やはり俺の恋のリベンジは間違ってはいない。リメイク   作:龍造寺

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雫編68話です。


76ー68話ー鶴見留美。

 

カレーライス作り。いろんな人間がいろんなカレーの作り方をうんちくのように語る。

 

もちろん隠し味も含めてたが。

 

小学生が飯盒炊爨をしているのを補助的に八幡達は手分けして手伝うのだ。

 

 

小学生達は、カレーライスについて語りながらみんなで作っていく。

 

そこに八幡達高校生もいるものだから、話はさらに盛り上がる。やはり小学生にしたら高校生と中々こういうイベントで一緒になることが少ないからだろう。もちろん姉や兄がいる小学生であっても他人のお兄さんお姉さん達と会話しながら作るのは珍しいのだろう。

 

ただ気ががりも存在する。

 

鶴見留美。

 

この子だけが、小学生のグループからはじき出されているのが明白である。

 

葉山がどうにかしようとしているが、それがかえって悪循環を引き起こす可能性もあるのだ。

 

陽キャの人間が葉山から話しかけられば、評価もうなぎのぼりだろう。

 

しかし陰キャが葉山から話しかけられれば、評価もナマイキ、調子に乗っていると言われ今以上に無視や仲間はずれが横行する。

 

葉山から質問された事を素っ気なく返しその場を後にする。

 

そしてなぜか八幡の側にきて立ち止まる。葉山は俺をチラッと見たあと、すぐに他の小学生達の相手をする。

 

葉山は上手く小学生の相手をしていて、結衣も何か言ってるみたいだが、葉山から何かを言われその輪から離れる。

 

「由比ヶ浜、なにやってんだ…」

 

「バカばっか…ねえそう思わない?」

 

八幡は、留美からそんな話しをされてしまう。

 

「バカばっかか…案外そうなのかもな」

 

八幡がそう言うと留美は不思議そうに彼を見る。その視線に雪乃が割り込んでくる。

 

「貴方からそんな言葉が出るなんてね」

 

「俺だってそう考えることもあるさ」

 

世の中のことを理不尽だと思う時はいくらでもある。例えば、小さな国が悪さをすれば世界中がそれを非難し、それを国を持って潰す事もある。

 

だが、大国が悪さをすればそれは見て見ぬふりにすることも多い。批判はしても弱い国のように潰したりはしない。

 

それは、国内でも同じ事だ。小さい企業と大企業が経営不振になったとする。

 

国は大企業を助けるが、小さい企業だとそのまま放置され倒産するだけ。

 

世の中は強いものには逆らわず、弱いものには牙を剥く。

 

八幡はそれを身に沁みて分かっている。だからこそ、完二を助けた時に反逆の意思を見せたのだ。

 

それがあの連中にも気に入れられることになるが。

 

その後留美は、八幡と雪乃、あとからやって来た結衣と話をする。なぜ自分がこのようになっているのかを。

 

1人だけはぶくゲームをしていて、留美もそれに参加していて、他の子がはぶかれてた時に一緒にはぶいていたようだ。

 

そしてそれが留美の番になって今尚も続いていると。

 

こういうことはどこでもある。

 

八幡には留美が昔の綾音にも重なる部分がある。

 

だからこそ今の状況を何とかしたい。だが綾音の時とは、状況も関わり方も立場も違う。

 

綾音を救い出したときのように粗行事は出来ない。(このときは、綾音に対してそんな事をやらかした女子達を締め上げた)

 

締め上げると、仲間であるはずだが互いに仲間を売り合い、泥仕合になった。この連中グループは解散し、それぞれ孤立していた。

 

だが今回は、同じ当事者ではないし暴力を振える状況でもない。粗治療の方が、一番効果はあるが…

 

留美は遠くの空を見ながら震えた声で

 

「中学校でも…こういうふうになっちゃうのかなぁ?」

 

八幡は唇を噛み締めながらなんとかしてやりたいと思っていた。

 

 

カチャカチャと食器とスプーンを立てる音がする。半ば諦めたような表情で黙ってのままの自分の班へと戻った留美を見送って、すぐ八幡達も自分のベースキャンプへと戻ってきていた。

 

平塚先生が番をしてくれていたカレーはじゃがいもがすっかりいい感じに煮込まれていて、飯盒の方もなかなかの炊き上げた。

 

炊事場の近くには木製のテーブルと、一対のベンチがある。それぞれが皿に盛り付けると、座る場所の探り合いが始まった。

 

最初に座ったのは雪乃だ。迷わずベンチの端をゲットした。続いたのが小町、雪乃の隣に座る。次が綾香。小町の隣に座る。次が結衣、綾香の隣に座る。そんな流れで吹寄も結衣の隣に座る。吹寄の隣に海老名が座り、三浦は反対側の端に座る。

 

男子は、まず戸部が三浦の正面に陣取る。葉山が戸部の隣に座る。三浦側に上条が座り、反対側に陽介が座る。陽介の隣に完二が座る。完二の隣に八幡が座り、その隣に戸塚が座った。

 

平塚先生と山本先輩は、一緒の席に座っている。

 

引率者は引率者用にあてがわれたモノがあるようだ。

 

八幡はこの風景を見て、なんだか微笑ましくもあった。来ているメンバーは大幅に違うが、2年前の事を思い出していた。今のようにカレー1つで男子達が騒ぎ、女子がそれを子供っぽいと笑っていた出来事を。

 

このあと、なぜか千葉県の問題をクイズ方式で答える戦いが繰り広げられたのだった。

 

 

小学生達は、就寝のためにすでにいない。小学生達がいないせいかあたりが静かになり、涼しさとさわさわと揺れる音、遠くのせせらぎが聞こえてくる。

 

もうじき就寝時間の時間で明かりが消される。それでも、友人達と過ごす夜を大人しく寝るわけがない。

 

それは八幡達だって同じだったのだ。正式に言えば八幡達のグループはそうではなかった。

 

倒れた綾音のために八幡に至っては修学旅行に来たのに、彼女のために修学旅行を犠牲にしたのだ。

 

だから本当の意味では修学旅行を心から楽しめてはいないのだ。

 

修学旅行といえば、枕投げ、布団の上でお菓子を食べたり、好きな人のことについて、まあ女子は恋バナになるだろう。

 

「今頃、修学旅行の夜っぽい会話、してるのかもなぁ」

 

「そうだろうな」

 

高校生の修学旅行はまだ行ってはいない。修学旅行は高校2年生の2学期に予定されている。

 

「大丈夫、かなぁ」

 

結衣が心配そうな声で八幡に聞いてきた。

 

もちろん結衣は、鶴見留美のことを心配している。彼女が孤立してることは、八幡や雪乃、結衣だけが知っているのではなく、葉山達もみんなが知っているのだ。

 

 

 

「大丈夫ではないだろうな」

 

八幡がそう言ったのと同時にシュッと擦る音がした。平塚先生のクールな横顔が木の下闇にぽっと照らしだされる。煙草を浅く吸い、紫煙が立ち上がる。足を組み直すと煙も揺らいだ。

 

「ふむ。何か心配事かね?」

 

問われて答えるのは葉山だ。

 

「まあ、ちょっと孤立しちゃってる生徒がいたので」

 

「ねー、可哀想だよねー」

 

三浦は相槌のつもりか、当然の如く、その言葉を口にした。

 

「……葉山、ちょっと違うぞ。お前は問題の本質を理解していない。孤立すること、1人でいることは問題ではない。問題なのは、悪意によって孤立させられていることだ」

 

「はぁ〜?何か違うわけ?」

 

八幡は、葉山に言ったのだがなぜか三浦に聞き返される。

 

「好きで1人でいる人間と、そうじゃない人間がいる。そういうことかな?」

 

「そうだな、誰だって1人でいたい時はあるもんだろ。それは問題ではない、問題なのは、彼女を孤立…それを強いる環境の改善をしなくてはならない」

 

「それで、君達はどうしたい?」

 

「それは…」

 

平塚先生に問われて、八幡達は黙り込む。

 

八幡達は当事者ではないし、あの小学生達の関係者でもない。かといって教職員でもない。出来ることなんてほとんど無い。

 

あるとしても、小学生達の教職員達にそういう事があったと事情を話すことぐらいしか出来ない。そん中完二が口を開く。

 

「俺の時のように、何か出来ないッスかね?」

 

「完二、お前の時と鶴見留美の件は同列にはできないだろう。あの時は力、暴力でねじ伏せたが…」

 

「八幡、それって暴走族やヤクザを潰したってアレか?」

 

「…………まあな。本当は話すつもりは無かったが……墓まで完二と2人だけの秘密にしてたつもりだったが……そんな連中に睨まれてたんだ、完二がな」

 

「…あん頃は、まだ青臭かったッスね。勝てると思ってた連中に逆にヤラレて…そんな時に八幡先輩は、ズタボロの俺の味方してくれたッス」

 

「ってヒキタニ君も完二も…ヤバい連中に目をつけられてんじゃないっぺ?」

 

「ヒキタニ君と完二君の秘密…うひょーBL魂が騒いできた〜」

 

「姫菜、さっきの話で興奮するとこっ?」

 

「なるほどな、以前の総武の問題にしても君が裏で走り回っていたのだろ?その全てを城廻の手柄にして」

 

「いや……さすがにそんなことはしてませんよ。城廻生徒会長の成せる人望と能力でしょうし」

 

八幡は違うととぼける。

 

「そうか?城廻自身は、比企谷から自分の手柄にしてくれっと言われたと言っていたぞ」

 

「……めぐり先輩…言っちゃったですか…」

 

「比企谷、お前はもうちょっと自信を持っても良いと思うが?」

 

「別にいいですよ…そんなことよりも、あの子のことで話し合うんでしょ?」

 

「そうだ、それで奉仕部部長として、君は、どうするかね?」

 

平塚先生からそう問われる雪乃。彼女は顎に手をやった。

 

「……1つ確認します」

 

「何かね?」

 

「これは奉仕部の合宿も兼ねていると平塚先生はおっしゃいましたが、彼女の件についても活動内容に含まれますか?」

 

雪乃の質問に平塚先生はしばし考えてから、静かに首肯する。

 

「……ふむ、そうだな。林間学校のサポートをボランティア活動と位置づけてたうえで、それを部活動の一環としたわけだ。原理原則から言えば、その範疇に入れてもよかろう」

 

「そうですか」

 

そう答えた雪乃は、そっと目を閉じる。

 

枝葉を鳴らしていた風か徐々に弱くなる。まるで雪乃の声音を聞き漏らすまいと、森が耳をそばたてているようでもあった。誰も声を立てず、音も立てず、ただ待つのみ。

 

「私は…彼女が助けを求めるなら、あらゆる手段を持って解決に努めます。そう…比企谷君のように」

 

雪乃は八幡を見ながらそう宣言した。凛とした、決して揺らぐことのない意思を言葉に宿らせて。

 

「で、助けは求められているのかね?」

 

「……それは、わかりません」

 

「……その辺りは、鶴見留美もあの時の完二と同じだ。別に助けは求められていない。だが…心のどこかでSOSは出してるんだよ、本人は気づいていなくてもな」

 

完二の時を思い出す八幡。完二は一変不良のように見えるが、無茶苦茶家庭科が得意。特に裁縫などが得意、そう実家が染物屋ってだけはあるのだ。

 

ある時、女子の服が破れてたのを裁縫で縫ってあげたのだが、クラスの他の女子達に気持ち悪いと言われたそうだ。挙句の果てにその縫ってあげた女子にまで気持ち悪い、と。

 

【男子が裁縫なんて気持ち悪い】

 

この言葉で完二の心は随分と傷ついたのだ。

 

縫ってあげた女子は、流れで言ってしまった可能性はあるのだが、完二はそれ以降裁縫や料理の話をしなくなり、段々と不良になったのだ。

 

その後は母親のために、暴走族を潰しまわり、暴走族とヤクザ連合に襲われ、八幡に救われる。

 

「完二、そういうことだったのか。僕は尊敬するよ」

 

「完二、破れたユニを綺麗に縫ってくれてたっぺな」

 

「完二が作ってくれたサポーターも丈夫だしなんかいいんだよな」

 

 

葉山、戸部、陽介と完二は同じサッカー部だから通じ合うのもあるのだろう。

 

 

鶴見留美の場合も完二と同じだろう。クラスの悪意がそのまま彼女を苦しめている。それは誰が始めたかわからないハブリといういじめにも劣らない遊び。

 

留美も最初の頃にする側として加担してしまった罪悪感があり、中々助けの声を上げれない。

 

八幡達は助けることには全員が一致している。

 

平塚先生は屈伸をしながら、八幡達であとは考えろと言って、部屋に戻って行った。

 

八幡達の鶴見留美をどうやって救い出すのか話し合いが開始される。

 

雫編も留美の話で終わりです。次の選択肢から次に見たいヒロインか選んでください。

  • 1ー雪柳綾香
  • 2ー吹寄制理
  • 3ー一色いろは
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