第七魔法の使い手になりました   作:MISS MILK

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第一特異点・邪竜百年戦争オルレアン、始まります。
彼らの旅路に幸あらんことを――――――。

では、どうぞ。


第一特異点・邪竜百年戦争オルレアン
オープニングテーマ「第一特異点」


『ええー、医療部門担当のロマニ・アーキマンだ。早急にロード・クロノアス及び藤丸リッカ、マシュ・キリエライトは管制室へ来てくれ。繰り返す、これは緊急の案件だ。ロード・クロノアス及び藤丸リッカ、マシュ・キリエライトは管制室へ急遽来てくれ』

 

 

 ある日の朝、突如として鳴り響いたロマニのアナウンスに、俺はついにか、と呟いた。

 

 何が、と言うまでもなく、特異点が見つかったのだ。

 

 最近はダ・ヴィンチちゃんやロマニ、カルデアの職員が忙しくしていたから、薄々察してはいたが、いざとなると実感が湧かないな。

 

 しかし、俺もそれに及んで、礼装の改良やら対サーヴァント戦を見越した訓練を行ってきた。準備は万端、滞りない。

 

 

「よし…………大丈夫……だな」

 

 

 俺は一応、鏡の前で身嗜みをチェックする。

 襟を直して、ネクタイを締め直し、着衣を整える。

 

 適当にホコリを落とせば、完了。

 

 

『ゴッホちゃん、聞こえるかい?』

 

『────―はっ…………はい! 聞こえてます!』

 

『放送は聞こえてたかな? 出来れば君も管制室に来て欲しいんだが』

 

『了解しました! ゴッホ、急行します!』

 

 

 俺はゴッホちゃんに念話をしながらスーツケースを持ち、マイルームを出た。

 周囲の職員も慌ただしく走り回っており、ただ事ではないことが伺い知れる。

 

 また、その間にも俺はハサンにも念話を繋いだ。

 

 

『ハサン』

 

『これは…………マスター殿。先の放送のことですな?』

 

『分かっているならいい。頼むぞ』

 

『はっ!』

 

 

 ハサンは流石、山の翁なのか組織的な行動を読み取ってくれたようで、既に向かっているとのこと。ありがたい。

 

 俺は若干、速足に管制室へ歩く。

 もうカルデア内部の道は覚えた。問題はない。

 

 

「おや…………はぁ……」

 

 

 角を曲がった瞬間、目に映ったのは惨状。

 

 散らばった書類の数々、散乱した資料、粉々になった機器。

 

 そして、ぶつかったらしいゴッホちゃんと職員。

 これには思わず、溜息が漏れた。

 

 

「まったく…………こんな時期に何を…………」

 

「あっ、マスターさま! これはですね、ゴッホがマスターさまの魔力を辿っていたらぶつかってしまいまして! ああ! すみません! すみません! 全てゴッホが悪いんですぅぅぅ!」

 

 

 途端、頭をぶつけながら土下座をし出す、彼女。

 

 こんな所で狂気を出さんでもいいのに。

 仕方なし、使い魔の後始末はこちらの管理不足だ。

 

 俺は人差し指を立てて、回した。

 簡易的な魔術動作だ。

 

 

「“Snatch(我が手元へ)”」

 

 

 落ちて散らばっていた書面が浮き上がり、俺の手元に収束する。

 すると数十秒もしない内に厚さたっぷりの紙の束が完成。

 

 俺は適当に職員を呼び、手渡す。

 

 

「…………そこの君、倒れている彼女の代わりに持っていきたまえ」

 

「──―はい!」

 

「うむ、よろしい。それじゃ…………“A wake(覚醒せよ)”」

 

「…………うっ──―ここは……?」

 

 

 貧弱なゴッホちゃんとはいえサーヴァントとぶつかったのだ。目を回して卒倒していた女性職員に気付けの魔術を掛ける。

 こういう時、解釈の幅が多い英語の魔術名(マジカルモットー)は楽で助かる。

 

 

「続いて……“Little BeanMan(豆の木の小人)”」

 

 

 使い魔生成の魔術。

 

 適当に落花生を放り投げ、蔦で出来た人型の使い魔を作り出す。

 

 

「君は安静にしてるといい。直ぐに医務室へ届けさせる」

 

「ロード…………寛大な心遣いに感謝します」

 

「怪我人がそんなことを気にするな。回復に励め」

 

 

 俺は手を打ち鳴らし、足が止まっていた職員に命令を出す。

 こんな所で油を売ってる暇はない。足を止めてどうする? 

 

 

「君達も各々の職場へ急ぎ、迎え! 忙しくなるぞ!」

 

「「「「「はっ!」」」」」

 

 

 敬礼して去っていく職員を見送り、俺はゴッホちゃんに手を貸す。

 起き上がらせたゴッホちゃんを連れて管制室へ向かう。

 

 

「ゴッホちゃん、君は些か急ぎ過ぎだぜ? ゆっくり行こう、ゆっくりと」

 

 

 これは俺が今までの人生で感じたことだ。

 

 急がなければいけない状況下でも、焦ってはいけない。

 自分一人で大局が動くことは稀で、大して差異は生まれないことの方が多いのだ。

 ならば、急いでいても、雑ではなく慎重に行うべきだ。

 

 

「はい…………以後、気を付けます……」

 

「別に怒ってる訳ではない。さっきも言ったが忙しくなるぞ。気をしっかりな」

 

「ゴッホ、了解しました!」

 

 

 急に調子を取り戻すゴッホちゃん。

 俺は「それはそれでどうなんだろうか」と思いつつも管制室へ足を運ぶのだった。

 

 

「──────俺たちが最後か。悪い、遅れた」

 

「いえ、丁度です」

 

「そうかい? なら頼むよ」

 

 

 俺とゴッホちゃんが管制室に到着する頃には全員が揃っていた。

 

 ロマニもいつもの緩んだ表情を改め、真剣な眼差しだだ。

 オルガマリー嬢に至っては棘々とした雰囲気まで放っている。

 

 

「全員揃ったことだし、ブリーフィングを始めるよ。所長」

 

「ええ、分かってるわ。では単刀直入に言いましょう──────第一の特異点が発見されたわ」

 

「「「!!!」」」

 

「やはりか」

 

 

 反応を示す、ゴッホちゃん、リッカちゃん、マシュの三人。

 

 俺は原作知識で知っているため驚きは少ないし、ハサンは冷静に話を聞いている。

 オルガマリー嬢は三人が落ち着くのを待ってから話を再開した。

 

 

「特異点の場所は、1431年の中世。欧州よ。場所は────―フランスのオルレアン」

 

「主に君たちにやって貰うことは二つ」

 

 

 オルガマリー嬢に続き、ロマニが話を継ぎ、二本指を立てた。

 

 

「一つ目は、勿論だけど特異点の調査と修正。これは必須事項だから頼むよ。

 二つ目は、聖杯の探索。出来る範囲で大丈夫だからお願いしたい」

 

 

 ロマニの言葉に皆で頷く。

 

 聖杯はこれからのカルデアに必要不可欠だし絶対に確保したいものだ。俺も頑張るとしよう。

 

 と、そこでダ・ヴィンチちゃんが口を開いた。

 

 

「ちなみに連れていけるサーヴァントは五人。コフィンの数にも限りがあるし、カルデアの魔力リソースにも限界がある」

 

「ふむ…………俺はゴッホちゃんとハサンでいいだろうが…………」

 

「私は──―どうしよう?」

 

 

 首を傾げるリッカちゃん。

 

 確かに難しい所だろう。

 リッカちゃんにとってマシュは必須。

 

 残るは二人。

 だが、メディアはカルデアの魔力リソース確保に忙しいため論外。

 

 後は沖田総司、アルトリア・ペンドラゴン・オルタ、エミヤ、クー・フーリン、メドゥーサ。

 

 どれも捨てがたい。

 

 

「マシュは確定だし……じゃあ、沖田さんとアルトリアさんで! 今念話で呼ぶから待ってて!」

 

「マシュ・キリエライト全力で臨みます!」

 

「うん、メンツは決まったようだね! ロア君は…………必要ないだろうから、リッカちゃん付いておいで。礼装に着替えるよ」

 

「はーい」

 

 

 話の方向性は決定。

 ダ・ヴィンチちゃんに連れられてリッカちゃんとマシュは更衣室へ消えていった。

 

 良かった…………二十超えた俺があのカルデア戦闘服の礼装を着るのはキツイからな。見た目的にも精神的にも。

 

 俺が密かに安堵している中、ロマニに話し掛けられる。

 

 

「ロード」

 

「む。何だ?」

 

「先程は、それぞれサーヴァントは五人までと言いましたが、現地で召喚サークルを使い英霊を召喚することも出来ます」

 

「ああ…………。現地で契約したサーヴァントはカルデアのリソースを受けられないから俺に、という訳か」

 

「はい。なので、基礎魔力が多いロードと契約して貰えたら…………と」

 

「相分かった。俺の魔力も無駄になるよりかはマシだろう。任せておけ」

 

「「ありがとうございます」」

 

 

 頭を下げようとするオルガマリー嬢とロマニの二人を、俺は手で制す。

 

 

「気にするな。こっちだって勝手にカルデアに居るだけだしな」

 

「そう言って頂けると幸いです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 § § § § §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから二十分弱が経過し、レイシフトするメンツは全員、レイシフト用のコフィンに入っていた。

 

 

「じゃあ、皆いくよ。こっちはこっちで出来る限りサポートはする。健闘を祈っているよ」

 

 

 ロマニの声が聞こえた。

 それと同時に身体がボロボロと粒子に分解されるような感覚。

 

 

 

『アンサモンプログラムスタート。霊子変換を開始します。レイシフト開始まであと3、2、1……』

 

 

 

 無機質な機械音が聴こえた。

 

 ふと、心配そうに見つめるオルガマリー嬢に気付く。

 

 

『全工程完了。グランドオーダー実証を開始します』

 

 

 俺はオルガマリー嬢にウィンクを飛ばし、それを最後に意識を沈ませた。

 

 さあ――――――人理修復を始めよう。

今回の話のゴッホの宝具のように、特殊タグを付けた「揺れ」や「色付き」はあった方がいいでしょうか?それともない方がいいでしょうか?

  • あった方がいい
  • ない方がいい
  • どっちでもいい

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