二周目の人生は大空に焦がれる【完結】   作:ノイラーテム

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一夜城計画!

 熱田学院に持ち帰られた案は紆余曲折の内に採用された。

三人寄れば文殊の知恵とは多角的な意見が状況を発展させる事であり、シナジーとは混ざり合う技術や概念が大きく飛躍させるという事である。尾張内部から寄せられた幾つの意見と、他所から持ち込まれた横槍が一気に事態を進ませたとも言う。

 

『野武士の力を借りる事が出来れば、材料を現地調達しつつ四方から集めることができる。彼らは人足であり護衛戦力であると同時に、それぞれが囮となってラミア族を攪乱させてくれるだろう』

 とは滝川賢二の案であり、前田啓治が話を持ち込んだ段階で考え始めていたらしい。

尾張から美濃にかけてのあちこちで木材を伐採し、ソレを主に川を使って運ぶという案である。コレに木下勝平の既に完成させたパーツを現地で組み上げる案と合わせることで、一気に砦を立てる事ができると採用されることに成った。元より四方別の雇い主に雇用されることがあるので、規格を決める定規さえ整えておけばそれほど難しい内容ではないからだ。

 

『囮となった野武士の中で有用な人材を飛べるゴーレムや水上用のゴーレムで回収するのはどうだろうか? また穴を掘り木材を固定するだけならば、ロクな装備が完成して居ない騎乗型ゴーレムでも行える』

 これはゴーレム科の佐久間教諭が出した案であり、啓治の案を修正した物だ。

最初の提案ではゴーレムが作業を手伝う予定だったのだが、剛力であっても詳細な作業が出来無いために木材をへし折ってしまうのだ。そこで力だけあれば良い穴掘りのみに絞り、人間が数人がかりで固定する作業をちょっとした動作で補う事に成ったのである。要するにクレーンの代わりと言う訳だ。もっとも飛行してまで集める人材は居ないし、大勢で無ければ意味がないと輸送案は立ち消えになる。

 

『装置を組み込むのが難しければ、いっそ簡単な呪文で試すのはどうでしょうか? 別に空を飛んだり攻撃に無くても、便利な呪文はありますよね?』

 無知と言う物は恐ろしい。木下勝平は高額なゴーレムを他愛ない玩具の様に語った。

最初は空飛ぶ鳥型ゴーレムへいきなり強化装置を追加で組み込んだらバランスを崩して大変であるとか、そもそも飛ばない可能性を指摘されたのだ。加速したい時だけ使用する追加装置が難しいのであれば、他愛ない行動をするゴーレムに、移動中に使えたら便利だなという呪文を組み込めと言う。では火球を放つ小型ゴーレムで試そうとしてやはり危険だとなれば、水を作るだけとか風を吹かして涼むだけで良いのではないかと提案してしまったのである。

 

ただし一理はある。ゆえに安全だが魔力消費や強化が問題の呪文で試そうと成ったのだが……。

 

「探知ゴーレムに反応が有りました。……今度は生徒みんなを感知してますけど」

「さっきは誰も反応しなかったよねえ。探知呪文なら便利かと思ったんだけどなあ。装置自体はともかく何を認識させるかがとっても難しい!」

 装置に不全があったり暴走が起きても問題ない範囲で探知呪文が選ばれた。

水を出したり風を吹かせる方が確実なのだが、流石にそこまで現在の状況や魔王軍への対策にならないと躊躇われたのだ。その点で探知呪文は幅が広く、多少の不具合があっても機能する。また長時間の運用であったり、複数人の運用が出来ると効果が大きいために選ばれたのだ。

 

「いっそ魔物探知の呪文にして、何処かで捕まえて来ますか? ラミアは魔物探知に引っ掛かりましたよね?」

「今からかい? もう作戦の初動段階は始まってる頃だし、時間がないんじゃないかなあ。生物探知の調整で上手く行くと思ったんだけどなあ」

 問題なのは探知呪文に対する申告が難しい事だ。

ゴーレムは相手を指定して現状報告などしないので、見つけた対象を片っ端から告知ないし表示する。音声型にすれば見つけたモノを順次指摘するだけだし、幻像の呪文も合わせると一斉にマークを表示してしまう。細かいニュアンスを一々刷り込んで認識するのは人間のみがなせる業なのかもしれない。

 

「……木下クンよい。なんかよいアイデアあっか?」

「装置自体は機能させる事に成功したんですよね? それで良いじゃないですか。別に何個か作って同時に使えば良いんじゃないです?」

「簡単に言うな~! でもまあ、それしかないよね」

 啓治が促すと勝平はあっけらかんと信じられないことを口に出した。

作成費用や製作時間も考慮せず、同時に機能させてしまえば良いと提案したのだ。その御苦労を知っている学生や教師陣であれば思いつかない発想である。

 

「一つ目の設定は人間以上の生命力を持つ存在として、二つ目の設定はどうしましょ?」

「一番強い人……ってのは難しいか。振動探知のがあったよねえ? んじゃそれで移動幅の大きい対象にしといて。最初はゴーレムを指すだろうけど、ランクを下げて行けば人間の中で一番動きの大きい人を指すと思うよー」

 そんな感じで佐久間教諭を中心に装置を作成。

付与科全体で造る事に成っているのだが、平手教諭や森教諭は薩摩の陣営と一緒に魔法の刀を量産しているからだ。実験自体は既に終わっているのだが、用意してくれるならばその数に応じて薩摩の剣士たちが参加してくれる事に成っていた。対ラミア戦に向けて大きな戦力になることは間違いがないので断り切れなかったのだ。

 

「ということはあの人を示したら成功ですね」

「そーなるね。さっきから物凄い打ち込みだもん」

「あー。あれが噂の殺魔モンすか。じゃあ鉱物探知で例の合金も設定しましょうよ。一番近いのを表せってやっときゃ確実ですぜ」

 探知呪文を設定したゴーレムは幾つかあるが、既に完成している物は少ない。

そこで生物探知の呪文に加え、振動探知や鉱物探知のゴーレムを同時に機能させることにした。この二つは啓治が使用できることもあり、作成に協力して早い段階で作成できたのである。そして候補に成っているのは……。

 

「キィエエエエエ!!!」

「女だてらにスゲエ声量だなあ。威力もスゲエけど」

「なんとかって重臣家のレイちゃんだったかな? 数の少ない刀を拝領してる人だし弱いって事はないでしょ。後はここに派遣されてるって事は、飛行型か騎乗型のゴーレムに関心があるんじゃないかなあ」

 ゴーレム科の片隅で打ち込みの練習をしている才女。

その娘は斜め晴眼に構えて10m近い距離を疾走。その先にある目標を切り裂き、それでいて隙のない動きで次の目標に向かっていた。彼女は移動からの斬撃を得意とする流派だそうで、薩摩の中では古い思想に当たるそうだ。最近は程ほどの距離から切り裂かり、有無を言わさず一撃で仕留める流派の方が人気であるらしい。剣術流派の人気不人気がそんな感じで偏るのも、薩摩が殺魔と呼ばれる所以だろう。

 

「するってーと騎乗型ゴーレムに乗ってあの動きを? 何と戦うつもりなんすかね」

「魔王か巨人なんじゃないの? まあ最近は巨人なんか見ないそうだけどね。ああ、でもまあ飛行型ゴーレムから降下するって方がありえるかな。ホラ、君が研修の時に使ってた装備みたいなの付けて飛び降りる感じで。でもまあボクとしては騎乗型ゴーレムで暴れてくれた方が面白いと思うけどねぇ」

 啓治はともかくゴーレム馬鹿である佐久間が注目しているのも割りと珍しい。

おそらくはあそこで練習している娘がゴーレムに乗って巨人や魔王を切り倒している光景を想像しているのだろう。その時にどんな装備があれば面白いかとか、強さを発揮できるかを今の内から考察しているのかもしれない。

 

「先生! 三つの表示が重なりました! ようやく成功ですよ!」

「まさによーやくだねえ。もうここまで来るとゴーレムの意味ないし、反応系でも改良する研究してみようかなあ」

「先に取りつけの齟齬の方をお願い出来ませんかね? とりまこれでラミアの侵入を探知できますかね? なら仕上げて滝川サンと合流しましょうや」

 こうして墨俣一夜城計画が動き出した。

既に物資は加工され輸送を始めている。戦力も野武士たちを中心に木材の護衛として同行しているという訳だ。ここから本隊に島津の抜刀隊を加えて精鋭部隊を派遣すれば戦闘準備が整うであろう。




 と言う訳で計画と準備は終了。
戦力も増えたので次回戦いになります。
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