やはり俺の恋のリベンジは間違ってはいない。リメイク 作:龍造寺
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八幡と雪乃は、結衣が言った言葉が信じられない。
少なくとも先程の台詞は、とても高校生がいうものではない。驚いた表情で雪乃が
「由比ヶ浜さん、貴女、本当にそう思ってるのかしら?」
「雪ノ下、こればかりは同感だぜ」
結衣は、馬鹿にされたと思い、やっきになって反論してくる。
「勉強なんて意味ないってば!高校生活短いし、そういうのにかけてる時間もったいないじゃん!人生1度きりしかないんだよ?」
「あのな由比ヶ浜、将来のために勉強するんだろうが!」
「それじゃ、ヒッキー将来何になるのか決めているの?」
結衣は、八幡の反論できなさそうな事を聞いてきた。将来のことは、まだ何もわからない。まだ迷いの中にいるのだから。
「そ、それはだな…」
「ほらヒッキー、何も言えないじゃない。なりたいことがわからないなんて、勉強しても意味なくない?」
「意味ないってお前…!」
「本当に、意味がないと思うし…」
「金子みすゞが聞いたら怒るでしょうね」
雪乃は、ため息を吐きながら額に手を当てた。
「由比ヶ浜さん、貴女ね、さっきから勉強は意味はないって言ってたけど、そんなことないわ。むしろ自分で見いだすものが勉強というものよ。それこそ人それぞれ勉強する理由はちがうでしょうけど、だからと言ってそれが勉強すべてを否定することにならないわ」
雪乃の言っていることは、正論である。人それぞれ勉強する意味は違う。何になりたいのか、それだけで勉強する意味になってくる。
八幡の場合は、綾音と一緒に歩みたい、一緒に並んでおかしくないように、勉強もスポーツも頑張っていたのだ。その努力が今も身に付いているのだから。もちろん雫と釣り合うように今でも続けている。
「ゆきのんは、頭いいからいいけどさ……。あたし、勉強に向いていないし、周り、誰もやってないし…」
その小さな声に雪乃は、目が細くなる。一気に温度が低くなるような感じになっているのだ。おまけに静まりかえるような感じになり、結衣ははっとなって口をつぐむ。以前、彼女にきついことを言われたことを思い出したのだろう。そして全力で自身のフォローに入る。
「や、ちゃ、ちゃんとやるけどー……そ、そう言えば!ヒッキーは勉強しているの!?」
結衣は、雪乃の雷を交わすために、八幡に話を振ってきた。彼はため息をはいてから
「はぁ〜俺はやっている。毎日コツコツな」
「裏切られたっ!ヒッキーはバカ仲間だと思ってたのに!」
「……ぷっ…クスクス…」
結衣が言った台詞に雪乃に笑われてしまった八幡。結衣の中では、彼は馬鹿としか認識されていなかったってことになるが。
「お前、さっきの俺と雪ノ下とのやり取りを聞いてなかったのか?」
「え……何の事?」
やはり聞いてなかったようだった…。一体何を聞いていたのだろうか。
ちなみに総武高校では、テスト結果を貼り出したりはしない。本人にひっそりと点数と順位が返ってくるだけである。従って、人づてに誰かの順位を知ることになる。
八幡は、クラスで順位など知られる事はないので、1位を取ってるなど誰も思わない。
雪乃も八幡が1位という事を言わなければ、知らなかったかもしれない。まあ平塚先生がしゃべる可能性はあったかもしれないが。
「もしかして、ヒッキーって頭良いの?」
「ええ、頭の方は憎らしいけど、良いのには違いないわね」
「何故、お前が答える?」
八幡と雪乃は、1位を争っている。つまりこの中で、結衣はダントツのお馬鹿さんってことになる。
「うぅ…。あたしだけバカキャラだなんて」
「そんなことないわ、由比ヶ浜さん」
冷静ながらも雪乃の表情には温もりがあり、その瞳にはハッキリとした確信の色がある。それを聞き、結衣はパッと明るくなる。
「ゆ、ゆきのん!」
「貴女は、キャラじゃなくて真性のバカよ」
「うわーん!」
ぽかぽかと雪乃の胸元を叩く結衣。それを面倒くさそうに受け止めながら雪乃は短いため息をついた。
「試験の点数や順位程度で人の価値を測るのがバカだと言っているのよ。試験の成績は良くても人間として著しく劣る人もいるわ」
「おい!なんで俺を見る?つまり俺は人として劣っているというのかよ?」
雪乃はまだ八幡を見つめたままだ。
「あのな、俺は目標に向かって勉強しているんだ。雫と…雫と並び立っておかしくないようにやってるんだよ」
「へぇー」
「八重樫さんのため…」
「そうだ……俺は、綾音に…そして雫と並び立つために…」
小さな声で八幡はぶつぶつと言った。幸い雪乃や結衣は聞いていなかった。
「私はまあ…友達がいなかったから勉強しかなかったわ」
「あ、そう…寂しかったんだな」
「別に寂しいとか思ったことないわ」
結衣は、そんなことを言った雪乃を抱き締める。
「由比ヶ浜さん、暑苦しいわよ」
雪乃がそう言ったが、結衣はやめない。八幡は別にそんな光景は見慣れている。よく、綾音や緑子、七海、雫と香織が抱きついてたのを見てたから。だから雪乃と結衣の抱きつきも普通に見れるのだ。
結衣は、雪乃の頭を撫でながらふと口を開く。
「でもさぁ、ヒッキーが…あの彼女のために勉強頑張ってるのってなんか意外よね」
「意外ってなんだよ。俺が雫のために真面目に頑張ってやってきただけだ。まあ大学にも行くつもりでいるからな。夏休みになれば、夏期講習を受けるつもりでいるし」
前にも説明したが、総武高校は進学校である。従って大学進学率もかなり高い。意識が高い人間なら、2年生の夏から勝負をかけてくる。
良い予備校は、すぐにそういう人間で満員となってしまう。
八幡もとあることを考えているのだ。それは予備校のスカラシップを考えているのだ。
大学進学は、元からの規定路線だったから、行くのは当然としている。八幡が迷ってるのは、あくまでも大学後の進路、就職かさらに専門の知識を学ぶのか、そんなところである。
「俺は、予備校のスカラシップを狙ってる」
「すくらっぷ?」
「それなら狙わなくても今現在で充分よ。生ける産業廃棄物みたいなものじゃない、貴方」
「誰が産業廃棄物か!ってかスクラップにされてたまるかよ!」
「ねぇねぇ、すくらっぷって何?」
スカラシップ、スクラップも知らない結衣。八幡と雪乃の話についていけてないようである。
「スカラシップというのは、奨学金のことよ」
「最近の予備校は、成績がいい生徒の学費を免除してるんだよ。スカラシップ取って、少しでも親を楽にしてやりたいと思っている」
雪乃と結衣が、驚いた表情をしている。八幡は、そんな姿を見て
「うん?なんだよ、2人とも俺、変なこと言ったか?」
「貴方がそんなことまで考えていたなんて、予想外だったわ」
「ヒッキーは、そこまで考えてるんだ…あたしの進路って…どうなんだろう」
そう呟いた結衣は、八幡を見る。そして雪乃の袖をきゅっと掴む。その勢いに驚いたのか、雪乃が心配そうに結衣の顔を覗き込んだ。
「何かしら?」
「あ、ううん、何でもない、ことはないか……。2人とも頭がいいからさ、卒業したら、会うこととかなさそうだな、って考えちゃって…」
そう言ってたははーって誤魔化すように笑う結衣。
「そうね、比企谷君なんて絶好に会わないわね」
「ああ、そうだな、俺も会いたくないな、雪ノ下」
ずっと一緒にいることが全てではない。幼稚園から一緒だった雅史とは、高校から進む道は分かれた。緑子と七海、香織、かおりとも高校から分かれた。もちろん現彼女の雫とも高校は違う道に。
綾音とはこの現世で二度と会うことが出来ない別れをしてしまった。
生きていれば、別れと出会いは必ずくるものだから。
人はそうやって成長していくものなのだから。
八幡がそんなことを考えていた時に、雪乃と結衣は、互いのチャットのやり取りの話をしている。彼は夕陽に染まる外を見る。
しばらくすると、お菓子の話などしていた結衣があることを言い出す。
「あたし……ちゃんと勉強しようかな」
小さな声でそう言って目線を落とす結衣。
「ゆきのんって大学とか決めているの?」
「いえ、具体的には。志望としては国公立理系だけど」
「頭いい単語が出てきた!じゃ…じゃあヒ、ヒッキーは?つ、ついでに聞くけど?」
「俺はついでか、まあいいが。俺は、東京の方の国公立だろうな」
「……東京大学!?」
「まあ…東京大学も選択肢の1つかもな」
「……うぅ…ヒッキーって…そんなに頭が良かったんだ」
「…比企谷君があの東大に…くっ…私も負けるわけには……」
「うぅ…これは、あたしも頑張らないと…」
結衣は、雪乃から離れると、大声で宣言した。
「と、いうわけで今週から勉強会をやります!」
「どういうわけ?」
「明日からテスト1週間前は部活もないし、午後から暇だよね?」
ちなみに明日は、教育研究会があるからさらに帰るのが早くなるお約束でもある。
「じゃあ、ジュネスのサイゼでもいい?」
「私は別に構わないけれど…」
「ゆきのんと2人で出掛けるの初めてだね」
「そうかしら」
「さてと…2人で勉強会、頑張れよ…じゃーな」
八幡はすっと立ち上がると、スタスタと歩き出した。そして扉を開けて奉仕部の教室から出た。
雫編も留美の話で終わりです。次の選択肢から次に見たいヒロインか選んでください。
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1ー雪柳綾香
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2ー吹寄制理
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3ー一色いろは