やはり俺の恋のリベンジは間違ってはいない。リメイク 作:慢次郎
ーーー
それから何日か経った体育の時間、再びテニスで汗を流すべくいつものポジションに行く事にする。次の授業からは、試合形式になるので、1人で練習するのも今回で最後になる。だから念入りに練習をしようと、いつものポジションに移動しようとしたら、ちょんちょんと右肩をつつかれた。こんな事するヤツは、誰だと思いながら振り向く。すると右頬にぷすっと指が刺さった。
「あはっ、ひっかかった!」
「と、戸塚じゃないか…。練習しに行かなくて良いのか?」
「うん。今日さ、いつもペア組んでる子がお休みなんだ。だから…良かったらぼくと、やらない?」
「戸塚が良いなら、俺は構わないぞ」
八幡は、壁に今までありがとう、と、お礼を言って、戸塚とテニスの練習に入る。
八幡と戸塚は、ラリー練習に入り、たんたんと続く。
戸塚は仮にもテニス部。八幡は、七海の練習に付き合って上手くなってしまった。
「本当に比企谷くん、テニス上手いよね?」
距離があるため、戸塚の声は間延びで八幡に聞こえる。
「まあ、七海とテニス練習してたから、自然と上手くなったんだよ」
「高梨さん、比企谷くんが練習に付き合ってくれたおかげだって、言ってたから」
「と、戸塚、あまり大きな声で言わないでくれ。あまり聞かれたくないからさ」
「……あ、ごめん…比企谷くんは静かに過ごしたいんだよね?」
戸塚は、ラリーを続けながらそう言ってきた。
「それも七海から聞いたのか?」
「うん…」
八幡はラリーを一端止めて休憩に入る。戸塚が疲れだしたので止めたという方が正しいだろう。
八幡は邪魔にならないところに座る。隣に戸塚も座る。
「お疲れ様、比企谷くん」
「そっちもな」
「比企谷くん、ちょっと相談があるんだけど?」
「相談…か…話なら聞いてもいいが?」
「うん。うちの男子テニス部のことなんだけど、すっごく弱いでしょ?それに女子に比べて人数も少ないし、今度の大会で3年生が抜けたら、もっと弱くなると思う。1年生は、高校から始めた人が多いし、まだ慣れてないし。それにぼくらが弱いせいで、モチベーションが上がらないみたいなんだ。人が少ないと自然とレギュラーだし」
「まあ、そうだろうな。レギュラー争いとか関係ないだろうし」
八幡も中学のサッカー部で、先輩達とレギュラー争いを繰り広げた。そして練習試合や強化試合で、活躍し大会前にはレギュラーを掴んでいた。雅史やみんなと勝ち続けたいと八幡は思っていた。
強い部活は、人数も多くレギュラー争いも激しい。弱い部活は、人数が少なくレギュラー争いもほとんどない。だからチーム内の競争力も無くなっていく。
大した気持ちもなく大会で出場でき、負けたとしても大会に出れただけで満足してしまう。そうして負のサイクルがグルグル回る。
「それで、比企谷くんさえ良ければ、テニス部に入ってくれないかな?」
「俺がテニス部に?」
「駄目かな?」
「………」
八幡はあくまでも平穏に暮らしたいと思っている。しかしあの決意表明の日から平穏な時間は確実に無くなっていくことがわかっている。
部活勧誘は、戸塚のテニス部が初めてではない。サッカー部の陽介達も一度勧誘したことがある。だが断った。
あとバスケット部からも勧誘があった。バスケット部部長は、総武中バスケット部の部長でもあった人だ。八幡は、バスケットも出来る方だ。
綾音と一緒に練習に付き合っていたこともあり、上出来になっていたのだ。
「俺は元サッカー部だぞ。テニスはマジで素人程度でしかないぞ?」
「比企谷くん、そんなことない。教え方上手いって、高梨さん言ってたし、比企谷くんと一緒ならぼくもっと頑張れると思うし、あの…変な意味じゃなくて、もっとぼく、テニスが強くなりたいから」
「……戸塚…お前…。入ってやりたいのは、山々なんだが、今はもう奉仕部に入ってるから無理なんだわ」
「奉仕部?」
「迷える子羊を自立を促す…部活か」
「迷える子羊を自立を促す部活?……うん…わかった」
戸塚は、そう言うと何かを決意した表情をしていた。八幡は声をかけようとも思ったがやめた。これからは戸塚自身の問題である。
放課後、八幡は奉仕部の部室にいた。そこで雪乃に相談をしたのだが、拒否の連続だった。
奉仕部で男子テニス部の練習を手伝うって名目で、依頼にしようと考えたのだが、雪乃によって拒否。
八幡は自らをカンフル剤の役目を担うつもりで言ったのが、雪乃には
「貴方に集団行動が出来ると思っているの?貴方みたいな生き物、受け入れてもらえるはずがないでしょう?」
八幡は心の中で、雅史や陽介達、バスケット部の部長の顔が浮かび、謝ってしまった。
雪乃いわく、自分のような生き物は、受け入れてもらえるはずがない、と言われたのだった。
「お前…俺をなめてんのか?」
「貴方を舐める?おぞましいことを言わないでくれるかしら?鳥肌が出てくるわ」
「……お前、まだそんなことを言うのか」
「もっとも貴方という共通の敵を得て一致団結することもあるかもしれないわね。けれど排除するために努力するだけで、それが自身の向上に向けられることは無いの。だから解決にはならないわ。ソースは、私」
「なるほど、お前の過去話ってことか」
「ええ。私、中学の時海外からこっちへ戻って来たの。当然転入という形になるのだけど、そのクラスの女子、いえ学校中の女子は、私を排除しようと躍起になったわ。誰1人として私に負けないように努力をした人間はいなかった。……あの低能ども……」
八幡は、何故か雪乃の背後からどす黒い炎みたいなのが見えている。地雷源を踏んだんじゃないかと思えるようなものだった。
「まあ、お前の容姿ならそうなるんじゃないか。排除したがるクラスのボスザルがよ…」
「……確かにいたわね、そういうボスザル的存在が…。そのボスザルとその子分達と比較して私の顔立ちはやはりずば抜けていたといっていいし、そこで卑屈になるほど精神はやわてでないから、ある意味当然の帰結といってもいいでしょう。とはいえ、山下さんや島村さんもかわいいほうではあったのよ?」
「そ、そうなんだ……」
「彼女達は男子からの人気もそれなりにあったようだし。けれど顔だけの話であって、学力、スポーツ、芸術、さらに礼儀作法や精神性においてやはり私の足元にも及ばないレベルにいたことは間違いがわないわ。逆立ちしたって勝てないのなら、相手の足を引っ張って引きずり倒す方へ注力するのは仕方がない事よね」
八幡は、雪乃の自画自賛の言葉をずっと聞いていた。いやここまで自分を自画自賛で褒めれる事の偉大さに驚いているのだから。
綾音がそうだった事を思い出していた。彼女も八幡や雅史、緑子や七海がいなかったら、雪乃のようになってしまったのだろうか?
綾音をとことん慕っていた妹の綾香がいなかったら、彼女はどんなだっただろうか?
そんなことを考えていた八幡に雪乃は
「何を黙ってるのかしら?まさか嫌らしいことでも考えてるのかしら?穢らわしい」
「何で俺がお前なんかで…ってか戸塚をどうにか強くしてやりたいんだよ!」
「貴方が誰かを心配するなんてね、珍しいこともあるのね」
「珍しい?バカを言え。これでも中学の時は、悩み相談なら八幡に聞けって言われてた事もあるぞ」
「へぇー…貴方がね。妄想か何か?まあ、私は、恋愛相談をされたけどね」
「ふーん」
「っといっても、女子の恋愛相談って基本的には牽制のために行われるものよね」
「ああ、そうみたいだな、男子と違っな」
「何で貴方が知ってるのかしら?」
綾音は、八幡に告白する前に、親友である緑子、七海、香織達に相談する前に雅史や光輝に相談している。雅史や光輝にアドバイスをもらったとか後から知った八幡だった。
綾音は、緑子達も八幡が好きなことを知っていたからこそ、そうしたんだろうと八幡は考えている。
小町からも聞いたことがあるのだ。
【女子の友情は、簡単に壊れるって知ってる?例えば、同じ男子を好きなったりしたら……】
あの時の小町の表情は忘れない。あどけない表情の彼女だが、それを言った後の小町は、怖い女の表情をしていたのだから。
世の中の男子が抱いているような女子の幻想は、八幡にはとっくに無い、幻殺されているのだ。
「要するに何でもかんでも聞いて上げて、力を貸すばかりが良いとは限らないという事ね。昔から言うでしょう?【獅子は我が子を千尋の谷に突き落として殺す】って」
「殺すな!意味を変えるな!正しくは【獅子は我が子を狩るのにも全力を尽くす】っての」
雪乃は、フンと向こうを向いた。八幡はため息を吐いてから
「なら、雪ノ下が監督だとしよう。選手達にどんな練習を課す?」
雪乃は不意にそんなことを言われ、目をはちぱちと大きく瞬かせながら、そうね、と思案顔になる。
「全員死ぬまで走らせてから死ぬまで素振り、死ぬまで練習、かな」
雪乃は、微笑み混じりでそう言った。八幡は背筋に寒気を覚えたのは、言うまでもなかった。
雪ノ下雪乃監督…いや雪の女王の方が似合うだろうか。
八幡と雪乃のこんな会話が行われいた時、奉仕部の扉が勢いよく開けられた。
「やっはろー」
雪乃とは対象的に結衣は、お気楽そうな挨拶をしてきた。その背後には力なく深刻そうな顔をした人物とちょっと怒った表情で胸の下で腕を組んでいる人物がいる。
1人は戸塚彩加、もう1人は吹寄制理である。
雫編も留美の話で終わりです。次の選択肢から次に見たいヒロインか選んでください。
-
1ー雪柳綾香
-
2ー吹寄制理
-
3ー一色いろは