やはり俺の恋のリベンジは間違ってはいない。リメイク   作:龍造寺

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雫編14話です。


22ー14話ークッキー作り対決、八幡対結衣。①

ーー

 

八幡と雪乃は、何とか食べきることが出来た。

 

最後は、己の本能との戦いだっただろう。

 

いっそ、漫画のように倒れたいと思ったほどのものだったのだ。

 

「………ケホケホ…苦いよ、不味いよ~」

 

涙を流しながらボリボリと音を立てながら齧る結衣。雪乃がすぐさまティーカップを渡した。

 

「なるべく噛まずに流し込んでしまった方がいいわ。舌には触れないように気をつけて。劇薬みたいなものだから」

 

八幡は、もう少しオブラートに包めよ、と思いつつ、実際はそんなものだと思っていた。

 

こぽこぽとケトルからお湯を注ぎ、雪乃が紅茶を淹れてくれた。

 

それぞれのノルマは達成して、紅茶で口直しをやる。ようやくひと心地ついてため息が漏れた。

 

何か一戦交えてきたような疲れが、ずんっと出てきた。何とも言えない気持ちだけが、八幡と雪乃を支配している。その弛緩した空気を引き締めるように雪乃が口を開いた。

 

「さて、じゃあどうすればより良くなるか考えましょう」

 

「練習あるのみだと思うが?」

 

「まあ、それが一番だろうけれど」

 

「何でもそうだろ?練習して、練習して上手くなるものだろ?努力して上手くなるしか解決策は思い付かん」

 

「そうね、それしかないでしょうね。由比ヶ浜さん、貴女、さっき才能が無いって言ったわね?」

 

「え、あ、うん」

 

「その認識を改めなさい。最低限度の努力もしない人間には才能がある人を羨む資格は無いわ。成功できない人間は、成功者が積み上げた努力を想像できないから成功しないのよ」

 

由比ヶ浜は言葉に詰まる。ここまで直接的にぶつかれた経験は無いだろう。その顔には戸惑いと恐怖がある。それをごまかすために結衣のへらっ笑顔を作った。

 

「で、でもさ、こういうの最近みんなやんないって言うし。やっぱりこういうの合ってないんだよ、きっと」

 

へへっと結衣のはにかみ笑いが消えそうになったとき、カタッとカップが置かれる音がした。

 

 

それはとても物静かで小さな音でしかないのに、透き通った氷のような音色だった。有無を言わず音の主へと視線が引き寄せる。そこには冴え冴えとした怜悧な雰囲気を放つ、雪乃。

 

「……その周囲に合わせようとするのやめてもらえるかしら?ひどく不愉快だわ。自分の不器用さ、無様さ、愚かさの遠因を他人に求めるなんて恥ずかしくないの?」

 

雪乃は、鋭い口調で結衣に言った。ハッキリと嫌悪感が出ていて、八幡も軽くびびった。

 

「………」

 

結衣は、雪乃の迫力に押されて黙り込む。俯いて表情は上手く読み取れないが、スカートの裾をぎゅっと握りしめる手が彼女の心を表していた。

 

結衣は、コミュニケーション能力が高い方だろう。クラスのカースト最上位のグループ、葉山グループに所属してる。

 

しかし逆を言ってしまえば、人に迎合することがうまい。つまり孤独というリスクをさけるってことだろう。自己を貫く勇気はないと言うことにもなる。

 

一方で雪乃は、それこそ我が道を行くタイプ。その突破力は証明されている。1人であることを誇りに思っている。

 

雪乃と結衣は、全く違うタイプの女の子なのだから。

 

パワーバランスで言えば、雪乃が強い。当たり前だが。結衣の目が潤っていた。

 

「か、……」

 

「かっこいい…」

 

「え…?」

 

「は?」

 

八幡と雪乃は、一瞬頭が点になった。一体何を言ってるのかわからなかった。

 

「建前とか全然言わないんだ…。何て言うのかかっこいい…」

 

「な、何を言ってるのかしら……?話聞いてた?私、これでも結構きついことを言ったつもりだったのだけれど」

 

「ううん!そんなことない。あ、いや確かに言葉は酷かったし、ぶっちゃけ引いたけど……でも、本音って感じがするの。ヒッキーと話しているときも、酷いことばかり言い合ってるけど、ちゃんと話している。あたし、人に合わせてばっかだったから、こういうの初めてで……」

 

「なるほどな」

 

八幡は、そう言った。過去にそんなヤツがいたなと頭に浮かんだ。恋人である雫に慕ってくる女子のようだ。

 

当の結衣は真剣な表情で

 

「ごめん、次はちゃんとやる」

 

謝ってから真っ直ぐに雪乃を見つめ返す。予想外の事態に雪乃は声を失った。

 

八幡もそんな経験がある。1年後輩の完二だ。彼とは色々あったが、その結果完二に好かれるようになった。

 

【八幡センパイから、頂いた恩は、一生忘れません】

 

【八幡センパイの背中はオレが守るッス】

 

そんな事を考えていたら、雪乃と結衣はもう一度作ることを決めた。

 

雪乃が手本を見せるために、クッキーを作り出す。

 

八幡は、雪乃がちゃんと教科書通りにやってることがわかる。

 

彼も母親や教科書を見ながらクッキーの作り方を覚えてた口だ。

 

その後クッキーは出来上り、3人で雪乃の作ったクッキーを食べる。

 

結衣が作ったクッキーと比べるのもおかしいが、クッキーとはこういうものであると感じだろう。

 

結衣が、雪乃のように作れるのか、不安のようだが、彼女はマニュアルとおりにやれば、上手くできると言った。

 

そうして結衣は、リベンジをすることに。

 

だが、クッキーの出来は、先程よりかはマシにはなっている。

 

だが、雪乃も結衣も肩を落としている。

 

雪乃の教えは、できる側の人間の解釈。出来ない人間の事をわかってやるわけではない。

 

「なんで、上手くいかないのかな?言われたとおりにやっているのに」

 

結衣は最初から美味いクッキーを作ろうとしている。そこが間違いなのだ。

 

やったこともない人間が、いきなり美味いクッキーを作れるほど甘くはない。

 

「由比ヶ浜、お前はバカか?」

 

「バ、バカ!?ヒッキーに言われたくないし!」

 

「まあ、聞けよ。なんでお前は、いきなり美味いクッキーを作ろうと思ってる?」

 

「不味いクッキーよりも、美味いクッキーの方が貰う方が良いでしょ?」

 

八幡は、はぁ~とため息を吐く。

 

「お前は、男心がわかってない」

 

「し、仕方がないでしょ!付き合ったことなんてないんだから!そ、そりゃ友達には、つ、付き合ってる子とか結構いるけど……そう子達に合わせていたらこうなってたし」

 

「別に由比ヶ浜さんの下半身事情はどうでもいいのだけど、結局、比企谷君は何が言いたいの?」

 

「今度は俺がやる。雪ノ下と由比ヶ浜に俺流のクッキーを食べさせてやる。10分時間をくれ」

 

「何ですって!!!…。上等じゃない。楽しみにしてるわ!」

 

結衣は、自分のクッキーを否定された感じになったんだろう。彼女は、雪乃を連れて出ていく。

 

「さてと…始めるとするか…。八幡キッチンを…」

 

八幡は静かになった家庭科室でクッキー作りを始めることにした。




久しぶりの雫編です(約半年)

雫編も留美の話で終わりです。次の選択肢から次に見たいヒロインか選んでください。

  • 1ー雪柳綾香
  • 2ー吹寄制理
  • 3ー一色いろは
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