やはり俺の恋のリベンジは間違ってはいない。リメイク   作:龍造寺

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雫編69話です。


77ー69話ー問題定義。

 

全会一致でこの問題で対処することが決定されて数分後、話し合いは早くもカオスの様子を呈してきた。

 

議題は、【鶴見留美はいかにして周囲と協調を図ればよいか】に設定される。

 

最初に口火を切ったのは三浦である。

 

「つーかさーあの子、結構可愛いし、他に可愛い子とつるめば良くない?試しにはなしかけてみんじゃん、で、仲良くなるじゃん。余裕じゃん?」

 

「それだわー。優美子冴えてるわー」

 

「ふっ、だしょ?」

 

八幡達の数人が呆れた表情になっている。それは三浦だからできる戦法であり、誰もが三浦のように出来れば苦労はしない。

 

「そ、それは優美子だからできるんだよ……」

 

もちろん結衣も賛同はしない。三浦が結衣とつるみたがるのは、彼女の容姿も一理あるのだ。結衣も見た目が良いのと以外といい奴だなと八幡の見方も変わってきている。だが無防備な部分があるから危なかっしいとも思っている。

 

それからも色々と話は出てくるが決定打が無い。

 

葉山や陽介、吹寄や上条達も意見は出すが決定打ではない。

 

海老名だけは除外される。まあBLの布教に内容がすり替わろうとしたため。

 

まあ海老名の言った趣味にいきるという点だけは八幡達と一致するところはある。

 

葉山が言い出した言葉。

 

【みんなで仲良くやる】

 

世の中には絶対に合わないものがいる。

 

【嫌い】【関わりたくない】

 

を突きつけることが出来れば、改善の余地も出る。

 

だがうわべだけでは解決策にはならない。怠惰による欺瞞にしかならない。

 

「そんなことは不可能よ。ひとかけらの可能性もありはしないわ」

 

雪乃の凛とした声音が、葉山の意見を粉砕する。葉山はふっと短い息を吐き、目をそらす。

 

それを目の当たりにした三浦が吠えた。

 

「ちょっと雪ノ下さん?あんた何?」

 

「私も雪ノ下さんに賛同するかな」

 

上条は雪乃の意見に賛同しながら述べる。

 

「みんなで仲良くやれば苦労はしないけど、そんなこと出来るとは思えないし。上手くやれたとか思うかもしれないけど、それは誰かが犠牲になってるから」

 

「アンタも雪ノ下さんと同じ事を言うわけ?」

 

「そうだね、三浦さん貴女が言ってるのは上辺だけの薄っぺらい関係性を築けってのかしら?」

 

三浦と上条がケンカ越しになり始めたので葉山と陽介が止めに入る。

 

結衣も雪乃と上条、三浦と仲を取り持とうとしているが、どっちの味方なのかと問い詰められ、小さく縮こまり吹寄の後ろへ隠れる。

 

緩衝地帯に小町と綾香がいるため、雪乃と上条と三浦の戦いが起きないで済んでいる。その緩衝地帯の小町が口を開く。

 

「でもパッと見た感じ、留美ちゃんって結構性格がきつそうですから小学生の女子グループの中だけだと溶け込むのは難しいかもですね。もう少し年齢あがってくると、派手な方向の人達と仲良くなれると思いますよ?」

 

「だと良いんだろけどね」

 

小町の意見に綾香がそう言う。

 

小町の言う通りに、留美の将来的な事を考えれば学校生活を楽しむタイプの人間だろう。女子との関係性が上手くいかなくても男子はちやほやしてくれる可能性は大いにある。男子に近づくためにあえて留美と友達になる策略を秘めた女子もいるだろう。

 

葉山は小町の意見にうんうんと頷いている。

 

「確かに、ちょっと冷たいというか冷めてる感じはあるな」

 

「冷たいっつーか、舐めてるって言うか、超上から目線なだけじゃないの?周りを見下したような態度とってっからハブられるんでしょ。誰かさんみたいに」

 

三浦が挑発的に笑うと、雪乃は淡々と答える。

 

「それは貴女の被害妄想よ。劣っているという自覚があるから見下されているとかんじるだけではなくて?」

 

「っ!あんさー、そういうこと言ってっから」

 

「優美子、やめろ」

 

がたっとベンチから立て上がりかけた三浦を押し留めたのは、葉山の低い声だった。それは今までの軽薄なノリではなく、有無言わさずぬ迫力があった。

 

そんな葉山を見たことが無かった八幡もちょっと驚いた。

 

「隼人……。ふんっ!」

 

三浦も葉山の態度に一瞬驚いたが、大人しく引き下がった。それきり全く喋らなくなった。

 

座にも重苦しい沈黙が流れ、話し合いだけではなくなった。翌日に持ち越しとなったのだった。

 

人間は十人十色だ。一人一人に個性があり違うのだ。それを同じ方向に向けるのは不可能に近い。

 

世の中はそうみんなが同じ方向に向いてるように見えてるだけ。

 

周りに合わせてて生きているに過ぎないのだから。

 

 

八幡達も風呂等も済ませ、男子、女子に分かれて、部屋へ戻る。

 

葉山と戸部は、タブレットで何かをしていて、陽介と完二、戸塚と山本先輩は、4人でUNOをやっている。

 

八幡は、部屋の外へ出て月を見ながら飲み物を飲んでいた。

 

「さて、どうしたものか…」

 

飲み物を飲みながら留美と事を考えていた。

 

「確かに小町が言ってた事も一理はある」

 

綾音も小学生の頃は、女子の友達といるよりも八幡や雅史といることが多かった。中学になり、緑子や七海という大親友ができ、香織、雫達とも仲良くなり、小学生の時とは真逆になって、明るくなって生き生きなっていったのも事実。

 

留美にも、綾音のように緑子や七海のような親友ができるかがポイントだろう。もし出来れば、綾音と同じようになるだろうが、出来なければ小学生の時と同じになり苦痛だけが残る。

 

それは絶望に等しいものだ。

 

八幡は空を眺めたあと部屋に戻る。

 

部屋に戻ると、陽介達は好きな女子の話をしていたのだ。陽介の場合は上条の話をしているようだ。

 

「俺、ちょっと外に出てくるわ」

 

「八幡、こんな時間にか?」

 

「まあ〜な、ちょっと山本先輩、ギター借りますよ」

 

「ギターか?まあ構わんが?」

 

「ありがとうございます」

 

「ヒキタニ君は、好きな女子の話はしないん?」

 

「好きなタイプの話?彼女いるから別にいい」

 

そう言うと八幡は外にギターを持って出て行く。

 

陽介と完二は、ギターを持って出ることに何かあると思った。そう2年前の千葉村に来た時も1人で歌っていたのだ。何か考え事があると、ギターを弾きながら何か考えてる。歌って何か出てくるのか、陽介も完二もわからないが。

 

 

まだ23時どころか22時をちょっと過ぎたくらいである。都市部から離れると、時間がゆっくりと過ぎてるように感じるのだ。騒がしい電車の音も煌々と照る街灯もない。静かな夜だ。

 

しかし八幡より先に誰か先客がいたようだ。林立する木々の間に長い髪を下ろした女の子が立っている。

 

それこそ精霊や妖精の類いと幻視するような、どこか現実離れした光景だった。ふんわりとしたら月明かりに照らされて、白い肌は浮かび上がるようにほのかに光を放つ。そよ風が踊るたびになびく髪が舞う。妖精じみた彼女は、月光を浴びながら小さなとても小さな声で歌っている。

 

寒気すらする闇の森の中で、ささやくような歌声は不思議と耳に心地よかった。

 

八幡はその光景をただ眺めている。一歩踏み入てしまえば、彼女1人で完成してしまっている世界を壊してしまうかもしれない。そう思うと音を立てることすら憚れた。

 

「別の場所に行くか」

 

八幡が別の場所へいこうとした時、踏み出した足が小枝を踏んでしまう。

 

ピタリと歌声が止む。

 

「…………」

 

「…………」

 

1秒2秒3秒、とお互いの気配を読むだけの時間が過ぎる。

 

「……誰?」

 

呼びかける声のトーンは普段の雪ノ下雪乃のものだ。

 

「俺だよ、雪ノ下」

 

「……誰?」

 

「……っておい!なんで同じこと繰り返してんだよ」

 

首をキョトンと傾げる雪乃。

 

「こんな時間にどうしたの?ギターまで持って」

 

「別に……ちょっと久しぶりに弾きたくなってな。というお前は星でも見てたのか?」

 

「別にそういうわけではないわ。三浦さんが突っかかってきてね…30分ほどかけて完全論破して泣かせてしまったわ。大人気ないことをしてしまった……」

 

「………それで気まずくなったから出てきたのか」

 

「ええ、まさか泣いてしまうと思ってなかったから……。とりあえず、由比ヶ浜さんと吹寄さんが宥めてくれているわ」

 

雪乃も泣かすことまでは想定してないようで、若干の反省の色が見受けられる。

 

彼女は髪を撫でつけると、それを合図にするかのように

 

「あの子のこと、……なんとかしなければね」

 

「そうだな」

 

「それにあの子、由比ヶ浜さんに似ている気がしない?」

 

「……まあ、そうだな。由比ヶ浜にも似てるような感じもするな」

 

「由比ヶ浜さんもああいう経験かあるんじゃないかと思ったのよ」

 

「人一倍空気を読み、その場を和ませようとしてる節はある」

 

結衣も過去にそういう行動を取ったことがあるのだろう。それゆえに、知っているのだ。罪悪感という感情を。

 

結衣の優しさは、八幡が知っている女子、香織が持つ慈愛の優しさではなく醜くて辛くて逃げ出したくなるようなおぞましい人の性根の存在を自覚シているからこそ生まれてくる。それでもなお目を逸らさずに手を伸ばす強い優しさだ。

 

「それと…」

 

雪乃は下を向いて、足元の石をけった。

 

「……たぶん葉山君もずっと気にしてる」

 

「まあ、アイツもアイツなりに気にしてる」

 

「そういうことではなくて…」

 

雪乃は言葉を濁した。言いかけた森のざわめきに吸い込まれて消えていくと、それっきり静かになった。

 

「……葉山とお前…何かあるんじゃないのか?」

 

「小学校が同じだけよ。それと、親同士が知り合い。彼の父親がうちの会社の顧問弁護士をしているの。ちなみに母親は医師」

 

「……雪ノ下と葉山は幼なじみってやつか」

 

「比企谷君、貴方と綾香さんも幼なじみ何でしょ。それと大体は一緒でしょ」

 

「…………まあ、そうだな」

 

正式には幼なじみの綾音の妹が綾香ってことにはなるが。

 

「お偉い家同士…付き合いは大変だろ?」

 

「そうなのでしょうね」

 

「えらく他人行儀だな」

 

「そう言ったが外向きの場に出るのは姉の役割だから、私は代役でしかないの」

 

ざざと、 風が走って木々の梢が揺れた。静かな夜にあって、まるで水面に滴を落としたようにかなりや葉鳴りが広がる。

 

相模金の中でも雪乃の声が届いてきた。

 

「それでも……今日は来られてよかったわ無理だと思ってたから」 

 

「うん?」

 

言っている意味がよくわからず、八幡は雪乃の方を向く。だが、彼女は変わらず、星空を見上げたままだった。で、何も言わなかったかのように。

 

それでも八幡は雪乃の言葉を待つ。気の早い虫がリリッと鳴いた。夜が更けてきて涼しさを増したせいか、秋めいた風が吹き抜いていく。

 

 

それを合図にしたからように。雪乃はこちらに顔を向ける。その表情はわずかに微笑んでいるだけで、何も言わない。

 

何も答えない。雪乃と何も聞かない。八幡。そうして生まれた。静寂も一瞬のことで、雪乃はすくっと立ち上がった。

 

「そろそろ戻るわ」

 

「……そうか、じゃあお休み」

 

「ええ、おやすみなさい」

 

結局八幡はそれ以上問うことをしなかった。言いたくないことを無理に聞くような趣味もない。お互いのことをよく知らない方が気づける快適な関係性というものもあるのだろう。街頭のない道を雪の危なくない足取りで歩く。八幡は次第に闇の中に消えていく雪乃を見送った。

 

八幡はギターを弾きながら夜空を見上げる。

 

星々の光は遥か過去の光であるのだ。それこそ幾星霜の時を超えて、吉日の光を飛ばしている。

 

誰もが過去に囚われている。どんな先に進んだつもりでも、ふと見上げればありし日のできこと星の光の如く、降り注いでくる。笑い飛ばすことも消し去ることもできず、ただずっと心の片隅に持ち続け、ふとした瞬間に蘇る。

 

 

由比ヶ浜結衣も、葉山隼人も雪ノ下雪乃も。

 

いや……ここに来てる人間が全てとは言わないが、大体の人間は過去に囚われて生きているのだ。

 

大切な恋人を亡くした比企谷八幡、大切な姉を亡くした雪柳綾香も。

 

八幡は、ギターを弾きながらそう思ったのだった。

 

雫編も留美の話で終わりです。次の選択肢から次に見たいヒロインか選んでください。

  • 1ー雪柳綾香
  • 2ー吹寄制理
  • 3ー一色いろは
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