「でっ、では! 改めて、ゴッホは見ての通りゴッホです。一緒に世界を塗り替えましょうね……」
「こちらこそ宜しく頼む」
「あ、わたしのことはゴッホちゃんか、ゴッホとでもお呼び下さい、マスターさま。……ウヘヘ」
俺とゴッホは握手を交わす。
言うまでもないが、俺は今、内心狂喜乱舞している。
外見は辛うじて取り繕っているが、いつ剥がれるかすらも怪しい。
やっと。
やっと来てくれた……。
以前のピックアップでは一か月分の給料を投下してやっとの思いで手に入れたゴッホ……ゴッホちゃんが……やっと来てくれた!
『おかしいな……
「気にするな、ロマニ。聖杯から召喚されるサーヴァントでも例外的なクラスの奴は何回も見たことがある。こういう場合もあるだろう」
『そうかな……そうかあ』
ロマニも大概壊れ始めている。
ゴッホちゃんのお陰かな?
「メンツも揃ったことだし、これからのことを話そうと思うんだが……」
賑やかになったこの場を一応だが仕切る。
アニムスフィアの管轄だから出しゃばるのは良くないが、他の人達は突然のことに精神状態が追い付ていないように見えた。
だからこの場で一番立場と歳が上の俺が仕切る。
ロマニも居るが……あれに威厳を求めるという方が酷だ。
俺は各員の視線が向いた所で話を始める。
「第一にこの特異点は聖杯を守っているサーヴァントを倒せば大体解決するらしい。そのサーヴァントについてだが……キャスター」
「あいよ。聖杯を守ってるサーヴァントだが、こいつがまた厄介でな。そいつの正体はアーサー王だ」
『──────な、なんだって!? アーサー王ってあのアーサー王かい!?』
一同、皆騒然。
分からんでもない。サーヴァントっていう規格外の存在に、アーサー王のビッグネームだ。ビビるのも仕方ない。
「話を戻すが、その他にもアーサー王を守っているサーヴァントが一体と、メチャクチャに強いのが北の方に一体いる。後者の方は自発的に襲ってこないので良いが、前者はそうもいかない」
「ロード、メチャクチャに強いサーヴァントというのは……?」
「…………聞きたいか? ぶっちゃけ俺も戦いたいとは思わないんだが」
「「「「『遠慮します』」」」」
アーサー王でこの驚き様。
ヘラクレスと戦うことになったら、ショックで死ぬんじゃないんだろうか?
俺的にはセイバー系のサーヴァントとヘラクレスとはあまり戦いたくない。
理由? あいつらの保有スキル考えろよ。
『対魔力』とかいう馬鹿げたスキルあるんだぜ?
魔術師になったら分かる。儀式魔術でも傷付けられないってのはイカれてるぞ。
「ま、俺も後者とは戦いたくない訳だが……前者は必然的に戦うことになる。だが前者のサーヴァントについては……」
「オレに任せてくれ。奴とは因縁があってな、そろそろカタを付けようと思ってた所だ」
「うむ。アーサー王を守っているサーヴァントはうちのキャスターが相手する。で、その間に俺たちでアーサー王を一気に殲滅する……というのが作戦だ」
『ロードがいればアーサー王でも余裕ですよね……?』
「アーサー王だけなら全然大丈夫だな」
「良かったぁ……」
ぶっちゃけるとマシュが宝具解放してくれればこの特異点は終わるから大丈夫だと睨んでいる。
キャスターによる宝具解放イベ……あれ? 無くなってね?
マジかあ……どうしよ……どうにかなるかなぁ? まあ、なるか。主人公たちだし(脳死)
最悪、こっちでフォロー出来るから万事OK
「ま、マスターさま、ゴッホはそんなにたったたたた戦えませんよ?」
「そこは安心してくれ。ゴッホちゃんは『虚数美術』によるサポートを基本的に頼む。前線に出る必要は全然ない」
「そ、っそそうですか! エヘヘ、ゴッホは良いマスターさまと出会えたことに感謝しています……あっ、これは別にサーヴァントなのにマスターさまを置いて戦いたくないとかマスターさまが前線に出ろとかそういうことではなくわたしはどちらかというとキャスターに近い存在だからサポートの方が役に立てるとかいいい言い訳ですけどゴッホ的我が儘……そう、ゴッホ的我が儘なのです!」
「そうか。分かっているから気にしなくていい」
「あ……流された。マスターさま手厳しい……ウヘっ」
ゴッホちゃんの「狂気(C)」を実際に目の当たりにすると、存外に大変だ。だがその実、ゴッホちゃんは攻撃性のある狂い方をしないだけバーサーカーのサーヴァントよりもマシと言えるかもしれない。
あ……バーサーカーと言えば、第一特異点の清姫どうしようかな……。
…………リッカちゃんにプレゼントするか。
「────気を引き締めて行こう。油断したら直ぐに死ぬと思え」
各々に作戦や役割を伝えた。
景気良い返事を受けて俺たちは柳洞寺へと向かう。
この時の俺はまだ気付いていなかった。
──────嫌な予感ほど良く当たるということを。