やはり俺の恋のリベンジは間違ってはいない。リメイク 作:龍造寺
ーー水泳部・プール
八幡が、平塚先生に雪乃のところに連れて行かれた同時刻、吹寄の姿は水泳部にあった。
総武高校水泳部。千葉県内で海浜総合高校と総武高校と二大名門と言われるほどの強豪である。水泳部の練習設備は、他の部活動よりは優遇されている。
秋の新人戦では、海浜総合高校に接戦に持ち込んだが、海浜総合高校の水泳部副部長の緑子と吹寄との一騎打ちで少しの差で総武が負けた。
今は夏の大会に向けての練習をしている。吹寄も去年の3年生の引退により副部長に就任している。
吹寄の心は、打倒海浜総合高校!
打倒 山岸緑子!
と燃えていた。紺を基調にして、赤のラインが入った競泳水着姿の吹寄は、女子部員を集めた。山本部長は副部長の吹寄に女子水泳部の指揮を任せている。
「夏の大会は、海浜総合高校から優勝旗を取り返すわよ!」
「「はい!」」
「目指すのは優勝!だけど無茶な練習は駄目。準備運動もちゃんとする。怪我をしてしまったらそれまでだからね」
「「はい!」」
「以上、各自練習を始めて!」
女子部員達は、各自の練習を始める前に準備運動を始めた。すると吹寄に山本部長が話しかける。
「制理、張り切るのは構わないけど、貴女が倒れたら意味が無いわよ」
「わかってます、部長」
「海浜の山岸に負けたのは、悔しいだろうけど、詰めすぎるのは良くないからね」
「はい」
吹寄は、去年の雪辱を晴らしたい。そんな中に、海浜総合高校に行った中学時代の水泳部の仲間が送ってきた画像。
八幡と雫が海浜総合高校の文化祭にてデュエットして歌っている画像。
そこに写る八幡と雫の表情を見て、互いに信頼している感じに見えるのだ。八幡の表情も総武高校で見せているものとは、別人のようなオーラを感じる。
「やはり恋人同士だから…違うの?」
「うん?どうした、制理?」
「いえ、何でもありません」
そう言うと吹寄は、準備運動をやってからプールへ向かった。彼女の心は、打倒海浜総合、打倒 山岸緑子であった。
ーー
一方奉仕部の方は、まだ八幡と雪乃の討論が行われていた。
宮沢賢治、よだかの星から2人はヒートアップしている。
「でも、『よだかの星』は貴方にとってもお似合いよね。よだかの容姿とか」
「お前、俺の顔面が不自由だと言ってるのか?」
「そんなこと言えないわ。真実は時に人を傷つけるから…」
「言えない?全然言ってるぞ、お前」
すると雪乃は、深刻な顔をして八幡の肩をポンと叩いた。
「真実から目を背けてはいけないわ。現実を、そして鏡を見て」
八幡は、今まで言われたことのない事をズバズバと言われる。キモい、腐り目とは総武高校に入った時から言われてるが、雪乃が言ってるのは初めてだ。
雅史達男子達、綾音や雫、緑子達女子達、中学の担任の中村先生、高校1年の担任だった末広先生は、【八幡はもっと自身を持て!】、【自分を卑下しないで!】
と言われて来たのだ。いや八幡の表情で救われたと言ってくれた綾音や雫まで、馬鹿にされた感じがしたのだ。それは、八幡にとって超えてはならないラインなのだ。
「馬鹿にするなよ!人の欠点ばかりを言うヤツが、人を救う?笑わせるなよ」
「何?文句でもあるのかしら?貴方のように腐った魚のような目をしていれば必然、印象は悪くなるわ。目鼻立ちなどのパーツうんぬんじゃなく、貴方は表情が醜い。心根が相当歪んでいる証拠ね。両親が可哀想に」
「俺の事を侮辱するのは良い!だけど俺の両親を侮辱するのは許さないぞ!」
八幡は頭の中が怒りで満ちていくのが分かる。目の前の女に何を言っても無駄だと彼は悟る。ただ雪乃を睨み付けたまま、時間が過ぎる。
「…さて、これで人との会話コミュニケーションは完了ね。私のような女の子と会話ができたなら、たいていの人間とは会話ができるはずよ」
「はぁ~お前に指南されなくても女子と会話は出来るんだよ!あえて俺は話さないだけだ!」
「虚言は辞めた方が、良いわよ。虚しくなるだけだから」
「何だと!」
「…これでは先生の依頼を解決できていない。もっと根本的なところをどうにかしないと……。例えば貴方学校を辞めるとか?」
「はぁ~、俺に人生を詰めと言ってるのか?」
「そこまで言ってないわ」
「言ってるとしか思えないが!」
「うざ…」
八幡と雪乃と言い合いの中、ドアを荒々しく無遠慮な音が響いた。
「雪ノ下、邪魔するぞ」
「平塚先生、ノックをお願いします」
「悪い、悪い。まぁ気にせず続けてくれ。様子を見に寄っただけなのでな」
ため息交りの雪乃に鷹揚に微笑みかけると、平塚先生は教室の壁に寄りかかった。そして八幡と雪乃を交互に見る。
「仲がよさそうで結構なことだ」
どこが仲が良いんだ?こんな状況を見てどこをどう思うのか、意味がわからないと八幡はそっぽを向く。
「比企谷もこの調子でひねくれた根性と腐った目の矯正に努めたまえ。では私は戻る。君達も下校時間までに帰りたまえ」
「下校時刻までに帰りますよ。雪ノ下と一緒にいれば勘違いされかねないので」
「比企谷君、それはこちらの台詞よ」
「大体、俺は非行少年か?更正など矯正などと」
八幡がそう言うと平塚先生は、ふむ、と言って顎に手をやってしばし考え始める。
「雪ノ下はちゃんと説明していなかったか。この部の目的は、端的に言ってしまえば、自己変革を促し、悩みを解決することだ。私が改革か必要だと判断した生徒をここへ導くことにしている。精神と時の部屋だと思ってもらえればいい。それとも少女革命…」
「……例えがアニメや漫画なんですか。別に嫌いじゃないですが……」
「何か失礼な事を言わなかったか?」
「は?何も言ってませんが?」
とんでもなく冷ややかな視線で射殺されかれない目で見られたので、一歩下がった。
「雪ノ下、どうやら比企谷の更正にはてこずっているようだな」
「本人が問題を自覚していないせいです」
平塚先生の苦い顔に雪乃は冷然と答えた。八幡は、何故自分がこんなことを言われ続けなければならないのか、色々と言いたい事が、あるのだがアホらしくなっていた。
八幡はふと夕陽の方を見る。夕陽の見ながら、あのときの事を思い出していた。
綾音の告白を受け入れて、ちょっと経ったとある日の学校からの帰り道。綾音と一緒に帰っていた時、総武中じゃない他校の女子生徒の集団とすれ違った時、その集団に八幡は笑われたことがあったのだ。
八幡は、自分が侮辱さるれるのは許せるが、綾音までが馬鹿にされたのだ。
悔しかった。
申し訳なかった。
自分なんかが彼氏でごめんと。
だけど綾音は、そんなことを気にしていなかった。
【あんな連中の言うことなんか気にしない。八幡の良さを何も知らないくせに。人を見た目でしか判断出来ない可哀想な人達】
【綾音……】
【私の彼氏を馬鹿にするなって!】
【……】
【八幡は、私が辛く絶望的な感じになった時、ずっと私を励ましてくれて、胸を貸して泣かせてくれた。それに勇気や希望も持たせてくれたもの】
綾音が情緒不安定だった時に、八幡が何も言わずに抱き締めていた。何も言わずに綾音の愚痴も黙って聞いていた。
綾音も次第に八幡の偉大さに惹かれていったのだ。普段はやる気が無いようにしてるけど、いざと言うときにやってくれるからだ。それは綾音、緑子、七海、雫、香織だけではなく、雅史や光輝達もわかっている。
だからこそ、雫もそんな彼が好きで告白して、八幡に受け入れてもらった。八幡自身も雫のおかげで生きて前へ進む意味を見いだしたのだから。
そんなことを八幡が思い出していると、平塚先生が
「比企谷、人が話している時に寝てるんじゃない!」
「寝てませんが!ただ過去を思い出していただけですが?」
「ほぉ~灰色の過去をか?」
「灰色の過去って…馬鹿にしないでもらえますか」
「幻想を抱いてるなんて、可哀想な人。貴方は変わらないと、社会的にまずいレベルよ」
「はぁ!何がまずいレベルだ?」
「傍から見れば、貴方の人間性は余人に比べて著しく劣っていると思うのだけど。自分を変えたいと思わないの?向上心が皆無なのかしら」
「皆無だと……?俺にも向上心はあるわ。ただ本気を出していないだけ」
もし八幡が、雫と恋人同士にならなかったらどうなっていたかは、大いにわかる。
向上心や変わろうとする気持ちが無い状態で、綾音を失ってから、心に大きく開いた穴が、向上心や前に進もうとする気持ちを鈍らせていだろう。
八幡のその心は、2年前の12月30日で止まっているだけの人間になっていたであろう。
雫の想いが、八幡の冷たく冷えた心の壁を壊し、冷えきった身体を暖かい雫の身体が包み込んだようになったのだから。彼は雫のおかげで、綾音の死に囚われなくいるんだと自覚している。
そんなことを考えていたら平塚先生が
「何を考えている?」
「いや、何でもないですよ」
それから押し問答が繰り返されたが、らちがあかないから、平塚先生が何かを言い出した。
「それではこうしよう。これから君達の下に悩める子羊を導く。彼らを君達なりに救ってみたまえ。そしてお互いの正しさを存分に証明するがいい!どちらが人に奉仕できるか!ガン…」
平塚先生がガンダムファイトと叫んだ。アニメの掛け声をしきりなしにしゃべっていると言うより叫んでいる。
「平塚先生、年がいにもなくはしゃぐのはやめてください。ひどくみっともないです」
雪乃が氷柱のように冷えきった鋭い言葉を投げる。すると平塚先生もクールダウンしたのか、一瞬羞恥に顔を染めてから取り繕うように咳払いをした。
「と、とにかくっ!自らの正義を証明するのは己の行動のみ!勝負しろと言ったら勝負しろ。君達に拒否権はない」
八幡と雪乃は呆れ返るしかなかった。
雫編も留美の話で終わりです。次の選択肢から次に見たいヒロインか選んでください。
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1ー雪柳綾香
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2ー吹寄制理
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3ー一色いろは