「ねえねえ、ロアさん」
「ん……なんだい?」
時が経つこと約十分と少し。
俺たち一行は廃墟から出て、とある場所へ向かっている途中だ。
その最中、俺はリッカちゃんに質問を受けた。
「ロアさんってどんな魔術を使うの?」
うん、リッカちゃんの質問は一般人出身だからこそ出た疑問だった。
けどね……魔術師がいるこの場で、それ系の質問はマズかったかなあ……。
ほら、オルガマリー嬢とロマニの表情が固まっている。
魔術師の家系にそういう質問が御法度なのは、こちら側の業界では常識。
だっても何も、相手の魔術系統や属性、魔術刻印の場所、果てには誕生日とか出身地でさえバレれば弱点になりかねないからだ。
う~ん……でもいいかなあ。
俺が生まれたのは、父が作った魔術工房の最奥だし、出身はイギリスの霊地。
誕生日は六月一日だが、特に弱点になったりはしない。
「リッカちゃん、あんまり魔術師にそういう質問をしていけないよ。最悪、殺されても文句言えないからね」
「うぇ!? き、気を付けます」
リッカちゃんと出会ってから俺は苦笑ばかりだ。
「特別に教えてあげ……といっても、割と知れてるんだけどね」
「あっ、いいんだ」
「まあね。知られても俺の魔術とか魔法は防げるものではないから」
「わーお自信満々」
これにはマシュも苦笑い。
オルガマリー嬢はあたふたしている。
「万が一だけど秘密にはしてくれよ?」
「はーい」
「……分かりました」
「了解しました」
『……漏らせるわけがないんだよなあ』
皆の合意が得られた所で俺は話を再開する。
まず最初は魔術属性からだな。
「俺の魔術属性は五大元素から、地、水、風、空の四属性。割と知られているんだが、俺の起源は二つあって、『停止』と『消失』。魔術系統は主に植物魔術を中心とした自然魔術」
「あれ? 失礼、ロード。ロードの扱う魔法は、魔術属性『無』がないと出来ないように思えるのですが」
おっと。これは中々に鋭い質問。
流石はアニムスフィアのご令嬢だ。
「普通はそうなんだろうけど、俺の魔法は物質化ではなく、証明による発動だから支障はないんだ。なんなら系統的には
「はいはいー! 私からも質問!」
「ふむ……リッカ君、どうぞ」
「ロアさんの魔術系統? が自然魔術ってどういうことなんですか?」
あー……。
魔術師歴一日のリッカちゃんには植物魔術と自然魔術の違いは難しいかー。これ説明が面倒なんだよね。
「そもそも植物魔術は、さっき俺が使っていた魔術。木の実とかを呪術の弾丸に変えたり、急成長させたり、身に纏わせたりするやつが植物魔術。それで、植物に限らない魔術が自然魔術だ」
こう見えても俺は
俺が授業を受け持つ時だけ、決まって
「あるいは火属性に頼らない地熱による攻撃、あるいは気流の操作、あるいは自然界に住む生物の使役……など、バリュエーションは沢山ある。その中でも植物魔術が得意分野だったってこと」
いかん。
つい癖で説明口調になってしまった。
「所長とは結構違うんですね」
「当たり前でしょう! ロードは
『所長……それは褒めてるのかな……?』
「まあ、間違ってはないしね」
「植物科なのに植物魔術が異端なの?」
リッカちゃんの疑問は分かるぜ?
俺も初めて設定見た時、「は?」ってなったからね。
「元々、
「薬学と魔女学を極めてない、ロアさんが就任した」
「そうそう。歴代ロードの中でも俺は薬学と魔女学を修めない内に就任した異例のロード。出来ない訳でもないんだけど色々系統が違くてね」
メイソン家はバリバリの貴族派閥で、英国至上。故に独自の魔術系統を築いて来たんだけど、それだと古来の薬学や魔女学と噛み合わせが悪い。
そのことを説明するが、リッカちゃんたちにはイマイチ伝わらない。
と、そこで意外な所から助け船が出る。
「分かりやすく言えば、北欧圏の植物魔術なら
「へえ~」
「そうか。キャスターもドルイドだったな」
「ケッ。植物操れなくて悪かったな」
警戒に当たっていたキャスターからの口添えで一同は理解を示した。
ルーン魔術ばっかり使っているせいで忘れがちだが、キャスターもドルイドの一人だ。薬学とかの心得はある。
杖で殴るけど…………こいつ、本当にドルイドか?
「話を遮ってしまってすいませんが、皆さん到着しました」
「もうそんなに移動してたのね……」
『ボクも魔術に関わる者として聞き入ってたよ』
「ドクターはしっかりしてください」
「そうよ、しっかりしなさい、ロマニ」
『そんな……』
「ごめんなさい。擁護できません」
『リッカちゃん!?』
さて、話ばっかりだったが、やって来たのは炎上した冬木で尚、霊地として機能している有数の場所。
瓦解した墓地が広がる丘──―冬木教会だ。
「じゃ、始めようか、英霊召喚」
待ちに待ったガチャの時間だ。
ガチャの時間だあああああああああああああああああああああああ