やはり俺の恋のリベンジは間違ってはいない。リメイク 作:龍造寺
そしてその日の放課後、雪乃も結衣も普段通りに奉仕部の教室にいる。八幡も気にすることなく教室にいたのだが、嵐の材木座がやって来て騒いでいた。
だがある訪問者によりおとなしくなる。
それは葉山隼人である。材木座は、葉山のことをイケメンだと言って嫌っている。すぐに用事があるとか言って逃げたした。八幡は、雅史とは一緒にいるくせにと思いながらも葉山を見る。
「こんな時間に悪い。ちょっとお願いがあってさ」
アンブロのエナメルバックを床に置くと、葉山はごく自然に軽く断りを入れて雪乃の正面の椅子を引いた。
「いやー中々部活から抜けさせてもらえなくてさ。他の部活は休みに入ってるけど、サッカー部は特別に今日までにしてもらってるんだ。まあ今日のうちにメニューをこなしておきたかったぽい」
「なるほど」
「そこの男の言葉はともかく、能書きはいいわ。何か用があるからここに来たんでしょう?葉山隼人君?」
冷たい響きを滲ました雪乃の声にも葉山は笑顔を絶やさない。
「ああ、そうだった。奉仕部ってのはここでいいんだよね?平塚先生に、悩み相談するならここだって言われて来たんだけど」
葉山が喋ると何故か窓から爽やかな風が吹き込んでくる。
「遅い時間に悪い。結衣もみんなもこのあと予定とかあったからまた改めるけど?」
そう言われて、結衣はいつだかも見たうすっぺらい笑顔で笑う。どうやら上位カーストの人間に接する時のくせが抜けないようだ。
「や、ーや。そんな全然気にする必要はないよ。隼人くん、サッカー部の次期部長だもんね。遅くなっても仕方がないよ」
だがそう思っているのは、結衣だけだ。雪乃はなにやらピリついているし、八幡は複雑な気持ちで見ている。
「いや~比企谷にも悪いな」
「何故、俺に謝る?」
「いや…君の前でサッカーの話はと思って……」
「別にサッカーの話をしてもいいが?葉山が気にするものでもないだろ?」
「それは、そうだが……」
葉山は少し不満げな表情になったが、すぐに本題の方の話をし始めた。
彼がこの奉仕部に来た理由は、とあるチェーンメールのことである。近頃2年生界隈で問題になっている問題の1つである。
葉山は、おもむろにスマホを取り出した。結衣は、あっと声を出すと、自身のスマホを取り出して、さっきのチェーンメールを見せてくる。結衣と葉山のチェーンメールの内容は同じである。
内容は、怪文書と呼ぶに相応しいものであった。結衣の指先がスクロールしていくと憎悪の塊な文章である。どうみても捨てアカウントであり、いくつものアドレスから個人を誹謗中傷するメールばかりである。
【戸部は、稲毛のカラーギャングの仲間でゲーセンで西高狩りをしていた】だとか。
【大和は、三股かけている屑野郎】だとか。
【大岡は練習試合で相手校のエースを潰すためにラフープレーした】だとか。
要約するとそんな感じの、ことの真為は定めでは無いメールがいくつもある。そして大本の使い捨てアド以外の、クラスメイトらしき人物から転送されているのもわかる。
「これは、チェーンメールじゃねぇか」
八幡の問いに結衣が頷く。
「昨日、言ったでしょ?うちのクラスで回ってるやつ」
「チェーンメール、ね」
チェーンメールとは、その名前のとおりに鎖のように回り回っていく類いのメールだ。大体語尾に【10人、20人に回りして下さい】とかあるのがそうだ。
ちょっと前にあった【不幸の手紙】に似ている。
【3日以内に5人に同じ手紙を送らないと貴方が不幸になります】って文章である。
そのメールを見ながら葉山は苦笑いを浮かべている。
「これが出回ってから、なんかクラスの雰囲気が悪くてさ。それに友達のこと悪く書かれてば腹も立つし」
「確かにお前の言うとおりだな。友達の悪口を書かれれば、俺でも腹は立つな」
「止めたいんだよね。こういうのってやっぱりあんまり気持ちがいいもんじゃないからさ」
葉山がそう言うと八幡は彼の目を見て言った。
「つまり、葉山、お前は犯人を特定させてほしいって事か?」
「犯人を捜してほしいわけじゃないんだ。丸く収める方法を知りたい。頼めるかな?」
「丸く収めてほしい……ってマジか?」
「そうだね」
葉山の言い分は、波風を起こさずに事を収めたいのが願いだ。だがこのような案件で、丸く収めるのは無理に近い。雪乃は葉山に
「つまり、事態の収拾を図ること。…では犯人を捜す必要があるわね」
「…えっ!?犯人捜し!?」
葉山は驚いたようにそう言った。丸く収めてほしいと依頼したのに雪乃が犯人捜しをやると言われたからである。そして彼女はどす黒いオーラを出しながら自身の体験談を話し出した。
「チェーンメール、あれは人の尊厳を踏みにじる最低の行為よ。自分の名前や顔も出さない。ただ傷つけたいだけに誹謗中傷の限りを尽くす」
「確かに、雪ノ下の言うとおりだな。過去に俺の親友にそんなチェーンメールを送り付けて傷つけていたヤツがいた。まあ犯人を問い詰めて、二度としないようにお灸を据えたことがあったな」
八幡がそんなことを話したのだから、結衣は驚き葉山は妙に納得していた。雪乃は自分の話を遮ったため不満げにしている。
「貴方の過去話は別に良いとして、悪意が内から余計に性質が悪い。好奇心や時には善意で。悪意は周囲に拡大し続ける。比企谷君のように大本を根絶やしにしないと効果は無いわ」
「おい!雪ノ下、俺は根絶やしにはしてねぇ!お灸を据えただけだ」
「違ったかしら?」
「違うわ!」
「……全く、人を貶める内容が何が楽しいのかしら。それで佐川さんや下田さんになんのメリットがあったとは思わないのだけど」
「犯人は特定済みなんだ…」
結衣が若干ひきつった感じで笑う。八幡も若干引きながらも
「まあ、その2人が雪ノ下にそういうことをしたのかはわかるな。理由は1つしかない」
「理由なんて知りたくもないわね。とにかく、そんな最低なことをする人間は確実に滅ぼすべきだわ。目には目を、歯には歯を。敵意には敵意を持って返すのが私の流儀」
「お前はハムラビ法典かよ…」
「ハムラビ法典?ハムラビ法典ってなに?」
「由比ヶ浜、今日の世界史ってやっただろ?」
「そ、そうだっけ……」
習ったかどうか忘れている結衣を尻目に雪乃は葉山に
「私は犯人を捜すわ。一言言うだけで、ぱったりと止むと思う。その後はどうするかは貴方の裁量に任せるわ。それで構わないかしら?」
「……ああ、それでいいよ」
葉山は雪乃に観念したように返事をした。
八幡も雪乃と同意見だった。メアドをわざわざ変えて送りつける行為は、自身の正体をバレたくないからであり、バレた時点で止めるだろうという考えである。
要は犯人を見つければ一番早い訳である。雪乃は結衣が机の上に置いているスマホを見つめている。3そこに顎に手をやり、考える仕草をした。
「メールが送られてきたのはいつからかしら?」
「先週末からだよ。な、結衣?」
葉山が答えると結衣も頷く。
「先週末から突然始まったわけね。由比ヶ浜さん、葉山君、先週末クラスで何かあったの?」
「特に、なかったと思うけどな」
「うん……いつも通り、だったね」
葉山と結衣は互いに顔を見合わせる。
「一応、比企谷君にも聞くけど、何かあったの?」
「先週末と言えば、確か職場体験の班決めがあったと思うが」
「うわっ、それだ。グループ分けのせいだ」
「え?そんなことでか?」
葉山がそう言うが、あり得ない話ではないのだ。人数が偶数の場合はハブれることはないが、奇数の場合は、誰かが漏れる可能性があるのだ。漏れた人間がナイーブならその後の関係性がヤバイことになりかねない。
「葉山君、書かれているのは貴方の友達、と言ったわね。貴方のグループは?」
「あ、ああ、そう言えば決めてなかったな。まあ、その3人の誰かと行くことになると思うけど」
「犯人わかっちゃったかも……」
結衣が幾分げんなりした表情で言った。
雫編も留美の話で終わりです。次の選択肢から次に見たいヒロインか選んでください。
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1ー雪柳綾香
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2ー吹寄制理
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3ー一色いろは