第七魔法の使い手になりました   作:陸神

11 / 24
ついに宝具と魔法の解禁です。


宝具開帳・魔法詠唱

 ──────あ゛あ゛ー……これマズったなー……(脳死)

 

 

 俺は漏れ出る弱音を噛み殺し、魔術回路をフル稼働する。

 脳が収縮・拡大繰り返すが、今はそれどころではない。

 

 

「ああ、もうッ、クソッたれがッ!」

 

 

 全身を覆う樫の木の鎧が密度増し、年輪の輪が一段多くなる。それに伴い樫の水分が飛び、辺りに水蒸気が舞う。

 

 これで鎧は更に強度を増す。

 

 概念礼装「鋼の鍛錬」の効果もあって身体能力はそこらの木っ端英霊よりかマシだろうが──────。

 

 

「■■■■■■■■■──―!!!!」

 

「無茶苦茶だろうがよッ! “Turn,around,growing for your king(回れ、廻れ、成長せよ。汝が王の為に)!」

 

 

 振るわれた斧剣にスーツケースと極太の蔦を纏わせて防御をする。

 

 予め張っておいた結界のお陰もあり、辛うじて胴体が泣き別れになるのを防ぐ。

 

 

「あのバッカ野郎! なんてことしてくれたんだ!」

 

 

 俺は今、バーサーカーのサーヴァント、不撓不屈・最強の名を欲しいが儘にする英霊、ヘラクレスと戦闘を行っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────遡ること三十分前…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 § § § § §

 

 

 

 

 

「マシュ!」

 

 開幕の合図などなく、それは突然始まった。

 

 柳洞寺付近、大聖杯へと繋がる道の途中、リッカちゃんが叫んだ。

 その時に動けていたのは俺とキャスター、そしてマシュ。

 

 遠方から放たれたであろう赤い軌跡をマシュの盾が防いだ。

 正確無比な狙撃の的はマスターであるリッカちゃん。

 

「遠くからチクチクと……ビビってんのか弓兵!」

 

「──────何、より効率的な攻撃方法を選んだまでだよ、キャスター」

 

 キャスターの分かりやすい挑発。

 しかし乗る声もまたあった。

 

 大聖杯へと続く洞窟のある崖、その頂上に奴は立っていた。

 実の所、俺も何度か面識がある。

 

 

「久し振りだな、エミヤ?」

 

「……やはり貴様もここにいたか。可笑しいとは思っていたんだ」

 

「んだよ、マスター知ってんのか?」

 

「ああ。抑止にも何度か狙われたことがあってな」

 

 

 やれやれという表情を出すエミヤ。

 

 彼は英霊というよりは抑止の使い魔に近いんだが……。

 

 

「じゃあキャスター、この場は任せたぞ」

 

「おう!」

 

「そう安々と行かせるものか! ──―『赤原猟犬(フルンティング)』!」

 

「馬鹿がッ! テメェの相手はオレだ!」

 

 

 俺たちは一斉に走り出す。

 

 エミヤが放った紅い尾を引く矢は、キャスターのルーンに妨害され彼方に飛んでいく。

 

 

「キャスタークラスでいつもより頭がよくなったのではなかったのかね!」

 

「ハッ! 頭の出来と趣味嗜好は別ってことさね!」

 

 

 後ろから聞こえてくる戦闘音を背景に走り出す。

 

 洞窟まで後、百メートル弱。

 戦闘の余波で飛んでくる礫は、オルガマリー嬢の結界で防御し、瓦礫は俺が撃ち落とす。

 

 

 これなら大丈夫……──―はぁっ!? 

 

 

 俺は急な状況に頭が追い付かなかった。

 

 なんでアイツが来てんだよ!? 

 

 

「──────クソッたれ! リッカちゃん、マシュ、オルガマリー嬢、後その他! お前らだけで先に行け!」

 

「なっ!? 嘘でしょ!?」

 

「その他!?」

 

『どうしたんだいロード! 何か気になること──────魔力反応!?』

 

 

 俺は、走る俺たちを横合いから殴り付けようと跳躍する二メートル強の影を視認していた。

 

 

「さっき言ってた厄介な野郎来やがった! ギリシャ神話の()()()()()だ!」

 

『ヘラクレス!?』

 

 

 何か言いたげなのは分かる。

 分かる、がそうも言ってられん! 

 

 俺は急ブレーキを掛けて体をヘラクレスへ向け、スーツケースを左手に装着した。

 

 エミヤの野郎! アイツ、『赤原猟犬(フルンティング)』を俺ではなく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! 

 

 

「“Excitation(励起せよ)”ッ!」

 

 

 ありったけの強化魔術を掛け、防御の姿勢を取る。

 

 

「ゴッホちゃん!」

 

「分かりました! エヘヘ、描きます!」

 

 

 ゴッホちゃんの「虚数美術」が発動する。

 

 樫の木の鎧の半身に向日葵(ヒマワリ)の文様が浮かぶ。

 いつもより格段に魔力効率が良い。俺は特殊警棒を伸ばし、盾と交差させた。

 

 

「後から絶対に追い付く! 早くいけ!」

 

「わっ分かった! ロアさんも無事に!」

 

「ご武運を!」

 

 

 リッカちゃんとマシュの声援を最後に、俺は黒い影に覆われた。

 見上げると真っ黒な皮膚を持つ巨体の男が──────。

 

 

「■■■■■■■■■■■──―!!!!」

 

「ぐっ、グギギギギイイィィィ!?」

 

 

 スーツケースの礼装に魔力を回す。

 

 足の裏から幹を伸ばし、体をその場に固定。

 未だかつて体験したことのない衝撃から、仰け反らないように必死に耐える。

 ダンプカーとかトラックとかの比ではない。

 

 言うならば一人で隕石を受け止めているかのような! 

 

 

「ゴッホカッター!」

 

 

 ゴッホちゃんが宝具の向日葵の杖で攻撃するが、残念。効果はない。

 ヘラクレスはふざげたことに宝具『十二の試練(ゴッド・ハンド)』でランクB以下の宝具の攻撃を無効化する。

 

 この特異点下においては十二の命のストックはないものの難敵といって差し支えない相手だ。

 

「…………!!!!」

 

「マズっ!」

 

 ゴッホちゃんに意識が向いたが良いが、彼女のステータスではヘラクレスの攻撃を耐えられない。

 

「“A wake(目覚めよ)”!」

 

 強化魔術を重ね掛けして、ゴッホちゃんの前に躍り出る。

 

 

「こっちだ、デカブツ!」

 

「マスターさま!?」

 

 

 ────―防御したその刹那、俺の意識は純白に染まった。

 

 あまりの衝撃に意識が飛んだのだ。

 

 意識が戻ったのは空中を凄い速度で突き抜けている中。

 身体を捻って体勢を直す。

 

 

『ゴッホちゃん出来れば追い付いて来てくれ!』

 

『無事ですかマスターさま!? よかった……もうわたし心配で心配で咳がゴッホゴッホなんてゴッホジョ──────』

 

 

 俺はゴッホちゃんとの念話を切った。

 悪いとは思ってる。反省はしてない。

 

 

「バケモンが」

 

 

 飛ばされたのは……アインツベルン城の方か。大分飛ばされたな。

 

 俺はスーツケースから霊薬を出し、飲み干す。

 削られた魔力が回復し、抉れた左腕が再生する。

 

 英霊と戦うのはいい。俺自身が近接型だから。

 でも! 百歩譲ってヘラクレスはねえだろ!? 

 

 

 

 

 

 ────────ってな感じで冒頭に戻る。

 

 

 

 

 

 § § § § §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これだから攻撃特化に防御性能付けんなって言ったんだよ!」

 

「■■■■■■■■■■■──―!!!!」

 

「ああ悪い言ってなかったなぁっ!」

 

 

 スーツケースの方に魔力リソースの一割を裂く。

 年輪が更に増え、密度は増大する。

 

 

「“Convert(転じよ)”! “Bud(蕾よ)”!」

 

 

 これでもかと魔術を重ね掛けする。

 

 最初の魔術で盾の構造が入れ替わる。

 凝縮された個体は密度を保ったまま核パスタの構造へ変形。ハニカム構造と迷ったけど、ハニカム構造だと衝撃吸収もクソないから却下にした。

 

 次点の魔術で盾に魔力吸収機能が加わる。

 ただでさえバーサーカーという燃費の悪いクラスだからこそ、さっさと魔力を使い切らせた方が良い……って判断だったが、「不撓不屈(A)」のせいで魔力切れは狙えなそうなので魔力回復のために発動だ。

 

 

「来い!」

 

「■■■■■■■■■──―!!」

 

「ラァッ!」

 

 

 ぐぎぎ……! 

 

 盾で受け止め、警棒で打ち据える。

 

 

「基本性能が違うなあ……」

 

 

 俺の盾と斧剣の神秘は今のところ拮抗しているみたいだが、肉体性能差が酷い。ごく僅かだがダメージは入っているが誤差の範囲だ。

 

 

「このfuckin野郎が!」

 

 

 弱音を吐いても仕方ないので、歯を食いしばって俺は食らいつく。

 食いしばって食らいつく……なーんて! ゴッホジョーク!! 

 

 

「は!?」

 

 

 あ、なんか押し勝てた。

 

 

「マスターさま! ダイジョブですか!?」

 

「ゴッホちゃん!」

 

 

 いきなりヘラクレスの力が弱くなったなあ、と思ったがゴッホちゃんのデバフが入っていたよう。

 

 流石はゴッホ! 前世での最推し! 

 

 こんなん議論するまでもなし! ヘラクレスはクソだわ! クソ! はい閉廷! 

 ヘラクレス相手にするくらいならオベロンとかの方がマシ──―……う~ん……。

 

 

「やっぱ今の無し!」

 

「■■■…………ッ!!??」

 

 

 オベロンもクソ! 

 キャストリア持ってないと詰むだろ! 

 

 俺の渾身の心の叫び(いちげき)を食らったヘラクレスは体勢を崩す。

 時間は五秒と稼げないだろうが、少しの暇でも稼げればこちらのものだ。

 

 

 

「令呪を以て命ずる! ゴッホ、宝具を開帳しろ!」

 

「────―イヒヒ! いいんですね!? ゴッホやっちゃいますよ!?」

 

「ああやっちまえ!」

 

 

 

 ここで令呪を切る! 

 

 ヘラクレスだとか俺とゴッホちゃんのスペックだけで倒せるもんではない。

 

 故に()()()()()使()()()()()()()

 

 そのための宝具開帳。

 ゴッホちゃんの宝具であれば時間稼ぎと並行して俺の強化とヘラクレスの弱体化まで熟せる。

 使わない手はない。

 

 俺は急いでバックステップで距離を取る。

 巻き込まれれば元も子もない。

 

 数メートル離れた時点でゴッホちゃんの祝詞が始まった。

 

 

 

 

 

 

「────────―描かなければ。

 

 

 星空の下。生と死を超えゆく糸杉を。

 

 

 信仰、ロマン、トロンプ・ルイユの彼方。

 

 

 永劫より、星の渦もて、君に握手を送ろう。

 

 

 …………『星月夜(デ・ステーレンナフト)』」

 

 

 

 

 

 始まりは異常でありながら緩やかであった。

 

 燃えた空に水色の波紋が広がり、辺り一帯は絵画『星月夜』を模した固有結界へと呑まれる。

 

 そして鮮血よりも尚、朱い月が姿を現し、ポツポツと絵具(インク)の雨が降り注ぐ。

 

 汚濁された魔力の絵具(インク)は現実世界をも侵食し、バーサーカーの身体を蝕む。

 動きは見るまに遅く、力弱くなり、膝を着く。

 

 さあ…………次は俺の番だ。

 

 

 

 

 

 

 

「魔術回路、全門起動。起源主張、覚醒開始。想定神秘、許容超過────────―。

 

 ──────“Is the tone of the bell of a pocket watch heard(汝、この懐中時計の鐘の音が聴こえるか)? ”──────」

 

 

 

 

 

 

 

 俺の魔法。型月の第七魔法を疾くとご照覧あれ!




ちょっとしたアンケートです。

今回の話のゴッホの宝具のように、特殊タグを付けた「揺れ」や「色付き」はあった方がいいでしょうか?それとも無い方がいいでしょうか?

下記のアンケートの返答、あるいは感想欄へお願いします。

今回の話のゴッホの宝具のように、特殊タグを付けた「揺れ」や「色付き」はあった方がいいでしょうか?それともない方がいいでしょうか?

  • あった方がいい
  • ない方がいい
  • どっちでもいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。