三玖に変装した一花だったが、頂上で三玖らと会ってしまうという事態になってしまい、動揺のあまり固まってしまった。
その様子を見た三玖は、四葉の背中から下り
三玖「一花・・・何で私の変装してるの?」
強張った笑みを浮かべながらそう尋ねたのだが
一花「・・・」
一花は答えれなかった。
三玖「?一花?何か理由があるなら・・・」
これに、三玖はおずおずと聞いていると
四葉「一花。私・・・そんなつもりで言ったんじゃないよ・・・それが本当にしたい事?」
四葉が遮り、悲しい表情を浮かべながら言った。
しかし
一花「・・・」
一花は震えるばかりで、一言も言い返せない。
三玖「四葉?どういう事?」
状況を把握出来ない三玖は、四葉にそう尋ねると
四葉「一花は邪魔しようとしてる。」
三玖「邪魔って何の・・・?」
四葉「それは・・・」
四葉が言おうとしたその時
三玖と四葉の背後から現れた人物を見た一花が
一花「四葉!待っ・・・!」
顔色を変え止めようとしたが、遅く
四葉「三玖から安達さんへの告白だよ!」
純「フゥ・・・到着っと。」
四葉がそうハッキリと見据えながら言い、それと同時に純が息一つも切らす事無く上ってきた。
その瞬間、四葉が驚いて後ろを振り返り、三玖の肩がビクッと揺れた。
一花は、咄嗟にヘッドホンとウィッグを外して、後ろに隠した。
純「は?今、なんつった?」
純は、目を見開いてそう言った。
四葉「安達さん・・・もしかして、今の聞こえて・・・」
呆然としながら聞く四葉。
三玖は、こんな形で自分の気持ちが知られてしまったショックから、目からブワッと涙が溢れ、ここまで大事に胸に抱えてきたパンの紙袋が滑り落ちるのも構わず
四葉「三玖!」
逃げるように走り去ってしまった。
ちょうどその時
二乃「はぁ・・・やっと頂上だわ。」
二乃と五月が後数段上れば到着するところだった。
そこへ、三玖が泣きながら石段を駆け下り、二人の横を通り過ぎていった。
五月「三玖!待って下さい!どこに行くのですか!?」
何事かと感じた五月が、慌てて三玖を追い掛けていった。
不思議そうに視線を移した二乃は
二乃「!」
一花が後ろに隠しているヘッドホンとウィッグが目に入り、全てを悟った二乃は
二乃「・・・一花、やったのね!」
目を吊り上げて怒りの表情で歩み寄り
二乃「アンタ、いい加減にしなさいよ!あの子を泣かせて、これで満足?」
一花の胸ぐらを掴み上げてそう怒鳴った。
四葉「待って、二乃!今のは私が・・・!」
それを見た四葉が、止めるように口を挟もうとしたが
一花「四葉、良いから。結果はどうであれ、私がしようとしてたのは、こういう事だから。」
一花が手で制してそう言った。
それを聞いて
二乃「アンタ、どこまで・・・」
二乃は再び怒鳴ろうとしたが
一花「二乃にだけは言われたくないなぁ。」
二乃「っ!」
一花「温泉で言ってたじゃん。他人を蹴落としてでも叶えたいって。」
一花「私と二乃の何が違うの?教えてよ。」
一花は二乃にそう挑発するような態度で言った。
それを聞いた二乃は
二乃「・・・確かにそう言ってたわ。他の誰にも譲るつもりも無い。でも、私達五人の絆だって同じくらい大切だわ!」
二乃「例えアンタが選ばれる日が来たとしても、私は・・・祝福したかった・・・!」
拳を握り、涙を浮かばせ、声を震わせながら言った。
一花「・・・っ!」
この二乃の言葉に、一花は何も言えなかった。
その時
前田「うぅっ・・・もう一歩も動けねぇ・・・」
武田「全く・・・下のお店でお昼ご飯の食べ過ぎだよ。」
風太郎「ハァ・・・ハァ・・・本当に・・・その通りだぜ・・・」
武田「上杉君。君はもう少し体力付けた方が良いよ。」
風太郎達が頂上に到着した。
着くと、立ち尽くしてる純に気付き
風太郎「どうした、純?」
前田「何してんだコラ?」
二人はそう尋ねたが
純「いや・・・俺もよく分かんねーんだ。」
純はそう戸惑いつつも一花と二乃に近づき
純「とにかくお前ら、一旦落ち着・・・!」
言いかけたら、二乃の目に涙が溜めてあるのに気付き、言葉を止めてしまった。
これに、二乃は袖で目を拭って
二乃「ごめんね!今は三玖を追い掛けて!」
純に若干涙声で言った。
それを聞き
純「・・・わーったよ。わりぃ、先行ってるわ。」
純は一瞬何かを考えたが、すぐに切り替え、そう風太郎達に声をかけて走り去った。
四葉「わ、私も探します!」
すると、四葉も純の後を付いて行ったのだった。
そして、本殿まで一気に駆け下りていったのだが
純「・・・ここにはいねーか。」
三玖は見当たらなかった。
その時
四葉「五月と電話が繋がりました!三玖と一緒にバスに乗ってるそうです!」
四葉が駆けながらそう言ってきたので
純「・・・そうか。」
純はそう答え、四葉と一緒にバスに乗ったのだった。
そして
四葉「安達さん・・・さっき頂上で私の言った事・・・聞こえてましたよね?」
四葉が、気まずそうに頂上の事を聞くと
純「・・・ああ。」
純は腕を組んで目を閉じながら肯定した。
四葉「・・・私の不用意な発言で、三玖を傷付けてしまったのは事実です。ずっと・・・あんな一生懸命頑張ってたのに・・・」
四葉は、三玖の努力を間近で見ていた。
四葉「一花も・・・春休みの家族旅行の時に私が言ったせいで・・・」
我慢しないでしたい事しても良いと背中を押したのは四葉だ。
これに責任を感じた四葉。
純「まぁ・・・そうだな。ありゃあお前が悪い。難しいかもしんねーが、もっと周りを見てから言うべきだったな。」
これに純は、そう指摘した。
純「それに・・・気付いてたしな。」
そう、純は目を開けてぼそっと呟き
四葉「え?気付いてたって・・・何をですか?」
これを聞いた四葉がそう尋ねると
純「三玖が・・・俺の事好きだって事をだよ。」
純は、視線を逸らしながらそう答えた。
それを聞き
四葉「・・・やっぱそうだったんですね。」
四葉はどこか気づいたように言った。
純「それに・・・あの時の女の子は・・・アイツで間違いなかったしな・・・」
その時、純は小さくぼそっと呟いた。
実を言うと、五つ子に出会って初めての試験が終わってちょっとしたある日に自分の部屋の押し入れを空けたら
『じゅん』
『みく』
と書かれたボールが見つかり、あの日一緒にキャッチボールをした女の子が三玖だという事に気付いた。そして、自身が去年の秋の東海大会で足を怪我した事に気付き、心配してくれた三玖につい怒鳴って泣かせてしまい、それでも許してくれた三玖。
その日から純は三玖が気になって、気が付いたら目で追い、彼女のほんの少しの仕草が純にとって堪らなかった。
そして、常に自分を心配し、最優先してくれる三玖にもしやと思っており、確信したのは、バレンタインの時だった。
純「だから、あの時三玖から一花を応援するって言われた時はマジでパニクった。あの三玖はアイツじゃねー。間違ってなかった・・・」
純はそう宙を見上げて、独り言のように呟いた。
四葉「?」
この純の言葉に、四葉は首を傾げたが
純「気にすんな。前から思ってたんだが、お前は人に気を遣い過ぎだ。気ぃ遣う事は決して駄目じゃねーが、お前の場合はちと度が過ぎる。」
純はそう四葉に指摘すると
四葉「あ、はは・・・」
四葉は苦笑いを浮かべながら、窓の外に視線を逃がし
四葉「それは良いんです。安達さんも聞いてますよね?落第した私に皆が付いてきてくれた話を。」
純「・・・ああ。」
四葉「私が皆を不幸に巻き込んじゃったんです。簡単に取り返せるものではありません。」
寂しそうな表情を浮かべ
四葉「姉妹の皆が私より幸せになるのは当然です。」
そう言った。
純「・・・そうかなぁ。」
四葉「この旅行も、皆に楽しんで欲しかったのに・・・」
四葉はそう言うと
四葉「安達さん。皆が幸せになる方法ってないんでしょうか?」
純にそう尋ねた。
純「・・・正直に言っても良いか?」
純がそう言うと
四葉「はい。構いません。」
と四葉が言ったので
純「そうか・・・ハッキリ言おう。それはねーよ。」
純は、そうズバッと言った。
四葉「え?」
純「俺は風と違って、難しい事は言えねーが、それでも分かる。俺がやってる野球なんて、良い例だろ。どちらかが勝って、どちらかが負ける。つまり、勝って幸せな気持ちになるチームと、負けて不幸になるチームに分かれる。」
純「他にも、皆が直面してる受験だってそうだ。誰かが合格する事で、誰かが不合格になる。これも、合格した事で幸せになり、不合格になった事で不幸になる。」
これを聞いて、四葉は膝に置いた手をギュッと握り締め
四葉「そんな事言ったら、私の出来る事は・・・」
と言うと
純「何もねー。限度っつーもんがあんだよ。烏滸がましいことなんじゃねーのか?全てを得ようっつーのはよ・・・」
純「何かを選ぶ時は、何かを選ばねー時。いつかは決めなくちゃなんねー日が来る。俺も、風も。」
と純は言い
純「それはそうと、お前に聞きてー事があんだけど。」
四葉「はい?」
純「六年前・・・あの馬鹿が会った女の子って、お前の事だろう?」
純は、四葉にそう聞いたのであった。
投稿出来ました。
ちょっと色々アレンジしたので、違和感ありまくりかつツッコミ盛り沢山ですが、お許しください(土下座)
それでは、また