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基本的な思考の差異と言う物は技術においても差が出る物だ。
この世界で大きな魔法装置を動かす時、ゴーレムに組み込んで制御させる。しかし木下勝平の話を聞く限り、個別のパーツとして組み合わせて機能させると思っているようだ。おそらくは冒険家であった父の残した記録……古代王国時代の魔法装置はそうなのだろう。
「えっとね、勝平君。私たちが研究してる魔法装置ってゴーレムに組み込んで使ってるから、個別に部品は動かせないのよ」
「そうなんですか? でも父さんの記録では……」
(まあ、その方法でも作れなくはねーんだよな。制御が無茶苦茶大変なだけで)
前田啓治は話を聞きながら実現の難しさに頭が痛く成る思いであった。
ゴーレムに自由意志はないのだが、それでも自分の体を制御させることはできる。大掛かりな魔法装置をゴーレムに組み込むのはこの為で、人間が立っている時や歩く時にバランスを取るように、ゴーレムは与えられた機能を元に自分をバランスさせている。例えば鳥型ゴーレムは浮遊呪文を使って宙に浮かび、飛行呪文で進みたい方向に浮かぶのだ。これがマジックアイテムの装備でやると、『どの方向に浮かんで、どの程度を滞空し、どう進むか』まで全て念じてやらねばならない。もちろん動くたびにその制御をすべて設定してやる必要がある。あるいは最初から一方向にしか動かない設定しておくか……だ。
(浮かぶためだけの装備を起動させて不要に成ったら解除。前に進む為だけの飛行装備を起動して、曲がりたい時は乗り手が個別に唱えるか、それとも専用ん装備で……頭イテエ。まあこっちの方が仕上がり自体は早いんだが……)
十以上の装備を飛行船に組み込み、必要に合わせて起動と停止を繰り返す。
そんな作業は魔法制御と感覚に優れた古代人ならばともかく、現代の人間には不可能だ。ただし理論的には組み上げられるし、やろうと思えば時間を掛けて成立させることも可能だろう。しかも個別に装置を洗練していくのであれば、確かにその方が向いている。そういった意味で木下勝平が間違っているわけではない。もし苦労しながらでも現代人がどちらの方向で魔法装置を運用して居たら、それが普通であったのだから。問題は現代がそうなって居ない事なのだが……。
(しかしこれで未来の木下勝平が飛行船を手に入れる事が出来た理由が判ったな。おそらくこいつは他人に笑われながらでも、古代の方式で試して組み上げたんだ。その上で、使える部分だけ使った。楽できる部分は現代の方法を使い、ゴーレムに任せたってとこかねぇ? さて、どうすっべえ)
木下勝平は未来において、苦労しつつも飛行船を手に入れて冒険の旅に出る。
遅れて来た英雄として名高く、飛行船を個人所有する僅か四名の内の一人だ。しかも二人ほどは軍人貴族やら大商人の縁者なので、本当の意味で実力で手に入れたと言っても間違いがないだろう。その方法はあまり判っておらず、てっきり父親が残した遺産の中に直せば使える飛行船があり、それらを現代の技術で蘇ららせたと思ていた。しかし実際にはもっと苦労する方法を取ったようだ。(船本体が最もお金が掛かるパーツだし、理論構築の手助けにもなっているので、完全に父親の影響がないとは言い難いし、手に入れる期間をかなり縮めたとも言えるが)。
「啓治、あんたも何か言ってあげなさいよ。このままじゃあ……」
「木下クンよい。その方法でも飛行船は作れるが、とんでもなく時間が掛かるぜ。今んところ誰も試してないから、お前さんが実現するなら試験用を兼ねてパーツは貰えるだろうけどな。それでも試すか?」
「ちょっと! あんた何を焚きつけてんのよ! 誰も試してないのに簡単に出来たら苦労しないわよ」
柴田晶子の言葉にあえて啓治は直球で返した。
ここで大人ぶって止めるのは容易い。しかし未来の木下勝平がやれた事を止める気にはならなかった。可能であると告げた後で、それでは時間が掛かると説明はするが。その上で幾つかの方策を示すのが義理と言うものだろう。ここで手に入れたヒントに対しての義理、そして一周目に木下勝平に力を貸してもらった義理である。
「晶。今は黙ってろ。男が信じたことを簡単に曲げるかよ。少なくとも一度痛い目に合って辞めるか、使えると思って没頭するかのどっちかだ。そんでどうするよ?」
「本当ですか啓治さん!?」
「おう。だがな、とんでもなく時間が掛かるってのも間違いはねえ。さっきは五年以上、魔王軍が来ても二年以上と言ったがそれ以上だ」
人間そう簡単に意見が変わるものではない。ましてや実現可能であるなら当然だろう。
もしこれが間違った理論であるならば別として、現代の方法では効率が悪いだけなのだ。しかも一から全てを計算するならば理論だけでも相当に時間が掛かるが、既に存在する飛行船の本体に組み込むパーツや、制御技術だけを考案するならば実現範囲と考えてもおかしくはないだろう。ゆえにここは止めるのではなく、とほうもなく時間が掛かる事、あるいは別の代案で時間を縮める必要があると示すべきなのだ。
「一応は何とかする方法も幾つかあんぜ。お勧めは出来ねえが、一つ目は俺らに『飛行船用』としてアイデアを売る事だ。俺らは試験用の飛行船をもらえるかもしれねえ……って段階に居る。お前さんが言う方法も試せば、まあ確実にもらえんだろうよ。しかしこの方法だと時間が短縮できる代わりに、お前さんの功績じゃなくなる。俺が運営する飛行船に乗り込みたいってんなら別だがよ」
「ありえませんと言いたいところですが……。念のために他の方法も教えていただけますか?」
「二つ目は今お前さんが思いついた、俺ん所の二隻目って案な。で、一等難しいのが三つ目」
未来の木下勝平が個人所有を許されたのは、おそらくは個別パーツの件だ。
本体を普通に用意して、組み込み専用の補助パーツを用意するというところだろうか? その方法を成功させて、洗練された魔法装置を作ると言った『強化案』の提唱者として功績を挙げたのだろう。そう考えれば不思議ではないし、壊れ難い古代王国製の本体を所有しているのだから試すには事欠かない。
此処で啓治は実現するだけならば自分にアイデアを売れば良いと言った上で、二隻目を所有する可能性を示した。実際に飛行船を使った商会を立ち上げるならば、パーツの予備を手に入れる事は不可能ではない。その上で勝平が所有する本体を使って試せば、そのうち二隻目として運用すること自体は可能なのだ。少なくともこの方法であれば、無理なく所有する可能性は出て来る。
「パーツを作って運んで、別の場所で組み立てる。それ自体は以前からある考えだし、他で使えないってわけでもねえよな。そんで、そのアイデアを使って名前を挙げて、その功績を使って来年には熱田に来るってのはどうだ? それなら自分でアイデアを試せるぜ? 丁度良い仕事が偶然手元にあってな。まあ現地でやるなら危険じゃあるけどな」
「本当ですか!?」
「っ!? 啓治、あんたまさか……」
啓治がここまで肩入れするのは一周目の義理もあるが、現在進行形の依頼にも関わるからだ。
途中まではまるで気が付かなかったのだが、『作るだけならば、パーツを組み立てる方が早い』というアイデアを他に活かせないか考えている最中に思い当たったと言っても良い。そう、ここに来るまでに頼まれた、『ラミア族に対するための砦建設』について、重要なヒントをもらったのだ。一夜城を作るヒントとは、既に用意された建材を現地で組み上げるだけ……というものだったのである!
(寸法から組付けの練習までやった後に、現地で組み上げるだけならそれほど時間は掛からねえ。何だったらラミアが侵入してくるのを防ぐ場所だけあれば良いよな。どうせ俺らが提案したって大した功績にはならねえ。しかしこの木下クンならどうよ? 天才児の登場ってことになるし、飛び級に必要な推薦枠の方はバッチリだ)
なにが良いかと言って、この方法ならばアイデアの登用にはならないのだ。
一周目の記憶で木下勝平に刺激されたとはいえ、飛行船を持ってみたいというのは冒険者ならば誰もが思う贅沢である。急げば飛行船を作れるという情報だけならばまだしも、パーツ組み立てやら何やらのアイデアを奪ったのでは誰が咎めずとも恥ずかしい限りだ。パクリを気にする者としない者が居るとしても、啓治は二周目と言うオマケの人生だけに気にする方であった。ゆえに木下勝平自身に功績を返す方法ならば良いだろうと思ったのである。
「もちのロンよ。滝川サンから頼まれた事は幾つかあるんだがよ。木下クンのアイデアを使ったら上手く行きそーなんだわ」
「危険じゃないのよ! 怪我したらどうするの!」
「いえ、晶子おねえさん! オレ、やってみたいです!」
こうして木下勝平を織田信長に紹介し、その結果が墨俣一夜城作戦を行う事に成ったのである。
と言う訳で墨俣一夜城を作る話に集約します。
時間経過の問題で、その辺が第二部終了段階でしょうか。
なお、ストックが尽きてきましたので、第三部に投入すると毎日ではなくなるのでご注意ください。
(現在はストックを寝る前に色糸書き足して一日経過後……。
翌日に見直して修正というペースですので、ストックが無くなるとこのペースでは無理です)