鏡合わせの吉原 ~死んだら吉原にいました~   作:翔田美琴

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38話 薄紅と福山

 桜華楼が惣仕舞された夜の桜華の間では花魁となった薄紅と福山財閥の若旦那となった福山達也が寝床にて言葉を交わしている光景があった。

 しかし、その会話は福山達也の口から出たのは花魁となった薄紅が完全に娼婦に堕ちてしまった事に関する失望が話されている。

 

「薄紅……君は、元々は嫌々売られて見世にも抵抗していたのに……何故、娼婦に堕ちてしまったんだ?」

「昔、会った君は汚れていない人だったのにどうしてなんだ……? 薄紅」

「……私は、もう昔の私ではないの。今はこの桜華楼の売れっ子花魁。やっとなれたのよ! 底辺から這い上がって、ここまで来たのに……貴方にその事を責められるなんて筋違いよ」

「……今からでも遅くない……私が君の借金を全部払うから元の世界に戻ろう、薄紅……いや千里」

「あなたに全額、払えるの? 旦那様は福山さんにここぞとばかりに吹っかけてくるわ……!」

「そうやって希望をチラつかせて絶望に叩き落とすのでしょう!? あなたも他の男性も」

「僕が口だけの男と観ているのかい? 千里? 本当はここの楼主の男性と離れたくないのが本音じゃないかい?」

「……出て行ってください……福山さん」

「君は忘れている……この桜華楼を今夜は私が惣仕舞したんだ……君は逃げられないよ……千里……」

 

 福山は薄紅の襦袢を外して、少しずつ身体に触れ始める。乳首を擦り、秘められし花園に手で触れて、指先で弄る。

 襦袢を外す福山は、薄暗闇でも真っ白に輝く肌を観て、ため息をするような美しさを堪能する。こんな綺麗な女性を他の男性に貪られるなんて許せない。

 福山が禁忌とされる薄紅の花びらを舌で味わい始めた。繊細な舌が細かく花びらを刺激して、彼女の愛が溢れてくる……。

 

「君は僕の女なんだ……千里」

「……やめて、昔の名前で呼ばないで……薄紅って呼んで……」

 

 充分に濡らした花びらに福山の分身が当てられると、鈍く貫く。

 そして腰を緩急つけて躍らせる福山。

 薄紅はもはや長年の癖で、男性の背中に腕を絡めて、綺麗に喘ぐ。

 しきりに福山の名前を呼んだ……。

 

「福山さん……福山さん……!」

「千里……千里……っ!」

 

 福山が薄紅を四つん這いにさせると、後ろから今度は貫く。肉体同士がぶつかる音が聞こえて、徹底的に福山は薄紅を支配しようと腰を大きく揺さぶる。

 彼女は布団にしがみついて、その責めに耐える。福山は思っている以上に精力があった。

 分身を抜き去ると背面座位になって、あぐらをかく福山の上に薄紅は乗せられて、また抉るように薄紅を貫いた。

 

「ああっ! 福山さん!」

「福山さんが私の中で暴れている……!」

「良い……気持ちいい……千里っ……千里っ!」

「ひあっ! ああっ! 福山さん──っ!」

 

 今宵は珍しく、本当に気を遣ってしまう薄紅であった。

 その睦言は全て、廻し方の喜兵衛に全てを聞かれている事も知らずに……。喜兵衛は一段落がついた頃に、内所にて仕事に就いている稲葉諒の部屋へと向かった。

 

「旦那様」

「喜兵衛か」

「薄紅の様子はどうだった?」

「それが旦那様、あの福山財閥の若旦那は、薄紅の前の名前を知っている様子でした」

「薄紅が千里と呼ばれた頃の彼女を若旦那は知っている……と?」

「……はい、桜華の間にて、しきりに千里の名前が呼ばれていましたし……」

「その調子では福山の若旦那から薄紅を買いたいって申し出が来るかも知れないな」

「……しかし、そうなると折角の看板花魁が消えてしまいます……今の桜華楼は薄紅が目当てで揚がっている客が多いですし」

「死活問題だな……」

 

 稲葉は煙管を加えて、白い煙を吐いた。

 そして、煙管を火鉢へ引っ掛ける。

 思わぬ福の神かと考えていたが、どうやら厄介な疫病神かも知れないな……と考える。

 とりあえず福山の若旦那の出方次第か……。

 稲葉は福山の若旦那に薄紅を売る時にどれくらいの金をむしり取るかの計算を始める。

 桜華楼として、薄紅はもちろん、紫紺も、そして3枚目花魁へと考えている若手の紅葉も、失う訳にはいかない戦力なのだ。その彼女達を買いたいなら相応の代金を請求しないと釣りが合わないではないか……。

 

 桜華楼の夜は様々な思惑を孕みながらこうして更けていくのであった……。

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