期末試験が終わって数日が経った、土曜日の午後。リビングに集まった風太郎と五つ子は、期末試験の成績表を手にしていた。
五月「これはひどい・・・」
一花「あんなに勉強したのにこの結果かー。」
三玖「改めて、私達って馬鹿なんだね。」
これには
風太郎「三玖・・・本当に今更だな。」
風太郎はがっくりしながらそうツッコミを入れた。
その横で
四葉「二乃、元気出して。」
四葉が二乃の肩を叩いて言ったが
二乃「アンタは自分の心配しなさいよ・・・」
二乃にそう返された。土日の二日間、殆ど机にかじりついていたが、やはり赤点は避けられなかった。
風太郎「今日はこの反省がメインだからな。」
「「「「「はーい。」」」」」
一花「そういえばフータロー君。ジュン君は?」
風太郎「そういえば遅いな・・・」
その時
ピンポーン
チャイムが鳴った。
一花「お、噂をすれば。」
と一花。五月がオートロックの鍵を開けに立ち上がった。
三玖「ジュンも来るからちょっと楽しみだね。」
四葉「だねー。」
三玖と四葉がニコニコしながら話すのを見て
二乃「なんで嬉しそうなのよ・・・」
二乃が呆れながら言った。
四葉「あはは。結果は残念だったけど、また皆と一緒に頑張れるのが楽しみなんだ。」
これに、四葉はそう言った。それを聞いた二乃は
二乃「・・・まあ、そうね。」
満更でも無さそうな顔だった。
これに
風太郎「ほお・・・やけに素直だな。」
風太郎はそう言い茶化すと
二乃「うっさい!」
と怒った。
その時
五月「あれっ?」
モニターホンに立っていた五月がそう声を上げたため、五人は振り向いた。
五月「・・・安達君じゃありませんでした。」
風太郎「誰だったんだ?」
風太郎の疑問に
五月「父の運転手をしてる方です。」
五月はそう答えた。
少しして
江端「失礼致します。」
スーツを着た白髪頭の男性が入ってきた。
一花「江端さんかー。」
それに一花は親しげに言う。
風太郎「上杉風太郎です。」
江端「ああ。あなたが・・・」
三玖「お父さんの運転手はお休み?」
三玖の問いに
江端「本日は上杉風太郎様の臨時サポートとして参りました。」
江端はそう答えた。
これには、皆ポカンとした表情を浮かべ
四葉「そ、そうなんだ・・・」
四葉は戸惑いがちに言った。
一花「江端さん、元は学校の先生だもんね。」
風太郎「そうなのか・・・」
二乃「何だ。安達君今日は野球部の練習か・・・」
三玖「期末が終わったからね・・・」
すると、江端がコホンと咳払いをして
江端「お嬢様方と上杉風太郎様にお伝えせねばなりません。安達純様は、上杉風太郎様の家庭教師の手伝いから身を引きました。」
そう伝えた。
それを聞いた風太郎と五つ子達は、一瞬頭が真っ白になった。
何かの間違いか、ズレた冗談。そう思ったが、江端は至って真面目だった。
江端「旦那様から連絡がありまして、安達様は先日の期末試験で身を引き、野球に集中するとの事です。」
これには
一花「え・・・それって・・・ジュン君、もう来ないの・・・?」
信じられないという顔を浮かべる一花。風太郎と四葉、そして五月は、呆然としたまま言葉も無い。
三玖「嘘・・・」
三玖に至っては、そう呟いたきり放心状態だ。
二乃「どうして・・・安達君が・・・」
二乃の呟きに
江端「安達様は、今回の試験結果、全ては五つ子の家庭教師として教鞭を振るう上杉様をサポートできなかった自分に原因があり、上杉様には何一つ責任は無いと旦那様に仰り身を引きました。」
江端はそう答えた。
これには
四葉「身を引いたって・・・」
三玖「ジュン・・・」
四葉と三玖も、ショックを隠せないでいた。
風太郎「納得がいかねぇ。アイツを呼んで直接聞いてやる。」
すると、風太郎がスマホを手に一歩進み出ると、江端は深く頭を下げ
江端「申し訳ありませんが、それは叶いません。安達様のこの家への侵入を一切禁ずる・・・旦那様よりそう承っております。とはいえ、旦那様も本意では無いのですが、安達様の願いでございます。」
そう言った。
風太郎「なんでそこまで・・・」
すると
三玖「分かった・・・私が行く。」
三玖が立ち上がって出て行こうとしたが、江端がサッと手で制した。
三玖「江端さん、通して。」
江端「なりません。臨時とはいえ、上杉様のサポート役の任を受けております。最低限の教育を受けていただかなければ、ここを通すわけにはいきません。」
そう理路整然と説かれては、風太郎と五つ子達は従うしか無く、テーブルを囲んで勉強を始めた。その様子を、江端は立ったまま遠目に見守っている。
二乃「これ終わったら行っても良いのよね?」
江端「ええ、ご自由になさって下さい。上杉様も、お嬢様方に教えることが無いように。」
風太郎「・・・はい。」
一花「この問題、比較的簡単だよ。」
風太郎「見た感じじゃあ、そうだな。」
一花「きっと江端さんも手心加えてくれてるんだよ。」
二乃「そうね。でも、前の私達なら危うかった・・・自分でも不思議なほど問題が解ける。悔しいけど、アンタが教えてくれたお陰ね。」
風太郎「あ、ああ・・・」
二乃「それに・・・安達君が色々サポートしてくれたし・・・」
一花「二乃・・・」
そして、そのままスラスラと解けていったが
三玖「後一問・・・後一問なのに・・・」
五月「私も後は最後だけです。」
最後の問題がやけに難しかった。
江端「はっはっは・・・その程度も解けないようであれば、特別授業に変更致しましょう。如何ですかな、上杉様?」
風太郎「あ、はい・・・そうしましょう。」
これには、五つ子達は一斉に前のめりになった。それを見て江端は微笑むと、紅茶を淹れにキッチンへ向かった。
時計の針はもう二時半を回っており、このまま解けなかったら永久に解放されないと思った五月は、少し頭を下げて江端の様子を窺い、意を決して口を開いた。
五月「あの・・・カンニングペーパー見ませんか?」
これには
風太郎「何!?」
風太郎は目を見開いた。
二乃「それって期末の?」
五月「はい。全員、筆入れに入れた筈です。」
そう言い、五月は筆入れから純から貰った丸めてあるカンペを取り出した。
四葉「い、良いのかな・・・。」
躊躇する四葉に
風太郎「仕方ない。有事だ、俺が許す。俺もアイツから貰ってるからな。」
風太郎はそう言った。
そして、皆筆入れからカンペを取り出した。
一花「じゃあ、私も・・・」
一花が最初にカンペを開くと
一花「え・・・。」
と目を見張った。
一花「『気持ちは分かるが簡単に答えを得ようとするんじゃねーよバーカ』・・・。なーんだ、初めからカンニングさせるつもりなかったんじゃない。」
三玖「でも、何かジュンらしいよ。」
風太郎「そうだな。」
五月「ですが、どうしましょう・・・」
すると
一花「待って、まだ何か・・・」
何かに気付いた一花がカンペを最後まで開くと、『→②』と書いてあった。
一花「②って・・・」
二乃「私かしら?」
と二乃が自分のカンペを開いた。
二乃「『風だったら、カンニングする生徒になんて教えてられねーし、俺だったらサポートしてやんねーぞ』。」
最後に『→③』と書かれてあった。これは、五つ子へのリレーメッセージになっていた。
三玖「『これからは自分の手で掴み取れ』。」
四葉「『自分を信じ、周りにいる大切な人を信じろ』。」
五月「『色々大変だったけど、スゲー楽しかった。そんじゃあな』。」
五月「風って書かれてあります・・・。」
風太郎「俺?」
そして、最後に風太郎が開いた途端、声を詰まらせた。
五月「上杉君?」
風太郎「・・・『後の事は任せたぞ。お前なら、きっと皆を笑顔で卒業に導ける。俺は、お前を信じてる』。」
そう、風太郎はメッセージを読み上げた。最後まで、純らしいクールで優しいメッセージだった。
皆胸が一杯になり、すぐには言葉が出てこなかった。
風太郎「馬鹿野郎・・・お前がいたから・・・俺は・・・」
風太郎はそう辛い顔で呟き
三玖「私・・・ジュン無しじゃ、もう・・・」
三玖は、目に一杯涙を溜めていた。
二乃「そうは言っても、安達君はここに来られないの。どうしようも無いわ・・・」
そう弱きに項垂れる二乃。
そんな皆を黙って見ていた一花が、目に決意を浮かべて言った。
一花「皆、良いかな?私から提案があるんだけど・・・」
暫くして、江端が紅茶を入れたカップをトレイにのせて戻ってきた。
すると
風太郎「ちょっと良いですか?」
江端「どうなされました?」
風太郎と五つ子達が、テーブルを離れて立ちはだかった。
すると
一花「江端さんもお願い、協力して。」
姉妹を代表して、一花が一歩前に出てきた。
それを見た江端は、脳裏に車の後部座席で身を寄せ合って眠る、幼い五つ子の姿がよぎった。
そして
江端「・・・大きくなられましたな。」
そう口元を優しく緩ませ、しみじみと言った。
風太郎「じゃあ・・・」
江端「ええ、協力しましょう。」
そして、風太郎達は計画を話したのであった。
投稿出来ました。
上手くアレンジできたか分かりませんが、何とか纏めました。
早く、映画のDVD手に入れたいな~(笑笑)
それでは、また。