二周目の人生は大空に焦がれる【完結】   作:ノイラーテム

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一夜城攻防戦:前編

 運ぶ物資が多いのである程度集まって来たら流石に警戒される。

よって一定以上の距離が縮まったところで、一気に行動を開始。築城作戦を開始した。最初は中央に荷物を仕舞う建物と、監視用の櫓を全力で組むことになった。

 

「陰陽鏡に反応! ラミアが東より数体接近してきます!」

「迎撃態勢に移れ! 戦えない作業員は下げろ!」

 意外な事に一番役に立ったのは複数の探知呪文を組みわせた装置だ。

一つ目の呪文で探知した物を一度光点として薄く表示し、別の尺度で感知した対象を同じように表示する。この二つを合わせた反応で、人間ではなくラミアしかやらないような動きのみをピックアップしたのである。

 

「続いて西から多数! 先ほどの比ではありません!」

「生意気にも陽動を使ったか? まったく見張り塔のみだとしたら騙されて居たな。春風と松風を急行させろ。この様子なら四方から来るぞ!」

「了解! 柴田さんと前田さんに声を掛けます!」

 続いて活躍したのは飛行できる鳥型ゴーレムだ。

ただし最初の提案のまま人員を回収するために使うのではなく、精鋭を乗せて急行させるために用いる。こうすることで広範囲の呪文や凄腕の剣士を四方に動かすことが可能になったのだ。春風・松風・朝風・旗風……と言う風に予備込みでひとまず四機のゴーレムが用意されている。

 

「毎度忙しくてすまないねえ伊集院さんよい。寝起きだってんのに」

「問題なか。薩摩もんで起きとったら戦えんものはおらんです」

 この戦いに向けて鳥型ゴーレムは少し改良がされていた。

今はまだが研究が終わり次第に追加で強化装置を付けれるようになっている他、二人目の搭乗者が乗り降りし易くなっている。抱き着くように捉まらなくて良く、武装をホールドする場所もあるので緊急出動出来るのだ。もし強化装置が搭載されれば三人の登場又はそれなりの荷物が期待できる御言う。

 

「そんじゃあ到着し次第に周回して降りれる場所を探しますんで……」

「このくらいなら問題ありもうさん」

「は?」

 そして何度も急行していると慣れてくる事と慣れない事がある。

慣れない事とはこの伊集院光ほか薩摩人の唐突な言いようであり、慣れる事とは彼らの戦場への適応速度であった。しかも慣れたからと言って普通はやらないことを彼らは平然とやってのけるのが前田啓治としても慣れない一因であろう。今回の出動で突如やって見せた曲芸もまたその一つだ。

 

「足元によか座布団ば見えもうした。あの上に着地するんで降りんでええです」

「は? あれは強化個体って……あんたまさか!?」

「チェスットオオオオオオ!」

 伊集院光はニッコリ爽やかな笑顔で笑うと突如鳥型ゴーレム松風から飛び降りた。

ラミアの中にブレスを吐ける個体、通称『ナーガ』が居るために地上10メートル以上は離れているのだが……。平然と飛び降りて真鉄とアカガネを配合した魔刀を手に切り掛かったのだ!

 

「ちょっと啓治。今、光さん飛び降りなかった?」

「あいつ勝手に行きやがったんだよ! そら相手は強化個体だからデカイしラミアだから弾力性はあるだろうが……普通出来るからってやるか? 狂ってやがる」

 もう一騎の春風を操って援軍に駆けつけていた柴田晶子が抗議して来る。

啓治としては自分の指示でもないのに怒られて不満やるかたない。もちろん留めきれなかったと糾弾されたら言い返せないが、普通はこんな事を考えたりしないのだ。

 

「薩摩もんで戦に狂うておらん者はおらんど。じゃっどん伊集院どんの為に弁護するなら、これは狂うのではなか、合理的言い申す」

 晶子の機体で運ばれているの人物は確か薩摩の攻撃魔法担当だったろうか?

空中降下自体は啓治も認める合理的な戦法であるが、それでも飛行呪文を行使可能な装備を所持してからやる物だと思っていた。それを装備無しでやる事を当たり前のように言われたら戸惑うし、そこで選択された戦法を思い至れと言うのもおかしいだろう。しかしこの薩摩人は平然と決断し伊集院光ならば問題ないと断言した。

 

こうして戸惑いながらも序盤の攻防戦は優位に始まった。

 

 さらに時が進めば情勢はたちまち怪しくなる。

それも仕方があるまい。奇襲同然に人員を集めて一気に建設したとしても、あくまで柵やら見張り塔だけだ。相手を先に見つけて弓を撃ってもたかが知れるし、攻撃魔法には魔力と言う使用限度がある。敵の数が増えて来れば守るのも怪しく成って来るのは判っていた。

 

「既に集落二つか三つ分は壊滅させているはずだぞ? どれだけ集まってくる気やら」

「連中は半水棲だからな。長良川どころか木曽三川全てから眷属を集める気かもしれん」

「笑い事ではないぞ。島津の連中が居るからまだいいが、本来の人数ならばとっくに危うくなっているレベルだ」

 冒険者であり尾張に属した貴族である滝川賢二を中心に会議が進む。

蜂須賀党を始めとして幾つかの野武士たちは既に集結を終えており、囮として離れた者を除けば合流予定の仲間はもう周辺には居ない。それなのにラミアだけは増え続けているのだ。ハッキリいってここまでの数が集うとは誤算であったと言えよう。

 

「この際ですが逆に考えるのはどうすっかね? この数が来るって事はどのみちどこかで大規模な襲撃が起こったって事でしょ? 町や村々が襲われるのはよっぽどマシだし、信長公が喧伝したい魔王軍の話にも信憑性が出てきますぜ」

「そうは言うがな……。数は厄介だぞ」

「お前らは飛んで逃げれるのだろうがワシらはな……。いや、言わんとすることは判るのだ。家族が襲われるよりは良いと」

 啓治は蟻の集団に襲われた時と比べて脅威度が低い事もあり、一応はフォローを入れておいた。

あの時は偶発的に起きた戦闘で魔力もあまり残っておらず、防御陣地もなかったのだ。それに比べたらどうと言う事はない。なんだったら一度逃げ出した後で、改めて戻って来ればよいとすら思っていた。

 

(前の人生じゃあラミアの大規模蜂起なんか聞いた事ねーんだよな。他の作戦で討ち取られた後だから数が居なかった可能性もあるが、やっぱり数の限度ってのはあるもんだろ。そもそもあいつら別に強くないし……って、イカンイカン。島津の連中を基準に考えたら駄目だわ)

 目の前の案件としてはともかく、取り返しがつくかと言われたら可能だ。

蟻の時の様に遺跡の狭い場所で相対して逃げ出せないという訳ではない。魔力もあるし学生ばかりと言う訳でもなく、何よりも今だに囲まれているわけでもない。防御陣地だってこれから丹念に作る事も可能であるし、予想していたよりも敵が多いだけではないか。ましてや島津と言う強力な戦力が近くにいるのだ。安全策を取って逃げ出しても良いし、戦い抜いて名誉を求めても良いのだからまだまだ余裕すらあるだろう。

 

(とはいえ晶とか戦うのが得意じゃない連中もいるしな。全体で下がるならまだしも、覚悟決めてない連中だけが逃げ出してその余裕が崩れるのも問題か……どうすべえ)

 精神的に覚悟を決めていない者とそうでない者の差は大きい。

楽勝の仕事とは思って居なくとも、ここまで相手が多いとは聞いて居ない者も多いだろう。そういう者を励ましつつ、戦える者だけで勝ち抜きせめて背後だけでも守らせなければならない。そんな策があるのだろうか?

 

 

「前田。お前はどう思う?」

「俺らだけで延々と戦えるなら余裕っす。問題は何時の間にか野武士の連中が逃げてて、背中がガラ空きになっちまった時です。島津を欠片だけでも見習ってくれればありがたいんすけど」

「だろうな。連中はこれまで戦わないか、勝ち馬に乗る事しかやって来なかった。だからこそ勝利の味を味合わせてやりたいとも思うのだが」

 その晩に滝川賢二たちとだけで話し合い、思う所を素直に述べた。

ラミアはそれほど強いわけでもなく、強化個体であっても数人で挑めば倒せる範囲だ。ジャイアント・アントと比べて殻が強固でもないし、生命力は強いがそれだって圧倒的と言う程でもない。ブレスを吐けるナーガ種は厄介だが、そいつらは攻め入力が低い特化型なので近接できればむしろ倒し易い部類に入るとも言えた。

 

「思うんだけどオレたちと島津勢だけで戦うとかできないの?」

「木下クンよい、そいつは無理ってもんだ。この砦は建設中でしかも周りは川だぜ? 他所の貴族と戦うなら守り易い場所と言えなくもないが、ラミアと戦うには最悪だ。今んところお前さんや晶に逃げろと言わずにすんじゃいるが……。四方八方から攻められたらどうしようもない。かといって砦を完成させるにゃ時間がない。一気にオッ立てた分だけ、形には放っちゃいるがな」

 拍付けや安全であるとの宣伝のために、木下勝平も置いて置けと命じられていた。

この少年を守り切れないと考え始める辺りが判断の分水嶺だろう。今は荷物置き場にしてる小屋に匿うか、見張り塔に上げれば守り切れる自信はあった。だからこそ相談にも参加しているのだが、敵集団が増えて来れば彼だけでも逃がす必要があるだろう。

 

「敵が凄く増えるまでは作業時間があるんだよね? 島津勢なら勝てるんだよね?」

「おうよ。あの連中、頭はおかしいがそれだけにやたら強いぞ。一人一人が強い上に、精鋭はラミアの強化個体とガチで殴り合えるからな。まあ……その基準を他所に適用しかねないところが問題なんだが」

 遠くから来ている事もあり、弱い者を連れてきていないのも大きいだろう。

島津隊はいずれもが強く、弱兵で有名な尾張勢ならば全員が精鋭部隊と言えた。援軍として移動させている伊集院たちなどは特に強力で、もしかしたら勇者たちにも純戦闘力だけならば匹敵するのではないかと思う程である(どうして一周目で聞かなかったのか疑問を思えるくらいだ)。しかし問題は全体像にあり、全方位からラミアが移動できるという事が重要であった。

 

「なら問題ないよ。全部を完成させようとするから間に合わないんだ。砦の一部だけを先に万全にして、相手にはそこへ攻めてもらえば良いんじゃないかな?」

「ふむ。ラミアが選ぶべき道を作るという事か? 悪くない。それならば柵を二重三重にして土を盛り上げれば良いからな」

「なるへそ。此処は砦じゃなくて陣地だと思えば良いってわけか」

 こうして墨俣一夜城に修正案が入った。

部分的に万全に作る部分を用意して野武士たちが安心できる部分を作り上げる。その区画を背にして尾張勢が守り、主戦力として島津勢が倒して回るという案である。攻勢を担う……のではなく倒して回るという言葉に彼らの性格が良く表れているが、この流れが手直しされて発布され、いよいよ本格的な戦いが始まったのである。

 




 有利に戦えると思ったらそんなことはなかったので頑張る感じです。
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