二周目の人生は大空に焦がれる【完結】   作:ノイラーテム

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大空への航跡(みち)

 目標は飛行船操作であり、それに役立つ魔法を覚えていく。

その事が決まって来れば後は再計算するだけだ。スキルカードは瞬時に魔法を覚えさせてはくれないが、どの程度の修練でポイントが入り、注ぎ込めば能力を取得できる目安を立てられる。

 

「えーっと……。火なら炉の出力を強化できる、水なら劣化する伝導液の質を保てる。地がその場での修理だったかな? 風は無関係だが移動その物を大幅に助けてくれる。光と闇は関係ないが、まあ現地での戦闘力の確保や、輸送力の補助ってとこか」

 そう言いながら前田啓治は簡単にメモを書き記した。もちろん現段階では子供の妄想である。

だが修練によるスキルポイントの入手計画を立て、『研修』やその後の研究時代、そして将来の全盛期に身を立てる計算をするならば少しずつ計画に成って来るだろう。

 

『火魔法』

 火力特化型。代表的な魔法としては豊富な攻撃魔法で、威力そのものが高い。

飛行船操作では炉心で使う魔石の燃焼効率や活性化に関わる。出力自体が向上する為、移動力・輸送力・戦闘力の全てが微妙に増えていく。

 

『水魔法』

 状態変化型。代表的な魔法としては定率治癒・範囲防御・異常回復など。

飛行船操作では魔力伝導液イコールの水質を保全し、能力を維持するだけではなく、飛行船の離れた位置にマジックアイテムを設置する時に役立つ。

 

『地魔法』

 付与創作型。疑似的な魔法武具や壁を創造することで、地味ながら強い。

飛行船操作では金属合成を行う事で現地での修理や、近年になって作成が楽になったものの時間の掛かる魔石の創造に関わる。

 

『風魔法』

 万能強化型。バランス型として光の下位互換に見えるが、加速系や探知など特殊な物が多い。

飛行船操作では直接の影響がないものの、移動力と輸送力に大きな変化が生じる。一部に特化しているが、だからこそ単純比較であれば火魔法に勝る。

 

『光魔法』

 ハイ・バランス型。基本魔法よりも難しいが、対魔物に関しては一線を隠している。攻撃魔法・回復魔法も豊富で、他の上位互換と称される。

飛行船操作では役に立たず、光を吸収する素材でも用意して居れば役に立つ程度。

 

『闇魔法』

 特殊型。基本魔法よりも難しいが、アイテム収納や魔力吸収に精神魔法など風以上の特殊性。

飛行船操作そのものには役立たないが、アイテム収納であったり隔壁の向こうに厳重管理が必要な物を収めるなど、全く関連しない訳でもない。

 

「これに素材の研究が相乗りしてっと……まさかここで役立つことになるとはなあ」

 続いて飛行船の研究や、その後の付与魔法にも関わる素材の問題を追加した。

啓治は生前に研究職だった時代に最も門戸が広かった素材研究に関わっていた。この分野は際限がなく、別れた女房も植物系ながら同じ研究部署に居た。そこまでの腐れ縁で結婚したのだが……研究用リソースを共有化して、家の一部を研究室に充てたというべきだろうか? そういう意味でも良く覚えて居たのだ。

 

『鉄素材』

 戦闘力を底上げした人類の象徴たる金属。

強固さを増幅する『真鉄』となり、これを使って武具や建物を作るのが主な使用方法。

飛行船に使用すると重くなるが、比較的安価に建造できるようになる。簡単に用意できるのでコレをメイン素材に据えれば、地魔法は無理になくても良い。

 

『銅素材』

 神に捧げられた祭礼用の魔法金属。

魔力を備蓄する聖銅と、僅かながらに増幅して発生させるヒヒイロカネに分化。俗称は青銅と赤銅。

飛行船建造では炉心から発生するエネルギーを魔力として保存するバッテリーや、増幅器の創造に関わる。魔法陣にも関わる為に、実は最も出回る金属である。

 

『銀素材』

 精霊と相性の良い代用的な魔法金属。

軽く精霊の力を阻害しない『ミスリル』の特殊性から、様々なマジックアイテム作成に関わる。

飛行船建造では軽量化の為に必須であり、移動力の向上の役に立つ。風魔法が得意な者が居れば快速船が用意できるし、逆に居ないのであれば無理には必要のない金属。

 

『金素材』

 全てを兼ね備えた至高の金属。

全ての魔法金属の特徴を持つ『オリハルコン』、特化したアイテムを造らないならばコレ一つで収まる。

飛行船建造では万能を目指す場合だけでなく、スペースや重量の都合で青銅・赤銅の両方を搭載できない時に無理して用いることもある。当初は鉄製にしておいて、後に金に張り替えていくことも結構多い。

 

『イコール』

 金属ではなく伝導液。

魔力を劣化させずに伝える能力があり『神の血』と呼ばれ、様々な分野で使用される素材。

飛行船建造では魔力の伝達機構に用いられ、離れた位置にあるマジックアイテムを起動させるのに使用される。他と違ってコレだけは必須であり、水魔法の使い手は絶対に一人は必要である。

 

「と、まあこんなもんか。真面目に修行するとして……限界まで絞っても二系統をマスタリーにして余計な物を覚えないスタイルか、片方を下げて魔法の数を増やすか、それともメイン一本で後は美味しく揃えるか……」

 魔法はマスタリーレベルまで上げると、加護よりは弱いがちょっとした強化ができる。

消費する魔力を下げるとか、あるいは火力を僅かに増やす程度の話だ。戦闘を繰り返すとか、飛行中常に使い続けるなら必須だが、そうでなければ無理する必要はあるまい。

 

「ま、真ん中だな。研修に参加せにゃならんし、そこで戦い抜けずに死んじまったら意味がねえ。後はお仲間に任せるとするさ」

 ここで研修が問題になる。参加できるだけの腕前と、生き残る実力が必要なのだ。

それに飛行船乗りを目指す場合のメリットとして、複数人で分担できるというモノがあった。極論を言えば集団で分担すれば全ての魔法を揃えられるし、腕利きを揃えて不要な系統は妥協すれば少ない人数でも行けるだろう。

 

 そこまで考えをまとめたところで図書室に近づいてくる足音が聞こえた。

中等部はまだ授業中であり、この時間にやってくるとしたら啓治と同じく卒業を控えた者だけだ。その中でもワザワザ勉強しようと言う者は限られた。

 

「晶じゃねえか」

「あら珍しいわね。男子がマメに勉強? 特にあんたみたいに高等部デビューしようなんて奴が」

「俺だって気を抜く所とそうじゃない所は使い分けるさ。興味がある分野は自習だってするよ」

 やって来たのは柴田晶子、いわゆる腐れ縁であり……一周目では離婚した女房である。

初等部では顔見知り程度だったが、中等部からは魔法を覚えて居る者や他の職業向きの訓練などに別れる為、自然と仲良くはなった。このころまでは馬鹿馬鹿しい話に付き合うこともあり、啓治が二周目でも口調を引き継いだことで不良の高等部デビューだと思っているのだろう。

 

(「この頃まではどっちかってーとキツイ性格と言うか、ハッキリ物言うタイプだったんだよな。そいつがパイセンが死んでから塞ぎ込むようになっちまった」)

 晶子の兄である柴田哲章は高等部で寮監を務める面倒見の良い性格だった。

彼が死んだことで寮生を始めとして暗い影を落とした。その事は周囲に大きな影響を与えており、彼の研究が頓挫するのは勿論のこと、引っ張られていくコネなどもバッサリ消えている。それでなくとも晶子はお兄ちゃん子であり、すっかり内向的になって研究に専念するようになってしまった。兄に助けられたこともあり何かと面倒を見ていたこともあり、その縁で結婚したのだが……。

 

(「思えばこいつと向き合ってやれたことがあったのかね? 俺は俺で研究に詰まってたし横との競争が激しかったが……。こいつとは研究の成果を確認し合う程度だったしなあ。それにこいつは植物とポーション系、もしかしたら義兄さんと同じく誰かの役に立ちたかったのかもな」)

 同じ素材部門での研究だったが、啓治は鉱物と付与で晶子は植物と薬物だ。

進捗やら思わぬ使い道やらを話し合う事はあるが、手に手を取り合って研究したりはしない。せいぜいが触媒を融通し合って共同で購入・管理したりする位だった。どちらかが錬金術をやって居れば別だが特段にそんなことはなかった。相棒として成り立つことも無く、恋人として愛し合うという程でも無かった。だから男として魅力的だったかと言うと……その結果が離婚であろう。

 

「なによジーっと見ちゃって気持ち悪いわね」

「……何でもねえよ。どうだ? 基礎や言語系なら教えてやるぜ。最近は自習の成果が出たんだ」

 懐かしくも遠い悲し気な顔と、むしろ新鮮に思える快活な表情。

それを見比べていると晶は憮然とした顔になる。啓治が誤魔化しのために勉強を見てやると言うと猶更だ。なにしろこの時分の女子というのは大人びた事を好み、勉強は男子よりもマメにしようとするし、お姉さんぶるのが好きな者も居る。思えば晶子もそんなところがあったかもしれない。

 

「私とどっこいのあんたがそんな事が出来る訳……ってこれ錬金術系の新説じゃない。よく知ってたわねぇ。しかも飛行船だなんてキワモノと組み合わせようだなんて。雪でも降るんじゃない?」

「気晴らしだよ気晴らし。そっちこそ良く知ってたな」

 これから発展・完成する技術だが、別に存在しない訳ではない。

素材の進化などこの当時はあくまで新説であり、『魔法金属が自然に存在しないのは奇妙だが、作られた合金ならば理解できる』という程度の認識だったのだ。それを存在もしない飛行船と結びつけようなどとは、むしろ大真面目に考えている方が珍しかろう。

 

「兄貴の受け売りと、他所から来た転校生(チビッコ)がちょっとね。木下って子なんだけど」

「そういえばパイセンは魔法武具の作成だっけか。……木下って、木下勝平? 冒険家の息子の」

「そっ。父親の形見である遺物の飛行船を飛ばすんだって息巻いてるわ。その影響でね」

 哲章は面倒見がよいので、高等部の寮監以外にも学区の問題児にも目を掛けている。

他の学区から転校して来た子供の後見などはその最たる例であろう。そして自分がその縁で知っているからこそ晶子は気にしなかったが……啓治は別の意味で良く知っていた。木下勝平は生前に有名だったからだ。

 

(「なるほどねえ。遅れて来た天才とか言って、苦労しながら個人的に飛行船を手に入れたって聞いてたが……。蓋を開けて見りゃおかしくもなんともねえ。遺跡から見つかった古代の船をサルベージしたのか」)

 魔王軍との戦いに前後して、四人の有名な若者が飛行船を個人所有する。

軍人の息子と商家の娘がそれぞれの親の援助もあって、魔王軍との戦いの時点で既に飛行実験がてらにそれぞれの国へ協力していたはずだ。それに遅れること何年かして、遅れて来た天才と呼ばれる少年たちが苦労しながら飛行船を手に入れるというニュースがあった。啓治はその件をニュース以上の内容で知らなかったために、意外と近くに情報が転がっていたことに今更ながら気が付いたのである。

 

「で、あんたから見てどうなの?」

「どっちも俺らの世代が大人に成ってガキこさえる頃には正しいと判るってレベルだろ。ただ素材の方は……戦争に使えるからアホほど金掛ければ別ってとこかな。マっ、魔王との戦いでも起きて同時に完成でもしなきゃ、飛行船なんて孫の代でも怪しいと思うぜ」

 戦争が起きれば日常では考えられないほどに予算と人材が投入される。

ましてや人類を滅亡させようとする魔王軍がやって来れば、国家間の垣根を越えてそれらが結集されるのだ。強引に色々な研究に見通しがもたらされ、それらの完成品が持ち寄られ、結び合わせて未知の武具を求める。だからこそ飛行船なんてものが出来上がったと言えるだろう。

 

「そういうものよねえ。だからこそ、あの子は一刻も早く研究したいんでしょうけど」

「何だよ飛び級枠で抜けてくる気か? じゃあ勝負って訳だな」

 その話を聞いた啓治はニヤリと笑う。

生前に冒険者をやってた頃に一度だけ木下勝平に飛行船で運んでもらう機会があったが、悪い奴では無かった。彼とならばやがて可能になる飛行船の実現に向けて、所持者の枠を競争するのも良いだろう。

 

「何を勝負すんのよ。相手はまだ初等部なんだし」

「関係ねえだろ。ほんとに空を飛びたいなら飛び級でも何でもするだろうし、研究職になる事には肩を並べてるかもしれねえ。だから、どっちが先に空に行くか勝負するのも悪かねえと思ってな」

 もし一分一秒でも飛行船実現を早期にするならば。

もし所有枠を増やし、自分が船を手に入れるならば……。ライバルと競う事はきっと励みになるだろう。そう思ってメモに修正を加え、魔王軍に関する部分を『そろそろ来るかも』という予測に変えて晶子に持たせる。こんなお土産どうかと思うが……、この当時の木下勝平ならば喜ぶ気がした。




 と言うわけで前回は世界観の掘り下げで、今回は技術の堀下げ。
よくあるスキルカードがある小説で、レべを上げる時に使うやつの目安。
レベルと同じポイントが必要で、詳細な魔法1つが2p、補助魔法は1p。
5レベルだか10レベルに達したら、MP-1とかダメージ+1とかですね。
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