二周目の人生は大空に焦がれる【完結】   作:ノイラーテム

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新たな可能性

 思わぬ横槍で冒険の機会を奪われた前田啓治だが、ここで思い直すことにした。

第一期の飛行船建造は技術検証や運用試験の面が大きく、船体の構造や機能関して洗練されているとは言い難い。既存の船を流用すれば堅牢ではあるが、それでは輸送力と言う意味で万全ではないのだ。かといって必要な能力を持つ建物をそのまま浮かせたような形状では、船型以上に飛行性能が微妙になるのだから。

 

「スポンサーの意向でゴーレムを載せることを前提にするが、一番重要なのは船にどうやって載せるかだな。強引な方法としては吊り下げる、甲板に乗っけるだが……正直こいつは非常手段にしときてえ。もちろん船倉に横倒しってのはもっとありえねえけどな」

「私たちが鳥型ゴーレムに乗る見たいな感じでいいんじゃない?」

「普通の船の先端に座るとか、船に後ろから抱きつく感じはどうかな? 荷車だと思って椅子みたいなのに座るか、抱きつく場合は後ろに蓋をするんだよ」

 反省を活かして初期案に関して啓治は身内で相談することにした。

柴田晶子や木下勝平と相談し、叩き台としてある程度は練ってから提出することにしたのだ。王都組の方を優先されたのはコネの差もあるが、基本計画の洗練度に差もあった事も大きいだろう。『運用試験が必要なので開発者が自分で試し、その欠点を詳細に把握する』と言う程度では少しインパクトに薄かったのである。あわよくば魔王の拠点を探すという部分をアイデアを丸パクリされたことでインパクトはさらに下がったとも言える。

 

「前に座る場合でも蓋ってのは良いかもな。小さい船だと上に乗るっきゃねーが、前か後ろに座るのはありかもな。他のアイデア次第で採用するとして、後は載せたい機能か。何があるっけ?」

「攻撃魔法の発射装置の他は調査用の探知装置かしらね? 何処に積むのかって話にもなるけど」

 晶子が採用を求められている部分を端から紙の上に書き起こす。

実験的な要素は色々あるが、問題点となるのは船の大きさがあくまでサイズ2の中型船であるということだ。このサイズ2は一般的に各地の工房で用意できる大きさであり、作業する魔法使いがそれなりの人数が居れば建造できるという規格になる(なおゴーレムは3m~)。だからこそ実験による検証が重要であり、成果を得られれば大きいカテゴリーと言えるだろう。

 

「いっそのことイコールの入った伝導菅を降ろす? 船の錨みたいにさ?」

「そうしたいのは山々だが、万が一にでも壊れたら大変だぜ。敵がうようよ居るような場所で探知魔法を使うつもりはねーが、岩場の中を飛ぶことになるし、隠れてる魔物ってのは何処にだっているもんさ。攻撃魔法を放つ装置が探知魔法も増幅してくれれば一番楽なんだけどよ」

「無理よ。鳥型ゴーレム使うか、現地に冒険者降ろす方がよっぽど早いわね」

 勝平の言葉に頷きかけた啓治だが、最新の魔法装置には一長一短がある。

魔力の伝導性を持つイコールはあくまで、水を錬金術で錬成したものだ。それゆえにパイプが破れたらドバドバと流れ出てしまう。また攻撃魔法を投射するための装置は魔法陣を専門化してシンプルにまとめた存在である。熱田学院など各研究機関が所持している、汎用性の高い拡張用魔法陣とは違うのだ。以前に何度も記述した『お仕着せの魔法ゆえの汎用性』を残したまま、装置の方で特化するという裏技を使ってしまった弊害とも言えた。

 

「ではさっきの『蓋をする』というアイデアの延長上で行くとかどうかな? 同じ場所から冒険者や鳥型が出ていくんだ」

「冒険者はアリだし、鳥型を載せる事自体は良いと思うぜ。どうせゴーレム修理できる人間を載せなきゃならんし、冒険者の方がゴーレムより小さいからな。問題は鳥型を載せるなら、空中で合流できるようにしてえなあ。そうすりゃ調査への自由度がダンチだ」

「二人とも無茶苦茶言うわねぇ。さっきまで場所が無い無い言ってたのは啓治でしょうに」

 ここで晶子が筆を止めた。二枚目の紙を取り出し問題点を指摘する。

一枚目の紙は要求された事と、その搭載自体が可能だという相互関係だ。紙面の上では魔力の強化・充填・伝導に問題はなく、重量・スペース的にもなんとかゴーレムも鳥型ゴーレムも搭載できる。冒険者も乗れるしギリギリの人数にはなるが数名がゴーレムの修理や飛行船を運行する者と研究者を兼任すれば何とかなりはするだろう。しかし形状と耐久性の問題は残ったままなのである。

 

「いい? 蓋をするなら普段は落ちないし、やろうと思えば整備も出来るでしょうよ。でも大きさにも形にも限界があるの! ゴーレムは座れば行けるし鳥型も仕舞うだけなら『どっちか片方』だけなら大丈夫。でも両方は無理だし……地上ならともかくこんな小さな場所に空中で仕舞えとか私には無理だからね?」

「あー。うん、そういやそうだなあ」

 先ほど啓治が船倉にゴーレムを寝かせる形式は駄目だと言った。

それは飛行船が普通の船を浮かばせる形であろうと建物型であろうと、横穴なんか作ったら船底が潰れてしまうか、さもなければ支柱込みで出し入れし難い形状に成るからである。そして実現したとしても小さな箱のような空間に翼をぶつけずに入れと言うのは少しばかり酷であろう。鳥型ゴーレムに慣れた晶子でも難しいならば、飛ぶことを覚えたばかりの者には至難でしかない。

 

「晶子お姉さん。要するに別の場所に仕舞う場所を作って、修理する魔法使いだけ同じ場所で出来るような……ってことですか?」

「そうなるわね。修理せずに回収するだけというなら全部別の場所でもいいけど」

「そいつは旨くねえなあ。いっそ鳥型を載せる船は別で……。いや、それなら最初から無しにして次の計画に入れた方がいいな。うん? 次ので試してその次で混ぜる? ちょいと待てよ」

 丁寧な言葉に改めておっかなびっくり尋ねる勝平に対し、啓治はあくまで我が道を行った。

その上で自分も紙面を二枚取り出して、それぞれにラフ画のスケッチを始める。一つ目は建物型の飛行船の前面にある椅子を設置し、そこに腰掛るゴーレムを描く。そして二枚目は普通の船からマストを取り除いて浮かせるタイプの飛行船である。

 

「なんか良いアイデア思いついたの?」

「そういう訳じゃねえが……こっちをメインにやるなら順番はこうだよな。まずでっかい甲板のある飛行船に鳥型を止めれるようにして、余ったスペースにゴーレムを載せる椅子を取り付ける。そんで不便だと思った形状を修正する。しかしこれじゃ設備が積めねえから文句が出る」

「それがどうしたの?」

 今は騎乗型ゴーレムをメインに考えるから悩ましいが、鳥型メインなら一発で来まる。

鳥型を載せろと言う発注ではない為、このまま提出したらダメ出しを受けるだろう。佐久間教諭の作った最新型を載せるという前提が無ければともかく、現在は既に試作品からフィードバックして新型を作っている所なのだから。

 

「ここからが本番なんだが……。文句を言われる理由としたらゴーレムを修理したり出撃するための設備が載せ難いからだ。しかし鳥型ゴーレムに必要なのは、慣れた奴なら誰でも着地できる広さの甲板なんだよな。別に建物型で天井が広い場合でも構わねえわけだ」

「最初からくっつけて設計するわけ? 構わないけど建造し難く成るか、すっごくアンバランスになるわよ」

「また大きなゴーレム……今度は船型から始めるの? そりゃゴーレム直せる人が乗るから何とでもなるだろうけど」

 此処で問題になるのは、未知の形状であるとバランスが大きく崩れる事である。

既存の船であろうと建物を浮かせるタイプであろうと、そのまま浮くような設計にしてしまえばよい。全体を持ち上げるだけなのでバランスを保った構造ならば、浮遊呪文で問題なく浮かせることはできる。そこから飛行呪文で任意の方向に移動するだけなので特に経常的な問題は生じてなかった。せいぜいが有用だとされた追加パーツを付け加える時に慎重になる程度であった。

 

「いやな、くっつけて設計するんじゃなくてよ。浮かぶだけの小さな船を、中くらいの船が引っ張るのはどうよ? さっき勝平君が言ってたろ荷車みたいな感じで座るって。なら馬と荷車分けちまえば良いんじゃね?」

「「あ」」

 魔力の充填装置にも強化装置にも限界がある。

一定以上のサイズの物体を浮かせて飛行させるのに限界があるのだ。それゆえにサイズ3以上の大きな船は、それら魔法装置に組み込まれた拡大術式用の魔法陣自体がとても大きい。それゆえに大きさの問題が出るのだし、建造に必要な魔法使いの数も相当な人数を要するのである。しかしこの方式ならば、中型と小型……それでは性能が足りない場合でも中型と中型で行けそうではある。

 

「待って待って! 二つ以上の『炉』とか魔法装置を連結させようってわけ?」

「……違いますよ晶子お姉さん。この場合は完全に別物で、後ろの方は本当に飛ぶしかできないし、操る人材も必要になる。でも連結はしないって事……だと思う」

「ま、そんなところだろうよ。ついでに言うと浮力オンリーのゴーレム運搬用の小型船と、そこそこの浮力と魔法攻撃装置を運ぶ小型船は別々に作ってもいいかもな。上手く行ったら中型に統合する感じで」

 なにが良いかと言って、この方式ならば牽引用の飛行船は今までとあまり変わらない。

その上で倉庫を兼ねた小型船を切り替えることで、色々な実験が出来るだろう。もしバランスがおかしくても普通の船として使用できるので、どこがおかしいか問題が判るまで訓練用にでも使えば良いのである。

 

こうして飛行船を作る際の第三の形状として、荷馬車方式が作られるようになったのである。悩みに悩んだ挙句であるが、一周目になかった存在を作り出せたことに啓治は解放感と達成感を覚えるのであった。




と言う訳で機動母艦の設計です。
アニメ知識でもあればガンダムやダンバインでも参考に出来るのでしょうが
そういうのはないので苦しみながら設計。なぜか合体方式が先に完成するというオチです。

なお比較し易い現代の船で言うと、中型船はフェリーより一回り小さく
ゴーレムは少なくとも3m、座っても2mくらいあるからですね。
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