二周目の人生は大空に焦がれる【完結】   作:ノイラーテム

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狙うべき目標

 九の州を構成する筑紫島への旅路。

一同はちょっとした運用試験を行いながら王都圏の南を横切った。王都の上を飛んで抜けるのは失礼だから遠慮したのと、仮に実験で問題が起きても問題が無いようにと言う配慮である。

 

「アァ~! ゴーレムがああ!」

「荷車側ごと落とすのはともかく、ゴーレムを降ろすにゃ割りと高度を下げんといかんですね」

 ここに至るまでに実験したのはゴーレムの降下展開だ。

連結を解除して牽引していた浮遊しかできない飛行船を降ろすのは、モタモタしている上に魔法使いが操作し続ける必要があるというのが問題だった。そこで少しばかり速度と高度を落としてゴーレムを直接降下させたところ……足が見事にへし折れてしまったのだ。もし配慮せずに高高度からおとしていたらどこまで破壊されて居たか分からない。

 

「ゴーレム大丈夫かなあ。もげてないから魔法で直せるけど、基礎部分に問題出てたらやだなあ」

「佐久間先生。ちったあ奥さんの心配をしたらどうです?」

 ゴーレムと言う物は魔法で『一定ルールの構造』に収まるように設計された物である。

それゆえに魔法を掛け直したら割りと簡単に元に戻るのだ。作成用の魔法よりも強度を上げなければならないが、そこはゴーレム科を率いる佐久間教諭である。渾身の傑作であろうとも、部下と一緒に作った時よりも強度を上げるのは問題が無かった。

 

「余計な心配は不要ですよ前田さん。ですがスムーズな降下戦術の立案は必要ですわね。生身よりもこのゴーレムは強いのですから、必要なのは心配では無くその方法です」

「だよねだよねー。さすがレイちゃん判ってる~。とりあえず気になる問題はないと」

(この夫婦……ずれてるけど、妙な所でぴったりなんだよな。これが破れ鍋に綴蓋ってやつか)

 佐久間夫人の方は騎乗型ゴーレムの運用に可能性を感じているらしい。

聞いたところによると彼女は抜刀隊の中でも中堅どころであるが、その能力を向上させるゴーレムに対して注目している。もちろん個人戦から逃げるという意味では無く、頭が柔らかいからこそ人間では不可能な戦術を編み出してみたいのだろう。その方向性が操る事が出来るゴーレムと言う未知に向いているのと、佐久間教諭がゴーレムの発展に夢中な事で、この二人は奇妙なところで話が合うのである。

 

「ひとまず回収して移動を再開しましょうか。この後ですが……スケジュールに遅延が無い程度でならまた実験しても良いかとは思います。たびたび留まるとか、修理や補給のためにどっか寄るレベルなのは無しっすよ」

 佐久間たちの方が立場は上なのだが、船長を務める前田啓治は釘を刺しておいた。

でなければ無制限にアレがしたいコレがしたいと言い出しかねないところがある。どうせ止めても無駄ならば、『スケジュール重視』とだけ伝えておけば良いだろう。何かあってもスケジュールに問題が出るならば許可しないと言えるのだから。

 

「よーし! そうと決まったら……ねえねえ、なんか面白いアイデアないかな? 上手く行ったら向こうでも助かるでしょ!」

「そういうのは勝平の方が得意っすね。まあ今は動けませんけど。明智君は何か思いつくかい?」

「ボクも仕事中なんだから降らないでくださいよ。まあ素材をミスリルなりオリハルコンにするぐらいですかね」

 なお飛行船の運用では作業に人が採られることになる。

この船は割りと人数が居る方だが、それは連結しているからこそだ。牽引する側に多くの人を割きつつも、連結している荷車側にも数名の魔法使いが必要なため木下勝平や柴田晶子たちは身動きできないでいた。もちろん何の実験も削ない時は佐久間たちゴーレム関係の魔法使いが一部の作業を変われるのだが。

 

「ミスリルで軽くするか、それともオリハルコンで全部強化ねえ。まあ順当な所だな。今回はどうしようもないって意味じゃ同じだが」

「と言う事は前田さんも似たような意見なんですか?」

「まあな」

 啓治と明智は二人で荷車側の飛行船を調整しながら論議を続ける。

研究自体は嫌いではないし、現時点では魔法装置の調整以外に何もできないからだ。真剣に話し合うというよりは、馬鹿話をしながら使えない手段について確かめ合うというべきだろうか。

 

「前に抜刀隊の中でも腕利きを鳥型ゴーレムに乗せたことがあんだよ。連中、アホみたいな高度から敵の上に直接降りやがった。それで思い出したんだが、飛行用の装備じゃなくても衝撃を和らげることが出来れば降りるだけならいけるんじゃないかってな」

「そういえばそんな報告を見たことがありますね。降りる専用の魔法の開発なんて効率が悪いとか言って立ち消えになりましたけど」

「それだよそれ。魔法じゃ無くてよ」

 墨俣攻防戦で見聞きしたことを伝えると明智は何のことかを理解した頷いた。

啓治は飛行船との往復や緊急脱出用に飛行の呪文が使える装備を用意している。しかしそんな物が無くとも、降りるだけならば可能な方法は幾らでもあるのだ。明智が言うように既存の魔法を加工して、強化できない代わりに無事に着地できる魔法を開発するかどうかを、研究室では議論したことがあった。彼が言うようにその段階では立ち消えになったのだが。

 

「ゴーレムの運用を目指して研究するんじゃないです? 浮遊魔法も荷車側用に調整しようとか言う話もありましたけど」

「そもそもゴーレム自体も吊り下げようって話を最初に出したろ? アレだよアレ。ゴーレムを吊り下げる鎖で少しでも地面に近づきゃ良いんじゃねえか? もちろんあのゴーレムのへし折れた足の代わりに、砕ける偽もんの足でも良いけどな。さっきの話だと強化個体のラミアの代わりだな」

「あー」

 現在行っている実験の高度はゴーレムが壊れる境界線であると仮定する。

この高度なのは飛行船が壊されそうにない範囲であり、ゴーレムのサイズであれば壊れないかもしれないと過去例から判断したからだ。実際には降りた衝撃で足がへし折れてしまうので、もう少し下がるか何らかの工夫があれば問題ないと言える。もちろん佐久間夫人が衝撃軽減する為に受け身を行ったのならば、彼女以外が行うならばもっと工夫が必要ではある。

 

「ツー訳であと何mか分の工夫がありゃあいけるんじゃねえかと思ってな。とはいえこのまま移動を続けるとしたら、少し難しくはあるんだが」

「……そうでもないんじゃないですか? 途中の町で伝令を出して、寄る事を決めている『鞆の浦』で回収する手もあります。そこで無理だとしても、鎖くらいなら筑紫島でも出来るんじゃないでしょうか? まあ内容にも寄るんですけど」

 一同は王都圏を抜けて安芸の『鞆の浦』を目指している。

そこは水軍拠点の一つであり、西部における水軍関係の集合地点に成って居る。その昔に王都が陥落しかけた時に、脱出候補の一つであったことからかなりの整備がされていたのが大きい。その場所で補給を行う事に成っている他、最も新しい情報を仕入れる事に成って居た。

 

「その辺は佐久間センセと話して思いついたらかな? あの人が作成できる範囲じゃなきゃ、どのみち作れねえしな。それに筑紫島の状況次第でもあらーな。情報手に入る?」

「そうですね。……前に言ってた丘と海峡横断の話を細川さんに譲っても良いなら、少しくらいは譲歩してもらえると思いますよ。問題はその辺の交渉が相手の機嫌とバランス次第なんで面倒なんですけど。あの人って他人を利用したりされたりするのは好きな癖に、借りを作ったりが嫌いなんですよね。哀れにも思われてるみたいだとか」

「なんか面倒な性格だな。素直に受け取ってくれりゃあ楽な物を」

 あくまで明智の見立てであるが、細川武人は兄の兼人と比較されて育った事が原因らしい。

優秀なのに何をやっても兄の下位互換であるとされ、兄やらその周囲からお情けで色々と施しを受けていたと信じて居るそうだ。だからこそ取引でつながった相手を操り、お互い様であるが、その一歩先に……自分が上に立っている事を何よりも求めているというそうだ。大好きなのは他人の功績や名声を奪い取り上回る事であり、啓治の『別に要らないからやる』という姿勢とは相性が悪いとのことだ。

 

「んじゃあ適当な条件で交渉しといてくれ。こっちは筑紫島で誰を助けたら良いのかを知りてえ」

「他に何か欲しい物とか、逆に欲しい物とかあります? 幾つかあれば調整し易いんですけど。できれば野心に溢れている方があの人は喜びそうですけどね。勝負して勝つ方が燃えるそうですから」

「野心ねえ……。そんなものがありゃあ……ああ、一つか二つあるわ」

 どうでも良い事だと頭をかいて誤魔化していた啓治だが、一つだけ狙う事があった。

それはこの世界の誰もが求める事の一つであり、誰が行っても良い内容だ。だからこそ判り易い目標であると言える。

 

「何です?」

「魔王城を探すのに手伝ってくれと伝えてくれや。心当たりはあるから、苦労と危険の配分を話し合いてえとかな」

「……了解です」

 それはあまりに判り易く同時に困難を想起させる。

危険であり魅力的でもあるからこそ、明智も真意を測りながら頷いた。

 

そして旅を続ける中……大友家の遺臣の中で、高橋家から同じ遺臣の家系に嫁いだ女将についての情報がもたらされた。嫁入りした家の名前を名乗り、立花李依というそうだ。まだ少年である当主に代わり、遺臣団を取りまとめているという。




 と言う訳で目標の選定です。
戦国物で言うと九州に行って立花・高橋家を救いに行く感じですね。
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