やはり俺の恋のリベンジは間違ってはいない。リメイク   作:龍造寺

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雫編66話です。


74ー66話ーそれぞれの思い。

オリエンテーション。

 

オリエンテーションは、一般的にある組織へ新たに加わる者が、その場における活動にすみやかに適応できるように、受け入れる側が指導することを意味する。

 

学校教育、特に大学などの高等教育においては、新入生を対象に、授業の開始に先んじる時期に、履修登録に関する手続きや、課外活動などについて学生指導の一環としておこなわれる一連の行事を総称したものである。

 

無菅しい言葉で言えばこうだが、簡単に言えばまだ慣れない環境に馴染めるような交流会なようなものか。

 

そんなオリエンテーションもつづかなく進んでいるように見えてもそうではないものが見えてくる。

 

八幡は1組の女子グループが気になったのだ。5人一組のグループなのに4人と1人に分かれていることに。ちょっと遅れたような感じではない。意図的に4人が1人を落とし入れているようにも見える。

 

「…こういうのはいつの学年でもあるんだろうな」

 

八幡がどうしたもんかと見ていたら、葉山があのグループに話しかけていた。

 

「チェックポイント、見つかった?」

 

「いいえ」

 

困ったように笑って返事をすると美味しそうに葉山はニコリと微笑み返す。

 

「そっか、じゃあみんなで探そう、名前は?」

 

「鶴見 留美」

 

「俺は葉山隼人、よろしくね。あっちの方とか隠れてそうじゃない?」

 

言いながら葉山は留美の背中を押して誘導する。

 

しかし八幡はあのやり方を承認はしない。あれだと余計に反発を貰う可能性が高いやり方だと。ただでさえ、葉山というイケメンが省かれた留美に話しかけてることがすでに争いの種になっているのだから。

 

やはり八幡の思っていたことは起こってしまっている。留美が入ってきた瞬間に今まで和やかな空気が、一瞬走る緊張感。嫌悪、とは言わないまでも異物が入ってきたような何とも言えない空気が漂う。

 

あからさまに拒絶反応は起こさない。避けたり、感情をあからさまに表したり、舌打ち、イライラ等をすることもない。

 

しかし空気が語っているのだ。

 

声を出さすとも弾劾は成立する。

 

それが非言語的、非肉体的、非行為的な暴力であり、圧力だ。

 

すると雪乃が

 

「やっぱりね」

 

「こういうの残酷だよな…」

 

「そうね、人間は時に残酷になるものよ。小学生だろうが高校生であってもね」

 

「そうだな」

 

そういうのは小学生や高校生だろうが関係ないのだ。人間とは等しくもそういうものなのだから。

 

一度は中心に入れられたものの、気づけば集団はまた留美をいつのまにか弾いている。誰にも話しかけず、また誰にも話しかけられずにいれば自然と追いやられるのは当たり前だ。

 

八幡は遠目に留美がまたそっとデジカメを撫でてるのが見えたのだ。

 

地図によるとこの辺りにポイントである立て看板があるのだが。

 

この大人数で探していれば、そのうち見つかる。ほどなくして、木陰に刺さった薄汚れた看板は見つけられる。

 

元は白かったのだろうが、長年の風雨で茶色っぽくなった看板に真っ白なプリントが画鋲で止められている。

 

後はそこに記されているクイズを小学生たちが解けばいいだけの話。

 

「ありがとうございます!」

 

元気の良いお礼をいただいて彼女らとは別れる。小学生達はまた次のチェックポイントを探しに行くようだ。八幡達は一足先にゴール地点へと向かう。

 

八幡が振り返ると、ちょうど1歩遅れて歩いてきた留美が木陰に消えていくところだった。

 

木立の間を抜けていくと、開けた場所に出る。山の中腹に位置する、その地点がゴールである。

 

八幡達はこれから小学生達を出迎える準備をしなければならない。

 

「おお、遅かったな。さっそくだが、これを下ろして配膳の準備を頼めるか」 

 

平塚先生がワンボックスカーから降りてくる。オリエンテーリングのコースとは別に山の車道がここに繋がっている。

 

八幡は後ろのトランクを開けると、弁当とドリンク類が折り込みコンテナに入って山と積まれている。漏れ出てくる車内の冷たい空気が軽く汗ばんだ体に心地がいい。

 

八幡達男子でえっさほいさと折り込みコンテナを運び出す。

 

「それとデザートに梨が冷やしてやる」

 

そう言って、平塚先生が後方にクイッと親指した。

 

ちょろちょろと小川のせせらぎが聞こえてくる。どうやら流水に浸けられ梨は冷されている。

 

「包丁類もあるから、皮むきとカット、よろしくな」

 

ポンとカゴを叩く平塚先生。それには果物ナイフにミニまな板がいくつかと、紙皿に爪楊枝と果物取り分け用セットが詰まっていた。

 

しかし、一学年分の梨を剥くとなると結構な労働量だ。加えて、弁当類の配膳の準備もある。

 

「手分けするしかないだろうな」

 

「それしかないだろうな、葉山」

 

でてんと積まれた仕事の山を見て葉山と八幡が言うと、三浦が自分のネイルをしげしげと見つめながら口を開いた。

 

「あーし、料理パス」

 

「俺も料理は無理だわー」

 

「私はどっちでもいいかな」

 

三浦、戸部、海老名が自分の意見を言う。葉山はしばし考えてる横で八幡が

 

「葉山、俺は料理班になるわ。完二、綾香、手伝ってくれ」

 

「先輩、了解ッス!」

 

「うん、分かったわ、八幡お兄ちゃん」

 

「比企谷君、私もやるわね」

 

吹寄も八幡達料理班に。そこに雪乃と結衣と小町がやって来た。

 

料理班ー八幡・完二・綾香・吹寄・雪乃・結衣・小町

 

配膳班ー葉山・陽介・戸部・戸塚・三浦・海老名・上条

 

綺麗に班分けができ、班ごとの役割りを果たすことに。

 

八幡たちは梨を運び包丁類を準備すると早速とりかかる。皮むきは八幡と吹寄と雪乃と結衣がやり、串刺しを完二、綾香、小町が皿を並べて爪楊枝を刺していく。

 

八幡、吹寄、雪乃は、手際良くどんどんと梨の皮を向いていく。その横で結衣が自信満々に腕まくりをする仕草を見せる。半袖なんだが。

 

「ふふん、あたしも相当腕を上げたからね」

 

「ふ〜ん」

 

「そう、楽しみね。お手並み拝見と言ったところかしら」

 

「結衣、頑張ってるとか言ってたもんね」

 

「頑張ってるって、それがですか、由比ヶ浜先輩?」

 

剥き終えた梨を取りに来た綾香がそう言ったので、八幡、吹寄、雪乃が結衣が剥いている梨を見て、3人ともその顔が曇っていく。

 

結衣が剥いた梨はボンキュボンとしたセクシーダイナマイトにグラマラスなスタイルだった。八幡と雪乃はため息をはいた。

 

誰がどう見ても一刀堀の仏像みたいにしか見えない。

 

一体どこに料理の腕を磨いたというのか疑問である。

 

「な、何でママがやってるのあんなに見てたのに!」

 

「「「見てただけかい!!」」」

 

八幡、綾香、吹寄がシンクロしたように揃ってツッこむ。

 

そして八幡と吹寄、雪乃はスピードを上げながら梨の皮を剥いていくのだった。

 

結局結衣は、綾香と交代することになった。

 

ここから八幡は、梨剥きをスピーディーかつ綺麗に剥いていく。

 

思えば2年前に病室で綾音のために梨を食べやすくかつ見栄えが良いように剥いていた。

 

そのために彼女に食べるのをもったいないとか言われたことがあった。

 

その腕はまだまだ鈍ってはいない、八幡。

 

「比企谷君、梨の剥き方、本当に上手いわね」

 

「げっ!本当だ!ヒッキーに無駄に上手い。キモい」

 

「げっ、てなんだ、げって。……え、キモいって何だよ…」

 

「由比ヶ浜先輩、八幡お兄ちゃんを侮辱するのはやめてもらえます?」

 

「綾香ちゃん、別に馬鹿にしたわけじゃ…」

 

「……確かに男子にしては結構上手ね」

 

珍しく雪乃に褒められた八幡。むしろこれが初めて彼女に褒められたのではないか。

 

ちなみに雪乃の梨はうさぎが群れを出している。

 

それからも色々言われた八幡だが、気にせずに梨を剥き続けるのであった。

 

そして梨の生産地がどこが日本一なのか小町に聞いてきた。

 

「小町さんは受験生だったよのよね。では、問題、梨の生産量第1位の県は?」

 

「山梨県ですね!」

 

「小町、それ間違ってるから」

 

「え、違うの!?」

 

綾香に違うと言われ、ビックリしている。八幡は小町の解答に悲しくなってきた。本当に受験生なのだろうか?この子は、と思った。

 

雪乃は苦笑の混じった微笑みで、小町のことを見てから、今度は結衣の方に水を向ける。

 

「まぁ、これから学べばいいのだし、受験までにはまだ日もあるから……。さて、由比ヶ浜さん正解は?」

 

問われることは予想していたのだろうか、結衣は自信満々に答える。

 

「ふふーん、鳥取県!」

 

「はずれ。中学からやり直しなさい」

 

「ぷっ、由比ヶ浜先輩、草」

 

「小町さんの時より対応が冷たいよ!?綾香ちゃんさっき笑ったでしょ!」

 

高校生と中学生である。雪乃に差をつけられても仕方がない。

 

確かに鳥取県は梨の生産量が日本一になっていた時期もある。だが、近年はその1位の座から順位を落としている。

 

結衣の解答を聞いていた小町が急に不穏な笑い声を立てた。

 

「ふっふっふー。小町、今ので答えが分かっちゃいましたよ。鳥取がはずれということはつまり。正解は島根県!」

 

「小町、鳥取が違うから島根って…」

 

「不正解。つまり、の意味がちょっと分からないわ」

 

日本全国津々浦々、自分たちが住んでいるとこ以外の都道府県が曖昧なのは、まあどこに住んでいても一緒だろう。

 

関東でいえば、栃木、埼玉、茨城の場所が分からない他の地方の人間いっぱいいる。

 

「他にどこだかわかる人はいるかしら?」

 

八幡、綾香、吹寄が手を上げる。

 

「じゃあ答えてくれるかしら」

 

「「「千葉県」」」

 

3人は揃って同じ答えた。

 

「3人とも正解よ」

 

千葉県は梨の生産量は日本一である。

 

ちなみに八幡達がクイズ等で喋っていた時、完二は黙々と梨を剥いていたのである。

 

八幡達は、それからもクイズをしながら梨を剥いていた。

 

そして、ほとんど梨を剥き終えた頃、小学生が続々と到着していたのであった。

 

そこからしばらく八幡達は腹ペコ小学生達に弁当と梨を配布するだけの存在となった。

 

雫編も留美の話で終わりです。次の選択肢から次に見たいヒロインか選んでください。

  • 1ー雪柳綾香
  • 2ー吹寄制理
  • 3ー一色いろは
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