

ペインの発言にクフェンが口を挟んだ。

 

「ですが地球艦隊が来る可能性が高いです。警戒体制を敷いといた方が良いでしょう。」

「勿論だ。待機する艦隊は戦闘体制をとらせる予定だ。我々がやられてしまえば元も子もない。」

 

ペインとクフェンの話は食事が終わっても続くのだった。

 

東京は既に陽が落ち,黒い闇が覆っていた。本来なら静かな夜を迎えるはずだったが,夜の東京から静寂は消えていた。

 

昼間のミルメリア皇帝の演説はテレビ・ネット網まで干渉し,瞬く間に日本国民に触れることになった。

その演説で“東京を消滅させる”と言ったのだから,日本中が混乱の坩堝に突入した。

 

東京にいた人々は今すぐにでも東京から離れるべく交通機関に集中し,瞬く間に交通機関の容量はパンクした。

 

一部の人々は東京から出れないと悟り,東京メトロや都営地下鉄等の地下へと避難した。

 

そしてデパート・スーパーマーケット・コンビニ等の店では生活用品の買い占めが多発し,強奪や万引き等の犯罪が多発し,警察は対処に追われた。最も警察官の中には逃げ出すものや犯罪を起こすものもいたが。

 

あの演説だけで東京は無法地帯へと化した。

 

そんな中でも日本の政治の中心でもある首相官邸だけは正常を保っていた。

地下の危機管理センターに首相の武田実成以下閣僚が深夜ながらも集結していた。

 

「東京駅や羽田空港には今でも多くの人が押し掛けています。各地の道路も酷い渋滞が起きているそうです。」

「東京中の店では買い占めや強奪が多発し,正直言って無法地帯です。」

 

国土交通大臣と経済産業大臣の声はあり得ないほどの混乱の報告を聞いた為か弱々しかった。2人の発言に閣僚内からため息が漏れる。

 

「日本が転移した時でも,ここまで混乱はしてなかったぞ······」

 

環境大臣の赤住浩二郎は思わず口に出す。彼の言葉は事実だった。

約3年前の日本が地球からノルースに転移した際にも国内に混乱は生じたが,ここまでではなかった。

 

2000年の歴史を持つ日本だが,そんな日本でも経験したことがない事態に政府ですらもパンク寸前だった。

 

混乱の空気が蔓延する中,防衛大臣の厳田虎は机を叩いて立ち上がる。

 

「皆!! そんな感じで良いのか!? 我々が動かなくなってしまえば,その時こそこの国の終わりだ!!

首相!! 既に自衛隊には戦闘待機を命じています。首相の指示さえあればいつでも出撃出来ます。」

 

厳田から向けられた発言に首相の武田実成は驚きながらも答える。

 

「そ,そうか。因みに奴らに対してはどうする予定になっている?」

 

首相の疑問に厳田は後ろに待機させていた人物の方を向いた。その人物は細目でいかにも眠そうな目だったが,その目には日本を守るという意志が宿っている様に見えた。

 

「それに関しては彼が解説してくれます。」

「紹介に預かった三津木久則です。

防衛省の建てたプランとしてはまず降下してきたミルメリア艦隊に航空自衛隊の第8航空隊と海上自衛隊の第3航空隊で対艦誘導弾を連続して発射します。

艦隊に一定の被害を与えたところで第1/2/4護衛隊群が艦対空誘導弾で追い討ちをかけます。」

 

三津木の解説は丁寧な物だったが,同時に疑問も沸いて出た。

 

「なるほど·····よく理解できた。だがこれで本当に対処できるのか?」

 

赤住の疑問は全員が抱いている物だった。三津木は赤住の疑問に答えた。

 

「言い忘れてましたが,これはあくまで()()()()()です。奴らに自衛隊の武装がどこまで通用するかは一切分かりません上に,ミルメリアが降下すること自体が推測です。

東京へと一直線に向かう可能性だってあります。」

「そ,その場合は大丈夫なのか!?」

 

三津木は返答に赤住は狼狽えた。だが三津木はそれでも冷静だった。

 

「既に航空自衛隊の第3/301/302/201/304/306航空隊に東京周辺の防空を指示しています。これに浜松の早期空中管制機と小牧の空中給油機も支援に回ります。

海上自衛隊も横須賀の第11護衛隊と第2潜水隊群が展開する予定で,陸上自衛隊も千葉/埼玉/神奈川/東京都に配備されている部隊を全部動員する予定です。

また外務省の許可さえ降りれば,在日米軍にも協力を要請します。」

 

在日米軍という単語に歓声が上がる。だが赤住はある疑問を抱く。

 

「確か横須賀には原子力空母がいたよな?」

「えぇ。横須賀に「CVN-73 ジョージ・ワシントン」が停泊しています。」

「大丈夫なのか!? もしあいつらの攻撃で空母から放射線が漏れだしたら,それこそこの国の終わりだぞ!!」

 

赤住の言葉は最もだった。例え勝てたとしても原子力空母から漏れ出た放射線で東京が汚染されたな元も子もなかった。

だが赤住の疑問に三津木は答えを既に見つけていた。

 

「ご安心を。空母自体は最低限の護衛をつけて呉に退避させて,艦載機と第7艦隊の残る艦艇を使う計画です。」

「そんなことアメリカが認めるのか?」

「大丈夫でしょう。外務省が軽く圧力でもかければ頷いてくれるでしょう。」

 

三津木の返答に外務大臣の佐藤渉は顔をしかめたが,方法を選んでいる暇は無いと判断し,室内に待機していた外務省幹部に指示を出す。

 

「在日米軍に関しては問題ないでしょう。今の米軍は思いやり予算が削られて,あまり行動できなくなっています。

もし“戦闘に加わるのなら予算を増やす”とか言えば簡単に頷くでしょう。」

 

三津木の言葉を黙って聞いていた武田が口を開く。

 

「取り敢えずやれることは全部したという認識でいいか?」

「いえ,まだあなた方を避難させるという役目が残っています。」

 

三津木の言葉に武田は難しい顔をした。自衛隊員や国民を置いて自分達だけが逃げるということに後ろめたさを感じるが,もし全滅した時に日本全体の指揮系統が混乱する事が確実な為に受け入れるしかなかった。

 

「避難か·······仕方がないのは分かっているのだが,なんだかな·········防衛大臣。どこが候補なのかね?」

「候補としては名古屋・金沢・仙台・札幌等が上がっています。要請さえあれば木更津から直ぐ様ヘリを向かわせられる様に指示しています。」

 

「皆,何処がいいと思うか?」

 

武田は全員に質問を投げ掛けた。一番最初に返事をしたのは赤住だった。

 

「都市の規模と距離を考えると名古屋ですかね?」

「だが名古屋から東京に近すぎる。万が一奴らが東京を攻撃し終えたあと,やってくる可能性は高いです。」

「ということはどこの都市も同じじゃないか!?」

 

赤住の答えに佐藤が反論する。それに金融担当大臣の声が重なる。

ざわつく声が広がる中,武田は再び頭を抱えた。

 

「東京から離れた都市······となると札幌か?」

「その方が良いと思います。札幌ならば津軽海峡を挟んでいるので,名古屋や金沢・仙台に比べれば時間は稼げるかと。

それに近くの千歳基地には203航空隊がいるので,多少ですが航空支援も可能です。」

 

武田の疑問に三津木が追記も加えて答える。頭を抱えていた武田は顔を上げる。

 

「臨時政府は札幌に置くということで全員いいか?」

 

武田の提案に異を唱える者はいなかった。

 

約1時間後,政府要員を乗せたEC-225LP 2機は首相官邸屋上のヘリポートから札幌方面に飛び立っていった。

 

 

神聖ミリシアル帝国の首都 ルーンポリスは“眠らない魔都”と呼ばれている。

 

ラヴァーナル帝国(古の魔法帝国)の技術を解析する事で世界一の座を手に入れた国の首都は,栄華を極めていた。

 

高層建築が建ち並ぶ街並みを魔導技術で作られた車で走り,夜は全自動光球照明魔法によって照らし出されるという正に先端技術によって作り出された都市であった。

 

この都市に住む人々は世界の中心だと褒め称え,他国の人々は自国との圧倒的な差を思いしらされ,“神話に出てくる様な世界”だと皆言った。

 

そんな世界の中心である帝都ルーンポリスの中心部に皇帝の住まい アルビオン城は存在している。

 

城内の執務室で一際目立つきらびやかな装飾がされた王座に唯一座ることの出来る人物 皇帝ミリシアル8世ことルキウス・エルダート・ホロウレイン・ド・ミリシアルは提出された報告書を隅から隅まで読んでいた。

 

彼の前には国防省長官 アグラ・ブリンストン,軍務大臣 シュミールパオ・ラック,情報局長 アルネウス・フリーマン,外務省大臣 ペクラス・ライアン,そして対魔帝対策省古代兵器分析戦術運用部部長 ヒルカネ・パルペが緊張した面持ちで皇帝の返答を待っていた。

 

ミリシアル8世は読み終えた報告書を机の上に置く。ミリシアル8世はアグラへと顔を向けた。

 

「アグラ。この報告書の通りだと,第零魔導艦隊はグラ・バルカス帝国の艦隊と合同で戦うとしているのだが,本当に大丈夫なのか?」

「グラ・バルカス帝国に関しては言質(げんち)を取っている為に問題はありませんが········正直に言わせていただくと,我々にも分かりかねます。このような事態は我が国としても初めてですので。

万が一を想定して第1/2/3魔導艦隊を支援に向かわせていますが,どうなるかはやってみなければ分かりません。」

 

アグラの返答にミリシアル8世は“ふむ······”と難しい顔をする。

ミリシアル8世は隣のシュミールパオの方を向く。

 

「シュミールパオ。ルーンポリスの防衛体制はこの通りか?」

「はい。第4/5/6/7魔導艦隊をルーンポリス沖に展開し,エルペシオ3とジグラント2 約130機出撃させる予定です。現在陸軍は市民の避難を急ピッチで行っています。」

「やれることは全部したという事か。国民の様子はどうだ。」

 

ミリシアル8世の言葉にシュミールパオは返答に困る。

 

「それが·········異様な程に落ち着いています。聞いた話によると“我が国が世界最強であるから,ミルメリア(あんな奴ら)等撃退できる”と口を揃えて言っていたそうです。」

「それは不味いな。私の命令で避難を行うように通達してもよいぞ。」

「ありがたいです。今すぐ伝えてきます。」

 

シュミールパオがミリシアル8世に対して会釈すると,そのまま急ぎ足で執務室を出ていった。

 

「急ぎ足か········もう礼儀など構ってられんか。まあ仕方ない。

ヒルカネ。出撃させるのは,「空中戦艦 パル・キマイラ」だけか?」

 

ミリシアル8世は急ぎ足で出たシュミールパオに苦い顔をしたが,割りきってヒルカネの方を向いた。

 

「えぇ。「海上要塞 パルカオン」はまだ半分程しか解析できておらず,空飛ぶミルメリア艦隊に対してあまり有効的な対処が出来ずに,足手まといになる可能性が極めて高い為に出撃は見送られました。」

「なるほど·······それにあれは1隻のみの存在で,貴重はのは分かるがこれは国家の一大事だ。

例え足手まといになっても,士気向上には使えるであろう。」

「しかし·····」

 

ヒルカネは古代兵器に一番触れている為に,その性能と欠点を理解できる人物だった。

それが故にミルメリアの空飛ぶ艦隊の驚異を理解でき,パルカオンでは対処出来ない事が分かっていた為に出撃は取り止めていた。

 

「国家の一大事に,出し惜しみ等してられん。「パルカオン」にも出撃準備をさせるように。」

「かしこまりました。」

「うむ。「パル・キマイラ」は4機のみの出撃か。」

 

話を変えたミリシアル8世にヒルカネは答える。

 

「「パル・キマイラ」は2号機が定期メンテナンス中ですので,それ以外の4機を出撃させます。既に独断ですが出撃準備を行っています。

出撃体制としては3/5号機はルーンポリス防衛,1号機は第零魔導艦隊支援,4号機は状況次第でどちらかの援護に回る想定です。」

「よくやった。あれならば少しぐらいは対抗できるだろう。」

 

ヒルカネの返事に満足したミリシアル8世は,微笑しながらアルネウスへと向いた。

 

「アルネウス。奴らについて何かわかったか?」

「は。奴らについて分かった事は他の星から来たこと,空飛ぶ艦隊を有している事だけです。申し訳ありません。」

「少しでも分かっただけでも充分だ。ペクラス。各国の様子はどうなっている。」

 

次に話をふられたペクラスが答える。

 

「現在第一/二/三文明圏の国の多くが,戦いに備えて準備しています。駐留している大使は自国民の避難を急がせているそうです。

先進11ヵ国会議の代表はカン・ブリットに避難済みです。」

「そうか········果たしてここまで各国が1つになった事があったのだろうか·······」

 

ミリシアル8世は全世界が団結していることに感動したと共に,その理由が未知の敵が現れた事だという事実に複雑な心情を抱いた。

 

そんな様子のミリシアル8世にアグラが話しかけた。

 

「陛下。このルーンポリスはミルメリアの攻撃標的になっています。万が一奴らが侵攻した場合,このアルビオン城が標的になるのは間違いありません。

一時的でも良いですから,どうかここからの避難をお願いします。」

 

アグラの言葉にミリシアル8世は考える。数分目を閉じて考えた後にミリシアル8世は口を開く。

 

「············やむ終えんか。」

「もし陛下が死ねば,それこそこの国の終わりです。ここはどうか受け入れてください。」

「避難するのならばゴースウィーヴスかカン・ブリットか?」

「我々もその様に考えています。」

 

アグラのその言葉にミリシアル8世は再び思考するが,今回は1分程度で答えを導きだした。

 

「少なからず指揮系統は残さなければいけないな。よし,避難先はゴースウィーヴスにしよう。」

「かしこまりました。直ぐに連絡します。準備ができ次第,ゼノスグラム空港に機体を用意していますので,それに乗って頂きます。」

「もう用意していたか·········用意周到な奴よ。」

 

既に皇帝の避難を想定して根回しをしていたアグラに,ミリシアル8世はそう言い残した。

 

いつも通り朝焼けがルーンポリスの街並みを照らし出す中,ゼノスグラム空港に待機していたゲルニカ35型は,エルペシオ3 4機の護衛を連れてゴースウィーヴスへと飛び立った。

 

 

西方世界に突如として現れたグラ・バルカス帝国の首都 ラグナの空は今日も黒煙に染まっている。

 

工場地帯や蒸気機関車にから排出された排気ガスで空は淀み,この都市から数ヶ月青空は消えていた。

 

無機質な建造物が立ち並び,自動車が溢れ変える大都市の外れに軍港 ライメナトリア基地は位置していた。

 

グレートアトラクター級を収容できるドックを備え,所属している艦隊と艦艇数はグラ・バルカス帝国一の規模を誇っていた。

 

そんな基地から静寂は消えていた。ミルメリアとか言う侵略者からラグナを守るべく,海軍と特務軍の艦隊は出港準備を急ピッチで進めていた。

 

所属している軍艦には燃料が給油され,砲弾がクレーンで甲板に下ろされる。

1隻が終われば,また次の艦がやってきて補給を行う。これがライメナトリアの各地で繰り返されていた。

 

そんな絶え間なく人々が動く様子を特務軍司令官のミネケレス・アルネッタは自身の執務室から眺めていた。

 

「まさかこの基地がこんな動くなんて。本当,人生って分からないわね。」

 

彼女が発した言葉は自身へも向けられていた。昨日,仕事中にBGMとして聞いていたラジオからミルメリア皇帝の宣戦布告ともとれる演説を聞き,直ぐ様帝王府の緊急会議に呼ばれた。

 

会議は混乱した。今までひた隠しにしていた本土と首都の位置をあっさりと全世界に公開された挙げ句,名指しで攻撃対象にされたとあって,全員がミルメリアに対して徹底抗戦の意志を見せていた。

 

だが問題になったのは,「グレートアトラスター」の居場所だった。現在彼女はムー大陸を挟んだ先におり,1~2日ほどでは帰ることの出来ない位置にいた。

加えて彼女は全世界への宣戦布告後にカルトアルパスの艦艇を全滅させる予定だったが,ミルメリア皇帝の演説によって予定が全部狂わされたのだ。

 

もし,宣戦布告後にあの演説が流れていたらと帝王府の全員が危惧したが,幸いにも寸前でしていなかった事が判明した。

 

これを聞いたグラ・バルカス帝国皇帝 グラルークスこと,ルークス・ベルガ・フリュム・ヘリア・レーゲルステイン・ハバルト・フォン・グランデリアは直ぐ様共同で戦う様に指示を出し,沖合いの2艦隊についても同様の指示を送るように指示した。

 

加えて“帝国の三将”と呼ばれる海軍東方艦隊司令長官 カイザル・ローランド,帝都防衛隊長 ジークス・レベクレト,そしてミネケレスにラグナの防衛体制を取るように命じた。

 

それを受けて3人はラグナ周辺の部隊や艦隊をかき集めて,ミルメリアに対抗しようとしていたのだが,ガラスにうっすらと反射するミネケレスの顔は重かった。

 

刹那、彼女の部屋のドアがノックさせる。,ノックした人物が木製の扉を開けて入ってくると,彼女は振り返って目尻の上がった目で見つめた。

 

「カイザル·········」

 

彼女の視線は三将の1人で話すことも多いカイザルの姿を捉えた。

彼の顔もミネケレスと同じように重かった。

 

「あまり良い感じではなさそうね·······」

「それはお互い様だろ。それにあいつらにヘルクレス級なんかで大丈夫なのか?」

 

重かった顔を紛らわそうと冗談交じりに言ったが,カイザルに一蹴された。

加えるように言われた言葉にミネケレスは言い返す。

 

「それはあなたも同じでしょう。「グレートアトラスター」がいない以上,最大級の(ふね)はヘルクレス級よ。」

海軍(こっち)には「マンゼラン」がある。「グレートアトラスター」程ではないが,あいつも装甲は厚いからな」

 

「グレートアトラスター」のプロトタイプとして建造された戦艦 「マンゼラン」。

就役後に練習艦になっていた船ですらも投入するという状況にミネケレスは苦笑いした。

 

「練習艦も使うなんて,本当に国家の一大事なのね。」

「現実味はないがな。何しろ空飛ぶ船に対処しろなんて俺でも理解に苦しんでいる。」

 

ミルメリアが空飛ぶ船を有しているという情報を知った2人は驚愕した。

二次元の海面の上しか動けない船と三次元の空を自由に飛び回れる船なら,圧倒的に後者の方が有利だからだ。

 

「流石異世界と言いたいところだが,今だけは言えんな。」

「圧倒的に我々の方が不利よ。幾ら乗組員の士気が高いとはいえ,それで敵を倒せるわけではないのだからね。」

 

ミネケレスは窓の外を眺めながら,そう吐き捨てた。ミネケレスは振り返って,カイザルへと再び向く。

 

「それで,ここに来た理由は何かしら。まさか別れの挨拶を言いに来たんじゃないでしょうね。」

「まさか,だが単刀直入に言う。弾薬を優先的に補給されてくれないか。」

 

カイザルの頼みにミネケレスが返事を考えた時間は10秒もなかった。

 

「いいわ。出撃はあなたの方が先だものね。あなた達の艦隊の方が弾薬切れになったなんて,後世の笑い話になるものね。」

「そっちが弾薬切れになったらどうするんだ?」

「こっちは港から近いからギリギリまで補給を行うわ。最悪その場から砲台として動かすわ。」

 

ミネケレスの返答にカイザルは“ふっ”と笑った。カイザルは“分かった”と言って,部屋を去るべく木製の扉を開けたが,途中で振り返った。

 

「ラグナは任せたぞ。」

「あなたの帰る場所はしっかり守っておくわ。」

 

そう言ってカイザルは去っていった。




・ロッペン鳥
ミルメリアに生息している鳥。外見は考えていません(めんどい)
この鳥は扱い方が非常に難しく,ちょっとのミスで死んでしまう為に,生活環境を維持出来る上級階層の人々でペットとして飼われている。
またこの鳥の肉と羽毛は高値で取引されている。

モデルは2199に出てきたロクロック鳥です。料理に関しても同じです。

・ミバンサン
ミルメリアに生息している生物。外見は知らん()
こちらはミルメリア領内では広く飼育されており,移動手段や家畜として飼われている。

肉や乳は食用として使われ,皮や骨も服や加工品になるために,捨てる所がない。

モデルはスターウォーズのタトゥイーンに棲息するバンサです。
こういうのって考えるの楽しいよね?

・首相の武田実成以下閣僚·······
取り敢えず4巻まで確認したところ内閣は変わっていないと判断したので,武田さんや厳田防衛大臣・佐藤外務大臣を出しました。
赤住環境大臣は原作の環境相にオリジナルの名前を与えました。

・外務省大臣のペクラス・ライアン······
ここにいたのは原作基準ではリアージュでしたが,ペクラスさんに変更しました。
ペクラスさんはカルトアルパスにいて不参加だったようですが,リアージュと一緒に戻っていてもおかしくなく,その場合役職の高い彼が出るだろうと考察したので,出しました。
最も彼は公式wiki曰く“影が薄い”と言われていたという事もありますが·······
その場合,前話に出てきたベリアンさんがいらなかったのでは?

・ライメナトリア
ラグナ郊外に位置する巨大な海軍基地。本国艦隊全艦が所属している他,特務軍(監査軍)の艦艇も所属する為に200隻以上の艦艇が停泊でき,両司令部も存在している為に基地面積はグラ・バルカス帝国領内で最大規模を誇る。
基地内には司令部以外にグレートアトラクターが入れるドック,無数の倉庫と燃料タンク,設備の揃った兵舎や施設が建ち並んでおり,“軍に必要な物はここで揃う”と言われている程。

察しているとは思いますが,オリジナルの海軍基地です。

原作5巻で第52地方艦隊(イシュタム)がラグナから出撃しているので,そこに書かれているのだろうと思いますが,その5巻だけが手元に無いので確認のしようがなく,やむ終えずオリジナルで書かせてもらいました·········
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