駅前
駅前にて、合宿に出発する陸上部が集合しており、その中に暗い表情の四葉もいた。
江場「全員揃ったね。」
と、江場が満足そうに部員達を見回す。
風太郎「ったく、試験前だってのに、とことん勉強を疎かにしやがって・・・。」
その様子を、駅前の高架デッキから、風太郎と一花に陸上部員と同じく学校のジャージを着た三玖、そして五月が、その様子を見ていた。
一花「うん、うん、分かった。」
その時、一花が耳に当てていたスマホを下ろした。
風太郎「純は何だって?」
それを見た風太郎は、一花にそう尋ねた。
一花「もうすぐ到着するって。・・・待ってて、ちょっと迎えに行って来る。」
そう言い、一花は身を翻して駆け出した。
三玖「一花?」
五月「え?一花・・・?」
戸惑っている三玖と五月に、風太郎はにやりと笑みを浮かべ
風太郎「四葉が断れないなら、お前達がやれば良い。入れ替わり、得意技だろ?」
そう言った。
三玖「わ、私が・・・?」
五月「み、三玖はともかく私は少し苦手です。前に一花の真似をしたとき、安達君に見破られてしまい・・・」
風太郎「アイツにか?アイツ、昔から勘が鋭い奴だったから、仕方ねーよ。」
その時、陸上部員が移動し始めた。
風太郎「ヤバイ!出発しやがった!駅に入る前にどうにかしなければ・・・!」
三玖「何とかしないと・・・!」
五月「でも、どうするんですか?」
その時、意味ありげな視線で三玖と五月をじーっと見つめ
風太郎「こうなったら、これしかない・・・!」
そう言った風太郎は、作戦を話した。
三玖「それって・・・」
五月「本当に上手くいくでしょうか・・・」
作戦を聞いた二人は、不安な顔をしたが、風太郎は大きく息を吸うと、大きな声を張り上げた。
風太郎「痴漢だーっ!痴漢が出たぞーっ!」
五月「えっ!?」
三玖「フータロー!?」
これには、二人は目を丸くし
江場「痴漢?」
駅に向かっていた江場達陸上部員達も、足を止めて振り返った。
江場「まさか、あの人が?」
部員達の目に、階段を駆け上がって逃げていく痴漢役となった風太郎が見える。
四葉「そこの人っ、止まりなさーい!」
そんな事露とも知らず、まんまと引っかかった四葉が猛然とダッシュした。
四葉「待てー!」
四葉が階段を駆け上がっていった直後、陸橋の陰から三玖と五月が姿を現わした。
五月「何という捨て身な作戦・・・!」
三玖「でも、こうなってしまったら、やるしかない・・・。」
そう言い、三玖は覚悟を決め、陸上部の集団に走って行くと、息を切らしながら言った。
三玖「ハァ・・・ハァ・・・。あはは・・・逃げられちゃいました。」
江場「え?」
これに、江場がキョトンとした。
三玖「私、合宿に行けません・・・部活を辞めたいです・・・。」
江場「え、なんで?」
この発言に、益々不思議そうな顔を浮かべる江場。
三玖「来週試験ですし・・・」
しかし
江場「違う違う、私が言いたいのは・・・」
江場「なんで別人が中野さんのふりしてるの?」
三玖「っ!?」
江場は小首を傾げながらそう言った。
一方の風太郎は、四葉にあっさり捕まり、事情を聞いた四葉は、戻ろうとしたその時
五月「う、上杉君!」
五月が慌てた顔を浮かべながらやって来た。
風太郎「どうした?」
五月「へ、変装が・・・バレました~!」
風太郎「何っ!?」
これに驚いた風太郎は、手すりの陰に身を潜め、下の会話に耳を澄ました。
江場「だって髪の長さが違うもん。」
風・三・五『『『確かに!』』』
これには、三人の心の叫びがシンクロした。
風太郎「くっ・・・何て鋭い観察眼だ・・・」
五月「そうですね・・・!」
違う。ただお前達が馬鹿なだけだ・・・。
四葉「前にもこんな事がありましたって・・・!上杉さんはもっと他人に興味を持って下さい。」
これに、四葉はそう風太郎に言った。
そして
四葉「私のためにありがとうございます。でもすみません、行きます!」
四葉は風太郎達にぺこりとお辞儀をし、ダッと駆け出していった。
風太郎「おいっ、待て!」
五月「四葉!」
その時
四葉?「お待たせしました~!」
四葉?が、頭を掻きながら純と共にやって来た。
四葉?「皆さん、ご迷惑をお掛けしました~。」
本物だと認めた江場は
江場「中野さん!」
笑顔になったが、純を見ると
江場「・・・あなたもいるのね。」
少し険しい顔を浮かべた。
純「気分転換に出かけたら偶然会った。それだけだ。」
四葉?「あははっ、ちょっとしたドッキリです。五つ子ジョーク。」
三玖「四葉・・・」
これには三玖はもう、為す術が無い。
江場「なんだ、冗談だったのね。笑えないからやめてよ。」
そう、江場は四葉?に言った。
すると
四葉?「まぁ・・・私が辞めたいのは本当ですけど。」
笑顔の爆弾投下をした。これには江場は勿論、他の皆も凍り付いた。
江場「えっ・・・。な、中野さん・・・何で・・・?」
江場「あ、安達・・・あなた、何を・・・」
これに、江場は純の顔を見た。
純「いや、俺は何も吹き込んでねーよ。」
純「つーかさ・・・試験前に突然合宿ってのが、ありえねーんだよ。」
四葉?「本当ですよ。頭おかしいんじゃないんですか?」
そして
純・四葉?「「マジありえねーんだよ。/ありえないから。」」
冷たい目で見下ろしながら静かにキレた。
これに
江場「は、はいぃ~。」
完全にすくみ上がった江場は、涙目になって尻餅をついたのだった。
その様子を一部始終高架から見ていた風太郎は
風太郎「どういう事だ・・・」
呆然と見ていた。すると、本物の四葉が半泣きで歩み寄り
四葉「つ、遂に出た・・・。ドッペルゲンガーだーっ!!死にたくありませーんっ!!」
そう叫んだ。
風太郎「ドペゲンという事は・・・まさか!純が一緒にいるって事は!」
一花「ふぅ・・・何とか間に合ったみたいだね。」
背後で柱にもたれてぐったりしている一花がいた。
一花「迎えに行って少し走ったら、もう来てたんだ。」
一花「本当・・・君には何度も助けられてるね・・・ジュン君。」
純「フンッ・・・」
これに、純はクールな笑みを浮かべながら現れ
一花「それに・・・何か気持ちの変化があったんだね・・・二乃。」
うさ耳のリボンを外して蝶々のリボンを付けた、ジャージ姿の二乃も一緒だった。
絶句している風太郎達の前で、純に肩まで切り揃えて貰った髪をサッとかき上げた。
一花「そんなにサッパリ行くなんて・・・」
純「俺が切ったんだ。文句あんのか?」
一花「ううん!二乃、似合ってるよ。」
二乃「ありがと。」
そして、二乃は風太郎に指を突きつけ
二乃「言っとくけど、別にアンタの為にやったわけじゃ無いから!良いわね!」
風太郎「お、おう・・・」
そう言い、二乃は風太郎に背を向けて歩き出した。それと入れ替わりに
純「風・・・遅れて悪かったな。」
純が風太郎に言った。
風太郎「本当にすまなかった・・・。お前には何度も・・・」
純「今更なんだよ。俺とお前の仲じゃねーか。」
風太郎「ああ・・・」
その純をチラッと見た二乃は
二乃(ありがとう、安達君。)
心の中で純にお礼を言い
二乃(さよなら・・・)
幼い頃の五つ子姉妹に別れを告げた。しかしその顔は、とても柔らかかった。
二乃「四葉。これで良いの?」
二乃「こんな手段とらなくても、本音で話し合えばきっと分かってくれるわ。アンタも変わりなさい。辛いけど、良い事もきっとあるわ。」
そう、うなじに手を当てて、大人びた表情で四葉に微笑みかけた。
それを聞いた四葉は、しっかりした足取りで、江場達のもとへ駆け出していった。
そして、二乃と五月もちゃんと謝り、家に帰ったのだった。
中野家
四葉「この度はご迷惑をお掛けしまして、大変申し訳なく・・・。陸上部の皆さんとはちゃんとお話しして、大会だけ協力して、お別れする事になりました・・・」
すると、四葉は玄関に入るなり床に手をついて土下座した。
純「早く立てよ。」
風太郎「そうだ。いつまでそんな事気にしてんだ。早く入れ。」
これに、純と風太郎が振り返り、そう声をかけた。
四葉は一瞬キョトンとしたが
四葉「・・・はいっ!」
嬉しそうに破顔したのだった。
また、玄関に立ってモジモジしていた二乃と五月に、一花と三玖は笑顔で迎え入れ
一・三「「おかえり。」」
そう声をかけた。
二・五「「ただいま。」」
そう言い、二人は入った。
そして、五つ子達は風太郎と純の待つリビングに集合した。
テーブルには、風太郎手作り問題集が五人分、重ねて置いてある。
三玖「取り敢えず問題集は全員終わらせてるみたいだけど。」
一花「私達、ちゃんとレベルアップしてるのかな?」
風太郎「元が村人レベルだからな。ようやく雑魚を倒せるようになったくらいか。」
五月「それで期末試験を倒せるのでしょうか・・・?」
風太郎「この土日にレベル上げをするしかない。」
すると
純「こうなったら、最後の手段だ・・・」
純はそう言った。
風太郎「最後の手段・・・?」
純「ああ。それは・・・」
そう言い、純は手の平サイズに丸めたメモ用紙を取りだし
純「カンペだ。これを使え。」
そう皆に言った。
「「「「「「っ!?」」」」」」
これには、皆絶句し
風太郎「お、お前・・・!」
純「あ、ちなみに風の分もあるぞ。お前には必要ねーと思うが、念の為な。」
五月「ま、まさか安達君はそんな事しないと思ってたのですが・・・」
四葉「そんな事して点数取っても意味ないですよぉ・・・」
五月と四葉はショックを浮かべ、口々に言った。
純「じゃあもっと勉強すんだな!こんなもん使わなくても良いように、最後の二日間みっちり叩き込め!」
風太郎「・・・ふぅ。それしかないか。お前ら、覚悟しろ!」
風太郎も、それを聞いて鬼家庭教師に戻った。
純「・・・それで良いか?」
これに、純は二乃にこっそり伺った。
二乃「・・・うん。上杉、二日間宜しく。」
これに、二乃は純にそう言った後、風太郎に照れながら言い
風太郎「お、おう・・・」
二乃「始めるわよ、用意しましょう。」
「「「「はーい!」」」」
姉妹を急き立てた。
風太郎と五つ子達はそれぞれ席について、勉強の準備を始めた。
純「・・・。」
その様子を見ていた純は、五つ子達に出会い、今までの事が頭の中に流れていった。
五つ子だが皆それぞれ個性があって中々纏まらず、風太郎も悪戦苦闘し、純がいてやっと纏まったというのが常だった。
けど、今純の目の前に、風太郎を中心に楽しそうに勉強している五つ子達の姿があった。
その様子を見ていると
三玖「良かったね、ジュン。」
三玖が気付いて微笑みかけてきた。
それに
純「まだ・・・こっからだろ?」
純はクールな笑みを浮かべ言った。
そして二日後。期末試験がやって来た。
三玖「遂に当日だね。」
一花「大丈夫かなー。」
四葉「やれる事はやったよ!ねっ、上杉さん!安達さん!」
そう、四葉が元気よく振り返るが
四葉「あれ?上杉さん、安達さんは?」
純の姿は無かった。
風太郎「ちょっと電話するって別れたぞ。」
これに
一花「こんな時に?」
五月「そうですね?」
一花と五月は首を傾げながら言った。
風太郎「恐らく、母親の理恵さんに電話だと思うぞ。」
二乃「何の用で?」
風太郎「さあな・・・」
その頃、純は屋上で一人、自身のスマホである人に電話をしていた。最後に少し強めに言うと、『マルオさん』と表示されている通話を切った。
純「頑張れよ・・・。」
壁に背を預け、雲一つ無い青空を見上げて笑みを浮かべ
純「一花・・・二乃・・・三玖・・・四葉・・・五月・・・。テメーらが五人揃えりゃ、無敵だ。そして風、後は頼むぞ。俺がいなくても、お前なら大丈夫だ。」
そう言ったのであった。
投稿出来ました。
漫画とアニメを見て何とか纏めました。
違和感があったら、すいません(土下座)
それでは、また。